装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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もうある意味救いようがないくらい駄目な人ですよ。
そしてここの一夏の師匠は………


もしも一夏が別の劔冑を使ったら。 その5

「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

現在、夜の帳が降りている室内で美しい金髪をした少女がベットで布団にくるまって部屋にいる男……織斑 一夏を顔を真っ赤にして恨みがましく睨んでいた。

 

「おやおや、何をそこまで怒っているのやら」

「エッチ! 変態! スケベ! 何であんな事するかな、いきなり」

 

さわやかに笑う一夏を睨みながら、金髪の少女……シャルル・デュノアは恥ずかしさと怒りを込めながら批難する。

先刻の話、彼女はシャワーで一夏と遭遇してしまい……その上胸を揉まれてしまったのだ。

それも偶然ではなく故意に。

その所為で彼女は一瞬意識が飛んでしまい。その場でへたり込むことに。それを一夏が優しくベットまで運び介抱したわけだが、彼女はすぐに自分の状態に気付き慌てて近くにあった自分の服を着て布団へとその身を隠すべく飛び込んだ。そして現在に至るというわけだ。

批難された一夏はというと、さも当然と言わんばかりの笑顔を浮かべながら堂々と答える。

 

「男たる者、目の前に女の乳があるのなら揉むのは当然というもの! 寧ろしない方が失礼にあたる」

「いきなり揉む方が失礼だよ!」

 

一夏のまったく反省のない様子にシャルルはいつも以上に声を張り上げて突っ込みを入れる。

それは普通に考えて当たり前のことなのに、何故かこの男が言うとそれが当たり前に聞こえるというのだから不思議である。その所為でシャルルは自分で突っ込んでおきながら、もしかして自分が間違っているのか? と少々疑心暗鬼になってしまった。

 

「まぁ、落ち着きなされ。どれ、茶でも淹れようかな」

 

一夏はそう言うなり、先程までのことなどまったく意識させないかのように普通に備え付けの簡易キッチンへお茶を入れに行く。

そして待つこと数分。熱々の緑茶を入れた湯飲みを二つ持って一夏がシャルルの所に戻ってきた。

 

「取りあえずコレでも飲んで落ち着きなされな」

「あ、いただきます」

 

渡されたお茶をふーふーと息を吹きかけ冷ました後にシャルルは一口飲む。

 

「うん、やっぱり紅茶と違っった美味しさがあって美味しい。何て言うか、紅茶と違ってすがすがしい感じがする」

「ご満足頂けて何より。日本茶は日本が自慢する数少ない文化だからな。それがしも美味いと思っているよ」

 

そのまま二人で緩やかにお茶を飲み………

 

「って、和んでる場合じゃないよ!」

 

シャルルは先程までの問題を思い出して自分にすら突っ込みを入れる。

何故あれほど自分にとって大事なことを忘れていたのか、自分自身で信じられない気持ちであった。

そして改めて一夏を見つめる。

 

「ねぇ、一夏。見たんでしょ……」

 

シャルルは真剣な表情で一夏に問う。

それが何を指すのかは、言わずともわかるだろう。

そう問われた一夏は満面の笑みを浮かべて実に楽しそうに答えた。

 

「うむ。実に良い胸であった。大きさも掌に少し余る程度のサイズにマシュマロのような柔らかさ。揉み心地も良く、弾力も素晴らしい。特に感度の良さは今までで群を抜いているのう。それから……」

「そういうことじゃないよっ!!」

 

シャルルは自分の胸の評価を聞いて恥ずかしさから顔をまた真っ赤にする。

誰が自分の胸の話を聞きたいと言っただろうか?

