装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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これで事件も終わりました。
さて、次はどうしようかな~。


事件終了。

 伊達さんに止められていなければ、そのまま鈴川を殺していただろう。

奴はそれに値することをやったのだから。殺されても文句は言えない。

劒冑を駆る者が弱き者に刃を向ける。それは絶対にあってはならないこと。

それをした鈴川は絶対に許されない。今回の任務が捕縛であったことが惜しくて仕方ない。

まぁ……今回の事件が無くても真耶さんを襲おうとしたのだ。それだけで許せるわけがないのだが。

 俺は装甲を解除して鈴川の姿を見る。

斬られた鈴川は四肢を失い、芋虫のような姿になって気絶している。

斬られた後は焼かれ、血は一滴も出ていない。

 

「おいおい、織斑。あんまりやり過ぎんなよ」

「すみません、頭に血が昇っていて」

 

伊達さんにこづかれ、やれやれといった感じにそう言われた。

それでやっと頭が正常に戻ってくる。

改めて考えれば、あそこまでやる必要などまったくなかった。

最善策は無手でもって一撃で気絶させること。此方の技量と向こうの技量の差があれば、いくら名甲を装甲していても出来ないことではなかった。

だが、体から溢れ出る憤怒がそれをさせなかった。

そのことがまったくもって恥ずかしい。己が精神の未熟をまさに突き付けられたような気がするのだ。

その事で反省していると、真田さんが此方に歩いてきた。その結構後ろに真耶さんの姿が見える。その姿を見て、張り詰めていた精神が和らぐ。

 

「やれやれ、ひやひやしたよ。どうやら踏みとどまってくれたみたいだね。危うく君の恋人に殺人を見せてしまうところだったよ。恋人の為に怒るのは結構だが、加減はした方が良い」

「いえ、すみません。お見苦しいものを見せました」

「まぁ、そういう熱い心を持っているからこその武者なのだけれどね。さてと……これで一応事件の犯人は捕まえたが、まだやるべきことが残ってる。まず、急いでこの犯人を病院に送らないと行けない。このままでは死んでしまうからね」

 

 真田さんはそう言うと、伊達さんと一緒に俺が斬り飛ばした鈴川に四肢を回収する。

 

「あ、俺も手伝いますよ」

「いや、君は彼女と一緒に帰りなさい。殆ど君にもっていかれてしまったからね、これぐらいはさせてくれ」

「ああ、そうだぜ。俺等はこの後、あの水槽とかも調べなきゃなんねぇからなぁ。手前の嫁さんにはちときつ過ぎるからよ。連れてってくれ」

 

それが俺達に対する心遣いだと分かり、その話を素直に感謝する。

 

「すみません、お二人供。では、お言葉に甘えさせていただきます」

「おう、んじゃお疲れ!」

「お疲れ様」

 

現場を二人に任し、俺は真耶さんの所へと向かった。

本当に二人には感謝が絶えない。今度何かお礼をしなくてはな……死合い以外で。

 

「旦那様ぁ!!」

 

俺が無事だと分かった途端に、真耶さっが俺に抱きついてきた。

その暖かな柔らかい体を感じて、張り詰めていた緊張が完璧に消えた。

 

「もう大丈夫ですからね。すみません、助けるのが遅くなってしまって」

「そんなことないですよ! 旦那様はちゃんと私を助けてくれました。旦那様が助けに来てくれなかったら、もう……」

 

 まだ怖いのか、体が震えている。

俺はその震えを少しでも抑えてあげようと、優しく抱きしめ返した。

すると、真耶さんの顔から恐怖が薄れていくのを感じた。

もっと安心して貰おうと、普段ではあまりしない? 行動をする。

 

「もう怖い思いなんてさせませんから。絶対に」

 

そう耳元で囁くと、可愛らしいおでこに軽くキスをした。

 

「っ!? ……ぁぅ」

 

されたことが分かり、真耶さんの顔はみるみる内に真っ赤になっていく。

その姿の可愛さに幸せを感じる。本当に無事で良かったと、心の底から思った。

 その後、俺達は神社の石段に座り込んでいた。

こんな現場からはすぐに離れた方が良いのだが、俺のおでこへのキスで完全に気が抜けた真耶さんは、その場で腰を抜かしてしまったのだ。

背負って帰りましょうかと聞いたら、凄く恥ずかしがって断られてしまった。少し休めば動けると顔を真っ赤にして懸命に言い切るので、せっかくだから石段で休もうという話になった。

そんな顔も可愛すぎるものだから、俺は素直に聞き入れるしかない。

現在、俺は石段に腰掛けて座り、真耶さんは俺の足の上にちょこんと腰掛けていた。

俺の腕の中で真耶さんはポストの様に顔を真っ赤にしている。

 

「いつもより、随分と大胆ですね」

「そうですか? そんなことないと思いますけどね」

 

恥ずかしさから消えそうなほど小さい声でそう聞く真耶さんに、普通の振りをして答える。

本当は、かなり大胆な行動に自分自身でも驚いている。しかし、納得もしていた。

真耶さんが無事だと実感する度に、もっと大事だと思うのだ。

それは溢れるほどに凄まじい思いで、俺はこれを隠す気などまったく起きない。

だからこそ、真耶さんともっと一杯くっついていたい。絶対に手放さないように。

 そのまま抱きしめ真耶さんの首に顔を埋めると、真耶さんから驚きの声が少し聞こえたが、すぐに気持ちよさそうの目を瞑る。

俺はその柔らかい感触と背中越しに感じる心臓の鼓動を感じて、やっと安堵出来る。

 そのままお互いに無言でくっついてしばらく経ち、真耶さんは俺に話しかけてきた。

 

