装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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生徒会で何かをしよう

そろそろ一月も終わり、二月に差し迫る今日この頃。

俺は生徒会室でいつもと同じように仕事をこなしていた。

最近では会長もすっかり諦めたのか、仕事をそれなりに真面目やるようになっていた。

 

「ねぇ~、織斑く~ん」

 

それなりに真面目だというだけで、面倒臭そうな感じに会長が俺に話しかけてきた。

その顔は仕事に飽きましたと言わんばかりなのが良く分かる。

 

「何でしょうか、会長。仕事は問題無く進んでいますが?」

「そういうんじゃないんだけどね~。ねぇ、最近この学園…暇じゃない?」

 

 会長は暇そうにそう言ってきた。

会長が言いたいことは大体推測が出来る。最近この学園ではお祭り的なイベントが無いからなのだろう。と言っても、クラス代表戦やらチーム戦やらと色々と行っているし、二月には球技大会も控えているのでそこまで暇では無いはずなのだが。

それに俺自身、三学期に入っても厄介事ばかりなのでまったく暇では無い。

常に命がけの事ばかりが起きる身としては、こういった平穏が実に好ましい。

不満など全く出ない。

 

「そんなことはないじゃないですか。現に自分達はこうして仕事をしています。自分達にこうして仕事が来るということは、そういった行事のための物もあるのですから。少なくとも暇ではないです」

 

俺は真面目にそう答えると、会長は思いっきり深く重い溜息を吐いた。

 

「そういうことじゃなくてさ~。分かるかな? こう、もっと突発的でみんなではしゃいでさ~。あ、君は山田先生と毎日イチャついて幸せだからわからないだろうけどさ~」

「いきなり何を言っているんだ、貴方は!?」

 

いくら暇だからと言ってそれはあまりにも言いがかりではないだろうか。

すると会長は俺が慌てて答えたことでからかおうとニヤニヤと笑い始めた。

 

「だって凄い有名よ。君と山田先生のイチャつきっぷり。朝のトレーニングから放課後の夕食まで殆ど一緒じゃない。その時にたまにキスしたり抱き合ってるところを見た何て子もいるのよ。あ~あ、私も恋人がいればなぁ~」

 

 俺をさらにおちょくって遊ぶ腹づもりなのだろう。

もしこれが俺でなく真耶さんだったのなら、顔を真っ赤にして恥ずかしがることだろう。そういう真耶さんも可愛いから大好きなのだが。お生憎様、此方はそこまで初心ではない。

 

「そう思うのでしたら、もう少しお淑やかにされては? 少なくとも見た目『だけ』は良いのですから」

 

俺はそうしれっと言うと、会長は顔を赤くして怒り始めた。

 

「ちょっと、それどういうことよ! 見た目だけじゃなくて中身だって凄いのよ、私。何なら……お姉さんと火遊びしてみない?」

 

 会長はそう言うと妖艶な顔を浮かべ上着を脱ぎ始めた。

 

「お、お嬢様!? 一体何を!!」

 

今までことの成り行きを見ていた布仏先輩が顔を真っ赤にして慌て始める。

会長の方はと言うと、既に上着を脱ぎ終えワイシャツ姿になり前のボタンを開け始めていた。

 

「お、織斑君がいいって言うなら……私……」

 

顔を赤く染め、恥ずかしそうにそう言いながら前屈みに俺に迫る会長。

スタイルが良いこともあって、ワイシャツから見える胸の谷間が悩ましい。きっと弾とかが見たら悶絶することだろう。

だが……俺にはそんなものは効かない。

 

「何を阿呆なことをしているのですか。馬鹿なことをしていないで、手を動かして下さい、手を」

 

呆れ返りながらジト目で会長を睨み、間近に迫る会長のおでこにデコピンを嚙ました。

 

「っ~~~!? 痛った~! もう、何するのよ~」

「阿呆な事をしている会長を罰しただけですよ。何か文句でも?」

 

痛がり抗議の視線を向ける会長に、俺は有無を言わせずにねじ伏せることにした。

俺から感じる威圧感が増したことで会長が押し黙る。

 

「う~~~、織斑君はからかいがいがまったくないな~。もっと年下の可愛らしいところを見せてくれた方がお姉さん、嬉しいんだけどね~。もう、何でもっとこう、顔を赤くしたりして慌てたりしないかな」

「俺は恋人以外にそういう反応をする気はありません。確かにお淑やかにしろと言ってはみましたが、そんな阿呆なことをしろとは言ってません。寧ろ、そんなことしか考えられないから恋人が出来ないんですよ」

