装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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二巻の話が長引いて仕方ないですね~。
その分詰まってますけどね。


もしも一夏が別の劔冑を使ったら。 その11

 大会の表彰式を終えた一夏は、いつもと変わらないニッコリとした笑顔で保健室へと向かった。

理由はラウラのお見舞いのためである。

どうしてそうなったかは分からないのだが、一夏に胸を揉みし抱かれたラウラは嬌声を上げると共に気絶。それで急遽保健室へと運ばれることになった。

一夏は面白ければ何でもする婆娑羅者。しかし、自分で行ったことの責任はしっかり取る男である。他の選手にもセクハラをして嬌声を上げさせたが、気絶して保健室へ運ばれたのはラウラだけ。なので、気絶させた身としてお見舞いをしようと考えたのだ。

それにはシャルロットもついていこうとしたのだが、一夏はそれをやんわりと断った。

その時の表情を見たシャルロットは大人しくそれを聞き入れた。

一夏の表情……慈愛に満ちた暖かな笑みを見て。

 

(こ、これならたぶん、大丈夫かな、ボーデヴィッヒさん)

 

不安と安堵の二つの感情に揺れながらも、シャルロットは一夏を見送ったのだ。

そして一夏は保健室の前で千冬とあった。たぶんラウラの見舞いに来たのだろうと一夏は推察した。

 

「織斑、止まれ」

「はい、なんでしょうか?」

 

千冬は一夏を呼び止めると、その場で話しかける。

 

「まず……優勝おめでとうと言っておこう。流石は武者だな」

「恐悦至極にございまする」

 

千冬に褒められた一夏は、畏まった様子で一礼する。

 

「だが……」

 

千冬がそう呟いた瞬間、一夏の頭にとてつもない衝撃が襲い掛かった。

それが何なのか? 一夏は既に分かっていた。

そのまま頭を上げる一夏。頭からは白い煙が出ているような幻覚が見えそうである。

 

「痛いではありませんか、織斑先生。何かそれがしがしましたかな?」

「ほう、分かっていてそれを聞くか」

 

いつもと変わらない笑顔を浮かべる一夏に青筋を立てる千冬。その手には毎度おなじみの出席簿があった。

 

「貴様、確かに優勝はしたが……何だ、あの勝ち方は!! 公衆の面前でセクハラの限りを尽くし、試合の殆どがシールドエネルギー切れでなく、相手の戦意喪失での勝利ばかり。それがまだ恐怖からだとかいうのならともかく、か、快楽で気をやってしまって足腰が立たなくなり試合不可能な状態に追いやられるという、IS学園始まって以来の大惨事だ。御蔭で此方は試合を見に来た観客からは賛否両論の意見が来て大変だ」

「それはそれは、ご苦労様です」

 

ちなみに賛は主に男性から、否は女性と真面目な教育者からである。

千冬達教員はさっきまでその苦情? の処理に追われていたのだ。

だが、そんな苦労をしらない一夏は、まるで他人事のように返す。

その反応に千冬の眉間に浮かんだ青筋の一本が切れた。

 

「よくもそんな口が聞けたな。世間ならこれでとっくに猥褻罪で捕まっているところだ。それなのに……」

「それなのに?」

 

途端に千冬の表情が変わった。何やら疲れ切ったような顔である。

 

「貴様にセクハラされた生徒達は寧ろとても喜んでいてな……できれば今後も襲ってくれると嬉しいそうだ……。しかも先生方もそれを望んでいるらしい人が幾人もいてな……。教師としても身内としても嘆かわしい限りだ」

「ほうほう、それは……嬉しい限りだのう」

 

そして千冬の顔に浮かんでいる全ての青筋が一斉に切れた。

 

「反省しろ、この変態がぁああああああああああああああああああああ!!」

 

その場で千冬は身体を捻ると、スーツのスカートが破れるのも気にせずに足を振り上げて上段蹴りを一夏の顔面に叩き込んだ。

その威力は凄まじく、武者として鍛えられた一夏の身体でも吹っ飛ばす程であった。

一夏は笑顔のまま吹っ飛ばされ、そのまま保健室の壁を破壊して突っ込んだ。

その様子を見て千冬はやってしまったと思ったが、女として許せないという気持ちと、何よりも身内が変態になってしまった憤りをぶつけられたので別に良いか、と判断した。

そのまま踵を返し、職員室へと歩いて行く千冬。

歩きながら壊した壁の始末書と破いてしまったスカートをどうするかを考え始める千冬だが、その表情は清々しくすっきりとしていた。

 

 

 

 「な、何だ、貴様!?」

 

先程まで千冬見舞いに来てくれていたので起きていたラウラだったが、突如廊下側の壁を破壊して転がり込んできた一夏に驚いた。

いきなり壁を壊して部屋に入って来れば、誰だって驚くだろう。

一夏はそのままゆっくりと起き上がると、ラウラに笑顔を向ける。

 

