完全オリジナルなので、どうなることやら。
元の世界に帰還した後、俺と真耶さんは湊斗家を後にし、また織斑家に戻った。
自宅療養をしつつ鍛錬を再開し始めると、真耶さんが心配して付き添ってくれた。
その事に申し訳無い気持ちを感じながらも、嬉しくて仕方なかった。
俺の鍛錬の時間は朝早く、真耶さんが眠そうにこっくりこっくりと船をこぎながら縁側で座っている姿はとても可愛くて、何度か内緒でキスしてしまった。
朝はそこまで強くないのか、まったく気付かない様子も可愛くて頬が緩んでしまった。
いつもと同じ鍛錬なのに、何だか幸せで仕方なかった。
そして新学期も間近になり、IS学園の寮に皆戻った。
寮に戻ってからも鍛錬は欠かさずに行い、今までの遅れを取り戻そうと頑張る。
まだ毒が残っているが、それでも当初に比べればかなり抜けてきている。
そのため、毒で動けなくなる手前まで追い込み、精神と肉体を鍛え直す。
その様子はまさに、刀を打ち鍛える様子を彷彿とさせるだろう。
真耶さんはそんな俺の様子をハラハラしながら見守っていた。
心配をかけてしまっていることを心苦しく思いながら、一緒にいられることが嬉しかった。
そう言えば、ここ最近は朝の挨拶メールを全くしていない。
する必要が殆どないからだ。そのことに若干の寂しさを感じるが、それ以上に嬉しいこともある。
毎朝、真耶さんは俺のことを起こしに来てくれるのだ。
と言っても鍛錬で既に起きているため、俺のことを起こせないと少し残念がっていた。
寮に戻ってから真耶さんは少しだけ悲しいような顔をしていた。
その理由を聞いたら、
「だって……学校が始まったら、旦那様と一緒にいられる時間が減っちゃいますから。それに、一緒のお布団で寝れませんし……」
と、顔は赤くしながらそう教えてくれた。
その一途な想いが嬉しくて、その場で抱きしめて真耶さんが立てなくなるくらいキスしたのは言うまでもない。
何度でも言うが……
(真耶さんが可愛くて仕方ない!! 大好きです、真耶さん!)
そう心の中で叫んでいた。
そして三学期開始当日。
俺は朝の鍛錬をいつもの二倍以上行い、残った毒にふらつきつつも部屋に戻ると部屋のドアが開いていた。出る前には鍵をかけたはずなので、少し不審に思いながらドアを開ける。
すると、俺のベットが膨れていた。
それが何なのかがすぐに分かり、クスッと笑ってしまう。
俺はかかっている布団を優しくめくると……
「すぅ……すぅ……すぅ……んん~…旦那様ぁ~…だぁ~いすき…んふふふ……」
真耶さんが可愛らしい寝言を零しながら眠っていた。
どうやら鍛錬の前に俺を起こそうとしたが、眠気に負けて眠ってしまったようだ。
その姿の可愛らしさに、頬が緩んでしまう。
このままずっと見ていたくもなるが、そろそろ起こさなくてはいけない。教員は生徒より早く登校しなくてはならないのだから。
「真耶さん、起きて下さい。もうそろそろ起きないと学校に遅刻しちゃいますよ」
優しく囁くようにそう言うが、真耶さんは起きる様子が………
「………(ちらっ……ちら……)」
訂正。
俺の声で起きたらしい。だが、敢えて寝たふりをしているようだ。
そんなイタズラをする真耶さんも可愛い。
俺はそのことに頬を緩めながら、『寝ている』真耶さんがどうすれば起きるのかを聞いてみる。
「どうすれば真耶さんは起きるんでしょう。このままじゃ学校に遅刻しちゃいますよ」
「…………旦那様がキスしてくれたら、起きますよ~……ムニャムニャ……」
そこで素直に答えてしまうあたり、まだまだ甘い。だが、その甘さが愛おしい。
俺はそんな真耶さんに笑顔で顔を近づける。
「では……起きて下さい、真耶さん」
そのまま可愛らしい唇にキスをする。
