装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は感想にあった意見を取り入れて話を進めていこうと思います。


束の来襲、夢への誘い その1

 コミカなどのイベントなどに参加したりして忙しかった二月も終わり、ついに三学期最後の三月へと入った。

生徒会は間近に迫った卒業式などで大わらわになっており、三月の初日から大変だった。

 

「えぇ~ん、やってもやっても終わらない~!」

 

二月の初めの頃と同じような悲鳴を上げている会長を尻目に俺達は書類やらをこなしていく。

しかし、その膨大に今の生徒会では追いつかないと判断して急遽、他の人にも手伝って貰うとことにした。

 

「何で私達まで手伝わなければならないのよ~」

「これってどうすればいいのかな?」

「あれはこっちでそれはそっちで…」

「むぅ~、これは一体何の書類なのだ…」

「成程。こういうことですのね」

 

各自に四苦八苦しながら書類を処理しているのは、箒とセシリア、鈴とシャルとラウラである。

何故この五人かと言うと、基本代表候補生は責任感が強く情報処理能力も長けているからだ。

(箒も責任感が人一倍強いために呼んだ)

 

「みんな、改めてすまないな。今は猫の手を借りたいくらい忙しくて」

 

俺は箒達に礼を言いながら仕事をこなすと、皆そんな事ないと励ましてくれた。

それが素直に有り難い。

箒や鈴とも前にくらべれば話しやすくなったのも、きっと二人の心の整理がついてきたからだと思う。またこうして俺と普通に話してくれることは本当に嬉しい。

 

「兄さん、これはどうするんだ?」

 

俺の隣で書類を片していたマドカが俺に分からない書類について聞いてきたので、それを的確に指示を出すとマドカはそうか、と嬉しそうにそれを聞いて書類を処理していた。

箒達を呼んだ際、マドカも行くと言ってきたので連れてきたのだが、これが意外にも処理能力が高い。普段幼い感じなので思いもしなかったが、元々の能力が高いためにこういうデスクワークも上手にこなしていた。

 皆の御蔭で普段よりも三割増しで仕事が片づいていく。

それは本当に有り難く、御蔭で半分以上が片付いた。

とはいえ、そろそろ生徒会室に入ってから二時間が経過しそうであり、皆集中力が切れ始めていた。

 

「は~い、それじゃあみんな。少し休みましょうか」

 

そんな空気の中、甘い優しい声と共にある人が生徒会室に入ってきた。

俺はその声を聞いて自然に笑顔を浮かべてしまう。

入って来た人物は最愛の人である真耶さんである。

いつものような優しい笑顔を浮かべていた。手には甘い香り漂う紙袋と紙コップ、それといつも二人でコーヒーを飲むときに使っている水筒を持っている。

真耶さんは持ってきた水筒の中身を紙コップに注ぎ皆に渡す。

紙コップからは芳しい香りが立っていた。

 

「疲れた時にはコーヒーとかが良いんですよ」

 

そう笑顔で皆に言いながら持って来ていた紙袋を開ける真耶さん。

中からは甘い顔り漂うクッキーが姿を覗かせていた。

 

「すみません、こんなにしてもらって…」

 

布仏先輩が真耶さんにお礼を言うと、真耶さんは笑顔で返していた。

 

「いいんですよ、これぐらい。私は先生ですから、みんなの仕事を手伝うわけにはいきません。だからこれぐらいのことでしかみんなのことを応援出来なくて申し訳無いです」

 

そう申し訳なさそうに言う真耶さん。

そんな悲しい顔をしないで欲しい俺は真耶さんに笑いかける。

 

「そんなことないですよ。真耶さんのその心使いだけで癒されますから」

「旦那様ぁ……」

 

俺の言葉を聞いて真耶さんが頬を赤らめる。

そんな恥じらう姿が可愛いからこそ、俺は心の底から癒されるのだ。

 

「はい、そこ! イチャつかない!」

 

会長がそんな俺達を見て突っ込みを入れ、真耶さんは少し慌てる。

別にそこまでイチャついてなどいないのだが?

