あれから2年経った。
私、織斑 千冬は現在IS学園で教師の職に就いていた。
一夏が行方不明になってからは、半ば死体のように生きていた。
あの後・・・あの場を調査した結果、現場から一夏の血痕が大量に検出されたが一夏は見つからなかった。無論死体も発見できていない。
当時の私は自暴自棄になり自殺まで考えたが、後輩の山田 真耶やその他の人たちの御陰で何とか踏みとどまり、現在までなんとか生きている。
国やほかの企業から日本の代表選手としてこれからもやってくれないか、と嘆願されたが一夏を失った私には、もうそんな気力は無かった。しかし無職のままでもいかず、どうするべきかと頭を抱えていたときにIS学園から紹介もあって教師になった。それまでは一夏捜索の借りもあって、ドイツ軍で教官をしたり、一夏の捜索に力を注いでいたが、未だに当たりはない。
今日は実家に帰ることになっている。まぁ、それなりにちらかってはいるが問題はない。
そろそろ一夏の墓を買おうかどうかを真剣に考えるべきかと思っている。それをするのにはあの家がいい気がした。一夏と一緒に過ごした家がふさわしいと思ったのだ。
学校の仕事が終わったら行くことにしよう。夕方には行けそうだ。
そう考えて私は寮長室を後にした。
あれから2年が経った。
俺が正宗と会ってから、あっという間に2年が経った。しかし時間は濃密だったな。
廃墟を脱出した後、俺と正宗は日本政府のとある組織に保護された。
その組織からの推薦で、俺達は人里離れた山奥のある家に行くことになった。その家は、大昔からある天皇を守護する家系だそうだ。
名を、『湊斗』と言う。別に旧家と言うわけではないらしい。
俺はそこで二年間、正宗の使い方と吉野御流合戦礼法と言う戦の術をたたき込まれた。
そして今現在、皆伝をもらって実家に帰ってきた。
とある高校に通うためだ。いくら行方不明になっていたとは言え、最終学歴が中学中退というのはさすがにまずい、との師匠に言われたからなのと、日本政府から極秘での要請がきたからだ。
目の前にある家は2年前と変わら・・・・・・・・・ず!?
「なんだよ、これぇええええええええええええええええええええええええええ!!」
訂正、かなり変わりまくっていた。
別に家の構造が変わったというわけではない。
はっきり言って・・・・・・汚い。
庭は放置し続けたのだろう。雑草一杯で足場もなく、荒れ放題だった。
家に入ってはさらに驚愕。
「く、臭い!」
悪臭がというよりもはや刺激臭とでも言うべき匂いに襲われた。床は足の踏み場もないほどのゴミだらけ。テレビでみた汚ギャルの部屋なんて目じゃない、ゴミ屋敷やゴミ御殿と言われてもおかしくないほどにひどすぎた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
さすがに沈黙。千冬姉は家事が下手だから散らかっていると思っていたが、まさかここまでとは・・・・・・
「正宗ぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
『応』
俺の呼び出しに正宗が応じて部屋に入ってきた。
「この散らかってる部屋を片付ける! 手伝え!!」
『御堂、それは我の使命にあらず。我は悪を討つもの、そのようなことをするためのものではない』
「よく聞け正宗。清い清浄な環境は心を清める。しかし散らかり歪んだ環境は心を歪めるものだ。歪んだ心は悪になるぞ! なら環境を正し心を清めることは悪を予防することにほかならないんだ。だから手伝え! 文句は言わせない」
『御堂が言うこともわかりはするが・・・・・劔冑使いが荒いな』
「なんか言ったか?」
『いや、なんでもない』
そうして俺は正宗に無理矢理手伝わせ、家を掃除していった。
私は実家に帰って驚愕していた。
あれだけ散らかっていた庭がきれいになっており、あの悪臭もしなくなっていたからだ。
家に誰かいる。
泥棒のたぐいかと思い、私は家に突入した。
「あ、千冬姉お帰り」
「へ?」
そんな間抜けな声を上げてしまった。
目の前に一夏がいるからだ。幻影じゃないかと疑い、自分の頬をつねってみる。
痛かった。幻じゃない!
「なにやってんだよ、千冬姉」
「い、一夏っ!?」
私はすぐさま抱きつきそうになったが、一夏に遮られた。
「帰ってきて早々悪いけど・・・・・・千冬姉。お説教タイムだ」
2年ぶりに再会した兄姉が最初にしたことは、姉への家の散らかり具合のお説教だった。
こうして織斑 一夏は2年ぶりに表に現れた。