数馬は人間を辞めてどうなったのか……少し出ます。
「ぐぅ、うぅ……うぅ……」
捕らえた数馬はロープで縛られており、未だに暴れださんと唸り声を上げている。
いきなり暴走し始めた数馬を捕らえるために俺と弾は五反田家を出たのだが、捕まえるにはそれなりに苦労した。
何せ通常では有り得ない動きをしていたのだから。武者として鍛えている俺でも手こずるほどに、人外の力を発揮していた。
だが、弾の奇策によって何とか事なきを得たのは本当に助かった。
まさか、あんな方法に引っかかるとは思わなかったけど。
逃げ回る数馬に向かって弾が大声で、
『あ、あんな所にお前好みの貧乳で清楚な美少女がいる!』
なんて言ったら、
『どこだぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!』
ってとてつもない速度で目の前にに来たからなぁ……。
そこで捕まえて縄で縛り五反田家へと連れ帰った。
そして再び弾の部屋でこうして座っているわけだ。
「あぁ、お前の所為だぞ。どうしよう、下手すれば明日の朝刊に『壁を走る謎の仮面男現る』なんて書かれたら」
弾は部屋に戻ってからずっとこんな風にうなだれている。
確かにあの動きは常識から外れていたから、記事になっても可笑しくはないけど。
「そもそも、どうしてこんなに数馬は情緒不安定なんだ?」
「お前の所為だよ、お前のっ!!」
不思議に思ってたら弾に怒られてしまった。
どうして俺の所為なのか、まったく分からない。
俺の返事に頭を抱えて苦しむかのように悶える弾。お前も何でそんな反応をするかなぁ。
「それで………続き、いいか?」
話の本題、もとい相談を再開しようと思い声をかけると弾は信じられないような目で俺を見て、数馬においては白目を剝いていた。
「お前は数馬を殺す気か! これ以上の責め苦は拷問以外の何者でもねぇよ!」
「拷問って……。ただ悩んで相談に乗って貰ってるだけだろう」
「お前はもうちょっとモテない奴の気持ちを理解した方がいい!」
必死に怒る弾にタジタジになりながら対応する。
何でこんなに怒るのかが本当に分からない。
短気は損気だというのに……。
「それで本題に戻すけど」
「戻しやがった、この野郎! もう嫌っ!」
弾が何か叫んでいるが、ここで切ってしまってはせっかく相談しに来た意味が無い。
だからこそ、俺は強引に切り出した。
「それでまだ、この後も続きがあって………」
そして再び俺は二人にあったことを語り出した。
鍛錬を終えて、シャワーを浴びた後はいつも一緒にご飯を食べに行く。
それ自体はいつもだが、ここ最近だと少し違っていて……。
「えへへへへ、旦那様の膝、硬いけど気持ちいいです」
幸せそうに俺に微笑む真耶さん。
その可愛らしい笑顔に俺も微笑んでしまう。本当に可愛くて、ついつい抱きしめてしまいたくなるくらいだ。
最近、真耶さんが座る定位置が俺の隣から俺の膝の上になっている。
最初はまさにすっぽりと収まるかのように膝に座っていたのだが、それだと俺の顔が見れないからと、今ではお姫様だっこの要領で俺の膝に横から座り、左腕に背を預けている。
この座り方ならお互いの顔も見えるし、それに………お互いに食べさせ合うことも出来るのだ。
少し食べづらいけど、その分真耶さんが喜んでくれるから俺も嬉しい。
まぁ、柔らかくむっちりとしたお尻の感触には色々と気まずいが。
見られると色々恥ずかしくなりそうなポーズだが、どういうわけか誰にも見られない。
何でも死角にある席らしく、滅多に人が来ないんだとか。実は影で俺と真耶さんの専用席と噂されているらしいのだが、俺はこの時は知らなかった。
そそんなことを知らない俺達は食事を始める。
「あ、これ美味しいですよ」
「ええ、此方も美味しいですよ」
買ってきた定食をお互いに食べて美味しさに頬を緩める。
IS学園の学食のレベルは高く、店を開いてもいいくらいだ。だから毎朝美味しいご飯が食べられるのは有り難い。
すると真耶さんは気に入ったおかずを箸で摘まむと、俺に向かってとろけるような笑顔を向けると、可愛らしく口を開いて此方がとろけるくらい甘い声を出す。
「はい、旦那様。あ~~~ん♡」
「あ~ん」
差し出されたおかずに此方も口を開けて食べると、嬉しそうに真耶さんが笑う。
真耶さんから貰ったおかずは今まで以上に美味しくて、俺は心も温かくなる。
だから俺も返しでおかずを差し出す。
「はい、真耶さん。あ~ん」
「あ~~~ん♪ んふふふ、美味しいれす~」
まるで小鳥のように可愛らしく口をを開ける真耶さんもまた、可愛らし過ぎて赤面してしまう。
年上の恋人の幼い可愛らしい姿に毎回胸がときめいてしまう。
そして偶に、
「あ、こんな所にお弁当が付いてます! 今から取りますから
ジッとして下さいね………」
そう言って俺の顔に顔を近づけると、
「ちゅっ……えへへへ、ごちそうさまです♡」
とキスでお弁当を撮ってくれる。
