装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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やっとネットが出来るようになって投稿しました。
遅れてしまって申し訳無いです。

サンデーGXのIS二巻を買って、山田先生のISスーツ姿にときめいてしまいました。
この作品の山田先生も、あんな感じにイメージすると、より可愛く映るかもしれませんね。

あぁ~、本当に可愛いですよ。気がつけば山田先生が一番好きかも。
新しい派閥ないかなぁ~なんて思います。


バレンタインの試練

あの刺激的だった豆まきも終えて二月の中旬に入り、今日は二月十四日となった。

その日はいつもとは空気が違っていた。

何やらぴりぴりとしているような、妙にそわそわと浮かれているというか、お祭り的な雰囲気を漂わせていた。

まぁ、無理もない話である。今日は世間一般における『バレンタインデー』。

本来は外国の行事であるが、日本においては女性が意中の相手にチョコレートを送り愛の告白をする行事になっている。これは昔にとある製菓会社が自社の商品を流行らせようとしたからであり、海外ではまったく違った行事となっているが、それでも日本においては意中の相手に告白をする行事へと変わっている。

特に色恋に興味がある十代の男女なら尚のこと騒がずにいられない行事であり、それは武者であっても例外ではないらしい。

 俺は朝の鍛錬中から妙に気分が落ち着かなかった。

昔は全然気にならなかったし、つい二年前は師匠の周り女性が師匠を取り合うのに更に熱を入れるため気が気ではなかった。

だが、今年は違う。

世界で一番、それこそ生涯只一人と言って良い程に大切な愛している女性が出来たのだ。

その人からチョコをもらえると思うと、胸が幸せで一杯になってくる。

その事を考えながら浮かれていると、正宗に怒られてしまい鍛錬の量を増やされてしまったが。

そんなわけで………本日、日本の若者は皆そわそわとしているのであった。

 

 

 

 朝の鍛錬も終えて早速学園に行くことにした。

今日はまだ真耶さんとは会っていない。昨日の夜に一緒に部屋でお喋りをしていた時に、顔を赤くしながら言っていた。

 

「だ、旦那様! 明日はチョコレート、頑張ってお渡ししますからね」

 

一生懸命頑張りますと言わんばかりに力みながら俺を見つめる真耶さん。

そんな姿も愛おしくて、俺はその後抱きしめてしまう。

その事に少し驚きながらも、真耶さんは嬉しそうに微笑みながら応じてくれた。

 そんなわけで、俺は未だに真耶さんとは会っていない。

 

(はぁ………真耶さんのチョコ……楽しみだなぁ……)

 

そう思いながら学園に登校するのだが……

 

思いがけないことが起こった。

 

「「「「「キャーーーーーーーーーーーーー! 織斑君、チョコ受け取って~~~~~~~~!!」」」」」

 

校舎に入った途端に女の子が集まってきたのだ。

いきなりの事に驚いてしまう俺。こんなことは真耶さんと恋仲なってから久しくなかっただけに、対応が遅れてしまう。

 

「い、いきなりどうしたんだ?」

 

俺は戸惑いつつも一人の女の子に聞いてみる。すると、

 

「だって織斑君、有名人なんだよ! チョコ渡したくなるじゃない!」

 

と意気揚々に答えられた。

どうやら芸能人とかの有名人にチョコを上げられるとかいうノリのようだ。

その雰囲気に若干引いていると、周りの女の子達が更に迫ってきた。

 

「チョコ受けとって下さい!」

「ほ、本命は山田先生なのは知ってますけど、二番目なら……」

「そこまで気負わなくても義理だから。でも織斑君がいいなら本命も上げちゃうよ~」

 

そう口々に言ってくる女の子達。

いきなりのことに逃げ遅れてしまった俺は苦笑しながら受け取るしかなかったのだ。

その姿を見られている事にも気付かずに………

 

 

 

 その後も何度か集団でチョコを渡されてしまい、断るに断れず受け取らされてしまう。

つい先程バレンタインは意中の男子に女の子がチョコを送る行事と説明したが今では特に決まっておらず、友人や付き合いのある人にも送ったりする。言わば人付き合いにおける挨拶的な意味合いもあるのだ。

それを無下にすることは出来ない。故に断ることが出来なかった。

教室に着く頃にはチョコが抱えきれない程の量になっており、俺の机にはチョコの山が出来上がっていた。

その量に若干呆れつつも、まだまだチョコが来るのだった。

 

「おりむ~、はい、チョコ~」

「お、織斑君、これ、チョコレートです! 受け取って下さい!」

「お返しは三倍返しでね~」

 

