さっそく乗り込みに行こうとしたところであることを思い出した。
「正宗・・・・・・ところで社長室ってどこだろうな?」
『ふむ・・・たぶん一番上の階だと思われる』
「そうか、んじゃ一番上の階に突入するぞ!」
『応』
そして俺はデュノア社本社ビルに突入した。
その日、その時間、デュノア社社長はいつもどおりに仕事をしていた。
営業不振になっているとはいえ、それでも第二世代型シェア世界三位。それなりにまだ余裕はあったりするが、それでも仕事は全然減らない。今日も缶詰だな、などと思いながら書類を処理していた。
社長室はデスクワークをするための部屋だが、調度品やらなにやらいろいろと置かれ、豪華な雰囲気を出している。その中に鈴の付いた調度品が微かだが、鳴り始めた。
「なんだ、これは? 鈴の音?」
それを認識し始めたら、その音はどんどん大きくなっていく。
「何なんだ! 一体何なんだ、これは!?」
いきなり怪奇じみた出来事に社長は驚いた。
その瞬間、
社長室に衝撃が襲いかかった。
一番上の階に突入した俺達だったが、勢い余って部屋の床を何枚もぶち抜いてしまった。
「あっちゃ~、行き過ぎたな」
『少しばかり合当理を噴かせすぎたようだ』
反省しつつ辺りを見回してみる。
たぶんどこかの部署の作業部屋だ。周りの社員と思われる人たちが悲鳴を上げながらすごい勢いで逃げ惑っていた。
「ああ~、みなさん落ち着いて下さい。落ち着いて避難して下さい」
俺は逃げ惑う人たちをジェスチャーと声で避難させていく。たぶん意思は伝わってるはずだ。
『御堂、何故このようなことをする?』
「この人たちは今回関係ないだろ。俺達が突っ込む先を見誤ったせいでこんな目に遭ってるんだ、これぐらいしないと申し訳がたたない」
『御堂は本当にお人好しだな。まぁ、御堂らしいが』
はたから見たら鎧武者がジェスチャーで避難勧告をしていると言うのだから、シュールなことこの上ない。しかも元凶がそんなことをしているというのはおかしな話だ。
周りから人がいなくなり次第俺達は社長室を目指して走り出す。
普通に考えれば開けた穴を使っていったほうが早いはずだが、社長室が分からない以上、中から案内などを見つけて探すしか無い。しかも劔冑は垂直には飛べないので穴から上に上昇することができないのだ。中から行く以外、道はない。
ガシャガシャと音を立てながら会社の廊下を走っていく。
先程の通りで案内板を見つけ社長室を確認したが、やはり最上階にあった。権力者や馬鹿は何故か昔から高いところが好きだなぁ~、と少し考えてしまったりした。
しかしそんなアホなことを考えているわけにもいかない。ことは時間との勝負だ。
社長が会社から脱出する前に捕まえなければならないからだ。
「止まれ、止まれぇえええええええええええええ!! 貴様は何者だぁ!?」
黒い服にプロテクターを装着した男達が陣形を組んで階段で待ち伏せをしていた。どうやらプライベートシークレットセキュリティーサービスのようだ。証拠に・・・
さっきから止まらずに走る俺に向かってハンドガンやらサブマシンガンを撃ちまくっている。
しかしそんなものがこの劔冑に通用するわけも無く、装甲に当たっては弾け、あちこちに跳弾していた。
「ええい、用があるは社長一人のみ! それ以外に用は無い!! 怪我したくなくば、さっさとそこを退けぇええええええええええええええええええええええ!!」
俺は勧告しながら階段に突っ込む。男達は俺との距離が近づくにつれて蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げていった。突進する猪を真っ向から受け止めることなど出来ない。二メートルくらいありそうな巨体の鎧武者が凄まじい迫力を持って迫ってくるのならなおのことだ。
俺は男達を蹴散らして階段を上っていく。
途中でもプライベートシークレットセキュリティーサービスに邪魔をされたが、彼らの火力ではこちらを止めることなどできない。無視して蹴散らし、さらに進んでいく。
そして最上階に向かう階段を上るとそこには、
ISが三機待ち構えていた。
「ここから先には行かせません!」
「あなたがやっていることは犯罪です。いかような理由があっても許されることじゃないです。大人しく捕まって下さい」
「その全身装甲のIS・・・興味があるな。鹵獲してしまってもかまわないでしょ?」
どうやらこの会社の研究員兼テストパイロットのようだ。
プライベートシークレットセキュリティーサービスからの連絡を受けたらしく、こちらを止めるために武装している。機種は会社のためか三機ともラファールだ。
しかも一人だけISと勘違いしてるし・・・
「当方はデュノア社長にのみ用がある。それ以外に用はない。退かれよ」
用件を伝えはするが当然聞くわけもなく・・・
「そんな訳のわからないこと、聞くわけないじゃないですか!」
「襲撃してくる人間の言うことを鵜呑みにするわけないです」
「早くそのISを解体させろぉおおおおおおおおおおお!!」
と返された。一人だけやばいのが混じってないか? なんでこんなのを入れたんだ、デュノア社!?
