装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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これは装甲正義のストーリーをそのままに劔冑を変えて簡略的にお送りします。

閉話第一弾。

セシリア戦を二世村正で。


閉話 もしも一夏が違う劔冑を使ったら
もしも一夏が別の劔冑を使ったら。 その1 女王蟻


 もしも織斑 一夏の劔冑が『相州五郎入道正宗』でなく、『勢洲右衛門尉村正二世』だったら……。

その場合を無人機襲来まで簡略的に語るとしよう。

 

 

 

入学式では……

一夏は千冬に連れられてIS学園の廊下を歩いていた。

大体の説明は割愛するが、大まかな話では劔冑の性能を世界に見せ占めるために一夏はIS学園に入学することになったのだ。

千冬は二年ぶりに再会した弟の変わりぶりに困惑していた。

 

「い、一夏…ちゃんと挨拶するんだぞ」

 

千冬は心配して一夏に話しかけるが、一夏は不敵な笑みを浮かべると笑いながら答える。

 

「くっくっく……笑止! 挨拶など、出来て当たり前! そこまで心配する必要なぞないぞ、千冬姉!」

 

一夏は堂々とそう答えるが、その様子を見て千冬は内心凄く深い溜息を吐いてしまう。

 

(一体、一夏に何があったんだ……二年前はこんな感じじゃなかったんだがな……)

 

千冬の知っている一夏と言えば、千冬姉と呼んで自分を慕ってくれる可愛い弟であった。

少なくともこんな堂々と不敵に笑う男では無かったはずである。

そんなことを千冬は考えながら先に教室に入り、皆が凄く騒ぎ立てるのを一喝して鎮まらせる。

そして廊下にいる一夏に声が掛かり、一夏は不敵に笑いながら教室へ入った。

皆の視線が集まっていく中、一夏は教壇の前まで行き自己紹介を始めた。

 

「俺の名前は織斑 一夏! 天下布武を目指す者だ! よろしく頼む」

 

皆の好奇の視線も何のその、一夏は堂々と胸を張り物怖じなんて言葉がないと言わんばかりに自己紹介をした。

それを聞いた女子の反応は様々だが、その男らしい姿に頬を赤らめる者達が続出する。

それを分かっているのか分かっていないのか、一夏はまったく気にせずに席に着く。

その様子を見て、驚愕に顔を固めている女子が一人いた。

篠ノ之 箒……一夏の幼馴染みである。

現在の世情のこともあって一夏とは小学校四年生で離ればなれになってしまい、この日一夏と再会した。小学四年生から現在まで、約五年の月日が経っている。

なのでいくらか変わっていても致し方ないが、それでも箒のショックは凄まじかった。

 

(一体私と離れていた間に何があったんだ、一夏!!)

 

再会した幼馴染みの変わりように驚愕してる箒を余所に、一夏は堂々と席に座っていた。

 

 

 

 そしてこの日の授業が始まり、時間が過ぎていく。

一夏は両腕を組み、目を閉じて静かに授業を受けていた。勿論、質問などで指されれば堂々と答えるので寝ていると言うわけではないのだが。

そして休み時間……

 

「ちょっとよろしくて」

 

一夏が静かに目を瞑り瞑想をしていると急に声がかけられた。

一夏はゆっくりと目を開くと、その声がした方を向く。

 

「何用だ?」

 

その独特的な雰囲気に声をかけた少女は戸惑いながらも話しかける。

 

「っ!? いえ、世界に喧嘩を売った者がどんなものか見に来ただけですわ!」

「ふむ………成程、そう言うことか」

 

一夏はその少女、セシリアをジッと見ると何かを悟ったのか軽く頷く。

 

「そんなに男が不甲斐ないか、セシリア・オルコット。くっくっく……笑止、あまりに愚かすぎて笑いすら浮かばぬ」

「なっ!? 何ですって!!」

 

その後さらに食って掛かろうとするセシリアだったが、次の授業を告げるベルによってそれは中断された。

悔しそうに一夏を睨むセシリアだったが、一夏は我関せずとまた席に付いて瞑想するだけであった。

 その後も授業は進み、今の授業では話し合いが行われることになった。

 

「ではこの時間はクラス代表を決めることにする」

 

千冬がそう言うと共に、クラス代表がどのような物かを説明していく。

その説明を終え次第、千冬はクラスの皆に自薦、推薦がないかを聞く。すると数人の女子から手が上がった。

 

「私は織斑君を推薦します」

「あ、なら私も」

 

興味もあってか、一夏を推薦していく少女達。

それはどんどんと広がっていき、皆一夏をクラス代表に推していく。

しかし、それが我慢出来ない者がいた。

 

「ちょっと待って下さい! 何故彼が推薦されるのですか!? 彼はISを持って無いじゃありませんか!!」

 

そうクラスの雰囲気を断ち切るよう大きな声で言ったのは、セシリア・オルコットであった。

そして彼女はクラス代表には自分がふさわしいと言ってきた。つまりは自薦である。

そしてセシリアは推薦理由を皆に聞き、それが納得いかないと抗議を始めた。

 