布仏さん達三人が此方に来てチョコを渡してきた。

何だかんだと言って世話になっている三人なだけに、俺は受け取るしか出来なかった。

布仏さんはいつもと同じ感じだったが、他の二人は顔を赤くしていた。

 

「日本ではこの日に男性にチョコを送るものだと部下から聞いたので」

 

今度はラウラがチョコを持ってきた。

どうやら部下からバレンタインの話を聞かされたようで、日頃世話になっているお礼とのことだ。

そう言われてしまっては、俺は受け取らないわけにはいかない。有り難く受け取ることに。

 

「い、一夏、はい、これ。一夏には本当に感謝してるからさ。僕は一夏に救ってもらったから……」

 

そしてシャルからもチョコを受け取った。

そんなたいしたことはした覚えはないが、ここでチョコを受け取らないと感謝の意を表しているシャルに恥をかかせてしまう。なので受け取るしかない。

 

「兄さん、これチョコレートだ。真耶義姉さんと一緒に作ったんだ! 一生懸命作ったからな」

 

マドカが嬉しそうに笑いながらチョコを渡してきた。

その顔には初めてチョコを作ったことの興奮が現れていた。

妹の初めて作ったチョコ。受け取らないということは出来ない。

 こうして山は更に積み上がっていく。

その山をロッカーに押し込んでいると、真耶さんが教室に入ってきた。

 

「あ、おはようございます、真耶さん」

 

俺はいつも通りに挨拶するのだが……

 

「む~~~~~~~~(つーーーーーん)」

 

何やらご機嫌斜めで膨れられてしまった。

まぁ、膨れてる理由は十中八九今ロッカーに押し込んでいるチョコレートの山だろう。

その事については申し訳無く思うが、これも人付き合いというもの。そこは大目に見て貰いたい。

なので俺は素直に真耶さんのチョコが欲しいと言おうとしたのだが、その前にチャイムが鳴ってしまい言えなかった。

ここだけの話だが、膨れている真耶さんもまた可愛くて俺は内心で笑ってしまっていた。

 その後に千冬姉が教室に入って来て俺が渡されたチョコを見て呆れ返っていたが、俺も千冬姉が持ってきた抱えきれない程の量のチョコを見て呆れ返った。

 そして授業が始まり休み時間になると……

 

「はいこれ、織斑君にチョコ。有り難く受け取りなさい」

「いつも生徒会でお世話になって……織斑君の御蔭で本当に助かってますから。特にお嬢様のことでは本当に……。だからせめてものお礼です。受け取ってもらえませんか」

「お姉ちゃんと仲直りできたのは織斑君の御蔭だから。こんなもので返せるとは思えないけど……受け取って下さい」

 

会長と布仏先輩、更識さんが来てチョコを渡してきた。

日頃お世話になっている人達にそう言われては受け取らざる得ない。

その姿を見られていることも気付かずに、俺はそのチョコを受け取った。

 

(む~~~~~~~~~~~~~~~! 旦那様ったら~~~~~~~~~~~~~~~)

 

そして昼休み。

真耶さんと一緒にお昼を食べようと思ったのだが……

 

「………旦那様は他の女の子と一緒に食べればいいんじゃないですか。一杯チョコもらうくらいなんですから、誘えばいくらでもくるんじゃないですか」

 

凄く膨れてつーーーーーーーーーーーーんとして取り憑く島もなかった。

ぷいっと顔を逸らされてしまい俺はショックに受けてしまい内心かなりへこんだ。

ここまで機嫌が悪いのは初めてかも知れない。

何とかしなくては!

 しかし、その後中々話しかけることが上手く出来ず、放課後になってしまった。

俺はかなり焦りながら真耶さんに話しかけようとするが、真耶さんは変わらずに機嫌が悪く膨れていた。

 

「真耶さん!」

「ふ~~~~~んだ! 旦那様は一杯チョコをもらえてよかったですね~。なら私のなんて必要ないですよね~」

 

そう怒る真耶さんにちゃんと話を聞いてもらおうと、俺は学園内であることも気にせずに真耶さんの手を掴み体を俺の方に抱き寄せた。

 

「あ…」

 

急にされたことに驚き、そんな声が真耶さんの口から漏れる。

俺はそのまま真耶さんの顔を真剣に見つめる。

俺に見つめられ、真耶さんの顔が見る間に赤くなっていった。

 

「だ、旦那様?」

「ちゃんと聞いて下さい。確かにチョコを一杯受け取りましたけど、それでも俺が欲しいのは……」

 