「虚ちゃ~ん、副会長がいじめるよ~」

 

俺に言い負かされ布仏先輩に泣きつく会長。

それを布仏先輩は苦笑して受け止めていた。

 それで少し気が済んだのか、会長は自分の席に戻って改めて話を振り始めた。

 

「まぁ、おふざけはここまでにして」

「だったら巫山戯ないで下さい」

「ぐふっ!!」

 

ジト目でそう返すと、会長は仰け反った。

その際、大きな胸が揺れたが何も感じることはなかった。

俺は真耶さんが大好きだからこそ、ああなって慌ててしまうのであって、別に他の女性の肌が見えたりした程度では何も思わない。

そう考え反応する辺り、如何に自分があの人のことを愛しているのかがよく分かる。

 

「だから茶々入れないでよ。コホン……では改めて。確かに織斑君が言うことも最もだけど、やはり学園の行事を取り仕切る生徒会としては皆に楽しい学園生活をおくってもらいたいのよ。だけど二月ってあまり長くないじゃない? だからこそ、生徒会としては何かやりたいのよ」

 

 要は生徒会主催で何かを催したいらしい。

まぁ、この会長ならそう考えていてもおかしくないのだが……

 

「それで本音は?」

「簪ちゃんと仲直りしたんだから、もっと一緒に一杯遊びたいの! それで良いところ見せて『お姉ちゃん、大好き!!』て言われたいのよ!!」

 

手を前に持ってきて思いっきり握り力説する会長。

そんなところだろうと思っていた。

 

「だからね~、織斑君、何か良い案ない?」

「何故俺に聞くのですか?」

 

俺が疑問を感じながらそう聞くと、会長は当然と言わんばかりに言って来た。

 

「だって私よりも有能じゃない。私じゃ思いつかないんだから、後は織斑君しか考えられそうな人がいないんだもの」

 

己が未熟を理由にそう言われても困るというのに。

とは言え、ここで何か案を出さないとややこしいことになりそうだ。

俺は何か無いかと考える。

 

(何かないだろうか? 球技大会はあるし……二月か。そう言えばバレンタインもあるんだったな……真耶さんからチョコをもらえるだろうか? もらえたのなら、きっと幸せだな……いや、そうじゃなくて他に……あ、そう言えば『あれ』はどうだろうか)

 

そしてあることを思い出したため、それを進言する。

 

「会長、でしたら……『豆まき』はどうでしょうか」

「豆まき? 何でまたそんな行事を」

 

会長は俺が言った案を不思議そうに聞いてきた。

 

「二月と言えば節分です。こう言っては何ですが、今年のIS学園は厄災がやけに多いかと。ここいらで厄払いをした方が良いと思いましたから」

「でもそれって面白いかな~」

「それは会長の手腕で変えていけば良いんですよ」

 

俺にそう言われ会長は少し考えると、何やら頷き始めた。

 

「そうね。その案でいきましょうか!」

 

 どうやら会長のお眼鏡にかなったようだ。

そうしている間に今日の俺の仕事は全て片づいていた。

俺は席を立ち、帰り支度を始める。今日も真耶さんと一緒にカフェで待ち合わせをしているからだ。

先日のダイエットの問題も解決したら、真耶さんは食事をいつもと同じ量を食べるようになったし、体の調子も良いらしい。寧ろさらに抱きつかれたり胸を強調されたりして、内心タジタジだったりする。

曰く、

 

「そ、その、胸がもっと大きくなったのは恥ずかしいですけど、これで旦那様がドキドキしてくれるなら嬉しいですし……もっと旦那様をドキドキさせたいんです」

 

だそうだ。

俺は心臓が持つのか心配になってしまう。

 そして帰ろうとしたところで会長に呼び止められた。

 

「あ、そうそう、織斑君。これ、さっきの妙案のお礼」

 

会長はそう言って、俺に何かを渡してきた。これは何かの書類、いや、写真だろうか?

そう思い表を見た瞬間……

俺は自分の顔が赤面していくことを自覚した。

受け取った写真には、

 

『薄緑色の下着姿でISに乗る真耶さんの姿』が写っていた。

 

「あ、赤くなった~。うんうん、やっぱり織斑君をからかうには山田先生が覿面ね~」

 

俺を顔を見てニヤニヤと笑い始める会長。

俺はそんな意地悪い会長を見て……怒りが爆発した。

 

 

 

 この日、俺は真耶さんのいるカフェに二十分だけ行くのが遅れた。

そして生徒会室では……会長がでろんと倒れていたそうだ。


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