突如来た転入生に多少は混乱した一年一組だったが、持ち前のノリの良さで皆それなりに打ち解けていた。正史ではこの時点でラウラ・ボーデヴィッヒは皆から怖がられていたところだが、一夏に出会い頭に仕掛け失敗したことで皆から見た印象は多少なりとも変わっていた。
IS装着時の歩行練習の授業では、一夏を除いて専用機持ちが班長を務め班に分かれて皆実習を行うことになった。
その際にシャルルに最初皆詰め寄ったのは言うまでも無い。
それに千冬の一喝が炸裂し、皆蜘蛛の子を散らすように離れていった。その様子もまた一夏には面白く見えたのか、
「皆実に欲に忠実で良い! やはり人間、したいことに忠実であるべきだ」
と堂々と笑っていた。
そして名前順に皆分けられ、専用機持ちが皆を監督していく。
最初の時は怖がられると思われていたラウラだが、皆寧ろ妙に構ってくる始末。
「な、何でそんな馴れ馴れしいんだ、貴様等は!?」
その慣れない状態にラウラは戸惑いながら構ってくる者達に問う。
するとラウラに構いたがる少女達は皆口をそろえて顔を赤らめながら答えた。
「だって……織斑君に胸を弄られてるときのボーデヴィッヒさんって、妙に艶っぽくて可愛いかったんだもの。何ていうか……弄りたいの、すっごく!!」
そんなふうに力説する少女達に、何故かラウラはタジタジになってしまう。
そしてなし崩し的に弄られ可愛がられつつ、何とか実習を皆に教えていく。
そんなラウラを見た後、千冬はただ一人でぽつんと地面に座っている一夏に話しかける。
「一人だけ何も出来なくて寂しいか? まぁ、この授業はお前を参加させてもどうしようもないしな」
だったら何で参加させたのか! と突っ込みを入れたくなるのだが、一夏はそんなことを全く気にしていなかった。
「いやはや、これはこれで良いものよ。ふむ……体の線が出る衣装で戯れる少女達というのも、中々に趣があって良いなぁ」
この男、自分の恋愛観なんてものはまったく持ち合わせていないくせに、そのくせ助平根性は一人前ではすまないくらいに凄まじい。
そうにこやかな笑顔で答えた一夏に、千冬の出席簿が炸裂したのは言うまでも無い。
そして昼休みになり、皆で昼食を屋上で取ることになった。
元は実習後に箒が一夏を誘いに来たのだが、そんな抜け駆けを許すセシリアと鈴ではなかった。
二人とも何故か箒と同じくお弁当を作っていて、昼に一夏を誘おうと考えていた。それを先んじて箒に言われてしまったため、その尻馬に乗るようにその話に参加した。
それを受けた一夏は快く応じ、ついでにシャルルも誘って屋上で食べようよいう話に纏めた。
皆最初は多少は抵抗も感じたが、惚れた男からのお願いに皆仕方ないと聞き入れてしまう。
屋上について皆それぞれ弁当を広げ始め、一夏に食べて貰おうと奮起する。
その様子をシャルルは若干引きつつ苦笑しながら見ていた。
「それで……どれから食べるんだ、一夏」
「一夏、私の酢豚食べなさいよ、酢豚」
「一夏さん、私、頑張って作ってきましたの。是非とも私のを最初に」
皆顔を赤らめながらもお弁当を一夏に勧めていく。
一夏は上手そうな弁当にどれにしようかと考えていたが、武者としての第六感が急遽警報を鳴らし始めた。
それはセシリアのお弁当……サンドイッチから感じる妙な威圧感であった。
見た目はとても美味しそうなサンドイッチ。何か変な所は一切感じられないと思う。
そのことが一夏の婆娑羅道を燻っていた。
もしかしたら凄く美味しいのかもしれない。だが、逆に凄くまずいのかもしれない。
どちらにしろ、それは食べてみれば分かることであり、……どっちにしても『面白そう』だと。
「では……セシリアのサンドイッチからいただこうか」
「っ!? はい!」
選ばれたセシリアは嬉しさ全面に喜び、選ばれなかった箒と鈴はショックを受けていた。
それを見つつ、一夏はセシリアにさっそくサンドイッチの入ったバスケットを渡される。
「どうぞ、一夏さん! 召し上がって下さいな」
セシリアは一つ摘まんで満面の笑みで一夏にサンドイッチを渡す。
それを見て、一夏はふとあることを思いついた。それは自分が食べるのと同じくらい面白い事になることかもしれない。
一夏は受け取ったサンドイッチを少し見つめると、
