装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回はとあるキャラが出ますと。
皆さんが見たがっていた話にしてみました。


豆まき開始! しかし、一夏は本当の豆まきをすることに

 二月三日になり、俺達は講堂に集められていた。

皆、急な招集に何事かと騒いでいるが、生徒会からの招集なだけに何かしてくれるんじゃないかと期待に満ちていた。

そんな中、俺はというと副会長ということで壇上の脇に控えていた。

その胸中は少しばかり複雑である。

一つはこの豆まき。会長が主導で話を進めていたため、俺は話の内容は未だに知らされていない。それが余計に嫌な予感を掻き立てる。

二つ目には真耶さんのことである。今朝まで頑張って恵方巻きを巻いていて疲れて眠そうだったので、それが少しばかり心配だ。体調を崩したりしなければ良いのだが。

 そんな風に色々と考えていると、早速会長が壇上に上がり、挨拶を始めた。

そして今日皆を集めた本題を発表する。

 

「今日みんなに集まって貰ったのは、急遽ある行事を行うためなの」

 

そう勿体ぶって言いながら扇子を広げる。

すると後ろのスクリーンに文字が映し出された。

 

『チキチキ、大豆まき大会!!』

 

皆その文字を見て不思議そうな顔をしていたが、外国からの生徒は興味津々であった。

そんな反応を見て、会長はニヤリと笑う。

 

「まぁ、日本人なら誰でも知ってる行事よね。だけど只の豆まきではつまらない。そこで私達でアレンジを加えて見たの」

 

そう会長が言うと、スクリーンの文字が変わった。

 

『全クラス対抗、豆まき戦争!!』

 

その文字にお祭りの気配を感じてか、騒ぎ好きの生徒が騒ぎ始めた。

会長はその様子を見てルールを説明し始めた。

俺としては、やはり嫌な予感が……

 

「この豆まきは全校生徒で行います。みんなはこの衣装を着て体の三カ所にこの風船を着けて貰います」

 

会長は笑いながら、いつの間にか持ってきていた衣装を皆に見えるように上に掲げた。

 

「ぶっ!?」

 

それを見て噴き出す俺。

何故なら、その衣装は独特的だからだ。

会長が皆に掲げたのは虎柄のビキニ。そして鬼の角の着いたカチューシャである。

所謂鬼の恰好をさせたいのだろう。

布仏先輩の方を見ると、苦笑していた。きっと会長が無理に通したんだろう。

 

「みんなはクラスで別れ、他のクラスの生徒に豆を投げつけて体に着けている風船を割って下さい。体に着けた風船を全部割られた人は退場です。時間制限内に生存者が多いクラスが優勝となります。優勝賞品は食堂のスィーッ食券三ヶ月分。そして……織斑 一夏君を討ち取った生徒はMVPに輝きます。賞品は何と! 『織斑 一夏君に好きなことを一つだけしてもらえる権利』が与えられます」

 

 会長がさらに煽るように発表すると、講堂は凄い歓声で沸いた。

 

「尚、今日のお昼の食堂のメニューは一種類のみ。織斑君が主導で作って貰った恵方巻きとなっております。みんな、楽しみにしておいてね」

 

その報告を聞いてさらに沸く講堂。

このIS学園の生徒はこういうイベントが好きなのは分かるが、よくもここまで騒げるものだ。

しかし……聞き捨てならないこともある。何故俺の許可も無しに、勝手に『織斑 一夏君に好きなことを一つだけしてもらえる権利』などというもの賞品にしたのやら。

会長をジト目で睨むと、会長はテへペロっといった感じの顔を俺の方に向けた。

後でお仕置きされることが分かっているのに……懲りない人だ。

まぁ、もう皆に言ってしまった手前、無しに出来ないので仕方ないか。

しかし、そんな権利の何が嬉しいのやら。

(今の一夏は有名人のような扱いのため、恋人がいようとも、そういったことには騒がれる身である。所謂芸能人のような物であり、それを自覚していないのは一夏本人のみ)

 その後も豆まきのルールを説明していく会長。

こうして豆まきの発表は終わり、皆目をギラギラと光らせていた。

 

 

 

 クラスに戻ると、早速衣装や道具が配られていた。

 

「みんな~、食券の為に頑張ろう!」

「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」

 

 皆食券の為に意気込みを顕わにしていた。

とても活気に溢れていて結構なのだが、俺としては少しばかり不服だ。

 

「織斑君を討ち取って、あんなことやこんなことをしてもらうぞ~!」

「「「「「おーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」

 

本人がいる前でそんなに意気込まれても困る。

きっと皆に悪気はないのだろうが。

これが不服の最たる原因。俺も参加するのは仕方ないのだが、寄りにも拠って、俺はクラスに属さない。このイベントは事実上、『俺 VS 全校生徒』なのである。味方など一人もいない。理由は武者の素での身体能力が高すぎるかららしい。まぁ、そう言われては仕方ない。