皆そんなやり取りを見つつ、真耶さんが持ってきたクッキーを食べ始めた。

 

「うわっ!? これすっごい美味しい!!」

「凄いサクサクしてる。軽いくて口の中でさっととけるような甘さがいいね」

 

鈴とシャルが一口食べて驚きつつも感動していた。

 

「これはもしかして……手作りですか!」

「売り物ではありませんの!?」

 

箒が真耶さんにそう聞き、それにセシリアが続く。

聞かれた真耶さんは少し驚きつつも嬉しそうに答えた。

 

「は、はい。さっき家庭科室のオーブンを借りて作らせてもらいました」

「山田先生がここまで料理が上手いなんて思わなかった」

「まったくですわ…意外です……」

 

二人は意外だと驚いていた。

それを嬉しそうに笑いながら真耶さんは俺の方に来た。

 

「ど、どうですか、旦那様。おいしいですか?」

 

少し緊張した顔で真耶さんは俺にそう聞いてきた。

無論俺の答えは決まっている。その答えを笑顔で答えた。

 

「ええ、とても美味しいです。甘さがすっと体に染み渡る感じがして疲れが取れるようです。ありがとうございます、真耶さん」

「いえ、そんなぁ……旦那様にそう言ってもらえて…嬉しいです」

 

俺の答えを聞いて真っ赤になりつつも幸せそうに笑う真耶さん。

その可愛らしい笑顔に見とれつつももらったクッキーを摘まんでいく。

コーヒーのすっきりとした苦さとさわやかな甘さのクッキーが本当に良く合い、ついつい手が進んでしまう。そのため、気がつけば貰ったクッキーは空になっていた。

その事に手がクッキーを掴まなくなるまで気付かなかった。

それを見て真耶さんがふふふ、と笑う。

 

「旦那様。もっとクッキー、いりますか」

 

何だか恥ずかしいところを見られたので気恥ずかしく思いながらも答える。

 

「ええ、お願いします。あまりにも美味しいものですから、ついつい進んでしまって。いくらでも食べられそうですよ」

「そうですか。えへへ…」

 

真耶さんは俺の答えに嬉しそうに笑いながらクッキーの紙袋を俺に持って行くのだが……

何故かくれない。

そのまま真耶さんは一つクッキーを摘まむと、俺に差し出す。

 

「旦那様…はい、あーん」

 

恥じらいつつも潤んだ瞳で俺を見つめる真耶さん。

その瞳に吸い込まれるように俺は差し出されたクッキーに向かって口を開ける。

 

「あーん」

「はい、どうぞ」

 

そして口にクッキーを入れて咀嚼する。なんだかさっきよりも甘くて美味しい。幸せの味がした。

 

「そういえば真耶さんは食べたんですか、クッキー?」

「そう言えば味見以外は食べてないですね」

「でしたら……」

 

俺はそう言って真耶さんの元からクッキーを一つ摘まみ真耶さんに差し出す。

 

「絶対に食べたほうが良いですよ。とても美味しいですから。はい、あ~ん」

「は、はい! あ、あ~ん」

 

俺に差し出されたクッキーを見て感動しながら恥じらいつつ口を開ける真耶さん。

そのまま柔らかい唇の前にクッキーを持っていくと……

パクっとクッキーを食べた……俺の指ごと。

そして少し俺の指を舐めると指を口から離した。

 

「んふふ~…旦那様の指、あまぁいです」

「もう、真耶さんたら」

 

舐められた感触にドキドキしながらも、どこか嬉しくて俺は微笑む。

はぁ……やっぱり真耶さんは可愛いなぁ。こういうお茶目なところも可愛くて、俺を何度もドキドキさせてくれる。それがたまらなく嬉しい。

 

「げほっ…」

「お姉ちゃん、しっかり!」

 

会長が何か吐き出していたようだが気にしない。

 

「か、簪ちゃん…私はもう…」

「何言ってるの、お姉ちゃん! ……こんなの序の口だよ……」

「ガクっ……」

「「「「「かいちょーーーーーーーーーーうっ!!」」」」」

 

会長が倒れたことで箒達が何やら慌ただしいが、何かあったのだろうか?

