穴があったら入ってコンクリで固めたい気分の一夏です。
顔から火が出そうなくらい真っ赤になりながら恥ずかしがり、一生懸命に皆にそう言う真耶さんが可愛くて笑顔になってしまう。はぁ~~~、可愛くて仕方ない。
皆はいきなりの発表に大いに驚いていた。だがそれでは伝わらないだろうと思い、真耶さんを少し止める。
「真耶さん、落ち着いて下さい。言いたいことはとても分かるし、一番最初にそう言ってもらえるのは本当に嬉しいですが、それじゃあ自己紹介になりませんよ」
「は、はい、旦那様!! す、すみません、緊張して……」
「いきなりこうなれば誰だって緊張しますよ。それに……顔を真っ赤にしながら一生懸命にそう言う真耶さんもまた可愛かったですから、俺としては嬉しいですよ」
「は、はぅ……だ、旦那様ったら……」
真耶さんは俺にそう言われ、顔を赤く染める。
人前でなければ抱きしめたくて仕方ない。それぐらい可愛いと思う。
俺はそんな真耶さんに笑顔を向けながら話していると、箒達からまた叫びが上がった。
「「「「「「旦那様ぁあああああああああああああああ!?」」」」」」
皆顔を見ると驚愕で固まっていた。
婚約者と言ったのだから、そこまで驚くことではないと思うのだが。
取りあえず場を落ち着ける為にも、ちゃんと説明することにした。
「では改めて。こちらは俺の最愛の人である山田 真耶さん。まだ結婚は出来ないが、婚約はさせてもらっている。皆、よろしく頼む」
「や、山田 真耶です。皆さん、よろしくお願いします。な、何か変な感じがしますね。目の前に自分がもう一人いるっていうのは。これが前に旦那様が感じた気持ちですか………うふふ、また旦那様と一緒になっちゃいましたね。嬉しいです」
真耶さんが嬉しそうに此方を見つめながら言うと、俺も嬉しくて笑顔で見つめてしまう。
そのままキスしたくなったが、その前に声で遮られる。
「ちょちょちょっ、ちょっと待て!? 何だ! 向こうの一夏は山田先生と、そ、その、恋人なのか!!」
「ま、まさか異世界の一夏さんには恋人がいるなんて!? ありえませんわ~~~~~!」
「ちょっ、えぇ~~~~~! 何で山田先生なのよ!?」
「世界が違うだけでこうも違うなんて……」
「あ、ありえん! 世界が変わろうとも嫁の夫は私だけのはず……」
「まさか私と織斑君が恋人になってるなんて……びっくりしちゃいました」
皆俺と真耶さんの関係にかなり驚いているようだ。
「す、すまん。皆あまりのショックに思考が上手く働かないようだ。つまりこういうことか……異世界のお前達は恋人同士で、婚約していると」
向こうの千冬姉(この際は織斑先生でいいか)が大体の話をまとめる。
俺と真耶さんはその話に頷く。恥ずかしそうにこくんと頷く真耶さんもまた…可愛い。
そして皆正気に戻ると、箒達が詰め寄ってきた。
「「「「「「その話、詳しく聞かせて(もらおうか)(もらいますわ)(もらうわよ)(くれないかな)(もらうぞ)(もらえませんか)」」」」」」
「あ、ああ……」
あまりの迫力に戦く俺。
真耶さんはそんな俺と箒達を見て、クスクスと笑っていた。
そのまま真耶さんと恋人になった経緯を話そうとしたら、御母堂に呼び止められた。
『少し待て、一夏』
「どうしたんですか、御母堂」
その途端にまた驚きの声が上がる。
「「「「「「「なっ!? 喋った!!」」」」」」」
そういえば御母堂のことを詳しく話していなかった。
俺は皆に御母堂のこと、真打劔胄の事について説明していく。それを聞く度に皆驚いていた。まぁ、元の世界でも劔胄のことを知った箒達は皆同じように反応していたな。
当然その再生能力も、意思があり喋ることも出来ることを説明した。
その性能に皆驚きかえり、何も言えなくなってしまっていたが。
向こうの一夏は前にも同じ説明を受けていたので、うんうんと頷いていた。
「まさかISよりも凄いものがあるなんて……」
「殆ど反則同然のような存在ですわ……」