寧ろシャルルは自分の胸がどう思われているかを知って恥ずかしくて仕方なくなってしまう。

 

「そうじゃなくて……僕が女だってこと!」

「あぁ、そんなことか」

 

普通ならば驚くはずなのだが、この男は笑顔を崩すことなく平然と答える。

そのことにシャルルは少し自棄になって食い付いた。

 

「そんなことって……何でそんなに平然としていられるの! だって……」

 

そこでシャルルの言葉が途切れる。

何故なら、その先にあるのは自分が一夏を騙していたということだから。

分かっていても彼女にとって言いづらいことだ。

それを聞いた一夏はあっけらかんとした感じに笑っていた。

 

「そんなもの、知っているよ」

「え?」

「御主がおなごなことなど、最初に会ったときから知っておったよ」

「えぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

シャルルは真逆そんな最初からばれているとは思わず、驚きの声を上げてしまう。

 

「え、だって! 最初に男だって言って君に近づいたのに、何で!?」

「そんなもの……この織斑 一夏、婆娑羅の道を極めようとする者にごまかしなど効かぬ!! 目の前に面白そうな物があるのなら、とことん楽しむのみよ!」

「面白そうな物っ!! それって僕のことなの!」

 

一夏の堂々とした物言いにまた突っ込んでしまうシャルル。

本来彼女はそんな気性の人物ではないのだが、持ち前の苦労性からか目の前にいる人物に突っ込みを入れざる得ない状態になっていた。

 

「っていうか、何で僕が女だってわかったの!」

「それは御主……女の匂いが漂ってくればすぐにわかるであろう。それにその尻の撫で心地は女のものよ。まぁ……御主ほど可愛いものなら、男でもイケルがのう」

 

ばれた理由もそうだが、それよりも今一夏が浮かべている笑顔を見て若干引くシャルル。

そもそも、そんな理由で正体を突き止める者なんて、この男以外いないだろうが。ちなみに彼女はノーマルだった。

 

 

「一応聞くが、何故男装なぞして?」

 

変わらない笑顔で聞いてきた一夏にシャルルは苦痛に満ちた言いづらそうな顔で答えた。

 

「うん…それはね……デュノア社社長、その人からの直々の命令なんだ」

「ほう、デュノア社社長直々に。しかし随分と可笑しな命令を下したなぁ、その社長は。ことわれなかったのか?」

「うん。だって僕は………僕はね、一夏。社長の……愛人の子なんだ」

 

シャルルは決死の思いで重大なことを打ち明けた。

それに対して一夏はと言うと……

 

「ほぉ、愛人とな。何とも淫らで誘われる響き。羨ましいのう」

 

全くもって同情もしていなかった。

この男、思春期丸出しで隠すことをしない。それもコレも己に正直故である。

 

「えぇ、そっち!?  普通は同情するなりなんなりするところじゃないの!」

「いや、まぁしなくもないが、人は生まれは選べぬからなぁ。誰が親であろうとそこは変われぬよ」

 

突っ込むシャルルに哲学的なことを言う一夏。

確かにもっともなことなので、シャルルは反論出来なくなってしまう。

それでもこの気持ちを知って貰いたい一心でシャルルは懸命に話す。

 

「二年前に母が他界したときに初めて父のことを知ったんだ。検査で僕のIS適正が高いとわかって、非公式だけど社のテストパイロットをやることになってね・・・とは言え父に会ったのは二回ぐらい。初めて本邸に呼ばれたときはいきなり本妻の人に殴られたよ、『この泥棒猫の娘が!』って…」

「ほうほう」

「それで言われた今まで通りやってきたんだ。そうしたら……段々とデュノア社が経営不振になってきちゃって。第三世代を未だに開発出来てないデュノアは世界の開発競争に出遅れちゃってね。このまま行けばISの開発権利を国から没収されるところまで来てしまったんだよ。それで焦ったいたときに君の事が世界で出された。君の情報を入手して、よしんばフランスで劔冑を開発出来ればかなりのアドバンテージになるって思ったんだろうね。そのために接触して劔冑のデータを取って来いって・・・劔冑の情報を盗んでこいって言われたんだよ、僕はあの人にね」

 

苦しげにそう言うシャルル。

彼女の中には言い知れない苦悩が渦巻く。

シャルルの告白を聞いた一夏はと言うと、寧ろ納得していた。

 

