しばらく異世界の一夏と異世界の山田先生はイチャつき、それによって砂糖を吐きまくる原作一夏一行。そんな様子を光と二世村正は快活に笑いながら見ていた。
その後、復帰した箒達は異世界の一夏達に食いついくように話を聞きに行った。
皆、自分達の先を進んでいる異世界の一夏達にアドバイスを受けたくなったのだ。
それを異世界の一夏達は快く応じる。その姿はまさに夫婦のようであり、箒達は尊敬と羨ましさを込めた視線で二人を見ていた。
「まぁ、大体の予想は付くが話してみなさい」
相談に乗って欲しいと此方の箒達に言われた。
そのことに若干苦笑しつつ、俺達はその相談に乗ることにした。
そう答えると、箒達は何だか俺の顔をまじまじと見てきた。
「どうかしたのか、人の顔をまじまじと見て?」
「いや、そのな……顔が同じとは言え、こうして改めて話してみると全然雰囲気が違うと思ってな。とても同い年と話しているとは思えん。気を抜くと敬語で話してしまいそうだ」
「そうですわね。まるで落ち着き払った紳士のような感じですわ」
「若さがあまり感じられない話し方ねぇ~。おっさん臭い」
「な、なんかお兄さんみたいな感じがするよ」
「まるで先生と話しているような気分になるな」
「とても同じ人には見えないですね~」
箒達から口々にそう言われた。
そんなことは全くないと俺は思うのだが。それと鈴、それは失礼だ。俺のいた所の鈴にも同じことを言われたような気がする。
そこまで……老けた覚えはないのだがな。
俺としては、師匠の方が余程しっかりと落ち着いている。俺としてはあの落ち着きを身につけたいものだ。
俺が言われたことに若干のショックを受けていると、真耶さんが俺の手を少し引き俺の注意を自分の方に向ける。
「そんなところもまた格好いいですよ、旦那様。私はそんなところも……大好きです!」
恥ずかしそうに顔を赤らめながらそう言う真耶さん。
そのあまりの可愛らしさに手が抱きしめようと動いてしまう。
「や、止めてくれ! また『アレ』を噴き出したくない!!」
急に箒にそう言われ、急いで手を引っ込める。
どうも最近歯止めが効かない………少し真面目に考えなければ。
「む、すまん。で話だったな。まずは箒から」
俺は謝ると、箒達はホッと安心していた。
そして話を聞く。
まぁ………大体は此方の一夏への愚痴やら不満やら気の惹き方やらである。
「一夏の奴が軟弱でいけない! いつもいつも彼奴はへらへらして!」
「一夏さんにはもうちょっと紳士としても落ち着きを持って貰いたいのですわ」
「一夏はいつもいつもこっちの意図を読んでくれないのよ!」
「もうちょっと僕達のことに気付いて欲しいかな」
「あいつは嫁としての自覚が足りん!」
との事である。
今の俺にはそう話す箒達を見て苦笑してしまう。
皆素直ではないのだ。それでは伝わるものも伝わらないだろうに。
それと前に此方の一夏から聞いた話を合わせると、此方の一夏は箒達の好意に気付かず的外れなことをしてしまい、それによって箒達が激怒。そして追っかけられるという構図が出来ているようだ。
それに対して俺はこう答えるしかなかった。
「皆当たり前の事だが、もう少し素直になれ。此方の一夏が察しが悪いのは今に始まった話では無かろう。素直に真っ直ぐ想いをぶつけたほうが絶対に良いだろう。意地やプライドはあった方が良いが、本当にしたいことを前にして張っては無駄なだけだ。それとすぐに癇癪を起こして暴れるのは感心せんな。怒るというのは、相手を思っての行動だ。そうでなければ只の暴力でしかない」
