毎朝に行う鍛錬の時間。
真冬と言うこともあり、早朝五時でもまだ日は出ていない。
そんな中、俺は薄手のシャツにハーフパンツという動きやすいが寒い恰好で正宗と一緒にいた。
実家でならば袴に胴着などなのだが、流石にIS学園でそれは不審者にしか見えないので持ってきていない。どうせ鍛錬を始めれば嫌でも汗だくになり、熱くて堪らなくなるのだから。
そして鍛錬を始め一時間ほど経った頃になると、真耶さんが来てくれるのだ。
それが毎日楽しみでしかたない。俺と真耶さんの一日はここから始まると言っても良いだろう。
なので今日、この日も鍛錬をしながら真耶さんが来るのを心待ちにしていた。
そして辺りに日が昇ってきて明るくなり始めた頃……
「お待たせしました、旦那様~~~~!」
一番大切で愛している恋人の声が聞こえてきたことに内心胸を躍らせながら、聞こえた方向へと向く。
そしてそれを見た瞬間、
「ブォッ!? ま、真耶さん!?」
見た物のあまりの衝撃に噴き出してしまった。
「ど、どうですか……普段はあまり使わないんですけど……」
真耶さんは恥じらいに頬を赤く染めつつ、もじもじと体を揺らしながら上目使いで俺に聞いてくる。
とても可愛らしくて、普段ならそのまま抱きしめていただろうが、今はあまりの事態に驚いてしまってそれどころではなかった。
何故なら……
その恰好は体操着で、しかもブルマだからだ!!
IS学園での体操着はブルマとなっている。
今のご時世、既に絶滅していたと思われるあのブルマだ。今、真耶さんが来ているのはそのIS学園指定の体操着であった。
ちなみに俺の場合は、上は普通のTシャツにハーフパンツと、今している恰好と同じものである。
まぁ、自分のことはいい。それよりも真耶さんの恰好だ。
上は白い生地の体操着で、サイズが合ってないのか胸が布地を思いっきり押し上げ横に伸びていた。
胸の大きさから形まで、嫌と言うほど強調されていた。
そして下は赤いブルマ。真耶さんのお尻の形が良く分かり、むっちりとした感じが見て取れた。
靴下は白い普通の物を穿いていて、靴は運動靴だった。
そんな恰好の真耶さんが、顔を赤らめながら上目使いに俺のことを覗き込み、手を前で組みながらもじもじとしているのだ。
はっきり言おう! 視界の暴力である!!
童顔ということもあって、全然違和感が無い。なのに首から下は反則になるくらい凄い身体なのだ。
正直、目のやり場に困ってしまう。
普段と違う恰好のせいか、何気ない仕草でさえ、艶っぽく見えてしまうのだ。
俺はこの姿を見た瞬間から、心臓の動悸がうるさいと感じるくらいドキドキしていた。
「そ、その……とても良く似合ってます…」
「そうですか! よかった~。最近は着てなかったので、似合ってるかどうか分からなかったんですよ~」
俺は顔が赤くなるのを堪えながら感想を答えると、真耶さんは凄く嬉しそうに笑ってくれた。
その際、少しぴょんと跳ねた時にぶるんっと胸が揺れたのは見なかったことにしたい。
『御堂、微量の熱量の消費を確認。鼻腔から出血』
正宗が金打声でそう話しかけてきた。正直ほっといてくれ。
そんな姿思い出しただけで顔が熱くなってくる。
「そ、それより、どうしたんですか、その恰好?」
そう、これが聞きたかった。
いつもは温かい恰好で来ていたのに、何故今日に限ってこんな寒そうな恰好をしているのか?