「別におかしいことなどないなぁ。もらえる情報だけで分からないなら、自分で調べるしかないからのう」

「いや、それはそうだけど。だからって普通こんなことさせる。いくら男性操縦者がいないからってねつ造までして」

 

シャルルがテンションが下がってても突っ込むと、一夏はニヤリと笑いながら答える。

 

「ふむ。余程切羽詰まっているのか、もしくは………それがしと同じ婆娑羅者かもしれぬのう」

「いやいや、社長はそんなぶっとんだ人じゃないよ!」

 

いくら嫌な父親だからと言っても、流石に目の前にいるぶっとんだ人物と比較するのはどうかと思い擁護するシャルル。まるで自分も頭がおかしいと言われているような気がしたからである。

 

「おやおや、ぶっとんでいるとは失礼な。ただ面白いことが大好きなだけだというのに」

「その度合いが酷いんだよ……」

 

シャルルはそう言いながら落ち込む。

何というか、ここはもっと深刻な感じなのではないだろうか? 少なくても、こんな突っ込みを入れまくる様な話ではないはずである。

シャルルはそのことに別の意味で傷付きながらも一夏に向き合う。

確かに締まりは無い話になってしまったが、それでも一夏に謝らないと思ったから。

 

「まぁ、そんなところかな。今まで騙しててごめん、話したら楽になったよ。会社は潰れるかもしれないし、僕の強制送還されるだろうけど……もうどうでも……」

 

絶望に打ち拉がれながら語るシャルルに、一夏は笑いながら答える。

 

「別に悲観するようなことでもなかろう。それがしがしゃべらなくては問題ないしのう。それに今回が良くても、そんな変装ではいずればれておったことよ」

「うっ……そうかもしれないけどさ……」

「それに御主はどうしたいのだ?」

「それは……出来ればいたいよ。会社の命令抜きにISは好きだし、IS学園に憧れてたんだからさ。でも、もうこんな状態じゃ良いも悪いもないよ。元から僕には選ぶ権利がないから……」

 

そう悲しみにくれながら言うシャルルに、一夏は何か面白いことを思いついたかのように笑った。

それは明らかに……下衆い笑顔であった。

 

「ふむ。つまり御主はこの学園にいたいと」

「当然だよ」

「出来ればしがらみ無しに?」

「うん」

 

その答えを聞くと、一夏は携帯を取り出した。

 

「何をしているの?」

「何、ちょっとお話したいお人がおるのよ」

 

そう言いながら一夏は番号を押し、電話をかける。

 

『もしもし』

「あ、これは夜分に失礼を。お師匠様、実は折り入ってお話が」

 

そう言い話し始める一夏。その顔は明らかに悪巧みをしている顔であり、見ていたシャルルは不安で仕方なくなってきていた。

 

「実はISで有名なデュノア社でちょっと………」

『ふむふむ……ほぉ、それは面白そうだのう。それがしが話に入れぬのが残念でしかたないのう』

「まぁ、そうおっしゃらず」

『何、愛弟子の婆娑羅を助けるのも師匠の勤めというもの。まっておれ、すぐにすませるために茶々丸殿にもお声をかけておこうかのう』

「それはそれは……実に面白そうですな」

 

まるで悪魔のような笑みで話し合っている一夏。

そんな一夏からシャルルはすぐにでも逃げ出したくなっていた。

そして一夏が愉快そうに笑いながら電話を切った。

 

「ねぇ、一夏。さっきの電話の人は誰なの?」

 

不安に駆られながら聞いてきたシャルルに、一夏は満円の笑みで答えた。

 

「先程電話したのは、それがしのお師匠様だ。名を『遊佐童心』というお坊様よ。六波羅財閥の大幹部にいる凄いお方で、それがしに婆娑羅の道を指し示してくれた御仁だ」

 

それを聞いた瞬間、シャルルは内心恐怖した。

この一夏の師匠ということは、一夏以上にぶっ飛んだ人物なのだと本能が告げていた。

 

「ど、どうしてそんな人に電話を?」

 

恐る恐る聞くと、一夏はまるで悪鬼のように笑う。

 

