いや、本当に申し訳ないです。
暗い室内に様々な光が灯っていく。
光と一緒に機械の作動音も聞こえてくる。
その部屋の中央にベッドのようなものがあり、そこには元がなんなのか分からないほどに破壊し尽くされた残骸が置かれていた。
「解析はどうだ、山田先生」
部屋には数人の技術系教職員が解析機材を動かし、山田 真耶が監督していた。
そこに所用で出ていた織斑 千冬が部屋に入り、進捗具合を聞く。
「やはり無人機です。しかもコアは登録されているものではありませんでした。ISのコアは467しかありません。でもこのISにはそのどれでもないコアが使用されています。一体どこの国が・・・」
「そうか・・・・・・」
千冬にはその犯人が分かっていた。
ISのコアを作れる人物など、この世に一人しかいないのだから・・・・・・
「しかしコアのことも驚きですが、劔冑の性能にはもっと驚かされましたね」
「ああ」
千冬もそのことには驚愕を隠しきれなかった。
未だにIS陣営にとって未知の塊のような物。どのような能力を持っているのか全く分からない。
第三世代型ISすら余裕で超えるほどの性能などと総理が言っていたが、千冬や真耶はさすがに誇張しすぎだと思っていた。
しかし今日のこの残骸を見れば嫌でも考えが変わらざる得ない。
一夏の劔冑、正宗は胸部から鉤爪のようなものを出して敵を一撃のもと破壊した。
多少は衝撃砲を受けてダメージを負っていたかもしれないが、そこまでの損傷は見られなかった。
それを『破壊』したのだ、機能停止ではなく。
それほどの破壊力を持つ武装はISの中でもそうはない。
クアッドファランクスのような飽和砲撃でなら分かる。あれは相手に避けられない、防げないほどの弾雨を浴びせることでそれを可能としている。
しかし正宗のそれはそうではない。
ただ挟んで圧殺しただけである。
そこにどれだけの力がかかっているのか、全くもって想像出来ない。
通常、絶対防御が発動すると大概の攻撃ははじかれる。しかし正宗のそれはまったくものともせずに相手を握り続けた。
威力ではきっと『楯殺し』を余裕で凌駕してるだろう。
それだけで第三世代型ISを超えていると言ってもいい。
しかも一夏の言っていたことも加味すると、まだ正宗は全ての性能を発揮してないらしい。
千冬にはそのことがどれほどのことなのか、考えずにはいられない。
「・・・・・・先生・・・・・・織斑先生!」
「は!?すまん、山田先生。それで何か」
「すみません、あの、その~~」
「どうした、口ごもって。言いづらいことか?」
千冬は言いづらそうにしている真耶に優しく促す。
「い、一夏君のお見舞いに行ってきて良いでしょうか?・・・・・・もう先生は行かれたんですよね」
「ああ、そのことか・・・グースカとイビキをかいて間抜けな面をさらしていた。別に言っていいぞ、ここはもう解析待ちしかすることが無いだろう。早く行かないと小娘どもに先を越されるぞ」
そう千冬は意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「ただし一夏が寝ているからって淫行はするなよ。まぁ・・・キスくらいなら許すがなぁ」
千冬はそう言って、く、く、く、と笑う。
真耶は言われた瞬間に、ボン、と爆発したかのように真っ赤になった。
「そ、そんなことするわけないじゃないですか!! 千冬さんは意地悪ですよ!」
そう顔を真っ赤にしながらアワアワと真耶は部屋を出て保健室に向かった。
さかのぼること少し前。
学園の廊下で血まみれになっている織斑 一夏が発見され、あたりは相当な騒ぎになった。
治療室に運ぼうとしたところ、何故か怪我は無く制服だけがぼろぼろになっており、本人もすやすやと寝ていた。
そのことにより一夏は、鈴のいる保健室へと運ばれていった。
どうやら一夏は自室に戻る前に力尽きたようです。