うまくかければ良いのですが、久々なので何とも言えないですよ。
井上さんを見送った後、振り返った先には真耶さんが立っていた。
その顔は夕日に照らされてか真っ赤になっており、今にも泣きそうになっていた。
「ど、どうしたんですか、真耶さん!? 何かありましたか!!」
俺はそんな真耶さんを見て凄く慌ててしまう。
何か問題でもあったのだろうかと心配していると、真耶さんは急に俺を抱きしめた。
「え? え?」
「旦那様……ごめんなさい……ごめんなさい……」
真耶さんは俺の胸に顔を埋め、静かにそう呟く。
俺の胸はじわじわと濡れてきていた。
何故泣いているかは分からないが、俺は少しでも慰めようと抱きしめ返し、優しく頭を撫でてあげる。
「どうしたんですか、真耶さん。何かありましたか」
耳元で優しく囁くと、真耶さんは幼子の様に泣きじゃくりながら話す。
「だって……旦那様が人付き合いを大切にする人だって分かってたのに、私…嫉妬してしまって。なのに旦那様はさっき、『私のチョコが一番欲しい』って言ってくれて……」
「え?」
それを聞いて固まってしまう俺。
何故そのことを知っているんだ? あれは井上さんに言ったはずの言葉のはず……
「な、何でそのことを……」
何とか口を動かし聞くと、真耶さんは顔を夕日以上に真っ赤にしながら恥ずかしそうに、それでいて凄く嬉しそうに話してくれた。
「だって…さっきの試合、アリーナのマイクが入りっぱなしだったから…全部外に聞こえちゃってましたよ。それで旦那様があの人に言ってたことが全部流れてきて…」
嬉しそうにそう言われ、俺はショックで固まってしまった。
まさか聞かれてたなんて………恥ずかしい!!
明日にはきっと学園中から後ろ指を差されるに違いない。しかも会長からいじくられるのも確実だろう。あぁ……どうしたものやら……。
「旦那様ぁ……」
だが……真耶さんが幸せそうだから……気にしても仕方ないか。
そう考え治しながら真耶さんの頭を撫でると、真耶さんは目を細めて気持ちよさそうにしていた。
そしてしばらく落ち着くまでそうしていると、真耶さんはすっかりといつもの調子に戻った。
「それじゃ旦那様。この後、私の部屋に来て下さい。美味しいチョコを用意してますから」
「はい、ではすぐに向かわせてもらいます」
その後、真耶さんは準備があると言って寮に帰った。
俺も一緒に帰りたかったが、アリーナの後始末やら何やらとしなければいけないことが多く残っているので、一緒には帰れない。
そのことを残念に思いながらも、真耶さんからもらえるチョコを楽しみにしながら俺はアリーナへと向かった。
アリーナの後始末やその他の事後処理を終え、俺は今真耶さんの自室の前に来ていた。
辺りはすっかり暗くなり、完璧に夜となってしまっている。冬に入ると本当に日が暮れるのが早い。
俺は待たせてしまったんじゃないかと心配しながらドアをノックをする。
「は~い」
すると中から甘い声が聞こえてきた。
声を聞いた限り怒ってないみたいなので安心した。
そしてドアが開くと……
「ぶっ!?」
目に入った物を見た瞬間、噴き出してしまった。
何故なら……
「どうですか、旦那様? 似合ってますか?」
真耶さんが恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに聞いてきた。
顔を赤らめながらそう聞いてくる真耶さんもまた可愛い。だが、それは問題では無い。
何故噴いてしまったのか? それは真耶さんの恰好のせいだ。
今回もまた露出が激しいビキニの様な服で、かなりきわどい恰好をしていた。
胸の谷間をかなり強調するような上に、スカートのようだがかなり丈の短い下。正直見える薄ピンクの下着が目に焼き付きそうだ。