俺の食べ方が汚い訳ではなく、実は真耶さんが俺にバレないようにこっそりと着けたりしているのだが、当然バレている。そんなお茶目なところも可愛くて、ついつい目を瞑ってしまう。
そのままお互いに食べさせ合いながら朝ご飯を食べていく。朝から幸せな気持ちで一杯になるのだが、最近はそれ以上に幸せになる。
デザートでフルーツなんかを頼むのだが、それを食べるときはいつもと少し違ったりするのだ。
「ひゃんなひゃま、ん~~~~~♡」
真耶さんは咥えたリンゴの欠片を顔ごと俺に向けて目を瞑る。
それが何なのか、もうわかりきってはいてもやはり少し恥ずかしい。でも、その瑞々しい唇を堪能したくて、俺は吸い寄せられるようにそれに応じる。
「「ちゅ……ちゅぷ…れろ……ふぅ…」」
唇を合わせ、リンゴの欠片をお互いの口の中で行き来させる。
リンゴの甘酸っぱさと、真耶さんのそれ以上に甘い味に頭がボーっとしてしてしまう。
それは真耶さんも同じで、恍惚な表情で息を荒くしていた。
「はぁ………旦那様の味がして……美味しいです……」
(うわ、艶っぽくて凄い……)
見る者全てを魅了する妖艶な真耶さんは俺の心臓を破壊するんじゃないだろうか。
そんな少し妖しい雰囲気の中、俺は自分の精神を削られつつも甘いこの感情に身を任せて食事を楽しむのである。
これが朝の朝食の光景。ただし、時間はちゃんと気にしている。
そして学校に登校し、授業を真面目に受け、昼休みには真耶さんお手製のお弁当を二人で一緒に朝のように食べる。
毎回キスしてばかりだが、舌がふやけないのが不思議で仕方ない。
違いあるのなら、朝以上に甘えてくる真耶さんがたまらなく可愛いことだろう。
そして食事が終わると、予備のチャイムが鳴るまで………。
「どうですか、旦那様? 気持ちいいですか」
「は、はい……」
まるで絹のようなきめ細やかさと程良い弾力のある感触が俺の頭の下から感じ、香る女の子の甘い香りに頭がクラクラしてしまう。
そう、昼ご飯を食べ終わった後はいつも膝枕をされてしまうのだ。
しかも真耶さんは俺の顔が見えるように自分の方に顔を向けさせるのだが、その所為でスカートの中が少し見えてしまったり。そのことを注意したことがあったのだが……。
「だ、旦那様にだったらいいんです。寧ろもっと見て欲しいですし……」
と凄く顔を真っ赤にして恥じらいながらも俺を見つめながらそう答えられる。
それが可愛らしくも正直エロくて、俺は何も言えずに顔が熱くなってしまうのだ。
これも甘えていることの一つなのだと思うけど、このままじゃあ近いうちに襲ってしまいそうで怖い。寧ろ喜びそうだけど、それは自分の誓約を破ってしまうので、それだけは絶対に避けなければ。
そんな気恥ずかしくもドキドキした、それでいて穏やかな時間が予備チャイムまで続き、そして時間になったら教室に戻る。
その際、名残惜しそうにする真耶さんに周りに気を付けて軽くキスをしてあげると、真耶さんは嬉しそうに笑ってくれる。
そしていついかなる時に聞いても幸せで一杯になる言葉を俺に満面の笑みで言ってくれるのだ。
「旦那様、だぁ~~~~~い好きです♡」
そうしてお互い別れて授業へ。
放課後になると一緒に生徒会へ行って生徒会業務を一緒に頑張って終わらせ、そして一緒に休憩。
ま、まぁ、言わなくてももう分かると思うが。
そしてそれも終わると本格的な鍛錬を行い、そのサポートをいつもして貰っている。
そのまま二人でしばらく一緒に過ごし、そして夜になったら………。
「おい、これ以上は言うんじゃ無い!」
「いや、何で?」
「何でもだよ、馬鹿野郎!」
語っていると、もう弾が辞めろと止めてきた。
まぁ、大体は話し終えたし問題はないだろう。
「それで……可愛すぎる真耶さんに俺はどうすればいいんだろう。このままだと本当に襲ってしまいそうで怖いんだ」
心の底からの本音に弾はキレながら返してきた。
「ウッセー馬鹿、死んじまえ! そのまま欲望に従って孕ませちまえよ、この野郎! きっと恋人さんもご満足だろうよ、この十八禁野郎がぁああああああああああああああああああああああああああああ!」
「酷い罵詈雑言だ。俺が一体何をしたって言うんだ」
「わからねぇとか、もう人間じゃねぇよ! おい、数馬も何かいってやれよ!」
弾は怒りながら数馬に話を振るが、数馬から反応がない。
それを不審に思い二人で数馬に近づくと……。
「なっ!?」
「か、数馬の奴……息をしていないぞ!」
数馬は白目のまま意識を失い呼吸が止まっていた。
こうして、この相談は数馬を救急車で運ぶことでうやむやになってしまい、たいしたことは得られなかった。
まぁ、何とかするしかあるまい。
俺達の未来のために!
そうそう、実は二人に言ってはいないのだが、実は次の日が休みだと、
「旦那様、一緒に寝ても……いいですか?」
と上目使いでお願いされ、俺は幸せと恥ずかしさを感じながら真耶さんをベットの中に誘うのであった。
その最、とても幸せそうな真耶さんを独り占めできるのが、実は何よりも大好きだったりする。