「何………ただデュノア社の株を買い占めてもらえるよう頼んだだけよ。それとそのご友人にフランス政府に『報告の間違い』を訂正してもらえるよう頼んだのよ」

「え……えぇええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

いきなりの事態に頭が追いつかないシャルル。

そんなシャルルに、一夏はゆっくりと近づいて行き………

 

「後はそれがしの仕上げだけよ。というわけで……」

「え………」

 

シャルルはそのまま一夏に押し倒され………

 

「や、やめっ……んぁ………あんっ……んぅ~~~~~~~~~~!」

 

胸を揉まれまくった。

ここでしない辺り、彼は所謂紳士であった。

 

 

 

 それから一時間後。

シャルルに頼んでデュノア社社長に通信を繋いで貰う。

 

『いきなり何だシャルロット。此方はそれどころではないというのに』

 

通信のモニターに出てきたのは、金髪をした中年の男性であった。

このモニターに映っている人物こそ、デュノア社の社長である。

 

「夜分遅くに失礼します。それがしの名は織斑 一夏。『シャルル』と同室故、是非挨拶したく思い頼んだ次第で」

『そ、そうか、君があの織斑君か。話は聞いているよ』

 

社長は焦りながら一夏と話す。

社長とて業界の人間。一夏の顔を見て、シャルルの正体がばれたことを察した。

しかし、今はそれどころではない。

何者かによって、この会社の株を買い占められそうになっているのだ。

すぐにでも会話を切ろうと判断する社長。

 

「今、其方は忙しいようで。まぁ、それも当然なのですが」

『と言うと?』

「知り合いに頼んで御社の株を買い占めてもらえるよう頼みましたからのう」

『なっ!?』

 

いきなり見つけた犯人に言われ、社長はショックを受ける。

それをたたみかけるように一夏はさらににやりと笑って話す。

 

「それにしても、随分と面白そうなことをしましたな。妾の子を男装させて広告塔にしたてるとは、いやはや、滑稽過ぎて笑わせていただきました。しかもそれがしの劔冑の情報を盗むよう言ったとか……尚楽しませていただきました」

『な、何が言いたいのかね? 別に私は……』

 

そう答えながら視線をずらす社長。

そんな社長を見て、一夏は………

 

ここで一番の下衆い顔を浮かべた。

 

「それがしを楽しませてくれた社長殿には是非ともお返しをしたく思い、こうして通信をしたのですよ。のう、『シャルロット』」

 

そう一夏が呼ぶと一夏のすぐ隣……今まで一夏の背に隠れていたので見えなかったシャルル……もといシャルロットが姿を現した。

しかし、それは正常な状態ではなかった。

顔を真っ赤し染め上げ、意識が虚ろな感じになっている。

吐く息には熱が込められており、上半身の服がはだけてブラジャーが丸見えになっていた。

そしてその顔は何よりも……発情した牝の顔をしていた。

 

「ご、ごめんなひゃい……ひゃひょう……ばれひゃいまひた……」

 

舌足らずで喋るシャルロットは本当に妖艶であり、父親である社長ですら息を呑む程であった。

一夏はその様子を見届けると、そのままシャルロットを胸に抱きしめ、思うさまにシャルロットの胸を社長に見せつけるかのように揉みし抱いた。

 

「んひゃぁあああああああ!! ひゃ、ひゃめぇ~。で、でも、ほうひていひかのものになって……しあわせれす………」

「娘さんの幸せをお伝えしたくてのう。ほれ、もっと言わんか」

「っっ~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?」

 

一夏に何かされ、シャルロットは白目を剝いて気絶し崩れ落ちた。

それと同時にデュノア社の株の買い占めは終了し、社長は二重の意味で崩れ落ちた。

その様子を見ながら……一夏は嗤い通信を切った。

 

 

 こうして、シャルルはシャルロットとして後日性別を直されて編入し直すことになるのだが。それまでの間に……

 

「うわぁあああああああああああああんんんん!! 一夏のバカぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

と泣き出されたのは言うまでも無い。

 

 

 

 


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