装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は山田先生の出番が大目です。


新・生徒会

 卒業式を無事に終えて少しは忙しく無くなったかと思いきや、布仏先輩が抜けた穴は大きかった。

それまで先輩がやっていた仕事が自分達に回ってきたが、その多さに今まで自分達が如何に先輩に頼っていたのか良く分かった。(一夏の処理する量に比べれば少ないが)

それにより生徒会の忙しさは相変わらずであり、会長はその忙しさに目を回していた。

 

「あぁ~もう、忙しいったらありゃしない!! 今まで虚ちゃんに頼ってきたツケが来たわね!」

 

今日も生徒会は忙しく、会長は若干涙目になりながらもいそいそと手を動かしていた。

その手によって机に積まれている書類が処理されていくが、全体的にはまったく減っていなかった。

 

「お姉ちゃんが今まで虚さんに頼りすぎていたせい」

 

更識さんは泣き言を言う会長をジト目で睨みながら文句を言う。

当然その手元には書類が多く広げられていた。

 

「そうだよね~……お姉ちゃんがいないとケーキがぁ…」

「本音はもうちょっと真面目に働いて」

「えぇ~、ちゃんとやってるよ~、カンちゃん~」

 

皆忘れがちだが、もう一人の生徒会役員である布仏さんも先輩が卒業してから仕事をしている。

彼女は元から生徒会役員だが、普段のようにのんびりとした様子でそれを同じくらい作業ものんびりとしている。なのであまり仕事が進まない。そのことを先輩は理解していたので、今まで生徒会の仕事をやらせてこなかったようだが先輩が卒業した後ではそうもいかない。

今は猫の手でもかりたいのだ。遊ばせておける余裕はない。

布仏さんは先程言った通りのんびりとだが書類をこなし、机の上で伸びていた。

それを見て更識さんが咎めるが、あまり効果はないようだ。

それをどことなく微笑ましく見るも、俺もそれなりに手早く書類をこなしていく。

 

「まぁ、更識さんの言う通り、今まで布仏先輩に頼り切りでしたからね。もう先輩はいないのですから、その分自分達が頑張らないと」

「まったくもって織斑君の言う通り。だからお姉ちゃん、本音。サボっちゃ駄目」

「「はぁ~い…」」

 

そんなふうにお喋りを挟みながら仕事をしていると、もう一つ新たに設けられた席に座って俺達の仕事を手伝っていた人が席から立ち上がった。

 

「頑張るのもいいですけど、もう二時間近く続けてますから。みんな集中力が切れてきちゃいますよ。だから休憩にしましょう」

 

ポンっと胸の前で可愛らしく手を合わせると、その人は生徒会室に備え付けられている冷蔵庫から何かを取り出した。

 

「休憩したときに一緒に食べようと思って作ってきたんです。あ、勿論みんなの分もありますよ」

「わ~い、ケーキだぁ~」

 

取り出した物を机の上に置くと、それを見て布仏さんが目を輝かせていた。

机に置かれたのはイチゴのショートケーキだ。

真っ白いクリームに真っ赤なイチゴが良く映える。とても良く出来ていて、売り物だと言って出せば信じてしまうくらいの出来の良さだ。

その人は笑顔でケーキを切り分けていき、皿に装って皆に配っていく。

それを受け取ったみんなはさっそく一口食べる。

 

「んぅ~、美味しい!」

「凄く美味しいです…凄い…」

「うまうま~」

 

皆顔を恍惚とさせてケーキをもう一口と食べていく。

そう言ってもらえて、その人は実に嬉しそうだった。

しかし、さっきまで喜んでケーキを食べていた会長が急に突っ込みを入れる。

 

「って、何でここにいるんですか、山田先生!!」

 

その突っ込みを受けてニコニコと笑っていたその人こと、真耶さんは不思議そうな顔をしていた。

 

「何言ってるんですか、更識さん? 私がいるのは当たり前じゃないですか」

「そうだよ、お姉ちゃん。忘れたの?」

「そうですよ。ちゃんと聞いてなかったのですか、会長」

 

真耶さんや更識さん、俺にそう言われ会長は自分だけ聞いてないと言った様子だった。

なので改めて説明することに。

 

「真耶さんはこの度、生徒会顧問になったんですよ」

「えっ、そうなの!?」

「はい、私は生徒会顧問の先生になったんです」

 

俺に言われて驚愕する会長、そしてそれを受けて嬉しそうに胸を張る真耶さん。

大きな胸が見せつけられるかのように大きく揺れ、それを見てしまった俺と更識さんは赤面してしまう。

 

「その話、私聞いてないんだけど」

「真耶さんが来た日に話しましたよ。会長は書類が忙しくて生返事でしたけどね」

「そんな~……」

 

この前、卒業式の後の生徒会でその事について話したはずである。

会長は忙しさのあまり覚えていないみたいだが。

生徒会では新たに顧問を付けようということになり職員室の先生方と話し合った結果、真耶さんがその任につくことになったのだ。

その最もな理由は、会長の監視である。

やはり教員が監視してくれた方が良いと判断したからだ。

職員室でその話を持って行ったとき、かなりの騒ぎになり大変であった。

先生方が俺にサインを貰おうとしたりお近づきになろうとしたりして近づいてきたのを、真耶さんがハイライトの消えた目で静かに止めていた。

普段ではまず見せない余りの怖さに先生方は皆震え上がり、皆顧問を辞退。結果、真耶さんが生徒会顧問となった。

このことに千冬姉は冷や汗を浮かべながら頷き、学園長はニコニコと笑っていた。

 なのでその日から、真耶さんは生徒会顧問として俺達を見てくれている。

仕事を手伝ってくれるし、皆を気遣ってこうして差し入れを良くしてくれる。

何よりも……

 