上下ともお揃いの牛柄で、頭には牛の角を模した物を着けたカチューシャを着けていた。
はっきり言ってホルスタインを想像させてしまうその姿はとても良く似合っている。
だが、男には明らかに目に毒だ。
「どうしたんですか、旦那様?」
固まってしまっていた俺を心配して真耶さんが俺の顔を覗き込む。
その際、細い腕が巨大な胸を集め、更にその大きさを強調させてしまう。
「な、何でもないです!?」
「そうですか?」
俺はその光景から何とか目線を逸らすと、感想を述べた。
「その……とても似合ってます。真耶さんって何でも似合いますから、感想に困ってしまって……こんなことしか言えなくてすみません。でも、とても可愛いですよ」
何とかそう答えたら…
「旦那様! 大好きです!」
ぎゅっと抱きしめられてしまった。
巨大な胸が体を包み込むように密着して気持ちいいが、気が気ではない。
俺は自分の顔が凄く熱くなっていくのを感じた。
真耶さんは俺を一通り抱きしめると離れた。その顔は実に幸せそうである。
「では、早速チョコをあげます」
そう言うと、後ろに置いてあった箱を取り出す。
その箱は丁寧に包装されていたが、見た感じから自分で包装したことが窺える。
「て、手作りですから…そこまで美味しくないですけど、頑張りました」
真耶さんは恥ずかしそうに顔を赤らめつつも、もじもじとしながらそう言ってきた。
その恰好でそんなことをされては、俺はときめいてしかたない。似合い過ぎて色々ときつい。
節分の時の恰好も凄かったが、今回のはさらに似合いすぎだ。
胸が大きいだけに、その恰好は反則としか言いようが無い。しかもさっきからずっと思っていたが、どうにもいつも以上に艶っぽく見える。胸がドキドキとして仕方ない。
それに何だか部屋全体に甘い香りがする。それのせいか、頭がふやけそうになってくる。
取り出した箱を受け取ろうと思ったのだが、真耶さんはそれをテーブルの上に置いてしまった。
それが俺に渡すチョコじゃないのか? と思っていたら、真耶さんは別の物をどこからか取り出した。
「そ、それもですけど、こ、これもあるんです!」
顔をポストの様に真っ赤にし、凄く恥ずかしそうにしながら真耶さんが取り出したのは……
「チョコソース?」
そう、製菓なんかに使われるチョコソースだ。
何故そんな物を取り出したのかと思ったら、真耶さんはそのソースを口紅を引くかのように唇に塗り始めた。
「旦那様……どうぞ……」
そう俺に言い、目を瞑って唇を突き出した。
それがどういう意味なのか、もう分かった。
するのは凄く恥ずかしいが、断れば決心した真耶さんを傷付けてしまう。
それに……さっきから俺は真耶さんの唇から目が離せなくなっていた。
チョコを薄く塗られつやつやと輝く唇はとても美味しそうで、無意識に引き寄せられてしまう。
俺は差し出された唇に啄むようにキスをした。
「「ちゅ…」」
した瞬間、胸が凄く甘い感覚に襲われた。
別に甘いと味覚を感じた訳ではない。だが、胸一杯に甘い感覚を感じたのだ。幸せでしかたなく、もっと味わいたくなってしまう。実際に真耶さんの唇はとても甘くて、チョコの味がした。
「ふぅ…どうでした、旦那様」
「はい…その…ごちそうさまでした」
真耶さんが恥ずかしいが嬉しいそうにそう聞いてくると、俺は何とか答えるだけで精一杯だった。
だが、俺が考えていたことがばれていたのだろうか? 真耶さんは顔を更に赤らめながら俺を上目使いで見つめながら言う。
「そ、その……まだおかわりは一杯ありますから…」
そう言うと可愛らしく口を開き、そこから赤い舌をペロっと出した。
赤い舌が何やら妖艶に見えて、俺は胸の鼓動が早まるのを感じた。
