オリジナルISもでますよ。
会場が盛り上がりを見せている中、一夏達は戦っていた。
いや、これを戦いと言って良いのだろうか?
片方は良い。
箒が必死に接近戦を果敢に仕掛けていき、シャルロットはそれをいなしながら反撃を繰り出していく。近接ブレード『葵』とラファールの近接ナイフ『ブレッド・スライサー』が火花を散らし打ち合い、反撃のアサルトライフル『ガルム』が火を噴き、それを打鉄のシールドがそれを弾く。
その試合は誰が見ても立派な試合であった。
だが、もう一方はまったくもってそうではない。
ドイツの第三世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏ったラウラは、顔を真っ赤にして殺気とも怒気ともつかない感情を顕わにして対戦相手へと攻撃を仕掛けていく。
その攻撃はまさに嵐の暴風の如く、対戦相手へと襲い掛かかる。
だが、その攻撃はまったくといって良い程に通っていかない。
巨大なレールカノンの砲撃や遠距離用のワイヤーブレードはまるで道端の小石を避けるかのように避けられ、近接のプラズマ手刀ではいくら斬り付けられても、その堅固な装甲には傷付かない。
そして何よりも………
「ほぉれ、ほれ。もっとこんのか? それではまた……その慎ましい胸を揉んでしまうぞ」
攻撃されている相手……古から伝えられている兵器、劔冑『同田貫』を纏った一夏はその攻撃を余裕を見せつけて全て防ぎ避けてしまうのだから。
それでこんなセクハラを相手に行ってからかっているこの戦いを戦いと言って良いのかはとても疑問である。
こんな相手と一対一で戦っているラウラの精神は色々な意味で限界にに近づいていた。
まったく有効な攻撃をあたえられないという焦り。自身のプライドが認めないと言っている者にまったく勝てる気がしないという心。何よりも、そのスケベ丸出しのセクハラにもう我慢が出来なくなっていた。
IS学園に来る前はそんなことを意識することもなかったのだが、ラウラは学園に来て色々と学び、少女として年相応になった。
当然性知識や羞恥心もより発展していき、結果如何に一夏がスケベなのを思い知らされたのだ。
そしてそんな相手に戦っているというのに相手にされずにセクハラをされる。
軍人としても、女としても我慢の限界だった。
正直、すぐにでも目の前から消したい衝動にラウラは駆られながら一夏へと叫ぶ。
「うぁあああああああああ! 消えろ消えろ消えろ消えろっ!!」
もう恥も外見も無しに周りを気にせずラウラは砲撃を放つ。
先程胸を揉まれた彼女はもう恥ずかしくて仕方ない。
放たれた砲撃がアリーナの地面を砕き土煙を上げる中、一夏は愉快そうに笑い声を上げる。
「あっはっはっは! その羞恥に染まった顔もまた可愛いのう」
そのまま一夏は放たれた砲撃を余裕で避けていくが、その身体は急に動かなくなった。
「ぬ? 身体が動かぬな。これは……」
そのことに不思議を感じながら一夏は身体を見ると、その身体にはワイヤーブレードが巻き付いていた。
「こ、これで捕まえたぞ!」
ラウラは一夏に向かって凶悪な笑みを向けながらそう叫ぶ。
さっきまでの滅茶苦茶な砲撃、それはラウラが半分意識して行ったものだ。
確かに激情しての攻撃であったが、ちゃんと本来の狙い………砂煙を起こして視界を悪くし、その隙を突いてワイヤーブレードで捕獲するという作戦を成功させた。
ラウラの考えではあの固い装甲でも此方のレールカノンが当たればダメージをあたえられる算段である。
だが、普通に放っても余裕で避けられる。
AICの方が捕縛するには向いているとは言え、槍の所為で射程外だ。
故に避けられないようにするには、遠距離から捕縛して放つしかない。
