かなりアウトに近いかも……
千冬姉にからかわれつつも、俺はその後に急いで真耶さんの部屋へと戻った。
ベットで寝かしつけた真耶さんは少し苦しそうな感じだったが、先程に比べれば落ち着いてきている。
それが分かり、ほっとした。流石にあれは朝からきつい光景だ。自分の心も落ち着き始めていることを自覚し始めた。
そして改めて真耶さんの部屋を見回してみる。
付き合い初めてそれなりに長く経つが、この部屋に入ったのは初めてだ。
それまでよく一緒にいたのは俺の部屋でばかりだ。恋人とは言え、流石に教師の部屋に行くのもどうかというのと、他の先生方に冷やかされるのが少し苦手だからだ。
周りの壁紙は薄い黄緑で、何だか五月のさわやかな春を連想させる。心を落ち着かせる良い色だ。
そして予想通りと言うべきか、とても可愛い小物だらけであった。
ベットの近くには可愛い動物のぬいぐるみが置かれていて、ピンク色のクマのぬいぐるみが此方を向いている。とても可愛いぬいぐるみで、真耶さんにとても似合っている。少し子供っぽいのかもしれないが、それが無邪気っぽくてとても可愛く思う。本人に言ったら、顔を真っ赤にして否定するかも知れないが、その後凄く恥ずかしがりながら認めるだろう。
その様子が脳裏に思い浮かべ、俺は笑ってしまう。きっととても可愛いだろう。
周りは結構綺麗に片付けられているようだが、机の上に何か置かれていることに気付いた。
「ん、何だろう?」
そう思い、さっそく見てみると……
「んなっ!?」
そこに置いてあったのは、下着であった。
黒色で露出の多い艶っぽい下着と、薄紫色をしたネグリジェ。
はっきり言ってどちらもエロい。
それが机の真ん中で置かれていた。きっとどちらが似合うとか、そんなことを考えていたのだろう。
どちらも凄く似合っていそうで……想像してしまう。
黒い下着を着けた真耶さんが前屈みで俺の顔を覗き込む姿や、扇情的なネグリジェ姿の真耶さんが恥ずかしそうに体を抱きしめている姿が頭の中に浮かんだ。
『だ、旦那様……どうですか? 似合ってます? 結構、冒険してみたんですけど……』
その瞬間、頭が沸騰しかけ恥ずかしさから慌てて机から視線を引きはがす。
(なっ…何て下着を………!! で、でもちょっと見てみたい気も……見たら見たで気が動転することは確実だが)
そんな事を思ってしまい、急いで頭を振ってその思考を振り払う。
今、真耶さんは風邪で寝込んでいるのだ。病人の前で考えて良いことでは絶対に無い。
邪な思考を急いで捨てると、俺は改めて真耶さんを見る。
少し寝苦しそうだが、スヤスヤと眠っている。
それを確認し、看病するために色々と用意しなくてはならないので俺は部屋を出て行った。
「……んぅ~……え?」
しばらくその可愛らしい寝顔を見つめていたら、どうやら目を覚ましたようだ。
真耶さんは上半身をベットから起き上がらせ、少しポーとしながら辺りを見回した後に、俺に気がついた。
「えぇ!? 何で旦那様が!!」
「真耶さん、風邪で倒れたんですよ。時間になっても来ないから心配になって、見に来たら部屋の中で倒れてて」
驚き慌てる真耶さんに事情を説明すると、真耶さんは申し訳無い顔をして謝ろうとしてきた。
なので、その前に先手を打って真耶さんを抱きしめる。
「へ? きゃぁ!? 旦那様?」
「心配したんですよ……凄く……」
「………すみませんでした……心配させてしまって……」
「いえ、無事ならいいんですよ。真耶さんが無事なら、いくらだって心配しますよ」
驚く真耶さんを尻目に、俺は心配したことを少しでも伝えようと痛くしないように力一杯抱きしめた。その事に驚きつつも、真耶さんは俺が如何に心配していたのかを理解して、しばらく為すがままにされていた。
しばらく抱きしめ合っていたが、そのままでは真耶さんの体に悪いので再びベットで寝て貰うことに。
ベットで横になっている真耶さんに少しでも休んで貰おうと、俺は意気込んで言う。
「今日は何でも言って下さいね。いつもお世話になってる分、何だって聞いちゃいますよ~」
明るめにそう言うと、真耶さんは熱で赤くなった顔で何かを考え始めた。
するとさっそく何かを頼みたくなったのか、顔が見る見る真っ赤になっていく。
「そ、それじゃぁ、さっそくお願い……いいですか?」
潤んだ瞳で上目使いにお願いされ、俺はさっそく意気揚々に話を聞く。
「ええ、何なりとどうぞ」
「そ、それじゃあ……」
そう言った途端に、顔がボンッと真っ赤になった。
「か、体を拭いてもらえませんか……まだ風邪で体が上手く動かなくて……」
恥ずかしさのあまり、切れ切れながらにそうお願いする真耶さん。
それがどういう意味なのか……それを理解した瞬間、今度は此方の顔が真っ赤になっていく。
「え、あの、それって……俺が……」
「は、はい……」
恥ずかしいから言わせないで下さい、と言うかの用に顔を真っ赤にして恥ずかしがる真耶さん。
その姿が普段と違って艶っぽく、尚更俺の胸を高鳴らせる。
俺はシャワー室を借りてお湯を桶に張ると、タオルを浸して真耶さんの元へと持って行く。
「お、お願いします……」
真耶さんは熱にうなされたせいか、恥ずかしさのせいか……もしくはその両方か。
凄く恥じらいながら顔を真っ赤にしてお願いする。
その姿が何だか情事の時にするような艶っぽい表情だったため、俺はすごくドキドキしてしまう。
(う……何というか……凄くエロい……)
そう考えていることを知られては、余計に恥ずかしがってしまうだろう。
病床の体にはあまり良くない。
俺は桶からタオルを取り出すと、よく絞る。お湯の温度は少し熱めだ。
それを見て、真耶さんは俺に背中を向けて着ていたワイシャツを脱いだ。
小柄でしっとりとした滑らかな背中。熱の為か、桜色に染まったその背中は余計に艶めかしい。
「そ、それじゃあ拭きますね」
「はい……」
絞ったタオルを、その艶めかしい背中に触れさせた途端に、
「んぅ」
と、凄く艶っぽい声を真耶さんが上げた。
そのせいで、俺は口から心臓が出るんじゃないかというくらい、ドキドキしてしまった。
しかし、気にしていては体を拭けない。何とか精神を落ち着けようと心がけながら、俺は真耶さんの体を拭く。
「んっ……んふっ……あっ……んぁ……」
(まったく落ち着けない! 何て声を上げるんだ、真耶さん!!)
