装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は戦闘回です。
あまりアスカロンVIIの情報が無いから、上手く書けなかったかも……


海外からの挑戦者 その4

決闘開始の合図と共に、俺は合当理を全開で噴かしアスカロンVIIへと突撃をかける。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「はぁああああああああああああああああああああああああ!!」

 

お互いの咆吼が空間に轟き、此方の右上からの上段に彼方も同じ斬撃で応じる。

そして激突する斬馬刀と大剣。

金属同士による破壊的な激突音が木霊し、お互いの刃が火花を散らす。

そのまま鍔迫り合いへと発展した。

 

「ぬぅうううううううううううううううううううう! 中々の金剛力だ。やはり口先だけでは無い!」

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! そういう君だってとてつもない力じゃないか! これが極東随一の武者の力か!」

 

そのままお互い譲らずに力を込めていき、斬馬刀と大剣から悲鳴のような金属の軋む音が発せられる。

 

(成程……確かにイギリス最強を名乗るだけはある! それだけの実力は確かだ)

 

俺は鍔迫り合いをしながらそう思う。

自分でこう言っては何だが、俺の金剛力はそれなりだと自負する。それをこうも拮抗するとは……確かに言うだけあって強い。

 

「しゃぁ!」

「ふんっ!」

 

そしてお互いに突き離し合い、間合いを開ける。

そのまま敵に向かってまた突撃を仕掛ける。袈裟斬りを仕掛け、返す刀で横一閃。

それを敵は見事に合わせ迎撃してきた。

 

「おぉおおおおお!」

「うぉおおおおお!」

 

斬馬刀と大剣が火花を散らし、激突する度に大気を振るわせる。

そして今度はアスカロンVIIの大剣が此方に襲い掛かる。

 

「はぁああああああああああああああああああ!!」

「ぐぅうううううううう!」

 

真上上段からの全力を込めた一撃。それを斬馬刀を横にして正面から防ぐ。

空間が歪むかと思う程の衝撃が斬馬刀に走り、受け止めた衝撃で足が地面を砕きめり込んだ。

 

「まさか全力の攻撃をこうも簡単に防がれるとは思わなかった」

 

そうセシルが此方に言ってくるが、その声にはまだ余裕が感じられる。

 

「此方としては結構きついのだがな。さすが、イギリス最強は伊達では無いらしい」

 

その軽口に、此方も皮肉を込めて答える。

するとセシルは小さく笑い出し、俺も釣られて笑う。

お互いにより戦意を昂ぶらせる。やはり劔冑を纏う者の戦いとは、こうでなくては。

前の鈴川との戦いなどとは比べものにならないほどの充実感を感じる。

それにより、互いの斬撃がかなり苛烈へとなっていく。

 

「あぁああああああああああああああああああああ!!」

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 気迫を込めた咆吼を上げながらお互いに斬り合う。

向こうの横一閃を捌き、その反動を利用して俺の上段の斬撃がセシルへと襲い掛かる。

それを引き戻した大剣で防ぎ、今度は向こうの斬撃が此方へと襲い掛かる。

一撃一撃に込められた殺気に口元がつり上がり笑みを浮かべる。

西洋の騎士と言えど、やはり死合いをするものなのだと。

それが打ち合う剣を伝って理解する。

それが素直に嬉しく感じながら、右からの袈裟斬りを放ちセシルへと迫る。セシルはその斬撃を何とか弾くと、俺はそれを利用し返す刀で左からの袈裟斬りを放つ。

まるで山に向かって大声を上げた際に帰ってくる木霊のように、相手に向かって刀が帰った行く。

 

『吉野御流合戦礼法 木霊打ち』

 

「なっ!? 速い! だが!」

 

セシルは唸り声を上げながら強引に大剣を横に一閃し、木霊打ち無理矢理弾き返した。

 

「ほう、今のを無理矢理弾くか。中々にやる」

「これが東洋の剣術か! 何と速い。驚きを隠せないよ」

 

俺は素直に感心し、セシルは驚きを隠せないようだ。だが、その声は興奮していることが凄く伝わってくるくらいに弾んでいた。

 

「なら今度は此方の番だ! 行くぞ!」

 

そうセシルは叫ぶと、俺から少し身を離した。

すると、今までとは少し違う構えを取る。

体を斜に構え、大剣を片手で持ち、切っ先を前に向ける。持っていない方の手は体の後ろへと回していた。

 

「喰らえ! シャッ!」

 

そしてその構えから放たれる突き。

 

「っ!? くっ…」

 

その鋭く速い突きに体が追いつかず、左肩の甲鉄に受けてしまう。

肩が吹っ飛ばされるような衝撃が襲い掛かり、それを俺は後ろに下がりながら流す。

 

『左肩甲鉄に被撃! 装甲貫通』

 

正宗の報告を聞くと同時に、焼き付けるかのような激痛が左肩を襲った。

その痛みに顔をしかめつつ、俺は構え直す。

 