「でも旦那様。こう言うのも何ですけど、何でこの神社に?」

 

そう聞かれ、答え合わせをしている時の教師のような気分になり、俺は優しい笑顔を浮かべながらその疑問に答えた。

 

「それはですね、俺達が調べていた事件の犯人がここの人間だって判明したからですよ。事件が劒冑絡みだってことは話しましたよね。劒冑を手に入れる為には、普通家で受け継がれているのを引き継ぐか、神社で祀ってある御神体を手に入れるかのどちらかなんです。結構劒冑が御神体として祀られていることって多いんですよ。まぁ、例外もいくつかありますが。それでこの地域の神社を調べていたんですが、これが中々大変で。正直息詰まってたんです。それで伊達さんが海野さんに息抜きがてら電話をかけたら、同窓会の参加者の中に神社が実家の人間がいることを教えて貰ったんですよ。しかも祀っている御神体が普通ではない奇妙な像だと。それが劒冑だというのは、武者なら明らかに分かることです。この辺の神社は他に調べ尽くしましたけど、他に劒冑がある場所はなかった。だからこそ、その神社の人間が怪しいと判断したんです。……しかも、真耶さんに言い寄ってるって聞きまして……それで気が気じゃ無くて。急いで神社に着いたら、真耶さんを襲おうとしてるところだったんですよ。それで後は真耶さんも知っての通りです」

「そうだったんですか……まさか鈴川君が……」

 

説明し終えると、真耶さんは少し驚きながら感慨深く呟く。

 

「付き合いでもあったんですか?」

「少しだけですけど。中学生の時、一緒に図書委員だったことがあって……」

 

そう答えてくれる真耶さんに、少しだけイタズラ心が芽生える。恋人として、聞かずにはいられなくなった。

 

「もしかして……好きだった……とか?」

 

内心でかなり焦るのを感じながら聞くと、真耶さんがキッと怒った顔を俺に向けてきた。

普段が優しいだけに、その顔はかなり怖い。

 

「そんなことないです! 私の『初恋』は旦那様なんですから!!」

 

そう答えた後に、自分で言ったことを理解し直してボンッと顔を真っ赤にした。

 

「あ、あぅ~~~~~~~~~~~~」

「そうですか。それは良かった、安心しましたよ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、喩え昔話でも、妬いてしまいますから」

「まぁ! 旦那様ったら」

「それぐらい愛してるんですよ。俺は真耶さんのことを」

「っ~~~~~~~~~~~~~~~」

 

素直にそう答えると、真耶さんは顔が燃えた鉄のように真っ赤なって、嬉しすぎるのか顔がにやけてしまっていた。きっと幸せなんだろう。

だからこそ、もっと俺は幸せを感じさせたくて、また俺自身も感じたくて、真耶さんの顔を見つめる。

 

「真耶さん……」

「!?」

 

そのまま俺からキスをする。

可愛らしい唇の甘い感触を堪能しながら舌を真耶さんの口に侵入させる。

 

「んちゅ……ふぅ……んん……ちゅぱ……だ、旦那様……」

 

最初こそ驚いたが、すぐに俺に応じて舌を絡めてくれる。

お互いに貪るようにキスをして、顔を離すと真耶さんは表情をとろんととろけさせていた。

 

「俺にもっと真耶さんを愛させて下さい。身も心も、全てを……」

「ひゃ、ひゃい。私も、もっと旦那様に愛して貰いたいです」

 

「「んぅ…」」

 

そして先程よりもより深くキスをする。

お互いがお互いを必要だと、深く刻み込むように、俺達はキスをしあった。

とても気持ち良くて、夢のような時間を過ごした。

 この後、真耶さんの意識が飛ぶまでこれは続き、結局真耶さんは俺に背負われて帰ることに。

 

 

 

 ちなみに……やはり鈴川はあの事件の犯人であり、犯行の動機。それは……

 

『神社で祀っている御神体が劒冑だと知り、その能力で物体を永遠に保存できるのではないかと考えたからだそうだ。昔から考えていたらしいが、人間、とりわけ女性は身も心も美しい。しかし、それは環境や成長によって変わり果ててしまう。変わり果てた物は醜い。そう鈴川には見えていたらしい。それが我慢出来なかった。でも自分にはそれをどうする術が無い。そう思い悩んでいたところで、劒冑を手に入れた。だからこそ、今回の事件を起こしたのだと』

 

 ということらしい。

聞いた限り、馬鹿馬鹿しくて呆れ返る。

この男は美しさと言う物を勘違いし過ぎている。

美しいと感じるのは、それが大切で愛おしいからだ。いずれは消えてしまうと思うからこそ、人はそれを美しいと感じる。

それを永遠に保存しようと考えるのは、傲慢であり、それこそ醜い行いだ。そうしてしまったら、きっと保存された物は美しくないと感じるだろう。

それを理解できていない鈴川はきっと、人を好きになった事が無いのだろう。

人を好きだと愛することこそが、きっと……

 

世界で一番美しい。

 

俺はそう思う。




次回、とある人が風邪を引いてしまい、看病することに!?
まぁ、言わなくてもわかりますよね。

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