「いやはや、騒がしくして申し訳無い。先程廊下で姉上にあってなぁ。お褒めの言葉と大層なお叱りを受けた次第で。御蔭で思いっきり蹴っ飛ばされた保健室に来てしまった」

 

ラウラはそれを聞いて突っ込みたくなった。

一体どんなことをすればそんな惨事になるというのだ、と。

身体が無理をした所為で痛むが、それでもこの衝動は凄まじい。それを必死に飲み込む。

 

「だが、このような入室もたまには良かろう。衝撃的でされる側もする側も面白くて良い物だ」

「いや、される側は最悪だぞ!」

 

笑顔で語る一夏に我慢出来ず突っ込むラウラ。

その精神のおかしさに突っ込まずにはいられない。

 

「おや、そうかのう? これは中々、まだまだ難しいものよ」

 

突っ込まれた一夏は変わらない笑顔でラウラに答える。

とても先程IS業界最強の『ブリュンヒルデ』のマジ切れ蹴りを顔面に食らったとは思えない程のタフさだ。

そして一夏は破壊された壁に目も呉れず、近くにあった椅子に腰掛けた。

 

「その様子ならば身体に問題も無かろう。安心したよ」

 

一夏のその言葉に、ラウラは理解が出来ずにきょとんとしてしまった。

そして一夏が何故来たのかを少ししてから気付いた。

 

「な、何で貴様が見舞いにくるのだ!」

 

慌てて一夏に噛み付くラウラ。

やはりあんなことをした人物を許せる訳が無い。しかし、その顔は妙に赤くなっていた。

そしてラウラは一夏を睨み付けるが、加速する心臓の鼓動が頭に鳴り響いて仕方ない。その鼓動にラウラは感じたことのない感情を感じていた。

ラウラに噛み付かれた一夏はと言うと、特に気にした様子もなく答える。

 

「いやな、どうもそれがしがやり過ぎたようで御主が気絶したのでなぁ。それで見舞いに来たのよ」

「そ、そうなのか……」

 

一応は殺気を向けたというのに、何処吹く風の如く受け流す一夏にラウラは力が抜けてしまった。まるで中国の物語にある、釈迦の掌で暴れる猿の如く、この男の前ではどんなに虚勢を張ってもまったく気にされず、全てを見破られてしまいそうだった。

ラウラはそう思ってしまい、余計に頬が熱くなるのを感じた。

そして何故か………嬉しい……そう思ってしまった。

それを感じてしまい、ラウラは慌てて否定する。そしてそのまま一夏に問いかけた。

 

「なぁ、織斑 一夏。何で私はお前に負けたのだろうな?」

「おや、それを聞くのか?」

「ああ………私はお前が憎かった。教官の大会二連覇という名誉が掛かった試合の日に誘拐され、そのせいで教官が不戦敗した。確かにその御蔭で教官とドイツで出会うことができたが、だからといって貴様を許すことが出来なかった。尊敬する教官の顔に泥を塗った貴様を許せなかったんだ。それが矛盾していることは分かっているがな」

「成る程」

「しかもその落とし前を付けようにも、貴様は行方不明。向け所のない怒りが私の中で渦巻いていった。そして教官が日本に帰り一年経って……貴様が現れた。あの未知の兵器を連れて。それを見て好機だと思った。これで貴様にこの膨れ上がった憎悪を叩き付けられると。しかし、貴様は会った当日から人の胸を揉みしだいてきた。その所為で私の憎悪は滑ってしまい、そして学園で皆と触れ合いながら過ごしていく内にその気持ちは薄れていってしまった。そのかわり、皆の前で辱められた怒りがどんどん湧いてきた『教官に泥を塗った屈辱』から、『自分の受けた屈辱の怒り』になっていた」

 

語るラウラの話を、一夏は笑顔のまま聞いていた。まるで楽しそうに語る孫の様子を見る祖父のように。

 

「それからは貴様に噛み付く日々がすべて変わった。毎回セクハラばかりして、周りを困らせる。そのくせ、皆からは愛され暖かな目を向けられる貴様に怒りが湧いてしかたない。そのくせ、目が離せなくなる。顔を見る度に心臓の鼓動が早まるんだ。きっと怒りからだと思っていたが、今ではそうでも無い気がする」

 

そしてラウラは一夏に赤くなった顔を向ける。

 

「なぁ、織斑 一夏。どうしてお前はそんなに強いんだ? そんなに巫山戯ていて、凄くエッチなのに、何でそんなに強いんだ? そんな奴に負けたことが、何で負けたのか、私には分からないんだ」

 

その疑問に一夏は微笑みながら答えた。

 

