装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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やっとこの話も終わりそうですよ。
久しぶりなのでイマイチ甘く出来そうに無いです。


戦い終わって

 あの戦いの後、俺は一週間以上眠り続けていたらしい。

自分ではいつもの様に目を覚ましただけだったのだが、見慣れない天井だったので少し驚いてしまった。誰だって記憶にないところにいきなりいれば普通は驚くだろう。

咄嗟に起き上がろうとしたが、体は殆ど動かない。

寧ろ激痛が襲い掛かり、俺は声にならない声で唸ってしまう。

俺はその時は急な事だったので気付かなかったのだが、俺の隣では真耶さんがベットにもたれかかり眠っていた。どうやら俺の声を聞いて起きてしまったようだ。

俺が起きたことに気づき真耶さんが俺を見た瞬間、真耶さんは泣き出してしまった。

起きたばかりで頭がまだ働いていない俺は何で泣いているのかが分からなくて困惑してしまう。

それでも、泣き止んで貰おうと声をかけようとしたら、真耶さんが急に飛び込んできて抱きしめられた。

泣きながら俺をぎゅっと抱きしめる真耶さんは心底安心したようで、俺の胸を涙で濡らしながら顔を埋める。

俺はその様子を不謹慎ながら可愛いと思い、しばらく真耶さんの好きなようにさせることにした。

 その後、しばらく泣き続けた真耶さんは落ち着きを取り戻し、顔を羞恥で真っ赤にしながらあの後のことを話してくれた。

あの『四代目宮本 武蔵』と戦った後、真耶さんは俺を見つけて急いでIS学園の医療室へと連れてきたらしい。

当時は本当に大変で、俺は死体同然だったとか。

IS学園で控えていた教員の人達は急遽救難チームとして街などに出向き、一緒に倒れていた武蔵も治療室へと運んだらしい。

あの戦いで戦っていた砂浜はもう原型を残さないくらいに荒れたが、幸い街には被害は出なかった。

ただし、かなり遠くにある山が半分近く消し飛んだが。

街は特に問題無く日常に戻り、IS学園もゲート以外は被害が無かったので通常に授業を行っているようだ。

武蔵は治療室で治療を受けたが、三日でとっとと出て行ったとか。

その際、笑顔でまた俺と死合いたいと言っていたようだが、それを聞いて俺はやはり御免だと思った。俺と同じくらいの重傷を受けているのに三日で動けるようになる化け物の相手など御免被る。

それから一週間、真耶さんは付きっきりで看病してくれたらしい。

本当に感謝の念が絶えない。その時にあの戦いから一週間経ったことを聞かされたが、不思議と驚きはしなかった。

俺はその後も話を聞こうとしたが、まだ体が疲れているから休むよう真耶さんに言われ布団に寝かしつけられてしまう。

俺自身、まだ治っていないので素直に眠ることにした。

その時、真耶さんが俺の体を優しく抱きしめて添い寝してくれたからか、心が安らぎを感じた。

その心地よい気持ちを抱いて、俺は眠りに付いた。

 

 

 

 そして翌日。

俺は体の痛みで目を覚ますと、真耶さんの優しい笑顔が目の前にあった。

 

「おはようございます、旦那様」

「……おはようございます」

 

少し驚きはしたが、同時に気恥ずかしくなる。

それが嬉しくて、俺は笑顔になる。

『神形正宗・最終正義顕現』を使用した影響か、肉体の再生速度が異様に遅くなってしまっていた。そのため一週間経った今でも体は治りきっておらず、まったく動けないでいた。

 

「ふふふ…こうして旦那様の寝顔を見るのは久しぶりですね。やっぱり……可愛い」

 

真耶さんは顔を赤くしながらも俺に笑いかける。

その笑顔は母性的で何だか安らぐ。

 

「そんなことはないと思うんですけど」

「いいえ、そんなことあります。だって旦那様、いつも私よりも早起きなんですもの。旦那様の寝顔なんて滅多に見れないんですから」

 

真耶さんとこうして会話をしていると、やっと戻ってきたと実感が湧いてくる。

それだけあの戦いは凄まじかった。

そのことを考えていると、真耶さんは急に真面目な顔になる。

 

「真耶さん?」

「……本当に心配したんですからね。旦那様、いつもよりも無茶ばかりして……心配ばかりかけないで下さい! この間だって死んじゃうと思うくらいの大怪我をしたばかりなのに、こんなになって……心配する身になって下さい。私は旦那様が死んじゃったら、もう生きていけないくいらい愛してるんですから! 旦那様が毎回大怪我する度に心配でどうにかなっちゃいそうなんですから、あまり無茶しないで下さいよ」

 

目に涙を溢れさせながら俺に抱きつく真耶さん。

俺は抱きしめてあげたかったが、体がまったく動かないので為すがままにされるしか出来ない。

 

「すみません、毎回こんなに心配をかけてしまって」

「本当ですよ、旦那様はいつもいつも、いつもいつも…………」

 

俺はその件に関して謝ることしか出来ない。

俺も真耶さんが同じような目に遭ったとすれば、それはもう心配するだろうから。

しかもそれが何回もである。心労を起こしても仕方ない。

そんな思いをさせてしまっている身としては、本当に申し訳無く言い訳のしようもない。

真耶さんは胸にため込んでいた不満を俺にありったけぶつけると、俺をぎゅっと抱きしめたまま上目づかいで見つめてきた。可愛らしいが、どこか真剣な様子に俺は息を呑む。

 

