装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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これでラウラ戦は終わります。


もしも一夏が別の劔冑を使ったら。 その10

 濃緑の武者に向かって新たな形を取ったIS『暮桜/』を纏ったラウラは裂帛の気迫を持って斬り掛かった。

 

「やぁああああああああああああああああああああああっっ!!」

 

咆吼を上げながらの上段から一閃に対し、濃緑の武者……同田貫を纏った一夏は突きを持って迎え撃つ。

鋼同士のぶつかり合う激しい音がアリーナに響き渡り、火花を散らせた。

 

「ほう、見てくれだけではないようだのう。膂力なども上がっておる。感心感心」

「うるさいっ! 黙って斬られろ!!」

 

ラウラは未だに余裕のある一夏に噛み付くように吠え、突きを捌くとさらに果敢に攻めていく。

 

「やぁっ! たぁっ! えぇいっ!」

 

上段、下段、斜めからの一閃。

剣術の動きをそのままに表したその攻撃は実に鋭い。

本来のラウラは刀など使ったことはない。故に剣術など、当然やったことがない。

だからこそ、こんな動きが出来ることは可笑しいのだ。

だが、それを可能としているのが『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭載されていた『ヴァルキリー・トレース・システム』だ。

このシステムは過去にISの世界大会の優勝者……つまり最強のIS操縦者の動きなどを再現するというもの。そしてISで最強の称号『ブリュンヒルデ』を持つ人物と言えば、実質一人しかいない……第一回モンドグロッソ、総合部門優勝者『織斑 千冬』その人である。

そして千冬の戦術は近接ブレード一本での近接戦。そのために千冬は剣術を学んでいたと言われている。

つまり、今ラウラは世界最強のIS操縦者の剣術を再現しているのだ。

その剣術はまさに苛烈。烈火の如き勢いで一夏に向かって振るわれていく。

常人なら一瞬で殺されているであろうその剣撃を、一夏は愉快そうに笑いながら捌いていた。

 

「ふっはっはっはっは!! さっきから打って変わってのこの攻撃。実に愉快で楽しいのう」

「ちっ、抜かせ、このドスケベめ!」

 

その最強の剣術を持ってしてもその余裕を崩せないことにラウラは苛立つ。

だが、先程とは違って確かに攻めることが出来ていた。

そのことに一夏は内心で感心する。

 

(この太刀筋にこの動き。これは一人前の武芸者の動きだのう。そしてこの見覚えのある攻撃は……成る程、千冬姉の物かのう)

 

その攻撃は幼い頃に共に学んだ篠ノ之剣術であることを、一夏は捌きながら思い出していた。千冬や箒の攻撃はこの流派が基本となっている。

もし一夏が劔冑を手に入れておらず、そのまま剣道を続けていたのなら、きっと一夏も使っていたであろう剣術だ。

だが、今の一夏が使っているのは、婆娑羅を極めし者『遊佐童心』と同じ『尾張貫流槍術』である。

その事に世の中何があるのかわからないものだと、一夏は口元をつり上げながら笑っていた。

 

「ほれ、どうした? その程度の千冬姉の猿真似で勝てる程、それがしは甘くないぞ」

 

その挑発にラウラは顔を真っ赤にしてムキになる。

 

「うるさいっ! 喩え教官の真似だとしても、それでもこの思いは本物だ! 貴様を許すなと言う、全世界の女性の思いを私は成し遂げて見せる!」

「ほう、それは実に頼もしいことよのう」

 

そんなやり取りをしつつも、その剣戟は苛烈を極める。

先程のように動き廻りはしないが、それでも観客の目を引きつけていく。

その場から余り動かず、じっくりと腰を据える。

だが、そこから放たれる斬撃はまさに神速。周りの観客はその太刀筋の殆どを見ることが出来ない。だが、それでも高速で腕を動かすラウラの表情に息を呑んだ。

ラウラが気迫の籠もった叫びを上げると同時に、刀を振るう前方……一夏の槍の穂先の射程から激しい火花と金属同士がぶつかり合う甲高い轟音が鳴り響いた。

その轟音がずっと鳴り響いている。二人が向き合てからずっとだ。

その光景に観客はただ見入るのみであった。

その戦闘は代表候補生の戦いではなかった。すでに国家代表にも引けを取らない戦闘がその試合では行われている。

 

