放課後になりシャルルと模擬戦をすることになった。
本当はちゃんとした試合形式の模擬戦とかをしてみたいが、劔冑ではISのルールに則ったことが出来ないので仕方ない。
さすがに正式な試合でも無いのに特例ルールを使うわけにも行かないので時間制限付き、短時間での模擬戦となった。制限時間は五分である。早速装甲して始めることに・・・
五分後・・・・・・
試合の結果に関しては何とも言えない。正式なルールではないので優劣を決めることが出来ないため、勝ち負けなど存在出来ない。強いて言うのなら・・・・・・
「引き分けと言ったところだな」
「何言ってるの、どう見たって一夏が圧倒してたでしょ」
「そうか? 俺は撃たれ続けてた気がするけど」
シャルルが使うのはラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。
ラファール・リヴァイヴのカスタム機で火器を20種以上積んでいるという、火薬庫みたいなISだ。しかもその武器をすべてにおいて使いこなせるシャルルの才能が凄い。御蔭で俺は中々に近づかせてもらえなかった。
「それでも全然効いてなかったよね」
「それはまぁ・・・」
確かに凄い火力ではあったが全て実体弾であり、正宗の装甲との相性が良くないため此方にダメージは殆ど無い。劔冑は刀や剣による戦闘を主としているため、衝撃にはかなり強い。つまり実体弾の銃器との相性が最悪なのだ。
「それにしてもなんでこんなに劔冑って固いの? 複合素材とか使ってたりする?」
「いや、コイツは鉄鋼だけだよ。コイツが固いのは・・・まぁ、コイツ自身が頑固だからかな?」
『そのようなことはない!!』
模擬戦後にこのような話をしていたところ、突然周りにいた生徒達が騒ぎ出した。
「ねぇ、ちょっと・・・見てよあれ!」
「あれってもしかしてドイツの・・・」
「第三世代型IS!? まだ本国でのトライアル段階って聞いてたけど・・・」
騒いでいるほうに目を向けるとそこには黒いISをまとったラウラ・ボーデヴィッヒが立っていた。
「あれがドイツのISか」
「何か・・・厳つい感じだね」
『そうか? 我にはか細く弱そうな、鴉のように見えるがなぁ』
ドイツのISについて感想を話していたとき、いきなりラウラ・ボーデヴィッヒに話かけられた。
「おい・・・」
「何だ、俺に用か?」
「私と戦え」
始めは模擬戦の申し込みかと思ったが、それは違う。
雰囲気からして模擬戦や訓練ではない。この雰囲気・・・これは・・・殺気だ。
もしかして・・・コイツは本気で俺を・・・・・・殺したがっている!?
だとしたら尋常ではないな。こんな殺気、学生が出して良いものではない。そこまで恨まれる覚えはないのだがな・・・・・・
「悪いが断る。そこまで殺気立たれても困る、恨まれる覚えもないのにな」
「貴様にはなくても私にはある・・・・・・貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成しえただろう。しかし貴様のせいで成せなかった。だから私は・・・貴様の存在を認めない!」
成る程、だからこいつは俺のことを目の敵にしていたわけだ。
心酔している人物が偉業を成し遂げることができず、その原因が目の前にいるのだからこうなっても仕方ないか。
しかし面と向かって言われると少しきついな。そのことは俺が一番身にしみていることだし。だからこそ、次からはそうならなくなるように修行してきた。
そういう理由なら、俺だって戦うのはやぶさかじゃない。
しかし政府の命で、ISとの私闘は禁止されている。さすがに受けるわけにはいかない。
「政府からの命で私闘は禁止されてるんでな。トーナメントでなら戦ってやる」
「逃げる気か・・・ならば・・・」
殺気がさらに濃くなった。此方に何か仕掛けるのが丸わかりだ。
「戦わざるを得ないようにしてやる!!」
此方に巨大な砲を撃ってきた。
普通ならこの一発で終わる。この距離この速度で撃たれては回避は難しい。
が、既に何かしら仕掛けてくるのが分かっているのならいなすのもたやすい。
あのISの武装は殆ど分からないが、あの距離から此方にダメージを与えることが出来るのは、あの巨大な砲くらいなものだろう。ならこちらがする対処は一つのみ。
「ふんっ!」
砲から放たれた砲弾の射線を見切り、射線から逸らすように斬馬刀を振るう。
ガキンッ! という金属同士がぶつかり合う音がして砲弾は俺からそれて右後ろに着弾する。
「何っ!?」
ラウラ・ボーデヴィッヒは驚愕で顔が固まっていた。
まさかあの距離から砲弾を弾くとは思っていなかったのだろう。残念ながら、こう言った攻撃の対処法は昔からある。
その名も、矢払いの術。
名の通り、矢を払う術だ。ただし、普通のものだけで無く劔冑の射撃攻撃を無効化するために作られた技だ。
基本接近戦が主体の劔冑だが、中には射撃、投擲などの武器を用いるものもある。そういったものたちの攻撃はかなり危険なものが多く、下手をすれば一撃で墜とされる。そのためにこういった技が出来上がった。
なのでこの程度の攻撃、射線と撃つタイミングさえ分かれば大体対処できる。
「いきなり発砲してくるとは・・・随分と沸点が低いじゃないか。しかも殺気がダダ漏れで攻撃が丸わかりだ。そんなんで俺に勝てるわけないだろう・・・出直してこい!」
「何ぃいいいいいいいいいい!」
「そうそう、そんなんじゃいっちーには勝てないよ。出直したら~」
あれ、何か増えてないか?
声がした方に目を向けると、そこには・・・・・・
「やっほ~いっちー、また遊びに来たよ~。こんなことさっさと終わらせてあてにカステラをだせ~」
茶々丸さんがいた。しかも・・・・・・ラウラ・ボーデヴィッヒのISの巨砲の上に座っていた。
「なっ、茶々丸さん!?・・・・・・いつ来たんですか、まったく・・・」
「だ、誰だ貴様!?」
いきなりの登場にその場にいた全員が驚く。
いつの間にきてたのやら・・・まぁ、この人はいつ来たのかなんて分かるわけも無く、神出鬼没だからな~。
「ほらいっちー、はやくはやく。あてがカステラな気分のうちに」
「はいはい、わかりましたよ」
俺はため息をつきながら装甲を解除した。
「待て、貴様!このような横槍など・・・」
「黙ってくんないかな~、ウサギちゃん。あては今すっごくカステラが食べたい気分なわけ。邪魔するなら・・・・・・容赦はしないよ」
「クッ・・・・・・」
茶々丸さんから発せられる殺気でラウラ・ボーデヴィッヒが黙る。この感じからして相当機嫌が悪いかもしれないな。早くしないととばっちりを受けるかも・・・・・・
「んじゃシャルルも早く部屋に戻ってくれ。カステラとお茶用意して待ってるからさ」
「う、うん」
殺気で固まっているラウラ・ボーデヴィッヒを尻目に、俺は茶々丸さんを回収。
正宗に無理言ってまた乗せてもらい、自室に急いで戻りカステラとお茶を用意する羽目にあった。