装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は短めです。
そしてまた一夏の弱点が露呈します。
え? 山田先生に弱いですって? それは言っちゃ駄目ですよ。


二人でデュオを その1

 夏休みに入り、周りの学校の生徒同様にIS学園の生徒も皆大いに楽しんでいる。

長期休みということで実家に帰郷する生徒も多く、寮の中はいつもより若干静かになっていた。

そんな中、俺はというと……まだ家には帰らずに寮の自室で生活していた。

理由としては政府からの密命で度々駆り出されることがここ最近多かったからだ。

御蔭で真耶さんとの一番大切な時間が少なくなり、少し不満だったりする。

それもこれも劔冑が世界に広まった所為だというのだから、皮肉もいいところだろう。

とある所では新型の数打を開発しようとして失敗して暴走したり、また劔冑に反感を抱いている女性達が狂気の沙汰ではない所行までして作ったISが暴走したりと、それを鎮圧するために俺が毎回動かされている。

何故自衛隊の部隊があるのに俺なのかと言えば、其方の方がより宣伝になるからである。世界に名を轟かせた責任というものだろう。あまり背負いたくないが。

そんな訳でせっかくの夏休みに入ってもまったく真耶さんと一緒にいる時間が無かった………が、それも今日までだ!

 

「と言う訳で、これからはしばらくは何もないはずですから」

「本当ですか、旦那様!」

 

ベットで寄り添いながらその事を真耶さんに伝えると、真耶さんは弾けるような笑顔で喜んだ。

総理と天皇陛下に直談判して余程の事が無い限りは呼ばないようにしてもらったのだ。

俺ばかりが出しゃばってはそもそも自衛隊の部隊の有用性も示せないし、部隊としても実戦経験は積ませた方が良い。

それに俺でなくても、真田さんに伊達さんという一流の武者がいるのだから、俺でなくても充分だろう。

と、力説したわけだが、お二人には即座に『恋人と一緒に入れる時間が無くて不満なんでしょ』と見破られてしまった。

そのためその場で赤面してしまうことに。あのお二人は何やら懐かしそうな目で俺を見ていたのが印象的だった。

やはり年の功には適わない。

まぁ、そんなわけでこれからはもうちょっと真耶さんと一緒にいられるというわけだ。

茶々丸さんから助けてと電話が来たが、どうせ師匠絡みか仕事をサボるかのどちらかなので速攻無理だと断り即獅子吼様に連絡して捕まえて貰うことにした。

福寿荘はまた呼ばれるだろうが、その時は真耶さんも一緒だ。それはそれでとても楽しみだけど。

 

「嬉しいです!」

 

嬉しさを全力で表現すべく、真耶さんは俺をギュウ~~~~~っと抱きしめる。

夏場で熱いので薄着なのだが、その所為で柔らかい感触がより直に感じられて顔が熱くなってしまう。

肩が露出している上の服に下着が見えそうなミニスカートという服装は、スタイルが抜群過ぎる真耶さんの殺人級な魅力を戦略兵器並に突き上げる。

余りの可愛さと色気に俺は見た瞬間からドキドキして気が気じゃない。

 

「それで、どうしましょうか、今日は?」

 

特に出かける用事があるわけもないので、真耶さんにどこに行きたいか聞いてみる。

俺にとって真耶さんがいれば何処でもきっと楽しくて幸せなのは分かっているから。きっと地獄だって天国に早変わりするだろう。

真耶さんは俺に聞かれ、頭をぐりぐりと擦りつけるようにくっつきながら悩む。

 

「う~~~ん~~~~、どうしましょうか? せっかくの夏休みですし、旦那様とどこかに出掛けたいですし。でも、こうしてずっと一緒にいるのも、それはそれで……」

 

恍惚としながら考える真耶さんもまた可愛い。

それは俺も同じであり、どちらもいいと思う。

そして悩んだ真耶さんは何かを閃いたらしく、ポンっと可愛らしく手を合わせた。

 

「あ、でしたらいい案があります!」

 

その少し幼い動作が可愛くて目を細めていると、真耶さんは俺に楽しそうに微笑む。

 

「旦那様! カラオケに行きませんか!」

 

それを聞いた俺はまるで凍り付いたかのように固まった。

 

「か、カラオケですか!? いや、それは……」

 

何とか喉を動かし、奥から声をひり出す。

その言葉は俺にとってある意味鬼門なのである。

俺の言葉を聞いた真耶さんは瞳を潤ませながら俺を見つめてきた。

 

「駄目……ですか?」

「うっ……」

 

その可愛らしい上目使いでお願いする姿に言葉を詰まらせる俺。

恋人を悲しませることは絶対にしてはいけないと、俺は自分の信念に刻みつけている。

それは外部は勿論、自分にだって当然だ。

ここで今にも泣きそうな真耶さんに駄目だと言うことは………出来ない。

 

「い、いいですよ……」

 

自分の知られたくない秘密と恋人が悲しむのを天秤にかけるなどと言う段階はすでに過ぎている。そんなもの、かけるまでもない。

誰だって米粒とボーリングの玉を秤にかけるなんて事になれば、かけなくても結果は分かるだろう。

そういうことである。

頷いた俺に真耶さんは実に嬉しそうに笑った。

 

「旦那様、ありがとうございます!」

 

本当に嬉しそう笑顔に俺も心が温かくなる。

こんな可愛らしい笑顔が見れるなら、俺の秘密の一つや二つ、どうと言うことは無いと思える。

すると真耶さんはそのまま俺の後頭部に手を回すと、

 

「無理を聞いてくれてありがとうございます、旦那様。だぁいすき、ちゅ」

 

俺の唇にキスをしてえへへへへ、と気恥ずかしそうに笑った。

その可愛らしさに俺もキスで返したのは言うまでも無く、結果として部屋を出るのが遅れてしまった。

 

 

 こうして俺は真耶さんと二人でカラオケに行くことになった。

そう、俺が………

 

『ある意味音痴』

 

だと言うことを内緒にしたまま……。

 

 


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