甘い…甘すぎる。しかし、まったく胸焼けを起こさないその感触に幸せを感じながら堪能すると、真耶さんも応じて唇を押しつけてきた。
「……んぅ……ふぅ……」
その甘い口付けを止めるのを少し勿体なく思いながら唇を離す。
「起きましたか?」
「……………」
どうやら少し物足りなかったようだ。
頬を赤く染めながらも、寝たふりを続けていた。
その様子があまりにも可愛いものだから、俺の中のタガが少し緩む。
「じゃあ、もうちょっとしますよ」
そしてまたキスをする。
だが、この後は先程とは違う。
「!?」
真耶さんから驚きの感情が伝わってくる。
その事に笑いながら、俺は真耶さんの口の中に舌を入れ、口内を優しく舐め回す。
舌を使い歯茎などを舐め、舌を絡め唾液を送り込み、真耶さんを逃すまいと唇を貪る。
最初こそ戸惑っていたが、すぐに俺を受け入れて真耶さんも応じてくれた。
俺は自分の舌に真耶さんの舌が絡みついていく感触に頭が真っ白になりそうになる。
それに意識を持って行かれないよう、さらに激しくキスを真耶さんにしていった。
そしてある程度した後に唇を離した。
「起きましたか、真耶さん」
「ひゃ、ひゃい……」
真耶さんはちゃんと起きたようだが、目は潤み呂律は回っておらず、とろけた表情で腰砕けになっていた。そんな真耶さんがあまりにも艶っぽいものだから……
「すみません、真耶さん。あまりにも可愛すぎて、我慢出来そうにないので……」
「へ? だ、旦那様っ!? っ~~~~~~~~~~~~………」
そのまま深いキスを真耶さんにして、真耶さんはとろけてしまった。
その後………
「ふにゃぁ~~~~~……は、激しすぎです、旦那様。壊れちゃうかと思いました…………ぽ…」
顔を真っ赤にしながら真耶さんはベットに座り込んで俺にそう言って来た。
その目は潤んでおり、熱が込められていた。
「すみません、ついつい我慢が効かなくて………可愛すぎるんですよ、俺のお嫁さんは」
「はぅ!? もう、旦那様ったら~~……大好きです!」
そして俺に抱きつき、俺の胸に顔を埋める真耶さん。
俺も抱きしめ返すと、真耶さんから香る甘い香りを胸一杯に吸い込んだ。何だか気分がぽぉっとしてくる。
「ちゅっ…ちゅぷ……」
真耶さんはそのまま俺の首筋やら胸にキスの雨を降らし、それをくすぐったく思いながら抱きしめる手に力を込める。
その幸せを感じながらしばらく抱きしめていると、いきなり部屋のドアが開いてマドカが入って来た。
そして抱き合っている俺達を見て顔を真っ赤にし、逃げ出すように部屋を出て行った。
それを見て真耶さんは恥ずかしさで顔を真っ赤にし、俺は俺で気まずく思いながらもこう思った。
(何だか前にも似たようなことがあったような……マドカ、取りあえず………ノックはちゃんとしてくれ)
この後、マドカは千冬姉にこのことを報告しに行き、千冬姉は呆れ返ったんだとか。
学園に登校し、自分の席に座る。
クラスメイトに久々に会ったが、皆元気そうで何よりだ。
俺は教室に入ってきたクラスメイトに新年の挨拶をしていくと、皆元気よく返してくれた。
ただし……セシリアや箒達は変わらずに元気がないようだ。
原因が自分とはいえ、こればかりは仕方ないのでどうしようもない。
俺はそれでも皆に声をかけていくと、皆少し引きずっていたが返してくれた。
ラウラだけは普通に反応してくれるのだが……皆早く元気になってもらいたいものだ。
自分の席で座り待つこと十分。
教室の扉が開くと、真耶さんが元気よく教室に入ってきた。
「みなさん、あけましておめでとうございます」
「「「「「「あけましておめでとうございまーーーーーーーす」」」」」」
クラスの皆が挨拶を返すと、真耶さんも嬉しそうに笑う。
そんな姿も可愛くて、俺はついつい頬を緩めてしまう。
そして真耶さんは俺に満面の笑みを向けながら挨拶をした。