まだ仕事が残っているのだから、倒れられては困る。

 

「あぁ~、真耶義姉さんずるいぞ。兄さん、私のも、あ~ん」

 

そんな最中、マドカが俺達を見て自分もして欲しいと口を開けてきた。

その姿に真耶さんと一緒に笑いながら俺はマドカにはい、あーんをするとマドカは子犬のように喜びながらクッキーを食べていた。

 

「はぁ……癒されますね……」

 

色々と疲れた布仏先輩はそんなマドカの姿を見て癒されているようだ。

 そんな感じに一休み入れている最中、この和やかな雰囲気はいきなり壊された。

 

「いっくーーーーーーーーーーーーーーーーーーん、おっひさーーーーーーーーーーーーー!!」

 

そんな大声と共に生徒会室の扉が開き、俺に向かって両手を挙げて飛び込んでくる……束さん。

しかし、その手が俺に触れることはなかった。

 

「馬鹿な真似をしてるんじゃない、束」

「ぐえっ!?」

 

そんな声と共に束さんはいきなり後ろに引っ張られ、首が締まった声を出しながら俺の手前に落ちた。

よく見ると束さんの首にはロープが結ばれており、その先には呆れ返っていた千冬姉がロープを片手に立っていた。

 

「すまんな、いきなり。こいつがすぐにでも試したいと聞かなくてな」

 

千冬姉は俺達にそう謝ると、ロープをたぐり寄せ束さんを引っ張っていた。

 

「酷いよ、チーちゃん! せっかく再会のハグしようと思ったのに。それでこの束さんのおっぱいでドキドキさせようと思ったのに~」

「何馬鹿なことを言っているのだお前は。そんなことをしたら……彼奴に睨まれるぞ」

 

束さんは相変わらず悪ふざけが好きなようだ。

当然それが冗談だということは、誰が見てもわかることだろう……一人を除いて。

 

「何言ってるんですか! 旦那様は私だけの旦那様なんですからね! 絶対にさせません!!」

「わぷっ、真耶さん!?」

 

真に受けた真耶さんは俺を取られまいと大きな胸に俺の頭を抱きしめていた。

柔らかい感触と真耶さんの香りにクラクラしてしまう。

こういうとき、真耶さんは恥じらいをなくすので思いっきり抱きしめる。なので俺の顔は巨大な胸の谷間に埋まっていた。

 

「おい、真耶。こいつのは只の冗談だ、真に受けるな。それよりも…はやく一夏をそこから離さないと……そいつはのぼせるぞ」

「え?……きゃあっ!? ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか、旦那様!」

 

俺の顔を見て慌てて解放する真耶さん。

正直天国が見えたかと思った……すでに天国だが。

 そして改めて束さんが来た理由を聞く。

 

「それで束さん、一体何用でしょうか?」

 

束さんは俺にそう聞かれ、目を輝かせながら俺に答えた。

 

「それはね、いっくん! いっくんに是非ためして貰いたいものがあるんだよ!」

 

そしてそれについて説明し始める束さん。

途中から小難しくなってきたので分かりづらく、、千冬姉が補足を入れる。

 

「つまりこいつはISのコアネットワークを使った電脳世界の構築をしたということだ。それを用いればより効率的なイメージトレーニングなどを行えたりと、まぁいろいろな可能性がある。その実験をお前に協力して欲しい、とそういうことだ。勿論、一夏だけじゃなくここのいる奴等にも手伝って貰いたい。数が多い方がより良いデータがとれるからな」

 

そう言う千冬姉。束さんはニコニコ笑いながらさらに言う。

 

「前にいっくん用に特別に作ったISがあるの。結局使わなかったけど、それを使えばいっくんでもコアネットワークに入れるよ。その装置はもう整備室に設置したの。要は電脳ダイブだね。それでその人が望んでいることを味わえるっていうプログラムだから。色々と楽しめると思うよ」

 

そう俺に言いながらにへへっと笑う束さん。

何やら嫌な予感しかしないのは俺だけだろうか?

 

「というわけで、さぁ、レッツゴー!」

 

そう息巻く束さんに連れられて、皆整備室に向かうことになった。

 

 

 

 まさかこの時はあんなことになるなんて……

この時の俺は思いもしなかった。


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