現に寒いので自分の体を両腕で抱きしめるようにしていた。そのせいで胸が押しつぶされ、凄い事になっているのは言うまでもない。
「は、はい、その……いつも見てるだけだから、今日からは一緒にやろうかなって思いまして。私だってここの教師なんですから、ISを使う人間として鍛えないといけませんしね。(言えない……まさか太ったなんて、絶対に言えないですよ……)」
真耶さんは恥ずかしそうにしながら、そう答えた。
確かに言っていることはもっともであり、IS操縦者としては体を鍛えた方が良いのは分かる話だ。
劔冑を駆る武者にしろIS操縦者にしろ、体力は資本だ。鍛えて損は無いし、真耶さんはこの学園の教師だ。皆の手本になるよう、鍛えるのに問題はない。
自分からそう行動出来ることに、素直に感心する。
「そうですか。それはとても良い心がけですね」
「あ、ありがとうございます」
俺に褒められたことが嬉しいのか、笑顔で喜ぶ真耶さん。
すると何かして欲しそうな目で見つめられ、気持ち少なめに頭を俺に差し出す。
それが何をして貰いたいのかが分かり、俺は苦笑しながらそれに応じることにした。
「自発的にそう行動出来る真耶さんはえらいですね。凄いと思いますよ」
「えへへへへ~~~」
向けられた頭に軽く手を乗せ、優しく撫でてあげる。
すると真耶さんは猫のように頬を緩め、嬉しそうにしているのだった。
朝から甘えてもらえることが少し嬉しかった。
「そ、その…旦那様。もうちょっとお願い、いいですか?」
すると真耶さんが上目使いで俺にお願いをしてきた。
俺はその様子にドキドキしながら応じる。
「どうしたんですか?」
「そ、その…さっきああ言った手前で何ですけど……かなり寒くて」
そう言って体を擦るように動かす真耶さん。確かにこの気温でその恰好は寒いだろう。
「だ、だから……抱きしめて暖めてもらえませんか」
「っ~~~~~~~~~~~!?」
寒空の下、恥ずかしさと寒さで頬を赤く染めながら、潤んだ目で見つめられてそうお願いされたら、それを断れるような人がいるのだろうか? 俺には絶対に無理だ。
「は、はい、わかりました。じゃぁ、真耶さん。こっちに来て下さい」
「はい! 旦那様」
俺にお願いを聞いてもらえると分かった真耶さんは、花が咲いたかのような笑顔で俺の胸に飛び込んできた。
そのまま抱きしめると、
「はぁ~……やっぱり旦那様は暖かいです……ずっとこうしていた……」
と耳元で艶っぽく囁かれた。
俺もそう感じてしまい、抱きしめる手に力を込めると、真耶さんはとても嬉しそうだった。
だが、俺は内心それどころでは無い!
体操着姿の真耶さんを抱きしめているのだ。その大きな胸が体操着の布地越しにでも感触が伝わり、俺の胸に押しつけられむにゅりと形を変えている。しかも無意識なのか、より密着しようと、足が俺の足に絡められていた。そのすべすべとしつつむっちりとした太股に足をはさまれ、俺の頭はパンク寸前まで追いやられていた。
温かくて気持ち良いが、正直それどころじゃ済まない状態である。
それを必死に何とか堪え、やっと体が温まった真耶さんの為に準備体操を始めることにした。
「「一、二、三、四」」
屈伸から始まり、一般的な準備体操を始めるのだが……
正直目に毒としか言いようのない光景が広がっていた。
屈伸で体を上下に動かす度に、その大きな胸がぶるんと揺れ、体を伸ばす度に胸が主張されるばかりであった。この準備体操を作った者達に文句が言いたくなった。
そして柔軟もするのだが、これも正直赤面物であった。
足を開いて地面に座り込む真耶さんは、見ていられないくらいきわどい恰好である。それだけでもきついのに、それで後ろから体を押すよう手伝うことに。
その際に、
「んっ、んぅ…んあ、駄目…きついです…あっ!」
と苦しそうに声を上げるのだ。
背中を押す為に置いた手から伝わる柔らかい感触に体操着の肌触り。そして体操着越しとはいえ下着の感触に心臓が悲鳴を上げそうなくらいドキドキしているのに、その上この艶声である。
武者並の精神力が無ければとっくに耐えられなかっただろう。
そんな感じに精神力をガリガリと削りながら何とか準備運動を済ませた。
「で、では、始めますか」
「はい!」
元気よく答える真耶さんに、俺はドキドキしながらも何とか鍛錬を始める。
「では、まず腕立てをしましょう。自分は五百回しますが、真耶さんは……そうですね、最初ですし三十回を目標に頑張りますようか」
「旦那様、少し甘く見過ぎですよ。私だってこのIS学園の教師です! 五十回くらい頑張れます」
そう意気込んで真耶さんは答える。その際、胸も大きく揺れてしまい、俺は赤面することに。
そして始めた腕立て伏せなのだが……
「じゅうさん…じゅうし……じゅう~ご……」
少し間延びした感じに腕立てをする真耶さん。
伏せる度に胸が地面に押しつぶされ、凄い光景になっていた。そして数が上がっていくと苦しくなり……
「はぁ、はぁ、はぁ…さんっ…じゅうさん…んぁっ……」
と明らかに苦しそうな艶声に変わっていた。
男ならば生唾を飲み込む光景であり、それを必死に耐える俺の精神は死合いと比較してもおかしくないくらいすり減っていった。
この後も似たようなことが何度も続いていき……
俺はこの日の朝の鍛錬が、今までで一番疲れたと思った。
『御堂、多量の熱量の流出を確認。鼻腔内に多量の出血』
だからうるさい!!