「貴様、いい加減に斬られろ!」

「それは御免被るのう。痛いのは御免だ」

 

皆がそんな二人の試合に見入っている間、二人はそんな事とは無縁な事を話ながら戦い続けていた。

 

「何故貴様はそんなにエッチなんだ! それで恥ずかしくないのか!」

 

ラウラは怒りの顔を赤く染めつつ、絶えず雪片/を振るい続ける。

対して一夏はその苛烈な攻めが一切当たらぬよう、槍の射程を活かして捌いていた。

その鮮烈とも言える槍捌きとは裏腹に、その声は余裕に満ちあふれている。

 

「男たる者、エロくなくてどうする!! 出なければ不能野郎と罵られるものよ! 寧ろエロいのはまさに男の誉れ! 誇りこそすれど、恥じ入ることなど何もないわ!」

 

一夏は寧ろ堂々とそう言い張ると、槍に管を通し捻り込みを加え突きを放った。

その威力に受け止めたラウラは顔を歪める。

 

「ぐぅっ! やはり重い!」

「はっはっは。どうしたどうした。その程度ではまだ足らんぞ」

 

そのまま猛烈な突きを繰り出す一夏に、ラウラは防戦に入ってしまう。

しかし、負けじと攻めていく。

 

「それが免罪符になると思うなよ! 貴様がいくらエッチだろうが、それで人に害成して良いわけが無い。貴様の所為で私はっ!」

「見目麗しい美女達がおるのだ。寧ろ手を出さぬは彼女達に失礼というもの。そしてそれら全てを楽しむはまさに婆娑羅に通ずるものよ。御主も御蔭で『女の悦び』の一端に触れたのではないのかのう」

「っ………………!?」

 

そう言われラウラは顔が一気に真っ赤になった。

そして入ったばかりのあの出来事を思いだし、身体の中に妙な熱を感じた。

それを認めたくないラウラは、叫ぶように一夏に斬り掛かる。

 

「う、うるさい!!」

「おやおや、何を思いだしていたのやら」

「っ~~~~~~~~~!」

 

一夏はそんな反応をして斬り掛かってくるラウラを弄ることが面白いのか、さらに話しかける。変わらずその腕は重い突きを放っていた。

 

「では、逆に問おうかのう」

「何をだ!」

「何で助平ではいけぬのかな」

 

その問いにラウラは怒りを込めて叫ぶ。

 

「そんなこと、当たり前だ! 女性にそんな欲望を向けるな!」

 

その叫びを聞いて一夏は真面目な感じで答えた。

 

「つまりそれは相手を異性として認識しては行けぬということか?」

「何?」

「男ならば女と認識したら大なり小なり意識するもの。それをするなとは、つまり御主は人になるなと言っているようなものだぞ」

 

そう言われたラウラは少し戸惑う。

 

「そ、そんなことは…」

「良いか? 年頃の男女が性欲を顕わにするは当たり前のこと。寧ろしないのは正常とは言えぬ。それをするなとは……御主は鬼畜かな?」

 

一夏の言葉にラウラは少し揺れてしまう。

ゆっくりとしていて、それでいて落ち着いている一夏の声は聞いていると、それが何だか正しいように聞こえてくるのだ。そしてそれを否定しているラウラは逆に自分が間違っているのではないかと思えてしまう。

だが、それでもとラウラは戦意を震い立たせる。

 

「だ、だが、それでも程度によるはずだ! せ、世間的にも、エッチなのはいけないと言う!」

 

それを聞いた一夏は鼻でふんっ、と笑った。

 

「世間体に捕らわれては婆娑羅の道など極められぬ! 婆娑羅の道を極めるのなら、人の道なぞ糞食らえというものだ!」

「なっ!?」

 

その物言いにラウラは言葉を失った。

真逆ここまで酷いとは思わなかったのだ。

そんなラウラを見て一夏は逆に問う。

 

「では……御主はそれがしが助平だから、討とうというのか?」

「そ、そうだ!」

「それは御主の総意か?」

「そうだ! これはエッチな視線を向けられる女性全ての総意だ! 私は女性の総意として、貴様をっ!」

 

