皆様、今までご愛読ありがとうございました。
ここまで書けてこれたのは皆様のおかげです。
これからは閑話などを書こうと思いますので、引き続き楽しんでいただければ幸いです。
とある町にある一軒家。
真っ白な壁を持ち、庭は大きく造られている。中々に良い作りをした家だ。
そこにはある家族が住んでいた。
家の表札の名は『織斑』。
ここの家主を知らない人は日本ではあまりいない。
別に芸能人や男優と言った職種の人間では無い。また、政治家というわけでもない。
しかし、確実に今の世を変えた立派な立役者である。
その偉業は歴史の教科書に載ってもおかしくない。
そんな凄い人間が住む家だが、そのわりには普通の家であった。
家の中には彼の妻と、子供が二人いる。
彼の妻の名は、『織斑 真耶』。
翡翠色の髪を肩の上辺りまで伸ばし、眼鏡をかけた女性である。
顔は童顔で年若く見え、未だに高校生と間違われることが多い。しかし、その顔に反してスタイルはグラビアアイドルでさえ驚くほど凄い。特に胸の大きさは反則的な大きさを誇っている。
性格は優しくほがらかで母性的であり、人も良く出来た人物であった。
彼女は今、二人の子供を優しく抱きかかえながら思い出話を聞かせていた。
「これが私とお父さんの出会いですよ~」
「そうなんだ~。おとうさん、すっご~い!」
「おとうさんかっこいい~!」
彼女は当時のことを思い出してうっとりとしつつ子供に話すと、子供達は凄く喜び目をキラキラと輝かせながらもっともっとと話をせがむ。
「おかあさん、もっとおとうさんのおはなしきかせて~」
そう彼女にせがみ服の袖を引っ張るのは、翡翠色の髪をした男の子だった。
それを聞いて彼女は仕方ないなぁ、と思いつつ返事を返す。
「うん、いいですよ。『かずくん』はお父さんの話、好きだからね~」
彼女にそう呼ばれた子供の名前は『織斑 一真』(おりむら かずま)。
彼女と彼の子供であり、母親譲りの翡翠色の髪を持ち父親似の姿をしている。
今は腕白盛りであり、父親の事が大好きである。
「わたしだっておとうさんだいすきだよ! わたし、おおきくなったらおとうさんのおよめさんになるんだもん」
その男の子に対抗してか、女の子が彼女に強く言ってきた。
彼女は女の子を抱きしめつつ答える。
「『かやちゃん』もお父さん、大好きだからね~。でもかやちゃん……お父さんのお嫁さんはお母さんだからね……」
「おかあさん、なんかこわい……」
彼女の笑顔に若干怯える女の子の名前は『織斑 夏耶』(おりむら かや)。
彼と彼女の子供であり、一真とは二卵性双生児である。だが、全く似ていない。ちなみに妹だ。
父親譲りの黒髪をしており、それを肩のあたりまで伸ばしている。
ちょうどおませな年頃であり、彼と彼女の話を良く聞きたがる。
「ちなみに聞くけど、お父さんとお母さん、どっちが好き?」
自分の息子と娘が父親のことをばかり言うので、若干いじけつつそんなことを問う。
これがイジワルな問いであることを彼女は知っており、苦笑しながら答えを待つ。
二人はしばらく考えた後、答えを決めたらしく顔を明るくした。
「「どっちもだいすき~!!」」
そして彼女に抱きつく二人。
それを抱き留め、彼女は笑顔になる。
この年頃からどちらかが好きだと言われてしまったら、親としてはへこむだろう。
だから、こう答えた子供達に嬉しくなってしまう。
「お母さんも大好きですよ~。でも、もっと大好きな人がいますけどね~」
「しってる~。おとうさん~」
「もうなんどもきいたよー」
そう答える彼女に子供達は笑顔であり、彼女も笑顔であった。
そこにあるのは幸せな家族である。
そんな和やかな光景の中、家の鍵が開けられる音が聞こえてきた。
いつもこの時間にこの家の鍵を開ける人間は一人しかいない。
その音を聞いて三人はさらに笑顔になり、皆で玄関の方へと向かう。
そして扉が開いた所で、子供達が元気よく言った。
「「おかえりなさい、おとうさ~ん!」」
そして二人はそのまま扉を開けた人物に向かって飛びつき抱きつく。
その人物は子供達二人を抱き留めると、笑顔で話しかける。
「二人とも、ただいま。元気にしてたかい」
「「うん!」」
二人に話しかけたのは、黒髪をした青年だった。
見た目は年若く見え、二十になる前にしか見えないが、その身に纏う独特の雰囲気で四十代にも感じられる。実際の年齢は二十代前半なのだが。
「お帰りなさい、旦那様」
「ただいま、真耶さん」
彼女にそう言われ、彼は更に嬉しそうに笑う。
彼こそがこの家の主にして、彼女の夫。この子供達の父親である『織斑 一夏』である。
今の世を変えた英雄と世間では言われているが、彼はそんなことを気にしてはいない。
家族の前では、ただの優しい父親である。
彼は子供を床に降ろすと、彼女の前に立った。
すると彼女は目を瞑り顔を赤く染めながら自分の夫に言う。
「旦那様……ただいまの……お願いします」
それを聞いて彼は笑顔を浮かべながら彼女の顔に顔を近づける。
「もう何回も言ってるけど、未だに『旦那様』なんですね」
「だって……旦那様は私だけの旦那様ですから」
彼女は目を瞑りながらも笑顔で彼にそう答える。
その様子は実年齢からは考えられない程に可愛らしかった。
そんな妻を見て彼は嬉しく思い、その可愛らしい唇にキスをする。
「「ちゅ」」
それが夫婦でのお決まり。
朝の挨拶から家を出るとき、それと帰ってきたときには必ずキスをするのだ。
二人にとってそれが結婚してからの決まり事であり、子供が出来た今でも続いている。
「あぁ~~~おとうさんとおかあさん、ちゅうしてる~~~~~」
「なかよしさんだ~~~~~」
子供達はそんな二人を見てはやし立てるが、それすらも彼等には幸せに聞こえるだろう。
彼はそのまましばらく妻を抱いてから離れると、子供達と一緒に部屋へと入っていった。
その顔は妻共々、幸せに満ちていた。
これが彼が得た日常。
この幸福を噛み締めながら彼は常に思う。
正義とは何なのか?
それはきっと…………守るということ。
人の数ほど正義はあるが、それら全てに共通することは何かを守るということだ。
故に正義とは守ることだと彼は考える。
彼の守るもの……それは大切な人達とそれを取り巻く世界すべて。
それに害成そうとする者に彼は容赦しない。
だからこそ、日々彼は守るのだ。
その世界を、大切な人達を……自らの正義を貫くために。
「いくぞ、正宗!」
『応、御堂!』
こうして自らの正義を貫き守るために、濃藍の武者は空へと飛び、この世に蔓延る悪を討つ。
『装甲正義』…………始!!!!