装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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やっぱりぶれない一夏です。


もしも一夏が別の劔冑を使ったら。 その8

 対戦相手の発表も終わり、早速始まったタッグマッチトーナメント。

数々の試合が行われていき、ついには一夏達の試合の番となった。

 

「やっと僕達の番だね、一夏」

 

シャルロットが若干緊張した眼差しを一夏に向けながら話しかける。

彼女自身、模擬戦はいくらでもやってきたが、こうして大きな試合に出るのは初めてである。

その上、一夏からの提案で連携無しで戦う事になっているので、緊張するなというのは無茶な話だ。

対して一夏はというと………いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。

この男、緊張という言葉をまるで知らない。いや、そんな物などちり紙と一緒にゴミ箱に放り捨ててしまったかのように、気にもしていないのだ。

 

「別に慌てるようなこともなかろう? いずれ来ることにいちいち気にしておっては疲れるだけぞ」

「あっははははは。一夏は随分と肝が据わってるっていうか、物怖じしないよね」

「武者足る者、いついかなる時も戦う時は全力。そこに物怖じするようなことなぞない。それにそれがしは婆娑羅者故な。どんなことでも楽しみたいのだよ」

 

一夏はそう答えるとカラカラと笑う。

シャルルはそれを頼もしく思いながら同時に不安にも感じる。

 

(確かに一夏は強いから頼もしいけど………何だか嫌な予感がするよ~! 何もなければ良いんだけど……一夏が何もしなければ……)

 

そんな、今までの経験から絶対に騒ぎを起こすであろう一夏への不安でシャルルの胸が一杯になっていた。

そして二人はアリーナへと向かっていった。

 

 

 

 一夏達がアリーナに着くと、既にラウラと箒の二人はISを展開して待っていた。

 

「随分と遅かったな!」

「戦うのに怯えているのかと思ったぞ」

 

二人は一夏に向かって挑発をするが、一夏はそれをニコニコと笑いながら受け流す。

 

「すまぬのう。ちぃと腰の調子が悪うてな。どうやら昨日『アレ』を頑張りすぎたらしい」

 

「「っ!?」」

 

一夏の答えた事に何やら想像してしまい、二人の顔が真っ赤に染まる。

そして羞恥のあまり一夏に向かって二人とも叫んだ。

 

「このっ……助平がぁ!!」

「やはり生かしておくわけにはいかない! この場で殺してやる!!」

「あっはっはっは! 一体何を想像したのか、是非とも聞かせてもらいたいものだのう」

 

三人のやり取りに内心ハラハラしてしまうのは、シャルロットの根が善人だからだろう。

実際に一夏と同室である彼女は、一夏が昨晩どうしていたか知っている。

なので、そんな嘘にたいして反応する事はないが、それで挑発されている二人に対して少し可哀想な気にもなってしまう。いくら戦術的に挑発しようと、年頃の娘にはどうかと思う。

いや、一夏に限っては挑発でも何でもないだろう。ただのからかいである。

それがわかるからこそ、シャルロットはいたたまれない。

もしこれが本当の話ならシャルロットだって顔を真っ赤にしていたに違いない。

一夏は一頻りからかうと、懐から扇子を取り出すとそれを開き、そして自分の劔冑を呼び出す。

 

「来い、同田貫!」

 

一夏の呼びかけに応じて、カタパルトの射出口から炎を噴き出しながら高速回転する円盤が飛び出し一夏の前へと降り立った。

それは鋼鉄の肌を持つ亀である。

一夏は亀が目の前に来ると、扇子を使って舞を舞いながら誓約の口上を謳う。

 

『天に冥府 地に魔道 踏まえし道は修羅の道』

 

そして亀がばらけると共に、一夏の身体へと装着されていく。

観客が見ている中、槍を構え背中に巨大な甲羅を持った濃緑の武者がその姿を現した。

 

「ふむ。では……参ろうか」

「その余裕、へし折ってやる!」

「エッチな男なぞに負けるかっ!」

 

睨みつけるラウラと箒が戦闘態勢に移ると、一夏も槍を構えた。

そしてそれにならいシャルロットも戦えるよう意気込む。

互いに張り詰めていく空気の中、ついに試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

「いくぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「喰らって砕けろっ!!」

 

箒が纏った打鉄の近接ブレードを鞘から引き抜いて斬り掛かり、ラウラがそれを援護するように大型レールカノンを発砲する。

対する一夏はその鈍重そうな見た目からは考え付かないほどの軽快さで砲撃を避け、斬り掛かってきた箒を槍を使って迎え打ち、後方へ吹っ飛ばした。

 

「なっ、何っ!? 何て重い一撃だ!」

「まだまだ甘いなぁ、箒。腰が入っとらんわ!」

 

そのまま一夏は更に槍を突き出す。

その一突き一突きが必殺の威力を持って箒に襲い掛かり、箒はこれを何とか防いでいく。

だが、その威力にIS越しだというのに手が痺れてきてしまう。

 

「箒、一端下がれ! 箒から離れろ、変態!!」

 

ラウラは箒にそう叫ぶと、一夏から箒を離すためレールカノンを撃ちつつワイヤーブレードを射出していく。

 

「おっと、危ないのう」

 