「うむ。実に美味そうだ。だが、そんな笑顔で見つめられると照れてせっかくのサンドイッチの味をゆっくりと味わえそうにない。それに……それがしは最初にセシリアの食べているところを見てみたい。高貴な者は食べている姿も絵になるのでなぁ。さぞ美しいだろうであろうよ。ほれ、あ~ん」
と答えて渡されたサンドイッチを逆にセシリアへと差し出した。
普通に考えれば、せっかくその人のために作った料理を食べないというのはショックを受けるかもしれない。だが、一夏の優しそうな笑みとはい、あ~んにセシリアはそちらに靡いてしまった。
恋する乙女は意中の相手の誘惑にはあらがえないのだ。
「で、では……あ~ん」
セシリアは恥じらいに顔を赤らめながらも一夏に差し出されたサンドイッチに口を小さく開ける。
その様子を羨ましい顔で見る箒と鈴。
そしてセシリアが一口囓った瞬間………
「っっっっっっっっっっ………………!?」
セシリアの体がビクンと震え、そして崩れ落ちるかのように倒れた。
「なっ!? セシリア!!」
「どうしたのよ、セシリア!?」
急に気を失ったセシリアに驚く箒と鈴。シャルルもコレには驚きを隠せずに慌ててしまう。
「ふむ、一体どうしたことか。大丈夫か、セシリア……ふむ。どうやら気を失っただけのようだな。だが、このままではいかんのでそれがしが保健室へと運ぼう。皆、悪いが先に昼食をとってくれ」
そう一夏は箒達に言うと、セシリアをお姫様だっこで持ち上げ保健室へと歩き始めた。
流石に気絶した人間がいる前で嫉妬するほど人間が出来ていないわけではない二人は、心配そうな視線をその背中に向けていく。
そんな視線を浴びながら一夏は屋上を後にした。
背中に回した左手で胸を、足に回した右手でお尻を思うさま撫で回し揉みまくりながら……
その顔は誰が見ても分かるくらい下衆い顔をしていた。
その後、セシリアは意識を取り戻した際、妙な体の熱さに襲われ、下着がぐっしょりと濡れていたとか。
放課後になり、一夏は千冬に呼び止められた。
曰く、シャルルが同室になったので世話を見ろということ。
それに頷き、さっそくシャルルを寮の自室へと案内した。
そのままその日はシャルルと楽しく語らいながら就寝した。
そんな日々がしばらく続いていく。その際、シャルルは度々寒気のするような、それでいてどこかドキドキするような何かを感じて顔を赤くしていた。
同じ男子と言うこともあって一夏との仲を深めたシャルルは、一夏と一緒に放課後の訓練を一緒に行うようになった。
と言っても、一夏は槍を出して素振りをするだけなのだが。
それでもシャルルは生で見る本物の武術に目をキラキラとさせていた。
「これが武者の技なんだね! 生身なのに凄いよ。槍がしゅばっていって」
「いやいや、この程度は当たり前のこと。寧ろまだまだ人に見せられるほどに立派なものではないよ」
謙遜しながらそう答えていると、辺りで訓練していた生徒達が突如騒ぎ始めた。
「ねぇ、ちょっと…見てよあれ!」
「あれってもしかしてドイツの…」
「第三世代型IS!? まだ本国でのトライアル段階って聞いてたけど…」
騒ぐ生徒の視線の先には、黒いISをまとったラウラが立っていた。
ラウラはそのまま一夏の方を見ると、顔を赤くしながらも声を張って話しかける。
「お、おい!」
「おや、どうかしたのか?」
一夏はいつもと変わらない笑みを浮かべながら応じる。
それを見てラウラは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「わ、私と戦え!!」
「何故にかな」
決死の声に一夏はニコニコと笑いながら聞き返す。
「貴様にはなくても私にはある……貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成しえただろう。しかし貴様のせいで成せなかった。だから私は…貴様の存在を認めない! …………と言うか、教官の弟がっ、こ、こんな……え、エッチな奴だなんて……絶対に認めたくない! わ、私の胸を揉んだのも、絶対に許せない!」
ラウラは今までため込んでいたことをぶちまけるように一夏に叫ぶ。
それを受けた一夏はさわやかに笑う。