そう答えるラウラに一夏は今までで一番大きな声で笑った。

 

「がっはっはっは!! 笑止ッ!!」

「くっ!」

 

そして思いっきり突きを放つと、ラウラを突き放した。

ラウラはダメージを負いつつも後ろに下がり、構え直した。

そんなラウラに一夏は言い放つ。

 

「何だ? 御主がただ助平が許せぬという一念だけであったのなら実に愉快であったのに、何だ、その言い分は? そのような世迷い言の建前でそれがしを討とうなど……笑わせてくれるな!!」

 

それを聞いたラウラは一瞬だけ怯んでしまう。

それは本能が一夏に恐怖したからだが、それを認める訳にはいかなかった。

そのままラウラは内心でレーゲンに話しかける。

 

(このままじゃ負けてしまう。だから……限界を超えるぞ)

『でも、それでは君の身体が。ただでさえ悲鳴を上げているというのに…』

 

既にラウラの身体は限界に近づいていた。

千冬の動きについて行けていないからである。

それを心配しての声だったが、それでもラウラは言う。

 

(それでもだ! ここで負けたら……あのエッチな奴を誰がとめると言うんだ)

『それもそうだけど……わかった。全力でいこう!』

(ああ)

 

そしてラウラの身体を無視した力が発揮される。

身体から上がる悲鳴を聞きながら、ラウラは目の前にいる濃緑の武者を睨み付けた。

 

「いくぞ、変態!!」

 

そう叫ぶと共に、ラウラの身体は高速で一気に距離を詰めた。

瞬間加速による一撃離脱。それが千冬の最も得意とする攻撃である。

ISであれば適う者など誰もいない。必殺の一撃。

その刃が吸い込まれるように一夏の胴体へと向かって行く。

 

「取ったっ!」

 

ラウラは己の勝利を確信してそう叫ぶ。

誰しもこの光景を見たらそう思っただろう。

だが………

 

その一撃は一夏の槍の柄で受け止められてしまった。

 

「ふむ。悪くない太刀筋だが……重さが足りぬのう。驚かされはしたがなぁ」

 

一夏はラウラにそう答えた。

それを聞いたラウラは驚愕に顔を染め、それを見て一夏はニヤリと笑う。

 

「ではお返しだ。カーマス・トーラ」

 

そう唱えると共に片手を口に添えると、

 

口から火を吐き出した。

 

さながら火炎放射のような炎を間近で受けたラウラはその事実に更に驚愕してしまう。

 

「なっ!? ほ、炎だと!」

「うっはっはっは! この同田貫の陰義は『炎熱操作』でのう。その驚く顔が見たかったのだ」

 

愉快に笑う一夏の笑い声を聞いていたラウラの心情はそれどころではなかった。

 

(なんだ、この炎!? 消えない上に高熱過ぎてシールドが減り続けていくだと!)

 

そのことにラウラは焦りに焦り、身体を動かすが火は消えない。

やがてISから火花を散らし始めた。

その様子をある程度見ていた一夏はゆっくりとラウラへと近づく。

 

「では……その大きくなった胸を味あわせてもらうとするかのう」

 

そう言って槍を横に一振りすると、途端に凄い風圧がラウラを襲った。

そして火が一気に消える。

そのことに驚いていたラウラだが、次の瞬間には一夏の手の中にいた。

 

「では……いただきます」

 

そして……

 

一夏の手がラウラの大きくなった胸ぬ触れ、揉み始めた。

その感触にラウラは一気に快感が駆け上り、そしてアリーナに響き渡る声を上げてしまった。

 

「『ら、らめぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!』」

 

ラウラの中で聞こえるレーゲンの嬌声と共に、ラウラは意識を失った。

そのままISが解除されると、試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

『勝者、織斑・デュノアペア』

 

それに歓声が辺りを包む中、一夏はと言うと気絶しているラウラの身体を思うさまいじくり回していた。

それを見ていたシャルロットは思う。

 

(はぁ……こうしてまた一人、毒牙にかかるんだなぁ)

 

こうして、一夏達の試合は終わり、その後も一夏達の活躍によってこの大会は一夏達の優賞で幕を閉じた。

尚、その後の試合も嬌声が絶えず、結果さらに一夏は肉食で周りに知られるようになった。


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