「では改めて。おはようございます、『旦那様っ!!』」
「「「「「「えっ?」」」」」」
その笑顔はとても素敵で、それを向けられる俺はとても幸せなのだが………
それは言っては不味い。
俺はそれを聞いてショックで固まってしまう。
そしてクラスの皆がそのことを理解した瞬間……
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
クラスメイトの黄色い声が教室に轟いた。
あまりの音量に鼓膜が破けるかと思う程に、その声は大きかった。
「さっき山ちゃん、織斑君のこと『旦那様』って呼んだよ!」
「もしかしてもうそこまで行ってるの!? 織斑君って見かけによらずに大胆!」
「山ちゃん、前より更に綺麗になってる! やっぱり恋をすると女の子って綺麗になるのね」
皆口々にそう言う。
何だか前にも似たことがあったような気が……
そんなことを考えていると、クラスメイトの一人が真耶さんを見てあることに気がついた。
「あれ、山ちゃん先生~、その左手にあるのって~、もしかして~指輪~?」
独特な間延びした声でそういうのはクラスメイトの布仏さんだ。
それを聞いた他のクラスメイトがその話題に食いつき、真耶さんに殺到する。
「え、マジ!? 山ちゃん、その指輪って!」
「もしかして、それって織斑君が……」
「だから…旦那様って……」
皆がそう真耶さんに聞き、真耶さんは顔を真っ赤にし恥ずかしながらも幸せな笑みを浮かべて皆に答えた。
「は、はい。そ、その……この指輪はい、一…旦那様がクリスマスにプレゼントしてくれて。その……婚約指輪です。まだ結婚は出来ないからって言って、でも婚約は出来るからって。もう両親にも挨拶は終わってて、みんな認めてくれました。だから、一夏君は私の旦那様なんです……ポ…」
「「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」
クラスの皆がまた沸き上がった。
その声は雷鳴の如く、皆のテンションは火山の噴火すら余裕で超える勢いであった。
そして今度は俺を見て、俺に確認を取る。それに堂々と答え(恥じては真耶さんに失礼なので)、それを聞いたクラスメイトは更にテンションを上げる。どこかで何かを吐きだす音が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
そしてまた布仏さんが何かを見つけたようだ。
「あれ~おりむ~。その首筋にあるのって……」
そう布仏さんが言った途端に、皆の視線が俺の首筋に集中した。
何か変な物でもあったのだろうか?
「もしかしてそれって……キスマーク!?」
「えぇえええええええええええええ! てことは織斑君……」
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そう言われ、俺は首筋を気にしたが、自分からは見えない。
どうやら、首筋にキスマークがあったらしい。そんな物を付けられた覚えなんて……あ!?
俺は今朝のことを思い出し、真耶さんの方を見ると、
「えへへへへ……私だけの印を付けちゃいました……」
と口の動きで伝えてきた。
その顔はイタズラが成功したような子供の顔で、所謂『てへぺろ』という顔をしていた。
普段しないそんなお茶目な表情に、俺の胸はドキッと高鳴った。
(うわぁッ! か、可愛い!!)
俺と真耶さんの雰囲気を察して、さらにクラスメイトが騒ぐ。
マドカにも真偽を聞こうと人が集まり、マドカは基本素直に答えていく。
そして、偶に顔を真っ赤にしながら歯切れ悪く何かを答えると、更にクラスは沸き立った。
それは千冬姉が教室に来るまで続き……
その日の一番最初の授業は、『千冬姉によるクラス全員のお説教』であった。