ラウラはそのまま一夏へと一気に接近すると、レールカノンの砲身を一夏の首に当たる部分……たぶん装甲が弱い部分へと叩きつけた。
「これで終わりだ、死ねぇえええええええええええええええええええええええええ!!」
ラウラは必殺の殺意を持って叫ぶと共に、レールカノンを零距離で放った。
その瞬間、甲高い金属同士の激突音と爆音が鳴り響き、捕縛されていた一夏はアリーナの壁まで吹っ飛ばされた。
そのまま壁に激突する一夏を見て観客席が更に沸いた。
「はぁ、はぁ、これで………どうだ……」
ラウラは今までの緊張から息を切らせながらそう呟く。
苦しそうだが、その顔は確かに何かをやり遂げた顔をしていた。
そしてそのまま相方である箒の方を見ると、丁度シャルロットによってシールドエネルギーを零にされたらしく、そのまま打鉄が機能を停止させてその場にしゃがみ込んでいた。
そしてラウラとシャルロットの目が互いに合った。
「これで後はお前だけだ」
「あははは……そうだった良かったんだろうけどね」
好戦的な目で睨み付けるラウラにシャルロットは苦笑を浮かべる。
その笑みは何だか可哀想な物を見る笑みであった。
何故そんな笑みを向けられているのか分からないラウラは首を傾げる。
そしてその次の瞬間には、何故そんな視線を向けられたのかを理解した。
「うわぁっはっはっ!! いやぁ、危うく昇天する所だったわい!!」
ラウラの背後からびっくりしたことに楽しそうに言う声が聞こえてきた。
それにラウラは見たくないと思いつつも振り返る。
するとそこには、相も変わらない濃緑の武者が立っていた。
それを見てラウラ驚愕に震えてしまう。
「な、何故まだ動ける! 先程その首を吹っ飛ばしたはずなのに!」
「いや、何。こうしたまでのことよ」
驚愕して顔を凍り付かせているラウラに一夏は手品の種明かしをするかのように…………
その首を身体へと引っ込めた。
「はぁ?」
いきなり首がなくなった相手を見て、ラウラは今までで一番間の抜けた声を上げてしまった。
それはラウラに限らず、試合を見ていた観客全ても同じであった。
そして、その事実に観客席から驚愕の声が上がるのにそんな時間は掛からなかった。
「「「「「「「「「えぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」」」」」」」」
「なっ!? き、貴様……それは一体…」
あまりの事態に恐怖を感じ、震える指先でラウラは一夏を指す。
一夏はそれを見てか、また身体から首を出した。
「この同田貫は防御が得意でのぅ。こうして手足を胴体の中にしまうことが出来るのだよ。首や手足の関節は甲鉄が弱くて弱点だからのぅ」
一夏はタネを明かすと、再び槍ろ構え、手に持っていた管を柄に通す。
そのまま驚愕に固まっているラウラへと笑いながら話しかけた。
「どうやら向こうも終わっている様子。それがしとしてはもう少し楽しみたかったが、そうもいくまい。よってこれで終わらせようと思う」
その言葉を聞いてラウラは正気に戻り、一夏を睨み付けた。
「それは此方の台詞だ! これ以上セクハラをされるなど御免だ!」
一夏はその言葉を言い終えたと同時に合当理を吹かせながらラウラへと突撃する。
ラウラはそれを迎え撃たんと、レールカノンを一夏へと向けて放った。
「もうその攻撃には飽きたわッ!!」
そう叫ぶと共に一夏が槍を突き出し、砲弾へと激突させた。
その瞬間、激突音が鳴り響き砲弾が明後日の方向へと逸れていった。
「何っ!?」
その事実にラウラは驚く。
一体何処の世界に高速で飛んでくる砲弾を槍で突き落とす奴がいようか。
実際にそんな有り得ないことを見せつけられたラウラは思考が停止してしまった。
そのまま更に一夏は突っ込んで行く。