そう言われ、箒達は気まずそうにしていた。
身に覚えがあるからこそ、気まずくなるのだ。
すると今度は真耶さんが箒達に話す。
「旦那様の言っている通りですよ。私も向こうの世界で篠ノ之さん達と旦那様を取り合いましたけど、やっぱり最後には素直に伝えることが大切でしたからね。少し恥ずかしくて素直になれないのはわかりますけど、暴力は行けませんよ。向こうの篠ノ之さん達は振るってませんでしたからね」
「え、そうなんですか?」
真耶さんの話を聞いて山田先生が反応する。
どうやら俺が向こうで俺が暴力を振るわれていないことに驚いたらしい。
「旦那様は武者ですから。生身でも凄く強いんですよ」
「そういうものなんですか?」
「はい! だって……私を叩いた人に怒って、素手で壁を打ち砕くくらいですから」
「そ、そうなんですか……」
頬を赤く染め、思い出してうっとりしながらそう語る真耶さんに山田先生は少し引いていた。
箒達も俺の事を信じられないようなものを見る目で見ていた。
そんな目で見ないで欲しいものだ。俺はそこまでおかしなことはしていないぞ。
「ま、まぁそういうわけだ。多少苛つかされてもすぐに怒らず、少しは許してやるのも大切ということだ。少しは此方の一夏の話も聞いてやりなさい」
「「「「「は、はい……」」」」」
箒達は少し反省したらしく、そう答えた。
そしてもう少し相談に乗っていると、此方の一夏が話しかけてきた。
「もう箒達の話は終わったのか? だったら頼みたいことがあるんだけどさぁ」
「それは別に良いが、色々と聞かされたぞ。もう少しは人の気持ちを慮ることを覚えろ。いつも箒達にあんなことばかりしていては失礼極まりないぞ」
「失礼? 俺って何か箒達にしたか? それより、いつも俺の方が酷い目に遭っているんだけど! だってあいつら、何かにつけてすぐ怒って俺にISの武器を向けてくるんだぜ。俺は悪くないのに」
そう此方の一夏が言った途端、箒達から何かが切れる音が聞こえた気がした。
所謂、キレた時の音である。
「「「「「「お前がいうなぁああああああああああああああああああああああ!!」」」」」
箒達は叫び上げると、ISを展開し此方の一夏に武器を向けて攻撃しようとしていた。
俺はそれに呆れつつ、正宗に金打声で話しかける。
「正宗、斬馬刀を」
『はぁ…諒解』
正宗も箒達の様子を見てて呆れ返った声を上げつつ、俺に斬馬刀を飛ばす。
俺は窓から飛んで来た斬馬刀を掴むと抜刀した。
「少しは落ち着け、お前等」
俺は迫ってきた箒と鈴が振るう近接ブレードを床に叩き落とし、次に突進してきたラウラのプラズマ手刀をいなし、セシリアとデュノアの銃から放たれたレーザーと銃弾を弾く。
「「「「「「なっ!?」」」」」」
自分達の攻撃を全て防がれた箒達と守られた此方の一夏から驚愕の声が上がる。
まさか、ただ刀を持っただけの人間が全てを捌くとは思わなかったのだろう……片手で。
俺はあんぐりと口を開けている箒達に口を酸っぱくして言う。
「さっきも言っただろう、すぐに暴力に移るなと。そうだから想いも伝わらんのだ。それと一夏、お前もお前だ。何も考えずに相手を否定するようなことを言うな。何故相手が怒るのか、何を求めてそう言ったのかをちゃんと理解し、察しろ。これはある人にも言ったことだが、もう少しは『人の感情を…想いを学べ』それが出来ないのでは、いつまでもこのままだぞ」
「そ、そうなのか……何かすまん」
「「「「「すみません」」」」」
俺の行動により力量の差を見せつけられ一夏達は、素直に反省したようだ。
流石に大人げなかっただろうか?