そして言おうとした途端に、外から大きな声が聞こえた。

 

「織斑 一夏はいるかぁあああああああああああああああああああああああ!! いるならば出てこい!」

 

せっかく大切なことを言おうとしたのに、それを邪魔されたことに内心で苛立った。

しかも声は野太い男の声であり、明らかにこの場にいて良い者ではない。

俺と真耶さんは顔を見合わせると、声がした方へと一緒に走って行った。

そして声がしたところ……学園ゲート前にまで行くと、そこには一人の男が立っていた。

パンチパーマに捻りはちまきをした三十代後半の男性。

年のせいか腹こそ出ていたが、その体は筋骨隆々となっている。

足下を見れば警備員が二人とも気絶していた。明らかにこの男がしたのだろう。

俺達はその人に近づき話しかける。

 

「いきなり何を大声を上げているのですか! ここを何処だと思っていますか!」

「こんな非常識な訪問は辞めて下さい。まずちゃんと受付で手続きを」

 

男は俺の姿を見ると、怒りの籠もった視線で睨み付けながらにやりと笑う。

 

「やっと出てきたか。けっ、気にくわねぇ面だ」

 

男は俺の顔を見てそう言った後、真耶さんの顔を見て頬を緩ませる。そして俺は気付かない内に真耶さんの手を握っていたらしく、それを見て顔を怒りで真っ赤に染め上げていた。

 

「かぁああああ! 何だ、その可愛い子は手前の彼女か! これがリア充って奴かよ! 見ててますますむかついてくらぁ!!」

 

そう叫ぶ男に、俺は真耶さんに危険が及ばないよう後ろに隠れるようにしながら問いかける。

 

「一体貴方は何用でここに来たのですか! 事と次第に拠ってはただでは済ませませんよ」

 

俺の問いかけに男は怒りながら答えた。

 

「俺はよぉ! モテる奴が大ッ嫌いなんだ! イケメンって奴が嫌ぇなのよ。今まで女尊男卑だったから仕方ねぇと思ってきたが、手前の活躍で男の権威も復活してきたし、武者の知名度も上がって堂々と表に出れると思った。だが、表に出たところで女の子は誰も声をかけてこねぇし、イケメンばかりモテるのは変わらねぇしよ! 苛つくったらありゃしねぇ。しかも今日はバレンタインだぜ! あっちこっちでカップルどもがイチャついてるのを見りゃ怒りも積もるってもんだ! だがなぁ、俺だって武者だ! 一般人に危害を加えることは本意じゃねぇ。ならそれをぶつけられるのは武者しかいねぇってわけだ」

 

殆ど私情であり、しかも俺に会いに来た理由ではない。

要約すれば……

 

「つまり……ご自分が女性から好意を向けられないことを苛立ち、それをぶつけられる相手を探していたと。そういうことですか?」

 

そう聞いたら、更に男は怒っていた。

 

「うっせぇよ、イケメン! 手前だって一緒だ! 映画の主演女優とイチャつきやがってよぉ! だからこそ、俺はよぉ…決めたんだよ! 『この世のモテない男達の為に、イケメンをぶっ潰す』てなぁ!」

 

そう叫ぶと、男は何かを呼び出した。

 

「来い、国友!!」

 

すると、ノロノロとゆっくりと俺達の前に何かが来た。

それは巨大な蝸牛だった。鋼鉄で出来た蝸牛。それは明らかに自然にはいない物。すなわちこの蝸牛は劔冑だ。

 

「こいつは俺の相方の初代江州国友藤兵衛能富(しょだいこうしゅうくにともとうべえよしまさ)。んで俺の名は井上 外記(いのうえ げき)。イケメンの敵だ! つーわけでまずは手前からぶっ潰してやる! 俺と死合え!!」

 

俺を指差しながら男、井上がそう高らかに叫ぶ。

それを聞いて俺は………

 

心底呆れ返っていた。

 

そんなことでいきなり死合いを求められても……正直困る。

だが、これで受けなかったらこの人は帰らないんだろうなぁ。

そう思い、答えを返す。

 

「その死合い……仕方ないのでお受けしましょう」

 

そしてせっかくのところで中断されたことによる怒りを込める。

 

「此方とて、貴方のせいでせっかく大切なことを言おうとしたところを中断されたのだから、その怒り、たたき込ませて貰う!」

「上等!」

 

 こうして、せっかくのバレンタインだというのに俺は死合いをすることになった。

まさかモテないことに逆ギレして死合いを挑まれるなんて、思いもしなかった。

 

 

 


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