装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回はまた問題を起こす人達が来ますよ。
そしてお気に入りの減る数が凄いです……
なんだか申し訳無くなってきますね。


カップルコンテスト開始 その1

 お昼休憩を和やかに過ごし、俺と真耶さんと更識さんは柊さんと黛先輩と別れた。

お二人は予定通り、この後もコスプレ撮影を続けるらしい。俺達が騒がした会場も休憩を挟んで少しは熱気も冷めただろう。流石にあの雰囲気のままでコスプレするのは大変かもしれない。

 そして三人でカップルコンテストの会場へと向かう。

コンテストは別のホールを丸々一つ借りて行われるらしく、会場はとても広い。

人も大勢入るくらいの広さがあるらしい。

それだけこのイベントに力を入れているということなのだろう。

そこであることを思い出した。

 

「そう言えば……真耶さん」

「どうしたんですか、旦那様?」

「カップルコンテストって……何をするんでしょうか?」

 

そう、このコンテストで何をするのか全く知らないのだ。

分かっているのはカップルと言うだけに恋仲の男女が出るということくらいである。

俺に聞かれた真耶さんは顎の下あたりに人差し指を添えながら考え始め、少しした後に顔を一気に真っ赤にした。

 

「そうですね~。う~ん………っ~~~~!?」

「大丈夫ですか、真耶さん? 顔が一気に真っ赤になりましたけど」

「ひゃっ!? な、何でもないです!(い、言えない! 旦那様とあ~んなこととか、そ~んなことをしてるところを考えちゃったなんて言えない)」

 

見る見るうちに顔を真っ赤にしていく真耶さん。

その顔も可愛いが、これでは何をやるのかは分からない。

今の真耶さんでは答えるのは無理だと判断し、更識さんに聞くことにした。

 

「更識さんは知ってますか? 何をやるのか」

「私にはちょっと……分からない」

 

聞かれた更識さんも分からないらしい。

これではコンテストの全容が全く分からない。

仕方なく俺は正宗に金打声で話しかける。

武者と劔冑は一心同体。常に共にあり、正宗もこの会場内に一緒に来ている。隠行をしているため、普通には見つからないのだ。

 

「正宗、お前はこのコンテストで何をやると思う?」

『うむ。言葉通りの意味であるのなら、恋仲の者達や夫婦の者達が何かを競い合う行事と判断する。察するに互いの絆を試すのが目的ではないだろうか。しかし、人々の絆とは比べられるものではない。それを競わせようとは、あまり感心出来ぬ行事よ』

 

正宗から返ってきたのは、まさにそのままの意味であった。

そう言われれば確かにそうだと思う。人の絆とは比べられるものではないのだから、あまり感心はできないイベントだろう。

だが、結局それでは何をするのかまでは全く分からないままである。

まぁ、それは行ってから考えるしかない。そう結論付けて俺達は歩いて行った。

 

 

 

 そして会場に付き、参加者である俺と真耶さんはスタッフの人と一緒に控え室へ、更識さんは俺達が見えるよう観客籍の前の方へと移動することになり別れた。

控え室に入ると、俺達以外にも参加者が数多くいた。

ちなみに俺達のエントリーは黛先輩と更識さんがやってくれたらしい。

本来自分達でしなければならないことをしてもらっただけに頭が上がらない。

 

「うぅ~~~~…緊張してきました……」

 

隣を振り向くと真耶さんが緊張して表情が硬くなっていた。

そんな真耶さんに俺は笑いかけながら手を優しくぎゅっと握る。

 

「そんなに緊張しないで下さい。いつも通りに落ち着いて行きましょう。それでこのイベントを精一杯楽しみましょう。ね」

「は、はい! やっぱり旦那様にそう言ってもらえると安心します」

 

握った手を優しく握り返しながら真耶さんは俺に笑顔を向けて安心してくれた。

それが嬉しい。実は俺も緊張していたので真耶さんの優しい笑顔を見て安心出来た。

これであまり緊張せずにイベントに臨めそうだ。

 そしてイベントの始まりを告げる音楽が流れ始めた。

それと同時にスタッフの人が控え室に入ってきた。

 

「は~い、それじゃあ参加者の皆さん! 壇上に上がって下さい」

 

その声と共に参加者の人達が移動を始める。

 

「それじゃあ旦那様、私達も行きましょうか」

「はい、そうですね。行きましょう」

 

真耶さんは俺に笑顔を向けながら繋いだ手を軽く引っ張る。

それに応じて俺も握った手に軽く力を込めながら一緒に歩くと、真耶さんは軽く身体を預けてきた。

その重みに安心を覚えながら共に歩いて行った。

 歩いている最中に、司会者の声が耳に入ってくるのだが……

 

「お前等っ! よくこのコンテストを見に来たな! そんなにイチャついてるカップルが見たいか、この負け組どもめ!!」

「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

若い女性の声が聞こえ、その言葉に応じて会場の観客から歓声? が上がる。

 