しかし否定された以上は敵対するしかない。こちらには時間がないのだから。
「ならば、押し通させてもらう!!」
俺は交戦を決めると正宗に話しかける。
「正宗、全員蹴散らす! 両腕全部持ってけ!!」
『それでは今後の戦闘に支障をきたすぞ』
「このあと俺は戦うわけじゃない。それにどうせすぐ直るだろ、遠慮するな!」
『了解。拝領いたす』
両腕がちぎれ肉を貪られる激痛に声をあげる。
「ぐっ!?がぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
甲冑の鉄の肌と鉄の肉、仕手の生の肌と生の肉・・・べりべりと剥がされ捏ね合わされ、三角錐状に固められ・・・そいつは凶悪な弾丸と化す。
俺は肘を曲げて三機に肘を向ける。肘の装甲が開き、中から筒のような物がせり上がってきた。
『正宗七機巧の一つ、連槍・肘槍連牙!!』
肘からせり出した筒から弾丸状のものが連発で発射されていく。
「「「何っ!? きゃぁああああああああああああああああああああああああ!!」」」
その弾雨が三機に降り注ぐ。
あっという間にそれはシールドエネルギーを0にし、ISを半壊させていく。
撃ち終えた後には半壊したIS三機と弾雨によってズタボロにされた通路、そして絶対防御が働いて気絶した三人の女性だけが残った。
「だから退けと言ったのに・・・」
俺はそう言い捨てて社長室に向かいまた走ると、目的地はすぐについた。
さっきの三機のすぐ後ろにあった。
逃げられてはたまらないのでノックもせずにドアを蹴破り突入する。
「なっ、誰だ、君は!!」
中に入って目に入ったのそれなりに背の高い細身で金髪の中年だった。
今すぐにでも脱出しようとしていたのか、辺りは散らばっていた。
「貴君がここの社長で相違ないか」
俺は静かに、しかししっかりと言うとその男はさらに怯える。
「わ、わたしになんのようかね。金か!? 金ならいくらでも「金などいらぬ、この外道!!」ひっ!!」
俺の一喝に社長は慌ててひっくり返る。とても大物には見えない。明らかなまでの小物だ。
「当方はそのような邪なことに興味など一切無い、用件は別にある。当方の用件はただ一つ・・・シャルル・デュノアをデュノア社および貴君に関係する全てから解放せよ。無論、今まで行ってきたシャルル・デュノアへの謝罪も要求する」
俺はそう言って斬馬刀を引き抜き、切っ先を社長の目の前に向ける。
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
悲鳴を上げる社長だが、そんな気に留めるような気など無い。
「今すぐに謝罪せよ。しなければ手足から順に切り落とす」
俺はすぐ近くにあった鹿の頭の調度品を一刀で真っ二つに割った。
「わ、わかった! 分かったからやめてくれっ!! 殺さないでくれぇえええええええええええええ!!」
命の危機を完全に理解して命乞いを始める社長。つくづく見苦しい。
俺は携帯に用意した録画機能を使って謝罪を録画する。
「・・・今まですまない・・・・・・本当にすまない・・・・・・」
心底反省しているように見えるが、本当は分からない。自身の命がかけられて、必死になっているだけかもしれない。俺は録画を切り上げ、さらに刀を突きつけて要求する。
「この謝罪を明後日に本人に連絡し、二度と関わらないと誓え。又、フランス政府にシャルル・デュノアの性別報告の誤報を報告し、間違いを正せ。もししなければ・・・貴君は二度と朝日を拝むことは無いだろう。その命、亡いものと思えっ!!」
「は、はいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
俺の恐喝に社長が発狂ぎみに答えた。
「その約束、しかと刻みつけた。守らなければどうなるかは・・・わかっているだろう。ならば当方にもう用はない。では、さらばだっ!!」
俺はそう言い捨てると窓に向かい、合当理を噴かして窓ごとぶち破り外に飛び出し飛行していった。
社長室の窓は見事に破壊されており、外からの風がびゅうびゅうと吹き込んでくる。
さっきまで晒されて恐怖によって社長はしばらく固まっていたが、正気に戻って内線をつなぐ。
「先程きた正体不明のISをはか・・・」
しかし内線は途中で切れてしまった。見ると内線の機械にナイフが深々と刺さっておりこれが内線を破壊していた。
いきなりの事態にまた慌てる社長にある人物が話しかける。
「やっほ~はっじめまして~。あては足利 茶々丸。六波羅の偉い人で~す」
場違いなほどの明るい声で登場したのは足利 茶々丸だった。
社長はいきなりのことに頭が追いついておらず、理解できていなかった。
「いきなりで悪いんだけど・・・・・・デュノア社くんないかな~。あ・と・さっきのやつに危害を加えたり、約束を反故にするようなことはすんなよ~」
そう言って右手を社長に向ける茶々丸。
すると右手が変化していき血が流れ始め、形が変わっていく。
あっという間に鎧に包まれた右腕になり、鍵爪がギラリ、と光を反射していた。
「守んないやつはこいつでグサッといっちゃうよ~。そ・れ・に・こういう風にはなりたくないでしょ?」
そう言って外がよく見えるようになった窓跡に目を向ける茶々丸。
すると銀色の流星のようなものがデュノア社の研究室に流れていき・・・・・・一瞬にして壊滅した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
デュノア社社長はその風景を見た瞬間に・・・金髪がまっさらな白髪になった。
勝手にオリジナルの技をつくってしまいました。だって技名のないものでしたから・・・