マドカのお話です。
初めましてと言うべきだろうか。私の名は織斑 マドカだ。
今回は私の日常について語りたいと思う。
この学園に来る前は、いつも姉さんを超えることばかり考えていた。
私のオリジナルである織斑 千冬。姉さんを殺せれば、私は私という存在を証明出来ると思っていた。今に思えば可笑しな話だけど、昔の私にはそれしか自分を表せる物がなかったから……。
それだけを考えていたから、他に考えがいかなかった。それも今思えばスコールに思い込まされていたのかもしれない。
しかし、兄さんと戦ってその考えは変わった。
兄さんは言ってくれた。
自分がそうだと思えば、それは自分なのだと。自分の価値は自分が決めるものなのだと。それが自分の証明なのだと。
そしてこうも言ってくれた。遺伝子ではない、人格ではない……魂が織斑 マドカという存在なんだと。
それを聞いて、私は今まで背負っていた重荷が下りたような気がした。
この人は自分のことを、織斑 マドカのことを認めてくれると、そう思えた。
それと同時に、この人が自分の兄だと理解した。遺伝子的に言えば私は姉さんと一緒なのだから、姉と言ってもおかしくないが、それでもやっぱり織斑 一夏は兄さんだと思った。
だからこそ、私は兄さんや姉さん達と一緒にいたいと思ったのだ。
まぁ、小難しい話はここまでにしよう。実は私もこのことをイマイチ言葉にして伝えきれる気がしないからな。
取りあえず言える事は、今の私は兄さんがいたからこそなのであり、そのことに感謝しているということだ。
兄さんに以前そのことを伝えたら、
「何畏まっているんだ。妹を助けるのは兄として当然だろう。感謝するほどでもない」
と笑顔で返されてしまった。
私にとって重要なことなのだが、そんなことも兄さんにとっては当たり前のことだと言う。
それが当たり前だと言えるのは、それだけ懐が広いからだと思う。
私はそう言われ、さらに兄さんを尊敬した。
兄さんには全くもって感謝の念が絶えない。きっとその事を伝えても、兄さんは普通に笑って返すのだろう。流石は兄さんだ!
いけないいけない。それより私の日常の話だったな。
では、朝の始まりから話そうか。
朝、私はIS学園の寮の部屋のベットで目を覚ます。
私の部屋は姉さんのいる寮長室だ。日本政府が私を監視の意味も合わせてそうしたらしい。
昔の私なら怒りそうなものだけど、今の私からしたら有り難い。だって姉さんと一緒だからな!
兄さんのことも大好きだが、姉さんのことも大好きだ。
いつも学園では厳しく指導しているけど、寮ではよく私の頭を撫でてくれるし、髪の手入れなんかもしてくれる。ちょっとぶっきらぼうだけど優しい。それによくお菓子をくれる!
兄さんだとよく『夕飯前に甘い物を食べさせるな』とか言ってあまりくれないけど、姉さんはよく兄さんには内緒だぞ、と言ってお菓子をくれるんだ。
そういう優しい所も大好きだ!!
姉さんは厳しいけど優しい。だけどちょっと……だらしないかな。
目が覚めて隣のベットを見ると、よく姉さんが寝てるんだが、寝相が悪いのか布団を蹴っ飛ばしているし、お腹が出ていることが多い。学園ではIS最強のブリュンヒルデって言われて崇拝されているけど、こういう姿を見ると少し違うと思う。
そんな姉さんを起こすのがこの学園に来てからの私の朝の日課だ。
姉さんは起きると、しばらくふらふらしながら動いてシャワーを浴びに行く。
その際に床に散らばった物に足を取られながら歩く。私達の部屋は結構散らかっているんだ。姉さんは片付けや家事が全然出来ないから、よく部屋が散らかる。服も帰ってきて脱ぎ散らかすし、足で物を取ろうとするし……そういうところはちょっと好きじゃない。兄さんに言ったら、真顔で姉さんの所まで行って姉さんのことを叱ってた。
良く思うことだけど、兄さんは雰囲気が凄く大人っぽいから姉さんと一緒にいても姉さんより上に見えることがある。だから姉さんを叱っているときは、どっちが上なのか分からなくなる。
それで姉さんは面倒臭そうに片付けを始め、私もそれを手伝う。
兄さんはよくその度に『千冬姉みたいなだらしないことはするんじゃないぞ。反面教師だ』って言っていた。後で意味を調べたら、兄さんが言いたいことがよく分かった。
それで良く片付けるんだけど、すぐに部屋が散らかってしまうのは何でなんだろう?
まぁ、そんなわけで部屋は少し散らかってる。その散らかっている物を蹴散らして姉さんはシャワーを浴びに行き、私も一緒に浴びるんだ。
姉さんはシャワーを浴びてやっと目が覚める。その後、よく私は姉さんに頭を洗って貰うんだ! これが気持ち良くて、私は好きだ。そのたびに思うけど、姉さんのスタイルは本当に凄い!