「まったく、更識さんはもう~。ね、旦那様」

「そうですね。会長はもっとしっかりしてもらわないといけませんからね」

 

俺と一緒にいてくれる。

真耶さんは俺の腕に抱きつきながら甘える。柔らかく巨大な胸に腕が埋もれてしまい、その感触に顔が真っ赤になってしまう。しかし、それでもこうして一緒にいられるのが嬉しくて俺も笑顔になる。

どうも……前のダイブの件以来、俺は少し人恋しくなってしまったみたいだ。

真耶さんと一緒にいたくてしかたない。

それは真耶さんも一緒のようで、だからこそ生徒会顧問になったようだ。

本人曰く、

 

「だって……旦那様が終わるのを待ってるのは寂しいんですよ。こうすればもっと旦那様と一緒にいられますから」

 

だそうだ。

顔を恥ずかしさで真っ赤にしつつ甘えるようにそう言う真耶さんは可愛くて、ついつい俺は見とれてしまった。

互いに一緒にいたいと思えることが嬉しくてしかたない。

このままずっと一緒にいたいと、心の底から思える。

そんなふうに一緒に笑い合っていると、会長は何やら言いたそうな顔をしていた。

しかし、自分が聞いていなかったということで反論できないようだ。

悔しさから少しやけになってケーキを頬ばるが、すぐにその美味しさで頬を緩めていた。

まだ食べていないので、俺もさっそく食べようと思ったのだが……

もはや毎度の如く、俺の前にケーキはない。

そのことが少し可笑しくて笑ってしまう。では俺のケーキは何処なのかと言えば……

 

「はい、旦那様。あ~ん」

 

そう、真耶さんの手元にある。

真耶さんは俺の口の前に一口大サイズにしたケーキを差し出し、ケーキよりも甘い声で俺にあ~んをする。

これが最近では殆ど。

恥ずかしいのは変わらないので、俺は決まり事の様にこう答える。

 

「真耶さん、流石に恥ずかしいですよ」

 

そう答えると真耶さんは少し拗ねたような泣きそうな感じになる。

 

「旦那様は私のケーキなんていらないって言うんですか……」

 

その悲しそうな様子に俺は我慢が出来ない。大好きな人には常に笑っていて欲しいから。

 

「そんなことないですよ! あ、あ~ん」

「旦那様ぁ! あ~ん」

 

そんな小芝居めいたことをいつもの様にやる。

真耶さんはいつもとろけそうな笑顔で俺にはい、あ~んをして俺はそれに恥ずかしがりつつも応じる。

そして口の中に入ったケーキはイチゴの酸味と程良い甘さのクリームがしてとても美味しかった。

最近はお菓子作りにもはまってきたらしく、こうして良くお菓子を作ってきてくれる。

 

「旦那様に美味しいお菓子を作ってあげたくて」

 

顔を恥じらいで赤くしつつも健気にそう言う真耶さんは本当に可愛くて、余りの可愛さにかなりキスしまくったのは言うまでもない。この時は気絶するまでしてしまったほどだ。

そのせいか、美味しく出来たらご褒美としてキスをねだられるようになってしまった。

まぁ、俺も嬉しいから良いのだが。

 

「どうですか、旦那様。美味しいですか」

 

咀嚼している俺に真耶さんは期待の籠もったキラキラした眼差しで聞いてくる。

そんな年の割に可愛らしい顔に愛おしさを感じながら俺も答える。

 

「はい、今日もとても美味しいですよ。毎日でも食べたいくらい」

「まぁ! うふふふ、旦那様ったらぁ~。それじゃぁ後で……ご褒美、待ってます」

 

喜びながら上目使いで俺を見つめながら甘い声でそう言う真耶さん。

そのちょっとエッチな感じに俺は顔が熱くなっていくのを感じた。

 

「こ、こほん……本当に美味しいですよ。だから真耶さんも、はい、あ~ん」

「あ~ん…んむんむ…ふふふ、旦那様に食べさせてもらえると美味しさが三倍以上です」

 

お返しにはい、あ~んをすると、真耶さんは無邪気な感じにパクっと食べる。

その様子がまた可愛くて、俺は頬が緩んでしまう。

そのまま二人で恥ずかしがりつつも食べさせ合い、ケーキは無くなっていった。

最後の一切れを食べた時、真耶さんは何かに気付いたのか俺の顔をジッと見つめる。

 

「旦那様、じっとしていて下さい」

 

そう言うと、俺の顔に顔を近づけていき……

ちゅ、と俺の頬に軽くキスをした。

 

「こんなところにクリームがついてましたよ。ごちそうさまです」

「っ!?」

 

少し恥ずかしそうにえへへ、と笑う真耶さん。

そんな真耶さんの魅力に俺はノックダウンしそうだ。

 

「これ以上禁止! あなたたち生徒会室で何してるのよ! ここは仕事の場であって、あなたたちがイチャつく場所じゃない。仕事が進まなくてどうするのよ!」

 

何かに我慢出来なかった会長が爆発するかのように俺達に怒鳴る。

確かに言っていることはもっともなのだが……

 

「「もう書類は全部処理しましたから」」

 

真耶さんと二人で一緒にそう答える。

会長が真耶さんと話している間に此方は全てを終わらせ、真耶さんは自分に振られた書類は全て片し終えている。

それを聞いた会長は顔を真っ赤にしてこう答える。

 

「もう! リア充禁止ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

そんな叫びと共に、こうして今日も生徒会が回るのだった。

 これが卒業式の後の、新しい生徒会の日常だ。


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