「その構え……フェンシングか」

「ご明察。その通りだ」

 

俺の答えに満足してか、セシルが自信に満ちた声で答えた。

まさかあの大剣からフェンシングの突きが出るとは思わなかった。

本来、相手を力でもって強引に叩き斬る大剣。その質量を用いての突きがここまでの威力を持とうとは、誰が考えようか。

成程、これは凄い。これが西洋の剣か。

 

「感心しているようだが、まだまだ行くぞ! やぁああああああああああああああ!!」

 

セシルは俺にそう叫ぶと、その構えから弾丸のように突きを連続で放っていく。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

その突きを時に躱し、時に弾いていく。

先程受けた威力から、この一突き一突きが必殺の威力を持つ。

直撃は絶対に避けなければならない。だが、その神速の突きを全て防ぐことは出来ず三発ほど喰らってしまう。

 

「ぐぅううううううううううううう!」

 

 受けた所の甲鉄が砕け、鮮血が舞う。

焼けた鉄の棒を捻り込まれたかのような激痛が受けた所から感じる。それを歯を食いしばりながら耐え、此方も反撃に転じる。

 

「舐めるなぁ! おぉおおおおおおおお『吉野御流合戦礼法、雪崩っ!!』」

 

被撃覚悟でそのまま前進し、斬馬刀を背中にくっつくまで逸らし構え、そこから全力の力をもって振るう。

 

「ぐぁあああああああああああ!!」

『敵機に被撃を確認。直撃により中破と推定』

 

俺の振るった斬馬刀がアスカロンVIIの甲鉄に吸い込まれるように入り、その甲鉄を引き裂く。

見事に斬られた甲鉄からは鮮血が流れでた。

その威力に踏鞴を踏んで離れるセシル。

 

「ぐぅぅ…まさか攻撃を喰らいながら此方に接近してくるなんて」

 

セシルは俺の行動を信じられないといった感じに言いながら構え直していた。

 

「流石は日本を代表する武者だ。だからこそ、勝ちたい! そしてあの女性をこの手に!」

「褒めてもらえるのは喜ばしいが、あの人は俺の恋人だ! 絶対にやらん! 故に…絶対に負けん!!」

 

そう叫ぶと、またお互いに合当理を噴かしアリーナの中央で激突する。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「あぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 お互いに雄叫びを上げながら、また相手を斬ろうと斬撃を放ち合う。

絡み合う剣戟が大気を震わせ、火花を散らし、激突による轟音がアリーナに響き渡る。そして互いの甲鉄が砕け散り、鮮血がその場を舞っていく。

アリーナの壁や地面を鮮血が染め上げ、その度に甲鉄の破砕音が聞こえてくる。

 そのまましばらく、お互いの身を削り合う剣戟が何合も続いていった。

 

 

 

 管制室で真耶は一夏の決闘の様子を息を呑んで見ていた。

 

「おやおや、織斑の坊ちゃんの恋人は肝が据わっておいでのようで。あの血を見て目も逸らさねぇとは、驚きですぜ」

 

 少し冷やかすかのように雪車町は真耶にそう言うが、真耶は内心それどころでは無い。

 

(旦那様っ!? どうか無事で……)

 

その心は常に不安に襲われていた。

一夏が相手の攻撃を受け、鮮血が舞う度にハラハラとしてしまう。

それは人として当たり前であり、それをやっているのが恋人だというのなら、尚のことだ。

この光景は普通なら悲鳴を上げてしまう光景であった。何せ目の前で鮮血が飛び交っているのだから、当然である。それを声一つ上げずにじっと見つめられる辺り、真耶の心も成長したということだろうか。

そのまま続いていく剣戟。それに比例してお互いに増えていく損傷。

そしてその度に上がる破砕音と鮮血。

両騎の周りでは、血で出来た真っ赤な花が見事に咲いていた。

真耶はそれに凄く不安を感じながら、それでも一夏を信じながら見つめる。

しかし、それでもやはり気になってしまうのだろう。雪車町に聞いてしまう。

 

「あ、あの…雪車町さん?」

「何でしょう?」

「この決闘……どちらが勝つと思いますか?」

 

真耶は不安で胸を押し潰されそうになりながらも、精神を奮い立たせ気丈に雪車町に聞く。

それを聞いた雪車町は……

ニヤリと笑いながら答えるのだった。

 

「そりゃ決まってますよ。勝つのは………」

 

 

 

 お互に純粋な剣技のみで戦っていき、気がつけばお互い大破手前にまでなっていた。

本来の劔冑同士の戦いなら、合当理を噴かして上空へ飛び、空戦をするはずである。だが、何故かそうする気がお互いに起こらなかった。正宗七機巧も使わなかった。

ただ、純粋な剣技のみ。

何故そうなったのか? 向こうの方も何故か知らないが、陰義を使わない。

しかし、お互いに考えていることだけは、何故か分かった。

 

((この男に、純粋な剣技だけで勝ちたい!!))