「ふむ、何故強いのかとな。 そんなもの、其れがしには分からんよ。少なくても、其れがしは自分が強いなどと思ったことは一度も無い」

「そ、そうなのか」

「うむ。其れがしより強い武士などごまんといるし、まずそれを言うのなら其れがしのお師匠様の方が余程お強い。真の婆娑羅の道を歩む者、天真爛漫にして豪放、自分勝手に気ままに楽しみ、そのためならば人の道理など肥だめに捨てている御人よ。この御人に比べれば、其れがしなどまだまだひよっこ。真に強いと言うのなら、それはきっとお師匠様のような御人を指すのだろうな」

 

それを聞いてラウラが思った事は、この目の前にいる男以上の危険人物であった。

きっと平然と犯罪をするようなぶっ飛んだ人物に違いないと、内心で恐怖した。

それを知らずか、一夏は自分の師匠『遊佐童心』についてあれこれ語る。

そこにあるのは純粋な憧れである。その人物は周りから『生臭鬼畜変態坊主』と呼ばれているが、そんなことを一夏は気にしない。

 

「お師匠様はいつも仰られておった。真の婆娑羅を極めし者は得てして悪である。その非道、それは人の道に反した行い。故に許されてはならないと。その点で言えば、御主は正しかった。だが……」

 

そこで一端言葉を切ると、一夏はラウラの顔を見つめる。

見つめられたラウラはそれを意識してしまい、顔が熱くなっていくことを感じた。

 

「それは本当に御主の願いだったのかな?」

「ど、どういうことだ?」

「御主は戦っている時、こう申したな。これは全ての女性の総意であり、私の怒りだ、と」

「あ、ああ」

「だから御主は負けたのよ」

 

その言葉を聞いて理解が追いつかないラウラ。

何故それで負けるのか、全く分からないからだ。

 

「お師匠様は仰っていた。もし御自分を罰しようと現れる者が来たのなら、その者は純然なる正義、英雄だと。それらはただ純粋な思いしか持たぬ。世界の意思に従い、自己を無くして全てを討つ者。またはただそれが許せないと純粋な怒りのみで討とうとする者。これらだけが御自分を討つ者だと。それは其れがしも同意だ。其れがしの生き方は許させる物ではない。ならば、それを討つはその非道を許せないという怒りのみで我等を討つ者。しかし、御主はそのどちらでもなかった。自分の怒りに周りの総意を重ねた。それは……ただの偽りよ。そんな気持ちの者には負けぬよ」

 

ラウラはそう語られても、イマイチ理解出来なかった。

少しばかり言い回しが古いこともあってか、分かり辛いのだ。

 

「なぁに、そんな難しいことではない。単純に、自分の心に嘘をついている者は勝てないと言うだけの話よ」

「そ、そんなことない!」

 

その言葉にラウラは声を大きく出してしまう。

少なくとも、ラウラは自分の感情に素直にしたがっていたはずだと。

そんなラウラに一夏は笑いかける。

 

「周りの総意など、聞いた分けでもないのに分かるわけ無かろうが。それにな……御主は確かに其れがしに怒りを抱いていたが、同時に喜ぎも抱いていたのだからのう」

「何だと! そんなことあるわけっ」

「御主は其れがしに触られて、女として喜びを知った。だからだ」

 

そう言われた途端、身体に変な熱を感じてしまったラウラは身じろぎをする。

そんなわけないと否定していながら、ラウラはどこかその言葉に納得してしまう。

そう、今まで異性から女扱いされなかったラウラは、ここに来て初めて異性から女の子として扱われたことに、女としての本能が喜んだのだ。

そしてそれを否定しつつも受け入れつつあるラウラに一夏は止めを刺した。

さわやかな笑顔を浮かべ、ラウラに告げる。

 

「御主は最初みた時から、可愛らしいおなごであった。その胸を触ったときの反応など、とても女らしくて、其れがしの男を充分に刺激したぞ。御主は可愛い女の子だ」

 

そう言われ、ラウラは今まで一夏に抱いていた怒りが変に霧散したのを感じた。

そして同時に理解する。

この男には、自分の気持ちに常に素直なこの御人には適わないと。

そして同時に惹かれてしまった。女としての喜びを教えてくれた一夏に、ラウラは恋してしまったのだ。

傍から見たら、よく言う『寝取られ』に近いが、そんなことをラウラが知るよしもない。

 そうして一夏はラウラと話し終え、保健室を後にした。

その後ろ姿をラウラはずっと見入っていた。

 

 ちなみに……この後一夏はシャルロットと混浴することになり(狙って)、風呂で思う様シャルロットの胸を揉みまくった。その所為でシャルロットは何度も気絶しかけてのぼせ上がり、風呂上がりの姿は真耶が見てもドキドキするくらい艶っぽかったとか。

胸を揉んでいた際、一夏は、

 

「やはり真面目な話は肩がこっていかんなぁ~」

 

と言っていたとか。

 

 


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