「今回、こうしてこのイベントでこのカップルコンテストが出来た事を、私は嬉しく思……わねーよ馬鹿野郎! 何であてがこんなイベントの司会をやらなきゃいけねぇ~んだよ! むしろあてが恋人欲しいわ、お兄さん、付き合ってくれぇえええええ! ……当てつけか! これはあてへの当てつけかぁああああああああああああああ!!」

 

司会者らしき人物は女性のようだが、壇上に近づいていくにつれて嫌な予感が過ぎる。

 

「こんなイベントを見に来るなんてお前等は真性のドMだな! そんなお前等の為に一杯の壁を用意してやった! どうだ、叩きたい放題だぞ! 嬉しいかっ!!」

「「「「「イェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」」」」」

 

しかもこの司会者、まったく司会者らしい仕事を全くしていない。

その上聞き覚えのある声に独特な一人称。そんな人物は知っている限り一人しか覚えがない。

 

「えぇえええええええええい、まぁいい! そんなわけでこのイベントの司会はあてだ! あての名前を言ってみろっ!! せーのっ」

「「「「「コテツちゃ~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」」」」」

 

あ、これはもう決定だ。

俺はこのイベントがただではすまないことを確信した。

そのまま他の人に押されるように壇上へと上がると、壇の中央ではフリフリをつけたちょっとアレな衣装を着た金髪の女性が立っていた。

 

「あ、足利さんですよ、あれ」

「………そうですね…」

 

真耶さんが俺に笑顔でそう言ってきた。

正直言わないで欲しかった。それが逃避だと分かっていても、やっぱり認めたくなかったのに……もう名前を言われてしまった以上、あそこにいる人は俺が一番苦手な人、足利 茶々丸さんその人なのだろう。

半ば諦めの境地に至りつつ、俺と真耶さんは壇上へと昇ると、

 

「それじゃあ、こんなイベントに出てお前等に見せつけたいっていう鬼畜な奴等の入場だ。精一杯の拍手と歓声で迎えてやれ!」

「「「「「ぶぅうううううううううううううううううううううううううううううう!」」」」」

 

そんな全く歓迎されていないブーイングと共に入場させられた。

来ていたカップルの中にはこのブーイングの嵐で泣きそうになってしまった人達もいた。

本当に何をやっているんだ、あの人は……

 

「あ、足利さんは相変わらずですね…」

 

真耶さんは俺に笑いかけるが、その笑顔は凄くぎこちない。

もう俺はこの展開には慣れたとしか言えない。

そのまま茶々丸さんは参加者に軽く参加した理由などをインタビューしていくのだが……

 

「あ? 何が『彼女との仲をもっと進展させたい』だぁ。そんなもんここでするんじゃねぇ~よ」

 

とか、

 

「成り行きで参加した。自分で決められない奴が勝てるわけねぇだろ、このヘタレ!」

 

などとインタビューした端から相手を罵倒し、参加者をへこましていた。

何であんな人が司会をやってるんだろ?

そして俺達の所に来た。

 

「おぉおおおおおとっ! こいつは驚いた!! 何とッ…何とッ!! 今をときめく日本一有名な若武者、織斑 一夏と昨年の映画特別女優賞に輝いた山田 真耶のカップルの登場だぁああああああああああああああああ!!」

「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

そんな紹介と共に会場が歓声? の濁流に呑み込まれた。

歓声半分、ブーイング半分、そして渡された壁を殴る音が鼓膜に叩き付けられてきた。

あまりの音量と白色に真耶さんは目を回しそうになる。

 

「んで今日は何でこんな所にいるの、いっちー?」

「それは此方の台詞ですよ。何故こんな所に六波羅四公方、堀越公方の茶々丸さんがいるんですか?」

 

茶々丸さんの問いに呆れながら返すと、会場から凄いブーイングが沸いた。

声を聞くに、俺と茶々丸さんが親しそうに話していることが気にくわないらしい。

『なんでいっちーなんて親しく呼ばれてんだ』とか、『我等がコテツちゃんになんて無礼な真似を……羨ましい!』など。

そう怒られても此方にどうしろというのだ。

 

「あてはお仕事ってやつだ。出ないと獅子吼がうるさいんだよ。んでいっちーは?」

「自分は友人がこのコンテストの優勝賞品が欲しがっているので参加しました」

「あ、そうなん。んじゃ頑張りな。あてはまぁ、応援してやんよ」

 

そう答えると茶々丸さんは次の参加者にインタビューしに行ってしまった。

何も言われなかったことに内心安堵する。そして俺の次にインタビューされたカップルはまた罵倒されていた。

 

「何かあまり言われませんでしたね」

「そうですね。内心焦りましたけど、どうにかなったみたいです」

「そうですか。よかった…旦那様が酷く言われなくて。いくら足利さんでも、旦那様のことを悪く言うのなら許せませんから」

 

少し真面目な顔で真耶さんは俺にそう言うと笑顔に戻った。

まさか茶々丸さんに向かってああ言えるなんて随分と成長したなぁ、と思う。

それが俺を慮っての事だけに嬉しくて堪らない。

 そして参加者全員に話を聞き終わると、茶々丸さんは審査員の紹介を始めた。

 

「んじゃ審査員の紹介だ。まずそこにいるのがいけ好かない生臭坊主、次にそっちが陰険根暗侍、それとパンツを逃がすことしか興味のない変態にあての従兄弟の時王だ」

 

紹介された審査員を見て俺は目を剝いた。

何でこの場所にあんな人達がいるんだ!