俺に衣装はないので、制服の上から風船をくっつけることになっている。しかしこの風船、中に何かの液体が入っている。それが何なのかは分からないが、会長のことだ。きっとただではすむまい。

 そして皆衣装に着替えるので俺は一端教室から出て行き、十分ほどした後に教室に戻った。

中では皆支給された衣装に身を包んでいた。

虎柄のビキニやタンキニ、ワンピースタイプの物と多種多様であり、何というか異質な空間が出来上がっていた。肌の露出が多い恰好だが、それ以上に皆同じ柄の衣装のため其方の方に意識が向く。

そんな光景に内心不思議な感じを感じつつ席に着こうとすると、呼び止められた。

その方向を向くと、布仏さん達三人組が俺に向かって手を振っていた。

俺は其方へと歩くと、布仏さんが笑顔で迎えてくれた。後ろの二人は少し恥ずかしそうにしていたが、布仏さんは平気らしい。

 

「おりむ~、これみて~」

 

布仏さんはのんびりとした口調でそう言うと、その場から横にゆっくりと移動した。

そして退いた先には……

 

「だっ…い、一夏君……似合ってますか……」

 

真耶さんが顔を恥ずかしさで真っ赤にしながら立っていた。

それを見た瞬間に俺は赤面してしまう。

何故なら……真耶さんの恰好が凄いからだ。

現在、真耶さんは虎柄のビキニを着ていた。朝の集会で会長が皆の前で見せたものと同じである。

凄くスタイルが良い真耶さんにはとても似合っているのだが、サイズが合ってないのか胸が溢れそうになっていた。あまり大きい動作をしたら零れるかも知れない。

それがあまりにも……卑猥に見える。それが余計に恥ずかしさに拍車をかけ、真耶さんは顔を更に真っ赤に染めていた。見ている此方も顔が熱くなり、心臓がドキドキと鳴って仕方なくなる。

 

「そ、その……似合ってます……」

 

そう答えるのがやっとである。

 

「そ、そうですか……よかった~」

 

俺の答えを聞いて安堵する真耶さん。

その動作だけでも胸が動くものだから、俺は気が気じゃない。

 

「そ、その……艶っぽくて可愛いです…」

「そうですか! 褒めてもらえて嬉しいです」

 

そう褒めると、満面の笑みを浮かべる真耶さんは、本当に可愛くてさらに俺の胸をときめかせた。

 

(あぁ~~~~、可愛い!)

 

このままキスしたくなってしまうのを必死に堪えると、布仏さん達が俺に話しかける。

 

「どう、おりむ~。ヤマちゃん先生、可愛いでしょ~」

「前から大きいけど、もっと大きくなってない、先生の胸?」

「何て言うか、見てると同性でもドキドキしてきちゃうよ」

 

そう感想を俺に言ってくる。

それが褒め言葉なのか何なのか、聞いてて嬉しいやら恥ずかしいやらと色々感じてしまう。

 

「しかし、どうして真耶さんがこの衣装を?」

「そ、その…一クラスに一人教員も参加だそうです。織斑先生はそうそうに断ったんで私が……」

 

恥ずかしそうにそう話す真耶さん。

ある意味目に毒な恰好で恥ずかしそうにされると、見る場所に困ってしまう。

真耶さんが手を前で組んでもじもじとそう言うと、胸がとても深い谷間を作り腕に押し上げられとてつもなく大きく見える。それがさらに俺をドキドキとさせていた。

 

「そ、その……せっかくの豆まきですから、楽しみましょう。ね、真耶さん」

「はい、一夏君! 私、頑張ります!!」

 

俺がそう言うと、凄く嬉しそうに笑いながら意気込む真耶さん。

その際、ぶるんっと胸が大きく揺れてしまい、俺の顔が真っ赤になったのは言うまでも無い。

 そんな俺達を布仏さんたちは羨ましいような目で見ていた。(本音だけはまったくそう感じていない)

 

 

 

 そして始まった豆まき。

俺は始まると同時に窓から飛び出し、近くにあった木へと飛び移った。

そのまま校舎から離れることにする。後ろからは俺が取った行動に驚きの声を上げるクラスメイトの声と、学校全体が揺れるんじゃないかと思うくらいの雄々しい声が聞こえてきた。

それに内心で苦笑しつつ、校舎から距離を取っていく。

そして少し周りが見渡せるところまで移動すると、辺りを観察することにした。

そうしていると、俺から少し離れた場所で豆を投げ合っている生徒を見つけた。

皆夢中に豆を投げ合っている。それだけ楽しんでいるのなら、開催者側としては喜ばしい。

だが、俺はこの後信じられない物を見てしまった。

 

「や~ん、風船が割れちゃった~…え?……キャーーーーーーーーーー!?」

「えぇ~!?」

 

 豆があたり、その生徒の胸辺りに着けられていた風船が割れると、中から何かの液体が始め飛ぶ。

それが体にかかると、その生徒の衣装が溶け始め肌が顕わになっていく。

その光景に言葉を失いそうになった俺は、取りあえずその生徒から視線を外す。

それと同時に校内放送が鳴り響いた。

 