 

そう、この目の前の男を、俺と拮抗する実力を持った騎士を、純粋な己の武のみで勝ちたいと……そう思った。

この『宿敵(ライバル)』に勝ちたいと、そう思ったのだ。

既にお互い満身創痍。俺は血の気を失い、ふらつく体を何とか持ちこたえさせる。

そしてアスカロンVIIを睨み付ける。

 

「これで終わりだ」

「そうだね。もうお互いにこれが最後になるだろう。だが……」

 

そしてお互いに、合わせもしてないのに同時に同じこと言った。

 

「「勝つのは俺(僕)だっ!!」」

 

そう互いに叫ぶと、最後の攻撃を放とうと合当理を噴かせ突進した。

そして互いがぶつかり合うところで、斬馬刀を振るい、向こうも大剣を振るう。

 

「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

互いの最後の一撃が交差し、この決闘で一番の破砕音が轟いた。

 お互いにすれ違い、地面に着地する。砕け散る互いの甲鉄。

そして噴き出す……俺の血。

視界を埋め尽くさんばかりに噴き出す鮮血。次第に襲ってくる寒気。きっと心臓付近まで斬られた。

 

「僕の……勝ちだ……」

 

アスカロンVIIは地面に片膝を着きながらも、何とか無事のようだ。

飛び散る鮮血を見ながら、俺の思考は死ぬことなど考えない。

考えるのはただ一つ。真耶さんのことだけだ。

この決闘に勝った者が真耶さんを手に入れる。いや、既に彼女は俺の恋人だ。

それが奪われる? 世界で一番愛しい人が奪われる?

それは………

 

死ぬよりも恐ろしい!!

 

このまま倒れればそうなってしまう。

彼女が泣きながらも、セシルに連れて行かれてしまう。

そんなことが……許される訳が無い! 絶対に許せない! 断固としてだ!

そんな事になってしまう自分が許せない。この決闘に負けてしまうならば、俺は俺という存在を絶対に許さない。

 

故に……絶対に負けたくない!

 

後一太刀で此方の勝ちになる。

致命傷を受けたから何だというのだ。倒れなければ……負けでは無い!

 

俺は鮮血を噴き出している体を一切気にせずに小太刀に手をかけ、縮地でアスカロンVIIの前まで一瞬で移動した。

そして技を放つ前にセシルに告げる。

 

「いや……お前の…負けだ……」

 

そして本当に最後の一撃を放った。

 

『吉野御流合戦礼法 迅雷っ!!』

「っーーーーーーーーーーーー!?」

 

最後に放った必殺に居合い。

それを受けたアスカロンVIIは咄嗟に大剣で防御しようとする。

それを俺はその防御ごと断ち斬った。

結果……

 

「ごぽっ……」

 

アスカロンVIIの大剣は根元から断ち斬れ、その胴体を見事に一閃した。そして噴き出す鮮血。

そのままアスカロンVIIは地面に倒れ、気を失った。

俺は噴き出す血で意識が飛びそうになるのを必死に堪えながら斬馬刀を地面にさして何とか立ち続ける。

そしてやっと試合終了の合図が鳴り響いた。

 

『試合終了、織斑の坊ちゃんの勝ちですよ』

 

それを聞くと同時に、俺は立ちながら気を失った。

 

 

 

 試合終了の合図を言った後、雪車町は真耶に向かって言う。

 

「ひひ……だから言ったでしょう。織斑の坊ちゃんが勝つって。なんたって……あの貴族様とは、潜り抜けた修羅場が違いやすから。確かにあの貴族の坊ちゃんはそれなりに厳しい戦いをしてきたのでしょうよ。だが……織斑の坊ちゃんの目を見ればわかりやすよ。織斑の坊ちゃんは…本当に『死合い』をしてきたってことがね……ひひ…」

 

 そう雪車町は真耶に言うが、真耶はそれを聞く余裕無く凄い勢いで管制室を出て行った。向かう先がアリーナであることは、誰の目から見ても明白である。

 

「くくく……いやはや、織斑の坊ちゃんは本当に良い伴侶を得たようで……」

 

そう雪車町は笑いながら言う。

すでに管制室はほぼ無人であり、皆一夏の方へと向かっていた。

 

「まぁ、少し言葉を濁しやしたけどね。あの貴族の坊ちゃんと織斑の坊ちゃんの圧倒的な違い……皆様にはわからないでしょうがね。一応言っておきやしょうか。そいつは…『人を斬った』ことがあるかどうかの違いでさぁ。あの貴族の坊ちゃんは確かに向こうで『死合い』をしてきたのかもしれやせんが、織斑の坊ちゃんは既に何でも実戦を経験し、何人も斬った。そこに違いがあるってことですよ」

 

そう誰もいない管制室に雪車町は言うと、部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 


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