「そのような選出は認められませんわ! そんなわけのわからない不気味な男がクラス代表なんて、このIS学園での良い恥じさらしですわ。私はにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!! 実力からすればこのわたくしがなるのが必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!大体! 文化として後進的な国で暮らさなければ行けないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」

 

そして日本のことを批難し始めるセシリアにクラスの日本人達は何とも言えない視線をセシリアに向ける。

そんな微妙な雰囲気の中、一夏は静かに席から立ち上がった。

 

「……くっくっく……あまりに滑稽すぎて笑いが止まらないぞ、セシリア・オルコット。弱い犬ほどよく吠える。そんなに怖いか、俺が?」

「なっ!? そんなわけありませんわ! あなた、この私を馬鹿にしておりますの!」

 

一夏にそう言われ顔を真っ赤にして怒るセシリア。

そんなセシリアを見て一夏は堂々とした様子で笑っていた。

その笑いがセシリアの逆鱗に触れセシリアは叫ぶ。

 

「ならば…決闘ですわ!! 負けたらあなたを私の小間使い……いえ、奴隷にしますわっ!!」

「俺と戦うか……いいだろう、ならば貴様の強さを見せてみろ」

 

一夏が笑みを深めながらそう言うと、千冬が呆れたような顔で割って入った。

 

「お前たちで勝手に決めるな。しかし自薦も推薦も、もうないようだしな。よし、では来週の月曜日に第三アリーナで決闘を行う。構わないか」

 

そう言われセシリアは力強く頷くが、一夏は笑みを浮かべたままであった。

 こうしてセシリア・オルコットと一夏は戦うことになった。

 

 

 

 授業を終え、放課後になったところで山田 真耶に呼び止められ寮の鍵を一夏は貰った。

そして部屋に入った途端、バスタオル一枚という扇情的な姿の幼馴染みに遭遇。

箒は一夏に恥ずかしい姿を見られて顔を真っ赤にしていたのだが、当の一夏は思春期のしの字もないのか、そのまま普通に部屋にはいってベットで横になっていた。

 

「い、一夏……そ、そのだな…何かないのか?」

 

そのあまりの淡泊さに箒はバスタオルを少しきつく巻き直して一夏を覗き込む様にしながら聞く。

その姿は大きな胸をかなり強調しており、年頃の男なら顔を真っ赤にしながら魅入ってしまうほどにエロティックだった。

しかし、それを向けられた一夏はと言うと、

 

「何かあったか、箒?」

 

と普通に対応してきた。

そこには思春期特有の反応がまったくない。

そんな対応をされた箒はこの日、自分に女としての魅力が無いかを本気で考えて眠れなくなった。

 

 

 

 そしてあっという間に一週間が過ぎ、セシリアと戦う月曜日となった。

一夏は第三アリーナのピットで軽く準備運動をしていた。

ピットにあるモニターではセシリアが映っており、すでに外で待っている状態である。

千冬、箒、真耶が心配の眼差しを向ける中、一夏は準備運動を終えると何も言わずにアリーナに向かって歩き出していた。

それを見て三人は慌てて呼び止めようとしたが、一夏から発せられる圧倒的な覇気に何も言えなくなってしまう。

そしてそのまま一夏はアリーナへと出た。

 一夏がそのままで出てきた事で周りの観客席から驚きの声が上がった。

そんな中、セシリアは一夏を蔑むように挑発する。

 

「あら、何も付けずに来るなんて、降参ということでしょうか? 今更怖くなって逃げるなんて、これだから男は…」

 

その挑発を受けて一夏は微笑を浮かべ答えた。

 

「吠えると余計弱さが露呈するぞ、犬。少しは落ち着いたらどうだ。それとも、怖いから虚勢を張っているだけか?」

 

一夏にそう挑発され、逆にセシリアが怒る。

そんな様子を気にせず、一夏は自らの力を呼ぶ。

 

「来い、『村正』」

『諒解』

 

その声と共に、一夏が来たピットから何かが飛び出して来た。

それは巨大な蟻であった。

二メートル近くあり、その巨躯は純白をしていた。その肌は肉でなく鋼の輝きを放ち、その巨躯を羽によって宙へと浮かせている。

それは誰が見ても異常だった。自然界では絶対に有り得ないその物体は、一夏の後ろへと舞い降りた。

それを見て笑みを深くした一夏は片手を顔の前に持って行き、軽く覆うように開く。

そしてその口から謳うように言葉が紡がれた。

 

『鬼に逢うては鬼を斬る 仏に逢うては仏を斬る ツルギの理ここに在り』

 

その詩と共にその女王蟻は弾け、そして一夏へと纏われていく。

そしてそれが収まるとともに、その場には白銀の武者が顕現した。

 

「ふむ……では、殺ろうか」

 

一夏は装甲するとセシリアがいる空へと舞う。

その姿はまるで妖精のように美しい。

そしてセシリアと相対する一夏。

セシリアは初めて見る劔冑に警戒しつつ、一夏へと話しかける。

 