『尚、この風船の中には衣装を溶かす特殊な薬品が入っています。みんな、気を付けないと恥ずかしい恰好になっちゃうから気を付けてね』

 

 会長の声がそう聞こえ、校内から悲鳴があちこちと出ていた。

絶対にわざとだと思い、自分の嫌な予感が当たったことに頭痛を感じる。

 

(はぁ……やはり無事ではすまないか。まったく会長ときたら……あとで絶対にお説教だな)

 

そうめまいを感じながら頭を軽く振っていると、突如として携帯が振動し始めた。

誰だと思い急いで画面を見ると、そこには以外な人物の名が出ていた。

 

『湊斗 光』

 

「何で師範代が?」

 

一応携帯に登録はしているが、そこまで掛かってきたことはない。

その師範代が急に俺に電話をかけてきたのだ。

取りあえず出ることにした。

 

「もしもし、師範代ですか? 一体何用で?」

『うむ、おはよう一夏。実はな……少しまずいことになったのだ』

「まずいこと? また師匠を怒らせたんですか?」

『いや、それほどではない。実は今、IS学園のアリーナに遊びに来ているのだが』

 

即座に報告される不法侵入の知らせ。

もうこの人に関しては驚くだけ疲れるので驚かない。俺は呆れつつも話を聞く。

 

「勝手に侵入しないで下さいよ。後で師匠に怒られますよ」

『まぁそう言うな! 節分なのでお前に豆を投げようと思ってきたのだ。でな、せっかくIS学園に来たのだから異世界のお前も呼ぼうとしたのだが』

 

さらに非常識なことをさらっと言ってきた。しかも豆をまくためだけに来たというのだから、常人では考え付かない思考だ。

 

「呼ばないで下さいよ。呼ばれる側だって大変なんですからね」

『だから細かいことを言うな! ではなくてな、呼ぼうとしたのだが……少し間違えてしまったみたいだ!』

「間違えた?」

『うむ。どうやらまた違う世界のお前を呼んでしまったようなのだ。こっちに来た瞬間、そのまま飛び去ってしまったのだが……』

 

かなり深刻な問題をまるで忘れ物をしてしまった程度のようにしか話さない師範代。

ほとほと呆れ返ってしまう。

 

「その様子ですと何かあるんですか」

『察しが良くて助かるぞ! その通りだ。呼び出した異世界のお前は……お前とは似ても似つかない雰囲気を察していた。あれはまるで……』

 

そう師範代が言った途端に、俺はその木から飛び退いた。

理由は俺のいた場所に向かって砲撃が飛んで来たからだ。

その砲撃によって木はズタズタにされた。そんな威力を生身の人間に向けるとは、正気とは思えない。

俺はその砲撃が飛んで来た方を見ると、そこには……

 

真っ黒い悪魔のような人型が浮いていた。

 

足は人の形をしておらず、大型のスラスターと一体になっている。大きな肩の装甲に、翼のような物が背中に見えた。そしてその背中から垂れ下がる尾のような物があり、先には鉤爪が付いていた。

全身装甲で表情は窺えない。

だが、俺は一目見て分かった。

 

これが師範代の言っていた、また違う世界の織斑 一夏だと。

 

姿や形ではない。気配が、魂が同じ人間だと伝える。

だが、この織斑 一夏は俺であって俺でない。

 

(何なんだ、この禍々しい殺気は!?)

 

そう、目の前の人型から発せられるのはあまりにも禍々しい濃密な殺気であった。

とても俺と同じ人物とは思えない程の禍々しさ。

そんな殺気を纏って佇むその姿はまさに…

 

『悪鬼』そのものである。

 

この者はこの場にいてはいけない!

そう魂が理解する。この悪鬼は絶対に自分達を害する存在だと。

故にその存在がこの場にいることを許すわけにはいかない。

故に……追い返さなくてはいけない!

 

「来い、正宗!!」

『応っ!』

 

俺の呼びかけに応じて飛び出して来た正宗の上に飛び乗り移動する。

それを追いかけるようにして砲撃が左右から着弾していく。

 

「正宗、あれは異世界で悪鬼となった俺だ! このままでは皆に害成すかもしれん。そうそうに追い返すぞ!」

『諒解!』

 

正宗の上で装甲の構えを取り、俺は誓約の口上を述べる。

 

『世に鬼あれば鬼を断つ 世に悪あれば悪を断つ ツルギの理ここに在り』

 

そして正宗を装甲し、斬馬刀を引き抜き異世界の悪鬼に刃先を向ける。

 

「如何様であろうとも、此方に害成すならば当方正宗、容赦せん! いざ、尋常に参るっ!」

 

 すると悪鬼から外部マイクで少しだけ声が出てきた。

 

「………ブラックサレナ……」

 

そして同時に動き出す濃藍と漆黒。

皆が豆まきで熱狂している中、金属同士が激突する轟音が学園に鳴り響いた。

 こうして、まさか節分で本当に鬼を払うことになるとは……思わなかった。


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