と言っても半分猥談ですが……
総理達から命じられた任務にさっそく取り掛かる俺。
午前中は授業を受け、午後からは政府命令で抜けられるようにして行動を開始した。
伊達さんと真田さんも呼び、俺達は資料にあった場所を調べに行くことに。
この場所は一応政府で押さえており、立ち入り禁止にされている。そのため、証拠となりそうな物や現場はそのまま保存されているのだ。
「そう言えば、伊達さん。海野さんと付き合い始めたって聞きましたよ。おめでとうございます」
俺は公園に向かっている最中、伊達さんに恋人が出来た事へのお祝いの言葉をかけた。
「おう、ありがとよ」
伊達さんは俺の言葉を受けて、それなりに嬉しそうに答える。それを見ていた真田さんが何やら難しそうな顔をしていた。
それが気になり、伊達さんに聞かれないよう小声で真田さんに話しかけた。
「どうしたんですか、真田さん? 何か難しい顔をされているようですが?」
「ああ、実はね……今回はどれだけ続くかな~、と思っていたんだよ」
「続くとは?」
俺が不思議そうにそう聞くと、真田さんは少し呆れながら答えてくれた。
「伊達なんだが……あいつは恋愛が上手くいかなくてね。すぐ恋人が出来ては別れてるんだよ」
そう聞かされ伊達さんの方を向いてしまう。
真田さんの言い方だと、伊達さんは恋人を取っ替え引っ替えしているように聞こえる。もしそうなのなら、俺はそれを注意しなければならない。そんな不義理なこと、許せるわけがない!
そのことを急いで注意しようとした所で、真田さんが慌てて俺を止める。
「違う違う、そうじゃないんだよ。別にあいつが悪いわけじゃ………いや、確かに悪いんだけど、君が考えているようなことじゃないよ」
「え? それってどういうことですか?」
「日中の往来でこんなことを話すのはどうかと思うんだが……彼奴は『夜の運動』が激しいらしくてな。恋人になった女の子がついて行けないらしいんだよ。昔それで凄い苦情を言われたよ。『殺す気かッ!』てね」
その『夜の運動』が何なのかが分かり、顔が熱くなるのを感じる。きっと今の俺は赤面してるだろう。
「それは……その…すみません」
「いや、だから彼奴にも非があるんだが、こればかりは仕方ない。誰かが注意することでもないからね」
そう言う真田さんは、何やら懐かしいことを思い出しているようだ。
そこで少し気になってしまうのは、武者と言えど十代の男ということだろうか。
「ちなみに……真田さんは? 確かご結婚されてましたよね」
そう聞かれ、少しニヤリと笑う真田さん。
「おや、君がこういう猥談を気にするとはね」
「一応これでも十代男子です。恋人がいる身としては、やはり気にはなりますよ。それに、参考として聞いておいて損はないかと」
俺は恥ずかしさから顔を赤くしつつそう答えると、真田さんは何やら難しそうな顔で答えてくれた。
「いや~~~……俺も似たような感じだったかな。最近はそんなことないけど、結婚する前は結構若かったからね。『意識が飛んでも突き続けるってドンだけよ! 御蔭で何回意識が戻ったり飛んだりしたことやら……』て当時嫁さんに言われたかな」
正直、あまりに生々しい答えに後悔した。
少なくとも俺は気を付けようと心に誓うことに。
「君も気を付けた方がいい。武者は体力が常人より上だからね。上限が違う分、そういう時は全力を尽くすと大変なことになる。特に『相手の意識が飛んでしまっている』時は気を付けないと駄目だよ。ちなみに俺はこの時、嫁さんに泣かれて大変だった」
そう昔を懐かしみながら語る真田さん。
俺は内心で冷や汗を掻いていた。
(そう言えば俺って……何度も真耶さんの意識が飛ぶくらいキスしてるけど、これって不味い? でも、真耶さんがもっとって催促してくるし、気持ちよさそうにとろけた顔で見つめてくるから、つい……)
もしかしたら怖がらせてしまっていたのでは……とその事に反省していると、少し先を歩いていた伊達さんが俺達の所に来た。
「何くっちゃべってんだよ、織斑。さっきから人のことを話しやがって。おい、真田! んなこと言うんじゃねぇよ。まるで俺が悪いみたいじゃねぇか。俺はただ、相手に失礼がないよう全力でしてるだけだぜ」
どうやらさっきまで俺と真田さんが話していたことが聞こえていたらしい。
まぁ、武者なら聞こえて当然か。
「それと織斑! 手前もやっぱ男だってか? クソ真面目な手前がまさかそんな話を真っ昼間からするとわな」
ニヤニヤ顔で伊達さんは俺に話を振ってきた。
それを慌てて否定しつつ、俺達は公園に向かう。
今から事件の調査をしに行くとは、とても思えない雰囲気だった。
公園に着き、さっそく写真にあったポールの所を調べる。
「これがあのポールかぁ」
「そうですね。写真に撮られていた物以外にも、周りによく似た跡がいくつもありますね」
伊達さんが斬られたポールを見て感想を洩らし、俺はポールの近くにも似たような跡をいくつか発見した。
木や他の遊具、地面などにもあのポールと同じような跡が刻み込まれている。
「これは……」
真田さんはその中の一つを見定めるような目つきで見つめ調べる。
俺も近くにあった木に付けられた跡やポールの跡を調べてみることに。
やはり写真ではなく、実際に見た方が良く分かる。御蔭であることに気が付いた。
そのことに二人も気付いたようだ。
三人で顔を見回し、調べた感想を一緒に言った。
「「「この跡を付けた者(奴)はかなり未熟だ!」」」
そう、これが俺達武者三人が皆思ったことだ。
切り口を見て分かるのだが、かなり汚い。たしかに刀で斬られた跡なのだが、力任せに無理矢理振り斬った感じを受ける。御蔭で斬線がかなり汚くなったのだろう。刀を振るう者として、あまりにも見苦しい切り口だ。
このことから分かることは……
「つまり相手は劔冑を使いはするが、武者としての鍛錬を積んでいない未熟者である可能性が高い」
「だな。こんな腕前の奴じゃあ、かなり弱っちいぜ。あんまり期待はできねぇなぁ」
少なくともそれは武者では無い可能性が高いことを指す。
劔冑を使うから武者と言うわけでは無い。
武者とは、己が信念を持ち、武によってそれを貫く者のことだ。劔冑を使うだけでは武者とは言えない。
このことから、犯人は劔冑を所有しているが強く無いことが窺える。
相手が劔冑を持っていると確定出来る要因としては、ポールなどの金属で出来た物をこんな汚い斬り方で斬れたことだ。
普通にを刀を持った人間ではまず切れないだろう。鍛えた武者ならば容易に斬ることが出来るが、こんな汚い切り口には絶対にならない。
劔冑を装甲すれば、一般人でもこれくらい余裕で出来るようになる。だが、それでも切り口は綺麗にならない。何故ならそういった刀を振るう術を学んでいないからだ。
結果……犯人は劔冑を持ち、使いはするが武者ではない。
それが判明した。
爆音の件を調べるまでもなく、俺達はこれを劔冑を使った犯行と断定し調査を続行することにし、資料にあった他の場所も調査しに向かった。