鈴が俺の部屋に泊まってから数日が経った。
あれから鈴は俺と話してるとき、妙にそわそわしてぎくしゃくすることが多くなった。
そのことを指摘すると、
「な、何でも無いわよ!」
と言って大声で返してくる。あまり聞かれたくないことなのだろうか? 俺に手伝えることがあれば、相談して欲しいのだが。
心配事は抱えていると何かしら問題になってくる。早めに相談して解決することがこのましい。
箒は帰ってきてから鈴と仲が良くなってきた。
何かしら共通の話題があるらしく、それで意気投合したようだ。
幼馴染みの二人が仲良くなるのは、俺としても嬉しいが、少しばかり置いて行かれたような感覚を覚える。
まぁ女の子同士、仲良きことはうつくしきかな。男の俺では立ち入れないような部分があるのだろう。
別に・・・寂しいわけではない!
今日は訓練も終わって自室にいる。
箒や鈴、セシリアは今食堂でお茶でもしてるらしく、この場にはいない。
IS学園に来て久々に静かだ。いつもはあの三人が常にいるので姦しい。
自室で今俺が何をしているのか、と言うと・・・・・・
「123、124、125、126・・・・・・」
腕立て伏せをしていた。
これも師匠の受け売りであり、暇があれば筋トレをするようにしている。
何度も言っているが、劔冑での戦闘は本人の武力がものを言う。
筋トレなど、体を鍛えていて損は無いのだ。
体から汗が噴き出す。
俺の格好は上半身裸だ。体のあちこちから汗が滝のように流れ、体の下には汗のよる水たまりが出来上がっていた。
『御堂、それが終わり次第腹筋を200回ぞ』
正宗から次の指示が飛ぶ。
筋トレと言っても余力無しの全力で行うため、頭が全く回らなくなる。なので次にすべきことを言ってもらえるのは有り難く、俺は正宗には感謝が絶えない。
「に、二百・・・・・・よし、次!」
俺は腹筋の体制をとるために起き上がる。
部屋は一応換気していたのだが、むわ、とした熱気に満たされていた。
そこに・・・・・・
「一夏、いるか? 今戻ったぞ」
「「お邪魔「するわよ」「しますわ」」」
箒が帰ってきたようだ。どうやらセシリアと鈴も一緒らしい。
「ああ、おかえり。それにいらっしゃい、二人とも」
扉が開いて俺と三人の目が合った。
「「「!?」」」
「どうかしたか?」
三人の顔がものすごく紅くなった。しかも目がやけに俺のことを凝視してくる。
箒はうつむいてしまい、鈴は目をそらし、セシリアは顔を手で覆ってしまっている。
しかしこちらをちらちらと何度も見てくることが丸わかりだ。
「何かあったのか、三人とも」
「「「い、いや、何でも「ない」「ないわよ」「ないですわよ」!! 」」」
三人そろって同じことを言う。そこまで強く言うのなら、本当に何でも無いのだろう。
「い、一夏! 私たちはちょっと用事を思い出した、また出かけてくる。いくぞ、セシリア、鈴」
「「お邪魔しました~」」
そう言って箒達はまた部屋を出ていった。
「正宗、またカウントを頼む」
『相分かった』
たたずんでても仕方ないので俺はまた筋トレを再開し始めた。
この日、箒、セシリア、鈴の三人はもやもやとした気分と妄想に襲われて眠れなかったとか。
翌日にはクラス代表戦の試合相手が発表された。
相手は一年二組、中国代表候補生、鳳 鈴音だった。