箒とセシリアがショックを受けてそう呟く。
この世界にはない存在に大層驚いたようだ。何も言っていないが、鈴やデュノア、ラウラや山田先生も同様である。
さらに御母堂は周りを気にせずに人間形態へと変化する。
「「「「「「「「!!?????」」」」」」」」
その事にも驚く一同。
師範代と一緒にいれば、嫌でもこういった目にかかれるのでそこまで驚かなくなっていた。
もうすっかり俺もこういうことに慣れてしまったのだろう。
俺と真耶さんは皆の反応に苦笑するしかなかった。
「む、何かあるのか、村正」
師範代が御母堂にそう話しかけると、御母堂は懐に手を入れ、何かを取り出した。
「今朝、一夏宛に来た物でな。どうも映画らしいので見ようと思っていたのだ。そうしたら御堂に呼ばれてこうなったため、見ずに持ってきてしまった。まぁ、基本中身は一緒だと思うが気になってな」
御母堂が取り出したのは映像ディスクのパッケージであった。
それを見た途端、悪寒が走る。
「そ、それはまさか……」
俺はそのパッケージを見ることに恐怖を感じながらも確認し……ショックのあまり固まった。
パッケージを飾る題名は、
『現代の若武者恋物語 無修正バージョン(非売品)』
と映っていた。
それに恐怖する俺。急いで御母堂に送り主を確認したところ……
「む、たしか足利 茶々丸とかいう小娘だったと思うぞ」
とのこと。
(あれか! 昨日の腹いせか!!)
昨日のお仕置きを逆恨みした結果がこれか! その事に俺は呆れ返りつつも怒る。
後で獅子吼様に要相談だな。
「べ、別にそんな物なんかなくても話せばいいだけじゃないですか」
これを見られたら恥ずかしさのあまりにどうにかなってしまう!?
真耶さんが見たら恥ずかしがって絶対に気絶するんじゃないだろうか。
絶対に阻止せねば! そう思い急いで奪い取ろうとしたら……
「てりゃぁ~~~~~~~~!!」
「ぐあぁっ! っ~~~~~~~~~~~~~~ごはっ…」
師範代の跳び蹴りが俺に炸裂し、アリーナの壁まで吹っ飛ばされ叩き付けられた。
壁が砕け体が壁にめり込む。これで手加減してるというのだから驚きだ。
武者でなければ死んでいる気がする。
その場にいた全員が師範代に驚いていた。
「だ、旦那様!?」
「ふん、そうはさせんぞ一夏。それは友達から借りてまだ見ていない映画ではないか。お前が出ていると話題だったからな。お前は女々しいところがあるから恥ずかしがって見せないようにしようとするのはお見通しだ!」
真耶さんが俺を心配する中、師範代は堂々と胸を張ってそう答えた。
それを見て、この映画鑑賞を止められないことを理解した。
師範代がこう言ったら、絶対に止められない。それは昔から分かっていたことなのに……
そう思いながら倒れる。
「旦那様ぁ~~~~~~~~!」
倒れた俺を急いで真耶さんが起き上がらせ、肩を貸してくれた。
視聴覚室にずんずんと進んでいく師範代を見ながら、俺の心は諦めで一杯になった。
「ではさっそく見ようではないか」
視聴覚室に着いて師範代が元気よくそう言い、山田先生が見れるようにディスクをセットしていた。
「なぁ、それって何なんだ」
向こうの一夏が俺に向かってそう聞いてくるが、答えたくない。
だが、皆聞き耳を立てて俺達の様子を窺っているだけに、答えなかったらそれはそれで酷い目に遭いそうだ。
「その…つまりな……俺が主演で出ている映画だ……」
「そうなのか!? すごいな、映画なんて。もしかして俳優とかの仕事をしてるのか」
言い辛そうに答える俺に、まったく気にせず無邪気な感じに聞いてくる向こうの一夏。
もう少し空気を読んでもらいたい。
御母堂がそんな俺の様子を見て、呆れながら皆に聞こえるよう言う。
「この映画は一夏とそこの小娘の恋愛を撮った物よ。しかも無編集と書いてあるから、もっと詳しくなっているであろう」
それを聞いた途端に赤面してしまう俺と真耶さん。
箒達は実に興味津々な感じになっていた。
