装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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織斑 一夏の大失敗

放課後になり今はアリーナにいる。

近接戦の訓練をするためだ。

と言っても実際には箒の訓練に付き合うといったほうが正しいか。

ISと違い劔冑の力は本人の武力によるところが大きくなる。劔冑を装甲しなければ出来ない技以外は全て生身で訓練するものなのだ。

つまりアリーナでなくても出来る上に装甲する必要があまりない。

なので俺にはあまり装甲しての訓練が少ない。

しかし箒が

 

「セシリアでは射撃戦の訓練しか出来ないだろう。しかし私ならお前の近接戦の相手ができる! 放課後は私と訓練するぞ!」

 

とのこと。さすがに相手の好意を邪険に扱うわけにはいかないので、この訓練を受けた。

 

「一夏、全力で来い! 相手になってやる!」

 

箒が妙に嬉しそうに声を上げながら剣を構える。この訓練のために打鉄を借りてきたらしく、アリーナに来たときにはもう装着していた。

確か借りるのに結構な量の書類を書く必要があったはずだ。そんな苦労をしてもらった手前、中途半端なことは出来ない。

 

「分かった、全力でいかせてもらう! 行くぞ、正宗!」

『応』

 

俺の呼びかけに応じて正宗が来る。

 

『世に鬼あれば鬼を断つ 世に悪あれば悪を断つ ツルギの理ここに在り』

 

俺は装甲して早速箒のところへ向かう。

 

『御堂、ああおなごには言うたが、力は半分くらいにせよ』

「何でだ?全力でいくのが礼儀だろ」

『御堂が礼節を尊ぶのはわかるが・・・・・・まぁよい。やってみれば分かる』

「?」

 

そして俺は箒と剣を交えることにしたのだが・・・・・・

 

 

 

 

「きゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・」

 

すぐに正宗が言ったことが分かった。

 

俺は全力で打ち込みを行い、箒はそれを迎え撃とうとした。結果・・・・・・

壁際だったことも災いして箒は一撃で壁に叩き付けられ、伸びてしまった。

 

劔冑の操縦について重要となっているものの一つに、熱量の運用というものがある。

劔冑は仕手の熱量を燃料に動かす。何もそれは合当理に限らず、身体の強化にも使われる。

しかしそれに全部の熱量を使うわけでは無いのだ。

飛行ために合当理の出力を上げ、なおかつ身体強化を全開にすることは出来ない。

人が持てる熱量には限りがあるためだ。

十の力を十ずつには使えない。ある程度の割り振りが必要なのだ。

例で言うのなら、6の力を合当理に、4の力を攻撃のために身体強化に、

とこのように熱量を運用して装甲した武者は戦っている。

 

今回は箒が飛ぶのに馴れていないこともあって地上で剣を交えることにした。

なのでとぶ必要がないので全ての熱量を身体強化に持って行ったのだが・・・・・・

 

『だから言ったであろう、半分で良いと』

「正宗、これは何でだ? 九○式竜騎兵甲じゃここまでは酷くなかったはずだぞ」

『御堂、忘れておらぬか。我は天下一名物、相州五郎入道正宗。そこら辺の数打とは比べものにならないほどの名甲よ! 性能が全く違いすぎるわ!』

 

そう自身満々に言う正宗。

だからか・・・少しは礼節も控えなきゃいけないな、こりゃ。

 

 

俺は改めて相棒の凄さを実感しながら箒を介抱することにした。

 


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