「ぬけぬけと間抜けに来たあなたに、最後のチャンスをあげますわ。私が一方的な勝利を得るのは当たり前のこと。ですから、惨めな姿を公衆に晒したくなければ、今ここで謝るなら許してあげないこともなくってよ」

 

一夏はそれを聞いても何も答えない。

しかし、その様子から笑っていることがセシリアには分かった。

だからこそ、開始の合図と共に叫ぶ。

 

「だったら墜ちなさい! このセシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でる演舞曲で!!」

 

それと共に白銀の武者に向かって長大なレーザーライフル『スターライトmkⅢ』を発射する。

普通なら咄嗟に撃たれれば身が竦み避けられない。避けたとしても、体勢は崩れる。

だが、一夏はそのどちらでもなかった。

 

「え?」

 

セシリアはそんな間の抜けた声を出してしまう。

何故なら……

撃った先に白銀の武者、村正はいなかったから。

まだ上昇や下降したなら分かる。だが、セシリアの視界には一切村正の姿がなかった。

その事に困惑した瞬間、

 

「成程、これがISの武装か。これだけ大きくて取り回しが悪いのではないか?」

 

そんな声がセシリアの背後、それも体からすぐの所から聞こえてきた。

セシリアは背後をキリキリと音が鳴るかのようにゆっくりと振り向いた。

そこには、村正がセシリアの目の前に立っていた。

 

「っ!? い、いつの間に!!」

 

驚愕し慌てて距離を取るセシリアに、一夏は不思議そうに答える。

 

「何をそんなに慌てている? ただその武器が大きいから気になっただけだぞ」

「そういうことではありませんわ! いつの間にそこにっ!」

「? ただ普通に来ただけだ。別に驚くことでもないだろうに?」

 

セシリアが驚愕しているが、それはセシリアだけではない。

この試合を見ている人間全員が驚いていた。

 

見えなかった。

 

そう、見えなかったのだ。村正がセシリアの背後に回り込んだのが、皆見えなかった。

それは管制室でモニターしている千冬達も例外では無い。

ISのハイパーセンサーですら追いつけない速さという、本来有り得ないことを一夏は平然とやっていた。

そのことにあの千冬ですら間の抜けた声を上げてしまう。

 

「あれは一体何なんだ……」

 

それを聞いても、この学園で誰も答えられる者はいない。

そんな誰も答えられない現象にセシリアは恐怖する。

 

(な、なんなんですの!? 一体何が!!)

 

そんなセシリアに一夏は全く気にせず話しかける。

 

「何をそんな惚けておる。それでは……今度は此方からいくぞ」

 

まるで玩具を見つけた猫のような気配にセシリアは恐怖しながら急いで距離を取るとスターライトmkⅢを村正に向かって撃ちまくる。

 

「墜ちなさい、おちなさぁあああああああああああああああい!!」

 

その銃撃を村正は空を舞うかのように軽やかにのんびりと躱していく。

その様子はリラックスしているかのようで、セシリアは更に恐怖し切り札である『ブルーティアーズ』を動かした。

セシリアから射出されたティアーズはバラバラに動き村正に向かってレーザーを発射する。

 

「ほう、そんなものもあるのか。これは面白そうだ」

 

一夏はそんな切り札を新しい玩具を見たかのような反応を示す。

そして発射されていくレーザーの雨を余裕で回避していく。

それを見てセシリアがふと笑った。

 

「これで終わりですわ!」

 

そう叫ぶと共に、ティアーズからレーザーは発射される。

それは一機だけ別に動かし、村正の背後、一夏の死角に潜り込ませた物だった。

回避能力は優れているようだが、その細身。ISのようなシールドバリアがない以上、その防御能力は無いとセシリアは判断した。

当たれば墜ちる。

そう思い発射したセシリアは勝利を確信した。

しかし、それは裏切られた。

発射されたレーザーは村正に当たる前に何かによって弾き飛ばされたのだ。

 

「え……」

「? 先程の玩具か。何かしたか?」

 

一夏は何も痛くないと言わんばかりに当たったところを擦る。

その様子を持て、セシリアはとてつもない恐怖に襲われた。

攻撃しても避けられ、当たったとしてもバリアのような物で弾かれる。

しかも相手はハイパーセンサーでさえ追いつかないほどの高速移動が出来る。

もはや打つ手がない。

そんな絶望に襲えわれているセシリアに一夏は少しつまらなそうにしながら言う。

 

「そろそろ飽きてきたな。まぁ、それなりに楽しませて貰った。今度は礼として。俺の武を見せてやろう!」

 

その声をセシリアが耳にした途端、セシリアの意識は途絶えた。

セシリアはアリーナ壁に弾丸のように吹っ飛び、壁を崩壊させながらめり込んだ。

たった一発の拳で。

 

「何だ、もう終わりか。つまらん。しかし、これでまた俺は天下布武へと近づいた!!」

 

その結末に誰もが驚愕し、試合終了のコールが鳴ることは無かった。

ただ、愉快そうな一夏の笑い声だけがアリーナに木霊した。

 

 

 これはあり得たかも知れない一つの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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