そして始まる映画に、皆の目が集中する。
ここからは簡略的にお送りしよう。
真耶さんとの初めての出会い。
入学試験後、足をくじいてしまった真耶さんをお姫様だっこで保健室へ運んだ。
その光景を見て箒達が羨ましそうな目をしていた。
次に謝罪の意味も込めて昼食への招待。
俺が作った料理を笑顔で美味しいと言って食べる真耶さんが映し出される。この頃から可愛いなぁ~。
こちらの一夏は俺の料理の腕と店の事を聞いてきた。
それを素直に答えると、かなり驚いていた。そういえばこちらの一夏は只の学生だったか。
そのままクラス代表決定戦、クラス代表戦、その後の無人機襲撃などの場面となっていく。
セシリアと鈴は映像を見て固まっていた。まぁ、身に覚えがない映像で自分が負けている姿を見ればこうもなるか。
無人機襲撃においては、正宗七機巧に皆驚いていた。あの時は左手が炭化して痛かったな。
その後には俺が血まみれで廊下で倒れているところを見つけられ、保健室へ。
真耶さん達がお見舞いに来てくれたときの騒動もばっちりと撮られていた。
そしてシャルやラウラの転入騒動。
ラウラは自分が映像の中で俺に抵抗も許されずに無力化されているところを見て複雑そうな顔をしていた。
IS実習では茶々丸さんが登場している。その姿を見て俺は怒りが沸き上がっていることを感じる。
茶々丸さんのせいで疲れている俺に皆がお弁当を作ってくれた場面になった。
『もう片方は何ですか?』
『あ、これは私の分ですよ。こっちは一夏君のために作ったんです。一夏君、最近お疲れみたいですから、少しでも疲れがとれるようなものを、と思いまして・・・・・・』
『あ、ありがとうございます!!』
映像では俺が作って貰ったお弁当に感動している場面になった。
映像の真耶さんは恥じらい真っ赤になりつつそう話す。その姿を懐かしく思っていると、隣に座っている真耶さんが手を引いてきた。
「どうしたんですか、真耶さん?」
「この時、私は本当に頑張ったんですよ。旦那様が料理人だって知ってましたしね」
皆に聞こえないように小さな声でそう言う真耶さん。
どうやら真耶さんも昔を懐かしんでいるようだ。
箒達は羨ましいような、妬ましいような…そんな顔になっていた。
予想だが、どうせ素直になれなくて、こちらの一夏にこういう言葉を言えていないのだろう。
そしてラウラが襲ってきたりしたときに言った言い回しに皆俺を見てきた。
そんな目で見られても武者なのだから致し方ないだろう。
流石にデュノア社への襲撃は入れると長いと思ったのか、カットしたようだ。無修正じゃないじゃないかと言いたい。
トーナメント戦でラウラと戦い、VTシステムとの戦いも収録されていた。
俺の台詞に皆感心しているようだが、改めて聞くとやはり恥ずかしいものだ。
せめてもの救いは、真耶さんが隣で格好いいと見惚れていたことだろうか。
そして……よりによって……風呂の場面まで入っていた。
流石にシャルが入って来たのはカットしたようだが、その分真耶さんが入って来たのが思いっきり撮られていた。
酔った真耶さんがバスタオル一枚しか巻いていない艶姿で俺に抱きついてくる映像はその場にいた全員の顔を真っ赤にさせた。
そのまま床に一緒に倒れ、真耶さんとキスしてしまうシーン。
『んふふふ、一夏君とキスしちゃいました』
真耶さんは顔を上気させ、熱い息を吐きながら艶っぽく俺に向かってそう言う。
思えばこれが初めて真耶さんとキスした時だったな。
「「「「「「「っ~~~~~~~~~~~~~~!?」」」」」」」
流石にこれには皆驚いていた。あの一夏でさえも顔が赤くなっている。
そしてはだけてしまうバスタオル。
俺はそのシーンになった瞬間手を高速で動かし、こちらの一夏の目を潰していた。
「ぎゃぁ!? 何すんだ、痛ってぇ~~。うわ、見えない」
「すまん………」
いくら自分と同じ存在とは言え、絶対に恋人の裸を見せるわけにはいかない!