「これで決める! そして御主の〇〇をもらい受けようぞ!」
「ひっ!?」
最早十八才未満禁止のワードを口にしながら向かってくる一夏に恐怖するラウラ。
顔が見えないが、きっとその顔はとても下品でイヤらしい笑みを浮かべているに違いない。それが分かるラウラは、もうこの場を逃げ出したい気持ちで一杯になる。
それが一夏への反応を遅らせた。
「ぬりゃあっ!!」
一夏はそのまま槍で何度も突きを放った。
その途端、槍の螻首がしなり槍の穂先が無軌道にラウラへ襲い掛かった。
それを防ごうとプラズマ手刀を展開して振るった瞬間、その突きの威力に振るった腕が弾かれた。
そしてそのまま吸い込まれるようにラウラの身体に穂先が激突した。
その途端にシールドが一気に削られ、衝撃がラウラへと襲い掛かった。
「がぁっ! ぐぅっぅううう!!」
ISの装甲が砕け散り、見る間にボロボロになっていく。
そして最後の一突きでラウラはアリーナの壁まで吹っ飛ばされ壁に叩き付けられた。
それで気絶したと判断したのか、一夏はゆっくりとラウラに向かって歩いて行く。
顔が見えないが、きっとその顔は笑顔だった。
「これで思う存分、御主を〇〇出来るのう。皆の前でやるのも一興! これも保健体育の実習よ」
そのままゆっくりと向かってくる一夏に、ラウラは消え入りそうな意識で思う。
(いやだ……負けたくない……あんな奴に……・そんな目に遭わされるなんて絶対に御免だ!)
そう思ったとき、どこからか声が聞こえてきた。
聞いたことのない、誰かの声。
だが、力強い声。
『汝、願うか。より強い力を…欲するか、全てをねじ伏せる暴力を……万物を破壊するその力を!』
その声にラウラは………呼応しなかった。
(いや、そんな力はいらない!!)
『……え?』
その声はそれまであった自信に満ちた声から一転して間の抜けた声になった。
『いや、そこは応じるべきだろう。このままじゃアイツには勝てないよ。もし負けたら、君の望みが遠のいちゃうぞ。それでもいいの?』
(いや、それはイヤだ。だけど、私が今必要なのは破壊の力じゃない!)
ラウラははっきりとした口調でそう答えると、その声はもはや弱々しい感じに聞いてきた。
『それじゃ何を望むの? このままいらないとか言われたら出番がなくなっちゃうんだけど、私』
(そうじゃない! 力は必要だが、それは……あのエッチな奴を倒すのに必要な力だ! だからこそ、あの女の敵を倒すために力を貸せ! 大義と正義は私にある! それに貴様はレーゲンだろう! このままいったら、クラリッサ曰く、一夏×レーゲン・私で『らめぇ』な感じになってしまう。それだけは絶対に嫌だろ!!)
『そ、それは確かに嫌だ! はぁ……ま、まぁ、本来と違うけどいいか。じゃぁ行こうか』
(ああ!)
そしてラウラの意識が完全に覚醒すると共に紫電が走り、シュヴァルツェア・レーゲンが泥のように溶け出した。
そして泥はラウラを包み込むと、形を変えて人型へとなっていく。
さっきまでシュヴァルツェア・レーゲンを纏っていたラウラは今は変わり、まるで日本製のISのような形状の何かを纏っていた。
その手には近接ブレードのような物が握られており、ラウラの赤と金の目が輝く。
「これで貴様を倒す! この『暮桜/(くれざくらだっしゅ)』で、女の敵を討ち滅ぼしてやる!」
ラウラはそう一夏に向かって叫ぶと、持っていたブレード『雪片/』を向ける。
それを見た一夏はまた愉快そうに笑い、ラウラに指を差した。
「ほう、変身したと思ったら胸も大きくなって随分と強気になったのう。しからば、その胸の感触も楽しませてもらおうか! ニセ乳を揉むのもまた一興やもしれぬ」
そして互いに構え合う。
こうして、この試合はさらに激しくなっていった。