所謂、ボン、キュ、ボン、ていうのだ。何でそんな言葉を知っているかって? クラスメイトの本音に教わったんだ。姉さんはボン、キュ、ボンだって。
胸は大きいし、お腹はくびれているし、お尻の形も良い。
女の子だったら誰でも憧れる。勿論私も一緒だ。
それと同時に自分の体を見て溜息を吐いてしまう。
背は低い。胸は鈴よりかは大きいけど、それでもシャルロットより小さい。お腹はくびれているけど、その分華奢な感じがする。お尻も言わずとも知れずかな。
最近私は幼い感じがするってみんなが言うけど、私だって女の子なんだ。やっぱりスタイルは気にしてしまう。でも、私の遺伝子は姉さんと同じだから、いずれは姉さんみたいになると信じてる。でも、できれば目標は真耶義姉さんかな。胸は姉さん以上に大きいし、スタイル全体も姉さんより凄いらしい。胸が大きな女性は強いんだって。
シャワーを毎回浴びる際、毎回そう思いながら私は姉さんと洗いっこするんだ。
そしてシャワーを出ると、姉さんと一緒に食堂に行く。
そこで兄さんと会うんだけど、一緒に真耶義姉さんもいる。
山田 真耶……兄さんの恋人で凄く優しい人。
私が尊敬する三人目の人で、凄く優しいんだ。姉さんとはまた違った優しい人で、何だか砂糖菓子みたいな甘い人。でも、真面目で芯の通った強い人。兄さんのことをとても大切に想っていて、私のことも実の妹のように扱ってくれる大好きな人だ。
兄さんと真耶義姉さんは仲睦まじく一緒に朝ご飯を食べていて、偶に一緒に食べるんだ。その時、よく真耶義姉さんはデザートをくれるし、はい、あーんって食べさせてくれる。
私がすると満面の笑顔で食べてくれるから私も嬉しい!
でも、兄さんにやると兄さんは変な汗をかくんだ。なんでだろう? 真耶義姉さんは笑顔なのに……?
姉さんはあまり無粋な真似はするなよって言うんだ。まだ良く分からないなぁ。無粋ってなんだろう?
でも、兄さんと真耶義姉さんの仲が良いのは見てて嬉しくなる。
私も将来、あんな風に誰かとお付き合いするのかなぁ? ならあんな風になりたいけど、今のところ兄さん以上に格好いい人はいないから、まだまだ先かな。
でも、あの二人の姿には憧れるなぁ。
それで姉さんと一緒に朝ご飯を食べた後、早速学園に登校する。
それで授業を受けるんだけど、私にとってそこまで難しい内容ではない。一応これでも元プロ。知識だって当然学んでる。兄さんの方を見ると、難しそうな顔をしてた。
武者である兄さんがISの知識を学ぶ理由なんてないと思うけど、兄さん曰く、
「最先端の技術に触れ学べるのは学徒の誉れ。それにせっかく国から入れてもらったのだから、ちゃんと学びたい」
だって。
本当に兄さんは真面目だな。
だからこそ、もっと尊敬出来る。
兄さんは本当に凄いなぁ。
姉さんは結構厳しいけど教えている内容は分かりやすいし、真耶義姉さんの授業は賑やかで楽しい。
とても楽しいくて、私は笑顔になってしまう。
お昼になると、本音達と良くお昼ごはん一緒に食べるんだ。
簪たちと一緒に楽しくお昼ご飯を食べるんだけど、偶に本音が変なものを食べ始めて大変だったり、簪に最近はやりのアニメの話を聞いたりして過ごす。
そんな時間も楽しい。
その後にも授業を受け、そして放課後。
私もIS学園の生徒だからな。勿論ISの訓練をする。
昔と違って専用機ではないが、それでも箒達に負ける気はない。
それに、私には目標がある。
それは兄さんに一撃入れることだ。
打鉄を使って兄さんに接近戦の訓練をしてもらうんだけど、未だに一撃も与えられない。
しかも兄さんは劔冑を纏わないで生身で、刀一本で全ての攻撃を軽々と防いでしまうんだ。
それが異常だということは誰だって分かる。だけど、私にはそれが当たり前に見えた。だって兄さんは武者だから。
そして訓練が終わった後、兄さんと私の所に真耶義姉さんが来て、レモンの蜂蜜漬けとスポーツドリンクをくれるんだ!
それがまた美味しくて、体の疲れもすっかりとれる。
その時も、兄さんと真耶義姉さんは仲よさそうにしていた。
そして寮に帰ってみんなと遊んだり夕飯を食べたり、兄さん達に甘えたりして一日が終わる。
昔からは考えられないくらい、毎日が輝いて見える。
今私は、一番幸せだ。
だからこそ、兄さんに言いたい。
こんな明るい世界に連れてきてありがとう。
兄さん、大好きだ!
ただ、兄さんと真耶義姉さんが一緒の布団で抱き合ってたり、キスしたりしているところに出くわすのは、気まずいかな。
見ててこっちもドキドキしてくるし。
目が離せなくなるんだ。だって私だって女の子なんだ。興味だって一杯あるんだからな!!