俺は申し訳無く思いながら謝ったが、ここだけは譲れない。
ちなみに……真耶さんは顔が真っ赤になって湯気を出していた。
「ぁぅぁぅぁぅ……あの時は必死だったんですよ~~~~~」
凄く恥ずかしがりながらそう言っている真耶さんが可愛いくて、少し抱きしめてしまった。
「!?」
少し驚いたが、俺の腕の中で真耶さんは嬉しそうに笑ってくれた。
こちらの一夏は未だに目を押さえていて見えていない。
映像では俺が鼻血を出して気絶していた。
そして臨海学校。
そこからはこれまでとは趣が変わっていた。
俺は真田さんとの死合いをしに行く場面、真耶さんからお守りのアクセサリーを借りて戦いに行った。
そして死合い。
無編集となっている部分はまさにここだろう。
甲鉄が砕け、鮮血が飛び散り、咆吼と激突音が空で轟く。
俺は丸焼きにされ、体のあちこちが炭化した部分もばっちりである。
これを見ていた皆は真っ青になっていた。
真田さんに勝って、その後箒を庇って撃墜。そして流されて皆の所に帰ってきた。
俺の死に体には見ていた皆が息を呑んだ。そのあまりのボロボロ具合にだ。(此方の一夏はこの時に追った負傷は俺ほど酷くはなかったらしい。後で聞いた話だが)
そして真耶さんの介抱のシーン。
膝枕をされている俺に、慈愛に満ちた優しい笑顔を浮かべる真耶さん。
そしてそんな俺にキスをする真耶さん。
『緊急事態につき応急処置ですからね』
イタズラっ子のような笑みでそう言う真耶さんもまた、魅力的だったなぁ。
箒達は小さな声で黄色い声を上げていた。
そして福音を倒し……真耶さんからの告白。
『……私は…私は、織斑一夏君のことが・・・好きです!! 大好きです、愛してますっ!!』
改めて聞いても嬉しくなってしまう。
真耶さんを見ると、顔を赤くしながら俺を見つめていた。
こちらの一夏も自分の名前で告白されているシーンなだけに、赤くなっていた。
そして舞台はIS学園へ。
師範代が来て、IS学園を蹴っ飛ばして島一個分移動させたシーンでは皆がでかい声で驚いた。
まぁ、誰だってあれは驚くだろう。
そしてこちらの一夏が来たところもばっちりと収録されていた。
「ああ、こんな感じだったな、たしか」
そんな声をこちらの一夏が零し、箒達はこれのことか~、と見入っていた。
そしてあれよあれよと進んでいき、青江との死合い。
そして俺の告白シーン。
俺はそれを見て恥ずかしさのあまりこの部屋から飛び出したくなった。
「わ、私は一番嬉しかったですよ、旦那様」
真耶さんが赤くなりつつも俺にそう言い、抱きしめてくれた。
それでも恥ずかしいんですよ、と言いたい。まぁ、嬉しいですけど。
箒達は顔を赤くして羨ましそうにしていた。きっとこっちの一夏に言って貰いたいのだろう。
それからはデート。
改めて見ても甘い。だが、幸せで嬉しい。
真耶さんも幸せそうだった。
箒達は熱心に映画に食いついていた。
そして無修正版ではない方の最後、夏休み。
『真耶さん・・・・・・大好きです、愛してます』
『私もです、一夏君・・・・・・愛してます』
抱きしめ合って愛を誓い合い、キスをするシーン。
もう箒達は顔を真っ赤にして何も言えなくなっていた。
「旦那様…旦那様…」
真耶さんが俺を呼び、其方を見ると顔を真っ赤にして目を瞑っていた。
「キス……して下さい」
きっと映画にあてられたのだろうなぁ、と思いながらも、実は俺も一緒だったり。
「はい…映画に負けないくらいもっと大好きですよ、真耶さん」
そう答え、美味しそうな唇に自分の唇を合わせる。
「「んぅ…はぁ…」」
マシュマロみたいな柔らかさと砂糖のような甘さを感じながらキスをしていると、胸の中に幸せで溢れてくるのを感じる。
そして唇を離すと、真耶さんはまだ俺を見つめていた。
「旦那様…もっと…お願いします」
そしてキスをもっとせがんできた。
「おやおや、甘えん坊ですね。昨日あんなにしたのに」
「だって…もっと一杯して貰いたいんです。旦那様ともっと一杯キスしたいんですよ」
そうおねだりをする真耶さんが可愛くて仕方なくて、俺は吸い寄せられるようにキスをしようとすると………
部屋の電気が点き、辺りが明るくなった。
そして俺と真耶さんに注目が集まり………
「「「「「「「「ごぱぁっ!!!!!!!!」」」」」」」」
師範代と御母堂を除く全員が気絶した。