その砲撃に一夏はまたひょいと避け、ブレードも同様に避けていく。

 

「何でそんな簡単に避けるっ!!」

 

ラウラは一夏のあまりの非常識さに叫んでしまう。

通常、砲撃などされれば回避は難しく、ISであるのならスラスターを噴かして急加速して回避する必要がある。

それを目の前の武者はまるで道端に落ちている汚物に気付いて避けるかのように気楽に行う。決して有り得ないことである。

そんな人外じみたことをやってのける一夏はと言うと、装甲の中で笑みを浮かべていた。

その余裕が感じられてシャルロットは苦笑してしまう。

 

(僕、いる意味ないなぁ~)

 

そんな風に思っていたら、自分の方に向かってきたワイヤーブレードに気づき少し慌てつつも避けた。

 

「ぬぅうううううううう! 負けるかぁあああああああああああああああ!!」

 

一端離れた箒が果敢にまた一夏へと斬り掛かっていく。

だが、槍の所為で間合いを詰められずに防戦へ回されてしまう。

それはラウラも同じであり、砲撃やワイヤーブレードがまったく当たらない。

全て一夏に余裕で避けられてしまうので全く戦いになっていない。

ほぼ二対一を演じている一夏はというと、寧ろ余裕過ぎて二人をからかっていた。

 

「ふむ。箒はまた胸が大きくなったのう。打鉄で強調され揺れる巨乳というのは、やはり見応えがあって実に良い。だが、ボーデヴィッヒのささやかな胸や小ぶりながら撫で心地のよさそうな尻もまた良いなぁ。おや、胸の先が少し出てきたのではないか? ん?」

 

それを聞いた二人は羞恥で真っ赤になり身体を隠すように両手で抱きしめた。

 

「み、見るな、バカ!」

「何処を見ている、貴様!」

「うっわっはっはっは! その乙女の恥じらいも実にそそるのう」

 

二人の反応に笑い声を上げる一夏。

そんな一夏を見てシャルロットは頭を押さえつつも一夏に言う。

 

「一夏、あんまり女の子にそういうことを言っちゃ駄目だよ。可哀想だよ」

 

若干批難を込めた視線をシャルロットは一夏に向けるが、一夏は特に気にした様子もなく答える。

 

「そういうな。男子たるもの、やはりおなごのそういう部分は気になってしかたないもの故。御主もそう思うだろう。なぁ、シャルル」

 

それを聞いてシャルロットはイジワルだと改めて思った。

今はシャルル・デュノアとして出ているんだから男として振る舞わなければならない。

そこでそう聞かれたら、そう頷かなければ可笑しいと疑われてしまうのだ。

女として答えたくないが、そうせねばならないことにシャルロットは苦悩する。

きっとそんな様子を見て一夏は楽しんでいるのだろうと分かり、シャルロットは一夏をジト目で睨む。

 

「一夏、イジワル言わないでよ」

「すまんすまん。御主の困り顔が見たくなったなぁ」

 

一夏は苦笑しながら謝ると、改めてシャルロットへと頼む。

 

「箒の相手をしてくれぬか? 別にこのまま二人とも叩いても面白そうだが、それだと御主が暇で仕方なかろう。故に箒は任せた。それがしはあのささやかながら繊細な胸を楽しませてもらう」

「もう、一夏! あまりイヤらしい言い方しないでよ!」

 

そう言いながらもシャルロットは箒の方へ飛び相対する。

 

「ぬぅ、貴様はデュノア。そこをどけ!」

「ごめん、一夏はあっちの相手をするって言うから僕はここで君を倒させてもらうよ。あ、勿論変な意味じゃないからね」

 

そして戦い出す二人を尻目に、一夏はラウラと戦う。

 

「ぬりゃ、一手馳走!」

「ぐぅうううう!」

 

一夏から突き出された槍を片手で防ぐが、それだけで装甲が割れてシールドが一気に減っていく。

その事に驚愕しつつも、ラウラは一夏へ砲撃を行う。

 

「くっそぉおおおおおおおおおおお! 当たれば貴様など!!」

「当たらなければどうと言うことはない、とは良く言った物だのう」

 

しかし、避けられる。

それに業を煮やしたラウラは両手のプラズマ手刀を展開して一気に一夏の懐へ飛び込んだ。

 

「これで切り刻まれろ!!」

 

そのまま手刀を何回も振るう。

通常のISであれば大ダメージ必須の連撃。

だが、それを受けた濃緑の武者は何もなかったかのように動く。

 

「なっ!?」

「何、この同田貫は防御主体の劔冑。この程度でやられるほど柔ではない」

 

そのまま驚愕しているラウラの胸に一夏は手を触れると軽く揉んだ。

甲鉄に包まれた指がラウラの小さい胸に食い込む。

 

「んぁっ!?」

 

その感触に甘い声を漏らしてしまうラウラ。

だが、次の瞬間には羞恥で顔を染め、涙目ながらに叫んだ。

 

「きっさっまぁああああああああああああああああ!!」

「うははははっ! やはり良い乳であった!」

 

そう笑い一夏を見て……

遂にラウラの中で何かがキレたのを、ラウラは感じた。

 

 

 

 

 


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