そんな此方の精神を削る声を我慢しながら、俺は丁寧に背中を拭いていく。
「ど、どうですか、真耶さん(凄いすべすべしてる。ずっと触っていたくなってきそうだ)」
「は、はい……気持ちいいです(旦那様の手が背中を撫でていく……は、恥ずかしいけど、気持ちいい)」
そして更にろくでもないことに気付いてしまう。
真耶さんの寝間着は知っている限り、俺のワイシャツだ。その下には下着の下しか穿いていない。
つまり……背中を拭いている俺の視線の下には、下着だけの真耶さんのお尻が……。
薄ピンクの下着を穿いたお尻が視線に入り、俺は否応無しドキドキしてしまう。鼻が熱くなっていくのを感じる。きっと昔なら鼻血を噴いていただろう。
その光景にめまいを起こしそうになるのを堪えながら、何とか背中を拭き終える。
「真耶さん、背中を拭き終わりましたよ」
そう声をかけて、俺はタオルを桶に浸す。
これで終わったと、内心で安堵していた。
だが……
「そ、その……前も……お願いします、旦那様」
そうお願いされた。
顔を此方に向けてはいなかったが、きっと真っ赤になっているだろう。
そのお願いに俺はドギマギしてしまう。
「いや、前は流石にちょっと!?」
「……さっき旦那様、言いましたよね? 何でも言うことを聞いてくれるって。だから……お願いします」
此方に顔を向けていないのに、潤んだ瞳で上目使いにお願いしてくるのがわかった。
そうお願いされ、断るということは出来ない。その前に『何でも言うことを聞く』と言った以上、武者に二言はない。
「わ、わかりました……」
「は、はぃ…」
俺はドキドキして死ぬんじゃないかと思いながら、桶からタオルを取り出し絞る。
「さ、流石に前からは恥ずかしいので……後ろからお願いします……」
真耶さんは俺にそう言うと、拭きやすいように両手を上げる。
背中越しでも、その大きな胸が見えてしまい余計にドキドキしてしまう。背中からでもはみ出して見えるくらいの胸がどれくらい大きいのか……考えた瞬間に鼻血が出そうになる。
俺はそれを堪えながらタオルを持った手を背中から前に回す。
「では……拭きます」
「お願いしまふっ!!」
そしてタオルをお腹に乗せた瞬間、締まっていながらも柔らかい感触に意識が飛びかける。
そしてタオルを動かすと……
「んあっ……あぁっ……んん……んくっ……」
背中いを拭いていた時以上に艶っぽい声が出た。
己の男が過剰に揺さぶられる。
それを必死に……それこそ死合いで痛みを堪える並に耐える。
そして下から段々と上に上がっていき……ついに、あの大きな胸に手が向かった。
俺は生唾を飲み込んで覚悟を決めると、タオルを触れさせた。
瞬間……
「んぁあっ!?」
凄い声が真耶さんの口から出た。
その声に心臓から全部が口から出るかと思った。
「真耶さん! 大丈夫ですか!?」
「は、はい……続けて下さい」
そう何とか言う真耶さん。
俺は内心で般若心経を唱えながら手を動かす。
むにゅっ! と手が柔らかく沈み込む感触に、手に意識が強制的に集中する。
それでいて程良い弾力があり、いくらでも触っていたくなる。
そのせいで、夢中に胸を拭いてしまった。
「あっ、あっ、んあぁああ! んぅぅ、あ、あん! そんな、拭いて貰ってるだけなのに……あぁあああああ!」
そしてタオル越しに感じる硬い何か。それをこすってしまった。
その瞬間……
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?」
真耶さんは声にならない声を大声で上げてしまい、それが収まった瞬間にベットに倒れ込んでしまった。
息はしているが荒く、体が痙攣していた。意識があるのか分からない。
俺はというと……
意識はあるが、視界が真っ赤になっていた。
気がつけば俺も倒れており、視界は床一面。そして真っ赤になっているのが、自分の鼻血だと後々気がついた。