「旦那様が武者として毎回あんなふうに戦うことは知ってますし、仕方ない事だって分かってはいます。でも……やっぱり心配なんですよ。本当なら旦那様には危ない目に遭って欲しくないですし、無茶もして欲しくないです。旦那様が死んじゃうんじゃないかって何度も考えてしまうのはつらいですよ! でも、旦那様は武者だから……自らの正義を、信念を貫く人だから…だから好きになったんです。だから、武者を辞めて欲しいとは言えません」

 

真剣に顔で泣きながら俺にそう言う真耶さん。

俺はその声をひたすらに聞く。

 

「でも、やっぱり旦那様がこんな目に遭うのは嫌なんですよ! だから……約束して下さい」

「約束…ですか?」

「はい! 旦那様は絶対に死んじゃ駄目です! 私を一人にしないで下さい。旦那様がしんじゃったら、私は生きていけないんですから。それだけ愛してるんですから。これからもずっと、それこそお爺ちゃんお婆ちゃんになって老衰で死ぬまで、ずっと一緒にいたいんです。だから旦那様は絶対に死んじゃ駄目です!」

 

まるで子供のように俺にそう約束を言う真耶さん。

俺はそれを聞いて………笑い出してしまった。

腹筋に激痛が走るが、それでも笑う。

それを見て真耶さんが怒りだしてしまった。

 

「なっ、何で笑うんですか!」

「いや、だって…………」

 

俺は少し笑うと、真耶さんを見つめながら答える。

 

「だってそれは当たり前のことだから。俺だって真耶さんが死んじゃったら生きていけないんです。そんなことになってしまったら、全てに絶望しながら死んでしまいますよ。それに俺は真耶さんに婚約を申し込んだ人間ですよ。一生一緒にいたいのは俺も一緒です。死ぬ気なんて毛頭無いし、死にそうでも真耶さんがいるから、俺は絶対に諦めない。心配ばかりかけているのは本当に心苦しいけど、それでも一緒にいたい。大好きで、こんなにも愛してるから」

「旦那様!!」

 

俺の答えを聞いて真耶さんは感動したのか力一杯抱きしめてきた。

体が痛かったが、それでも嬉しくて俺は笑顔になる。

 

「分かってはいるんです! それでも不安で不安で……」

「それも分かってますよ。それだけ心配して……愛されてるってわかりますから」

「旦那様……うわぁあああああああああああああああああああああああああんんんんんんん!!」

 

真耶さんは昨日と同じく、また泣き出してしまった。

だが、それが悲しみからではないことを知っている俺は嬉しく感じてしまう。

こんなにも愛されているってことが良く分かるから。

 その後、ある程度泣いた真耶さんは俺を抱きしめながらベットで一緒に横になっている。

 

「旦那様ぁ…」

 

甘い声で俺に囁きながらギュ~、と優しく体をくっつけてくる。

その柔らかい感触に少しドキドキしつつ俺は笑いかける。

 

「さっきとは変わって随分と甘えん坊ですね」

「だって…それだけ旦那様が心配だったんですから、心配かけた罰です。甘えさせて下さい」

「ははは、好きなだけ甘えて下さい」

 

罪滅ぼしと言うわけではないが、心配ををかけすぎたのでこれくらいいいと思う。

正直、甘えてくる真耶さんも可愛くて見ていたいというのもある。

今の俺は動くことも出来ないので、これぐらいしか返せることが無い。

そう言われた真耶さんは俺を更に抱きしめる。

腕が谷間に挟まれ沈んでいくのを見て、俺は鼓動がドキドキと高鳴る。

 

「でしたら、存分に!」

 

喜びを顕わにした真耶さんは、俺の方に顔を近づけ……

 

「ちゅ……」

 

キスをした。

来ると何となく分かっていたので、俺は驚かない。

そう思っていたのだが、そのまま真耶さんは唇を押しつけ、舌を俺の口の中に侵入させてきた。

 

「んぅ…ちゅ……ふぅ…ん…んん……ちゃぷ…」

「!?」

 

口の中を蹂躙するかのように舐め回し、唾液を俺に送り込んでくる。

俺はその感触に頭が真っ白になっていく。

しかも全然唇を離さす、俺をしゃぶりつくさんとばかりに深いキスをし続ける。

 

「ちゅ……ちゅぷ…れろ………ちゅ……ちゅぷ…れろ……ふぅ…」

 

次第に酸欠で苦しくなってくるが、頭の芯までふやけてしまいそうな快楽に気にならなくなってしまう。

そして真耶さんは唇を離すと、とろけた顔で見つめながら俺に言う。

 

「旦那様……だぁい好きです! 喩え神が離そうとしたって、絶対に離れませんから。何度だって言います。愛してます!! だから、ぜったに離しませんよ」

 

そう言うと、妖艶な笑みを浮かべて、更に俺に深いキスをしてきた。

 

「旦那様には私がどれくらい旦那様のことを愛してるのか、その身で味わって貰います。だから旦那様……覚悟して下さいね」

 

そう言いながら俺に更にキスをしてくる真耶さんを見ながら俺も思う。

 

(俺だって一緒ですよ。喩え神や悪魔が邪魔してこようとも、それすら倒してあなたを離しません。絶対にだから一緒にいて下さいね、真耶さん。愛してます……ずっとね)

 

そう思いながら、俺は真耶さんに貪られるかのように愛されるのだった。

 




後二話で完結する予定です!

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