「そう言われも困るなぁ。それがしが千冬姉の弟なのは事実故、どうすることも出来ぬしのう。それと……御主の胸だが、小さいが感度のとても良い、弄りがいのある良き胸であった。むしろ誇って良いことなのだぞ」
「っ……………!? もう、私と戦えぇえええええええええええええええええええええええええええ!!」
顔を羞恥で真っ赤にしながらラウラは自身のISのレールカノンを怒りにまかせて一夏に発射した。
IS用の大型レールカノンを生身の人間に向かって発砲したのだ。
そんな普通では有り得ないことに、ラウラは恥ずかしさと怒りで我を見失って行ってしまった。シャルルは急いで防ごうとするが、間に合わない。
だが……
「ふはははははははぁっ!! いやはや、愉快愉快! まさにその生娘の反応、実にそそるのう!」
一夏は飛んで来た砲弾を笑いながらひょいっと避けたのだ。
「「「「えぇえええええええええええええええ!?」」」」
その場にいたシャルルと他の生徒からそんな声が上がってしまう。
何せ生身で笑いながら砲弾を避けるとは誰も予想していなかったから。そんな人が出来るわけがないことを平然と行ってしまったから。
「うむ、そう思うともっと揉みたくなってきたのう。あれはあれで結構癖になりそう感触だったからなぁ。せっかく本人も来たことだし、また揉ませてもらおうかのう。待っておれ、すぐにそこまで行くのでなぁ」
またあの下衆い顔で嬉しそうに言う一夏。
それを見たラウラはとてつもない恐怖に襲われる。
「ひっ!? う、うわぁあああああああああんんん!! く、くるなぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
半ば狂乱状態になりながらレールカノンを一夏に向かって乱射するラウラ。
一夏は愉快そうに笑いながら跳んでくる砲弾をひょいひょいと避けてラウラがいるところへと向かっていく。
そんな、本来ならば助けなければならない光景なのにどっちが襲っているのか分からない光景に皆どうしてよいのか分からなくなってしまっていた。
後少しでラウラの元にたどり着くというところで、この騒ぎを聞きつけた教員が止めに来た。
それにより、この騒ぎは収まりを見せたが、一夏は少しばかり不満そうだった。
そしてそのまま自室へと戻る。
その後はシャルルとどちらがシャワーを先に使うかを話し合い、シャルルが先に使うことになった。
そのままシャルルがシャワーを浴びている間に一夏はベットで横になって休んでいたが、そろそろボディーソープが無くなることを見越してシャルルに届けに行く。まぁ、実はコレもわざとなのだが……。
そしてそのままシャワールームへボディソープ片手に向かう一夏。
「シャルル、確かそろそろボディソープが切れる頃合いだとう。新しいのを届けに来たぞ」
「へっ?……い、一夏!? ち、ちょっと待って!!」
そう言われたが、一夏は待つ気は一切無いのか、勢いよく扉を開いた。
その扉の先には金髪の少女が立っていた。
美しい金髪をしていて、サイズはCほどだが、体の細さもあってそれ以上に大きく見える胸をした少女がそこにはいた。いきなりのこともあって体を隠せず、濡れた髪が肌に貼り着いて艶っぽい。
「へ、いや、あの……」
少女はこの事態に戸惑い、どうして良いのか分からなくなってしまう。
そんな慌てる少女を見て、一夏はニヤリと笑う。
「ほう~。これがフランスの娘の体かぁ。何と美しくエロい体か。む? 成る程成る程、下の色は髪と同じ色をしているのか。これはこれは」
一夏は目の前の少女をしゃぶり尽くすかのように見回す。
その視線に気付き、今少女は自分がどういう状態なのかを思い出した。
「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そんな悲鳴を上げてしまう少女に、一夏は近づきながら優しく微笑みながら近づく。
「そう騒ぐものでもあるまいに。この裸……相当なものよ。寧ろ誇っても良いくらいだ。とくにこの掌に収まりそうな胸はたまらない」
そう言いながら一夏は少女の胸に手を置き…………
「っっっっっっっっっっっっっっっ!? あっ……………」
この後、このシャワールームで嬌声が響いたのは言うまでも無い。
何だろう、ここの一夏。
もはや只の生臭坊主にしかなってない……