翌日の放課後。
セシリアを早速家庭科室でしごき(さしすせそから始まり猫の手と言った基本、道具の用途などを座学で教えたあとにひたすら包丁やフライパンなどを振る反復練習を100回。悲鳴すら上げられないほどのスパルタ特訓)を終えてから早速自室に戻る。セシリアは真っ白になっていたが、こんなものはまだ序の口だ。もっと厳しくいく予定だからセシリアにはもっと真っ白になってもらうかもしれないが、頑張ってもらいたい。
寮への帰り道に口論が聞こえ始めたのでそちらに向かった。
どのような理由があろうとも、騒がしい口論というものはいただけたものでは無い。別に喧嘩するなとは言わないが、する場所は考えてもらいたい。少なくとも往来でしてよいことではない。なので他の場所でしてもらうようにお願いしてこよう。
「何故ですか! 何故こんな所で教師など!?」
「何度も言わせるな! 私には私の役目がある、それだけだ」
この声は千冬姉とラウラ・ボーデヴィッヒか?何故あの二人が・・・
「こんな極東の地で何の役目があるというのですか! お願いです教官、我がドイツで再びご指導を・・・・・・ここではあなたの能力を半分も生かせません!」
どうやら千冬姉をドイツ軍の教官としてまた引き抜きたいようだ。
「この学園の生徒はISをファッションのなにかと勘違いしている。教官が教うるに足りる人間ではありません! 危機感が全くない。そのような者達に教官の時間を割かれるなど・・・・・・」
言い方はきついがその意見は俺も分からなくは無い。確かにここの生徒はISをそういう風にしかみていない。しかしむしろそれぐらいのほうが良いと俺は思う。学生が血なまぐさいようなことばかり考えていては不健全だ。学生ならむしろ遊びにおしゃれに、精を出した方がいい。そんな軍事的なことを考えるのは大人か軍人だけで良い。ラウラ・ボーデヴィッヒの考え方は軍人としては正しいが、それをここの学生に言うのはただの押しつけに過ぎない。
「そこまでにしておけよ小娘」
「っ・・・・・・!!」
千冬姉が殺気を放って黙らせた。
ここからでも分かる殺気に少し引く。あ、小鳥が恐怖で気絶して墜ちてきた。怒りすぎだ、千冬姉・・・
「少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」
「わっ、わたしは・・・・・・」
「寮に戻れ、私は忙しい」
「くっ・・・・・・」
ラウラ・ボーデヴィッヒは言い返せず、そのまま早足で去って行った。
「さて・・・そこの男子、盗み聞きか? 異常性癖は関心しないぞ」
千冬姉はこちらを向いて話かける。どうやら俺が近づいているのがわかっていたらしい。
「そう思われるんでしたらもっと話す場所を考えたらどうですか、織斑先生。外でこんな大声を上げれば嫌でも聞こえますよ」
「ふん、抜かせ」
そう言って千冬姉は踵を返す。
「あぁ、そう言えば・・・・・・月末のトーナメント、頑張れよ」
「ああ、頑張らせてもらうよ」
そう言い残して千冬姉は去り、俺もその場を後にした。
自室に戻ったがシャルルがいない。
どこに行ったかと思ったらシャワーの流す音が聞こえてきた。どうやらシャワー室で湯浴みをしてるらしい。
そう言えばボディーソープが切れていたっけ・・・
「正宗、ボディーソープってどこに閉まったっけ?」
部屋で買ってやった学術書を読んでる正宗に聞いてみる。俺は前からどうやってあの足で本のページをめくっているのか、不思議で仕方ない。
『確か湯殿の戸棚にあったはずだぞ、御堂』
「そっか、わかった。ありがとうな」
『待て御堂! どうするつもりだ』
「シャルルに届けてやろうと思ってさ。取るのは大変だろう」
『待つのだ、御堂! 今はやめるべきだ』
「何でだよ、シャルルが困ってるかもしれないだろ。困ってる人を助けないのは正義じゃないな~」
そう言って正宗の進言を無視してシャワー室に入り戸棚からボディーソープを取り出す。
「シャルル、ボディーソープ切れてただろ。今そっちに届けるからな」
「へっ?・・・・・・い、一夏!? ち、ちょっと待って!!」
俺は待たずに扉を開けた。
そこには・・・・・・少女がいた。
金糸のような美しい髪、大きくはないが丁度よさそうなサイズの胸・・・たぶんCカップくらいだが、少女が細身のためそれ以上のサイズに見える美しい胸をした少女が扇情的な姿でシャワー室に立っていた。さっきまでシャワーを浴びていたらしく、水滴が体を伝っているところがかなりなまめかしい。
「へ、いや、あの・・・・・・」
「だ、誰だ・・・?」
驚きのあまり思考が停止してしまう。どうすればいいか分からず、後ろに一歩引いたら、何がどうなったのか分からないが、足を滑らして前に倒れてしまった。
「へ、きゃぁ!?」
そのまま少女を押し倒してしまった。
いきなりのことに驚いてしまったが、この状態は非常に不味い。慌てて退こうと床に手をつこうとしたら、何故か床が柔らかい。
むにゅうぅぅ、とした感触がした。
目を向けると・・・・・・手が少女の胸を押しつぶしていた。
「へ?」
「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
少女が悲鳴を上げると左頬に凄まじい衝撃が走った。それが平手打ちだと気付くのにしばらくかかった。それくらい俺は混乱していたのだ。
『だから言ったのだ、やめるべきだと』
そうを言って正宗は己の仕手に呆れ返るのだった。