そして真耶さんは出した舌にチョコソースを垂らすと、そのまま口に戻さすに俺に差し出してきた。
「だんなひゃま……」
潤んだ瞳で俺を見つめながら舌を差し出す真耶さん。
その姿に俺は異様に興奮を覚えてしまう。
だが、ここで欲望に流されては駄目だと考えを巡らせていると、痺れを切らせたのか真耶さんが俺の口に舌を入れ深いキスをした。
「ちゅ…ちゅる…んぁ…んん…ぁあ……ちゅっ…れろ…」
「!?」
口の中を真耶さんの舌が舐め回していく。
時に舌を舐められ、時に歯茎や歯を舐められ、俺の頭は気持ちよさで真っ白になりかける。
何よりも甘いチョコの味で一杯となる。
「ぷはぁ……どうですか、旦那様? おいしいですか」
真耶さんは唇を離すと、顔を赤くしながら嬉しそうに聞いてきた。その顔はやけに艶っぽくて、俺は更にドキドキしてしまう。
「とても……おいしいです……」
そう答えるだけで精一杯だった。
だが、ここで引いては何やら男としていけない気がする。
なので俺はおいてあったチョコソースを口に含むと、そのまま真耶さんに口移しで流しこんだ。勿論舌も一緒にいれて。
「「ちゅ……ちゅぱっ……れろ……んぁ……」」
いきなりのことに驚きつつも、すぐに真耶さんは応じてくれる。
そして唇を離すと……
「はぁ…旦那様の唇もあまぁいです……」
とろけたような顔で幸せそうになっていた。
あまりの可愛さにぐっと来る物がある。
その後、二人でしばらくチョコをお互いに食べさせ合い? して、やっと本命をもらうことになった。
のだが……やはり真耶さんは箱を渡してくれない。
「あ、あの~、真耶さん?」
何で渡してくれないのかなぁ~と聞こうとしたら真耶さんは少し拗ねたような、そんな顔で答えてくれた。
「確かに、人付き合いなら仕方ないかも知れないですけど、それでも私は焼き餅を焼いちゃいますから。さっき旦那様に謝りましたけど、許したわけではないんですから」
そう答えると、箱の包装を解いて中に入っていたチョコを取り出す。
そしてそのチョコを……自分の胸の谷間に入れた。
「だから、それで傷付いた私の心を癒して下さい」
そう言いながら胸を俺に向ける真耶さん。
「いや、それは…」
この状態。つまりこれはそのまま胸の谷間に載せたチョコをそのまま食べろということか!
それはあまりにも……魅力的だが、人としてどうだろうか?
だが、ここでチョコを食べなかったり、真耶さんの望んだ食べ方以外をすれば、絶対に拗ねたり泣き出しかねない。それは絶対に駄目だ。
どうすれば……と悪戦苦闘していたら……
「もう! えぇい!!」
「っ!?」
考えに苦戦している俺を見かねてか、真耶さんは俺の後頭部に両腕を回しそのまま自分の胸に俺の顔を突っ込ませた。
マシュマロのような柔らかさと、シルクのような滑らかさを顔一杯に感じ甘い香りに包まれる。
「んぅ…ど、どうですか……ぁん…くすぐったい……」
そう真耶さんは聞いてくるが、それどころではない。
俺はあまりの感触に意識が薄れていくのを感じた。
そして意識が途切れる前に口に入ったチョコの味はとても甘かった。
その後、気絶しかけた俺に真耶さんは驚きつつも、この方法で全部のチョコを食べさせられた。
よくチョコを食べ過ぎると鼻血が出ると言うが、別の意味で鼻血がでるかと思った。
だが、チョコはとても美味しくてとても幸せな一時を過ごした。
「旦那様…だぁいすきです」
そう言ってくれる真耶さんが可愛くて。俺は幸せで仕方なかった。
ちなみに…
今回のこんな凄いエッチな案を出したのは、何と更識さんだった。
会長じゃないだけに意外で、驚きを隠せなかった。
ま、まぁ……真耶さんが可愛かったから良いが、後で注意しておかないと。
そう思った。