あれから数日が経った。
波乱尽くしだったがそれなりに楽しい学園生活。
ようやくささやかな平穏が訪れた・・・・・・訳が無い!
「はーい皆さん、静かにして下さい」
朝のSHRで山田先生が元気よく声を上げる。
「実は今日は何と、転校生が二人も来ます!」
「「「「ええええええええええええええええええええええええ!!」」」」
いきなりの爆弾発言にクラスが騒然となる。
「静かに! それでは入ってきて下さい」
すると扉が開いて二人の人物が入ってきた。
一人は小柄な銀髪の少女、もう一人は金髪の・・・・・・
『男』
「今日から皆さんと一緒に勉強する転校生の、ラウラ・ボーデヴィッヒさんとシャルル・デュノア君です!」
衝撃の展開にさらに騒然となるクラス。
俺も『平常時』なら一緒に驚いていたんだろうが・・・・・・
今はそんなことに頭を使っている余裕なんて無い!
俺はあの日からずっと頭を抱えて考え込んでいた。
原因はたった一つ・・・あの日に来たメールだ。
送り人の名は、足利 茶々丸。
師範代の友人にして師匠にべた惚れな女性。そして・・・
俺が一番苦手な人でもある。
その場の空気をことごとく破壊してかき回し、面白ければ何でもやる、まさに破天荒という言葉の権化とでも言うべき人だ。
前に面白そうという理由で、ビル一つ丸々爆破したこともあった。
それくらい『ぶっとんだ』お人だ。
そのお人がよりにもよってメールで
『近々IS学園に遊びに行くと思うから、文命堂のカステラ用意しといてね♡』
などと送ってきた。
冗談なんかもよく言う人だが、文命堂のカステラなんて好物を持ち出すあたり、本当に来る。
俺は今の生活はなんだかんだと言って気に入っている。あの人が来たらどうなるか分かった物では無い! あぁ、本当にどうしたものか・・・・・・
俺が必死に悩んでる間にシャルル・デュノアの自己紹介は終わったようだ。
世界初のISを動かせる男性だけに、その騒ぎも一入に凄い。
しかし俺はコイツに妙な違和感を感じる。
普通ならそんな世紀な大発見をすれば、もっと注目が集まるはずだ。
しかしそんな様子は世間から感じられなかった。どことなく大きな権力なり何なりが隠している気配を感じる。
隠すということは、知られてはまずいことがあるということ。
つまりコイツは何かを隠してる可能性が高い。
警戒しといた方がいい。
次に銀髪少女が自己紹介を始める。
どうも千冬姉と交友があったらしく、教官と千冬姉のことを呼んでいた。
千冬姉の職歴について政府から資料は見させてもらった。人にものを教える仕事はこの学園に来る前にドイツ軍で教官をしていたくらいだ。
つまりその時の教え子であり軍人なのだろう。
しかしそんなことより、俺には茶々丸さんのことのほうが重要だ、何とかせねば。
自己紹介を終えたラウラ・ボーデヴィッヒは俺に近づいてくる。
「おい、貴様」
「・・・・・・・・・」
考え込んでいる俺にはまったく聞こえない。
するといきなり殺気が!!
俺は条件反射で殺気に反応してしまった。
ボーデヴィッヒは俺に平手をかまそうとしたらしい。飛んできた手を右手で掴み止め、左手で相手の前髪を掴み机に頭を叩き付ける。
「がっ!?」
叩き付けてから自分が何をしたのか気付いた。
「あ、すまない。大丈夫だったか」
俺はそう言って優しく頭を上げさせる。
おでこが真っ赤になり、ちょっと涙目になっているボーデヴィッヒがそこにいた。
「わ、私は認めない!! 貴様があの人の弟であるなど!」
そう言って自分の席に早足でいってしまった。
どうやら、まだまだ波瀾万丈は続くらしい。
俺は胃に穴が空かないか不安でしかたない。