装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回はクロエが出ますよ。


束の来襲、夢への誘い その2

 いきなり来た束さんに連れられて急遽、俺達は整備室に行くことになった。

生徒会の仕事に関しては、後でさらに頑張れば問題はない。

生徒会室から歩くこと約十五分……俺達は整備室の前についた。

 

「これを見たらみんな驚くよぉ~! とりゃ~!」

 

束さんのテンション高めの掛け声と共に整備室の扉が開いた。

整備室では前に見たことのある機械の他に大きなベットのような物が二つ置かれていた。

ベットには目などを覆うヘッドマウントディスプレイが置いてある。あれが束さんの言っていたコアネットワークの装置か。

束さんはスキップするかのような足取りでその装置の前にまで行き、元気よく機械の説明を始める。

 

「じゃ~ん! これがコアネットワークを利用した電脳ダイブマシン! その名も『ワールド・パージ』!! 一応こんな形だけどこれでもISなんだよ~」

 

その説明を受けて皆が驚愕する。

今までISと言えば『ISコアを用いたマルチフォームスーツ』のことを指してきたが、束さんにとってはそうとも言い切れないものらしい。

束さんの最近の定義では、『ISコアを用い、それを人が使用するものならばISたり得る』のだとか。

詳しくは分からないが、束さんにとってはそう言う物らしい。

束さんは驚く皆を見てさらに調子良く話す。

 

「そ・し・て・これがこのISの操縦者、『クーちゃん』だよ!」

 

束さんがそう言うと、束さんの後ろからひょこりと女の子が出てきた。

背の小さい女の子で、マドカと同じくらいの高さしかない。髪はラウラと同じ銀髪で長く、真っ白いワンピースを着ていた。何よりも目を引くのはその目である。

白目の部分まで真っ黒な瞳。それは通常では絶対にあり得ない。明らかに人為的いに何かされた感じが見受けられる。

その少女は俺達の前に出ると、ぺこりとお辞儀をして挨拶する。

 

「織斑様、山田様、初めまして。私はクロエ・クロニクルと申します」

「クーちゃんは私の義娘なんだよ~。私がちょっと前に違法な研究をしてる所から持って帰ってきたのだ~、ぶい!」

 

そう言いながらクロエに抱きつく束さん。

クロエはくすぐったそうにしつつも普通にしていた。

束さんに義娘がいたことに驚いた俺と真耶さん、生徒会の面々は何も言えなくなりそうになる。

そんな俺たちを置いて、箒がクロエに話しかける。

 

「元気だったか、クロエ」

「はい、箒様もお変わりなく」

「様付けは止めてくれと前に言っただろう」

「では…箒叔母さんと」

「ぐはっ……ま、まだそう呼ばれる年齢ではない……」

 

どうやら箒は知っているらしく、普通に話していた。

その後に続いて、鈴やシャル、セシリアやラウラがクロエに親しそうに話しかけていた。

箒達は皆面識があるらしい。

後で聞いたのだが、俺が色々と忙しい間に皆束さんと一緒に色々と遊びに行って親しくなったらしい。

流石に挨拶してもらって返さないのは相手に失礼なので、俺はちゃんとクロエに挨拶をする。

 

「遅れてすみません。自分の名は織斑 一夏と申します。束さんには小さい頃から色々とお世話になった身。今後ともよろしくお願いします」

 

そう挨拶すると、俺に続いて真耶さんも挨拶をした。

 

「す、すみません、遅れてしまって。私は山田 真耶って言います。この学園で教師をしています。だんっ……一夏君もろともよろしくお願いします」

 

そして二人とも自己紹介をすると、クロエは少し不思議そうに首を傾げながら聞いてきた。

 

「お二入とも、あまり驚かれないんですね?」

「え?」

「私の目を見ても驚いたり恐怖したりといった感情を今はまったく感じられません。最初はどんな人でも驚いて距離を取るというのに」

 

どうやらクロエはこの黒い目のことで色々とあったらしい。

それに関して、俺は苦笑を浮かべながら答えた。

 

「う~ん…そう驚かないと言われても……もっと濃くて凄い人達ばかり知り合いにいましたから。あの人達に比べればクロエさんは充分に可愛らしいですよ」

 

俺の答えを聞いて苦笑する真耶さん。

主に師匠とか童心様とか雷蝶様とか、ウォルフ教授とか……

数え上げたら切りが無いくらい濃い人達ばかりである。

それに比べれば目が真っ黒など、可愛いものだ。

 

「そ、そうですか……」

 

クロエは俺の答えを聞いて頬を赤らめていた。

 

「クーちゃん、かっわぁいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

そんなクロエに食らいつくように抱きつき顔をぐりぐりと擦り付ける束さん。

少し苦しそうだったので箒達に引き剥がされていた。

 

「どう、クーちゃん! いっくんは凄いでしょ!」

「はい。凄く良い人だと思います」

「だよね~。クーちゃん、こんなお父さんなら欲しくない!」

「そうですね。織斑様なら……嬉しいです……」

「だってさ、いっくん! クーちゃんのためにも結婚『絶対に駄目です!』む~、この巨乳眼鏡~!」

 

俺にそう言っては真耶さんに止められ、睨み合う二人。

昔からは考えられないくらい真耶さんは成長したなぁ~と思う。

二人がいがみ合っている間に生徒会の面々やマドカがクロエに挨拶していく。

皆、クロエに怯えずに挨拶できたことでクロエも嬉しそうだった。

特にマドカと波長が合うのか二人は直ぐに仲良くなっていた。

 そして少しして、改めてワールド・パージについて話を進めることにした。

 

「つまりクーちゃんがこれを操作するから、いっくん達はそのベットで横になっていればいいだけなんだ。電脳世界へは約十分行ってもらって、時間が過ぎたら強制的にこっちに戻ってくるようになってるから」

 

そう説明する束さんの話を聞いて大体どんなものかを把握する。

此方から何かする必要は無く、十分経てばダイブ終了ということか。

 

「それにね~、もっと楽しんで貰おうと思ってダイブ中は少しだけ記憶の改竄をするようになってるんだ~! あ、と言ってもダイブ中だけだからこっちに戻れば綺麗に戻るし、ダイブ中でも刺激を受ければ思い出すから。要はシュチュエーションってやつだよ」

 

それは何とも手の込んだことで。

遊びにも全力を尽くすのは何処ぞの人に似ていて、何やら嫌な予感しか起こさせない。

本当に大丈夫だろうか?

そんなふうに心配していると、真耶さんが俺の手をぎゅっと抱き締めてきた。

 

「楽しみですね、旦那様!!」

 

とてもわくわくした様子で嬉しそうに笑う真耶さん。

そんな可愛い笑顔をしていたら、俺は水を差すようなことは出来ない。

それに……真耶さんが嬉しいのなら、俺も嬉しい。

だからこそ、俺は笑顔で返す。

 

「ええ、楽しみですね」

「はい!」

 

俺の笑顔を見てさらに嬉しそうに笑う真耶さん。

そんな可愛い真耶さんが見られるなら、来れでもいいか。

 そう思いながら話は進み、やっとダイブすることになったのだが……

 

「いっくんは最後だから隣の部屋に行っててね」

 

そう束さんに言われ、俺だけ整備室から追い出された。

 

「な…何故………」

 

俺のむなしい声が廊下に流れたが、それを聞く者は誰もいなかった。

 

 

 

 


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