紹介された審査員……それは殆ど俺が知っている人間であった。

 

「いやいや、その紹介はちと端折りすぎであろう。茶々丸殿。まずは儂から名乗ろうかのう。儂は遊佐童心という坊主よ。此度はそこの『コテツちゃん』から紹介を受けて馳せ参じた次第で」

 

一人目は童心様であった。

いつもと変わらず愉快そうに笑い、茶々丸さんに敢えて『コテツちゃん』を強調して言う。

 

「うっせ~よ、こく腐れ外道! 誰のせいでこうなったと思ってんだよ!」

「いやはや、なんのことですかな?」

「うがぁーーーーーーーーーーーーー!」

 

そのからかいに茶々丸さんが反応するが、余裕で流されてしまいさらにジレンマを起こしていた。

そのまま次の人の紹介が始まる。

その人はナイトスコープのようなものを目にかけ、和服を着た明らかに可笑しな恰好をした人だった。

 

「私は柳生常闇斎(やぎゅう じょうあんさい)と言います。これはコスプレ? ですよ…ふふ……小さい女の子が大好物です……あ、勿論冗談ですよ……ふふ」

「何でこんな奴連れてきたんだよ!」

「いえ、護氏様のご命令でしたので。それに託けて同人誌を買い漁ったりなどはしておりませんよ……たぶん…」

 

師匠と違った不気味さを持つ人だ。

雰囲気から武者だとは思うが、気迫が薄い。予想だが、きっと厩衆の人だろう。

そして次は……

 

「パァーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッーーーーーーーーーーーー!!」

「何でこんな変態まで呼んだんだよ! おじじ、人選絶対にミスったろ!」

「あまり失礼なことは言わないでいただきたい。私はとても傷付いたよ。よって謝罪とともにその場でパンツを脱ぎ給え」

「もういやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

本当に……俺もこれには同意見である。

何であんなの呼んだんですか、護氏様……

 最後になり、少年は立ち上がって自己紹介を始めた。

 

「茶々姉様にご紹介いただきました、足利 邦氏と申します。このような大任を任され、恐悦至極に存じます。このお役目、立派に果たす所存です。皆様、よろしくお願いします」

「いや、時王は真面目だな~。ま、こんな濃い面子の中じゃ唯一の良心だ。頑張れよ」

「はい、茶々姉様!」

 

やはりこの中で唯一の良心、足利 邦氏様である。

邦氏様は皆の視線に緊張しつつも、堂々と話し一礼する。すると、会場から主に女性限定で『可愛い~』と声が上がる。それを聞いて邦氏様は顔を赤らめていた。

これで審査員の紹介が終わったのだが……

 

「茶々丸さん……何で審査員と言いあなたと言い、こうも知っている人間ばかりなんですか?」

 

さっきから疑問に思っていた事を聞くと、茶々丸さんは意外そうな顔をしてきた。

 

「あれ、いっちー知らないの? んじゃこれ、ほい」

 

茶々丸さんはそう言いながら俺と真耶さんに何かの紙を渡してきた。

見るとそれはこのコンテストのチラシのようだ。

少し見ていると、真耶さんが声を上げながらチラシを見せてきた。

 

「あ、これ見て下さい、旦那様。ここです」

「はい。えぇ~と……コンテスト主催、『六波羅財閥』……六波羅!?」

「そゆこと。これってうち主催なんよ。だからこうなったってわけ」

 

それを聞いて納得すると共に思った。

 

絶対に無事ではすまない!!

 

六波羅のあの二人と、あのパンツ教授が合わさったらもうそこは地獄すら生温いナニカに変わるだろう。

これは覚悟を決めなくては……

そう考えていたところで、真耶さんが俺の手を優しく握ってきた。

 

「え?」

「一緒に頑張りましょう。ね、旦那様」

 

そして満面の笑顔を俺に向ける。

それを見たら懊悩してるのが馬鹿らしくなってきた。

 

「はい、頑張って優勝しましょう」

 

俺は笑顔でそう返事を返すと、真耶さんは嬉しそうに笑う。

何だかやる気が出てきた。

確かに大変な目に遭うだろうが、真耶さんがこうして笑いかけてくれるのだ。

このコンテスト、絶対に頑張ろう!

そう心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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