「いいんじゃないですか、旦那様。たまにはきつく言うことも大切ですよ」
そう反省していると、真耶さんが笑顔でそう言って来た。
その笑顔を見ているとそんな気がしてきた。
まぁ、箒達にはこれで良いだろう……そう思った。
俺達はそのまま学食に向かい、少しお茶をすることになった。
箒達は俺と真耶さんの近くに座り、俺達の話を根堀り葉堀り聞いてきた。
キスより先に行ったのかとか、恋人が出来てからの生活はどう変わったのかとか。
真耶さんはそれを凄く恥ずかしがりながらも答えていた。
「き、キスよりも先ですか!? そ、その……エッチとかは……まだしてませんけど、深いキスとかは……い、一杯してもらいました。そ、その、旦那様は結構情熱的で……とても上手なんです。してもらっていると頭の中が真っ白になってきて、意識がポォーとしてきて、胸が幸せで一杯になって。気持ち良すぎて仕方ないですよ。いつもは控えめな旦那様ですけど、やるときはやる人で……だから思いっきりキスされると、私は気絶させられちゃうくらい…その…激しいんです」
とか、
「この指輪ですか? これはクリスマスに貰ったんです。ちゃんとした婚約指輪ですよ。裏にメッセージが刻まれてるんです。『永遠にあなたのそばに』って…えへへへ、旦那様が私の為に……。これを貰ってから、私は一夏君のことを、旦那様って呼ぶようになったんです。ちゃ、ちゃんと千冬さんにもご報告しましたよ。え、怖くなかったかって? 旦那様と一緒なら、千冬さんだって怖くないです! それにちゃんと認めてもらいましたし、今じゃ義姉と呼んでもいいって言われましたしね」
とか、
「一緒には……はい、何度も一緒に寝ています。旦那様は私のことをぎゅっと抱きしめてくれて、耳元で囁いてくれるんです。それでキスをしてくれて……その、たまに首筋にもキスとか一杯してくれて気持ち良くて……その……どうにかなっちゃいそうになったり……私も旦那様に一杯くっついて……旦那様に負けないくらいキスを返すんですよ。それで…『大好きです』って言うと、旦那様がもっと一杯抱きしめてくれて、意識が飛ぶくらいに激しく私をキスで求めてくれて……ポ……」
などなど。
それを聞いた箒達は、気の毒になるくらい真っ赤になっていた。
だが、その眼差しには明らかな羨望が込められている。
そんな中、俺はと言うと……
「真耶さん、はい、あーん」
「あ~ん……んふふ、美味しいです~。旦那様も、はい、あーん」
「あーん……美味しいですね」
学食のデザートをはい、あーんで真耶さんと食べさせ合いをしていた。
向こうの世界になかったデザートだったので、これを頼んだのだが中々に美味しい。
それを二つ頼もうとしたら真耶さんに止められ、こうなった。
恥ずかしいが、美味しそうに食べる真耶さんが見られるのなら、これもいいかと思う。
あれ、昔より考え方がおかしくなってないか? ま、まぁ、その分真耶さんが大好きだということで見逃してもらいたい。
そうしてデザートを食べさせ合う俺達を、箒達は羨ましそうに見ていた。
そのまま食べさせ合っている最中に一夏に思っていたことを聞いてみることにした。
「そう言えば一夏よ」
一夏は俺達の姿を見て赤くなりながら気まずそうに頬を掻いて答える。
「な、なんだ?」
「ああ、さっきからな……隠れている者がいるんだが、そろそろ呼んだ方がいいだろうか?上手く隠れているつもりだろうが、まだまだ詰めが甘い。そろそろ出てきた方が…「旦那様…その、口移しで食べさせて貰っても……いいですか?」なっ!? いや、それは…」
話している最中だが、真耶さんが俺に上目使いで小さくお願いしてきた。
凄く可愛くてしたい誘惑に駆られるが、流石に人前でそこまでは……と思っていたら……
「じゃあ、私が先にしますね……んぅ…」
「!?」
何か言う前に真耶さんに唇をふさがれてしまい、口内に凄く甘いものが舌と一緒に入り込んできた。
「んぅ…ちゅ……ちゅぱ……んふ……」
「「「「「「「「!!!!?????」」」」」」」」
その場にいた皆が俺達のキスを見てしまい、驚きショックのあまり固まっていた。
俺も驚き固まる。
(な、なんでこんないきなり!? こんな大胆なことを……ん? この香り……)
視線でテーブルの上を見ていると、何故か知らないがウィスキーボンボンが茶菓子に混じっていた。
(これを食べたからかぁあああああああああああああああああああああああ!!)
そう理解している間にも、真耶さんは俺の口の中を舌で舐めて堪能していた。
そして唇を離すと、顔を赤くしながら艶っぽい顔をしていた。
「旦那様……もっと一杯してもいいですか? もっと一杯旦那様のことを感じたいです…もっと」
その顔はとても魅力的で…はっきり言ってエロかった。
それを見た瞬間……
「「「「「「「「ごぱぁあああああああああああああああああああ!?」」」」」」」」
箒達と此方の一夏と山田先生が何かを噴き出して気絶した。
それと同時に出口付近で何かが倒れる音がした。
そちらの方を見てみると……更識 楯無生徒会長が気絶していた。
床に落ちていた扇子には、
『ギブミーブラックコーヒー』
そう書かれていた。