装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は発表ですよ。


正月の挨拶 異世界編 その2

 師範代に連れられて、俺達はパラレルワールドに向かった。

ここのパラレルワールドは前に俺達の世界に呼んだ織斑 一夏のいる世界だそうだ。

何故そんなことが分かるのかと師範代に聞いたところ、

 

「うむ、前の時にあっちの一夏の匂いと気配は覚えたからな! オレにとってそれを探す程度、朝飯前よ!!」

 

と自信満々に答えていた。

まぁ、師範代が言い出すことが滅茶苦茶なのはいつもの話であり、あまり深く追求しようとは思わない。どうせ分からないのだから。説明されて分かるのは師範代だけだろう。

 黒い何かを通って着いた先にあったのは、固められた地面であった。

周りを見ると、見覚えのある観客席が目に付いた。つまりここは……IS学園のアリーナだ。

俺と手を繋ぎ、腕を絡めてくっついている真耶さんを心配して声をかけると、真耶さんは寧ろ俺を心配してくれた。まだ完調ではない俺のことを慮って心配してくれたことが嬉しくて頬が緩む。

 そうして笑っていると、向こうから白色のISが此方に近づいてきた。

それに少しだけ警戒したが、その顔を見て警戒を解いた。

 

「よぉ、久しぶりだな。元気にしてたか」

 

その人物は親しそうに俺に声をかけてきた。

俺はその言葉を受けて、少し笑いながら挨拶を返す。

 

「あぁ、久しいな。壮健そうで何よりだ」

 

 そう声をかける。俺に声をかけてきたのは、『こちらの世界の織斑 一夏』だ。向こうの一夏は嬉しそうに笑う。

古い友人に久々に会ったような気分になった。

そのまま談笑をしようと近づいたところ、大きな声が聞こえた。

 

「大丈夫か、一夏!!」

「大丈夫ですか、一夏さん!」

「一夏、無事!」

「一夏、大丈夫!?」

「無事か、嫁!」

 

 此方の箒達がISを纏ってさっそく此方に向かってきたのだ。

皆の姿を見て、自分の方と比べて変わらないことに少し驚いたが、その程度では動揺しない。

向こうの箒達は俺の姿を見て驚愕する。

 

「「「「「なっ!? 一夏(さん)(嫁)がもう一人いる!!」」」」」

 

 こちら側の箒達も似たように驚いていたな。

 

「貴様、何者だ!!」

「あなた、何者ですの!?」

「なんで一夏に化けてるのか知らないけど」

「一夏になにかしようっていうなら、容赦しないよ」

「嫁に害を成そうというなら、容赦はしない」

 

箒達は俺に警戒して武器を展開、そのまま俺にその刃や銃を向けてくる。

 

「だ、旦那様……」

 

真耶さんが不安そうに俺の手をギュッと握ってきた。

 

「大丈夫ですよ」

 

そう笑いかけると、真耶さんは安心して少し緊張が解れてきた。

 

「山田先生、そこを退いて下さい」

「危険ですから、早く離れて下さいな」

 

 箒とセシリアが真耶さんに向かって言う。

それを受けて、真耶さんは体をビクッと震わせた。

 

「ま、まってくださ~い。生徒だけじゃ危ないですよ! 先生もいきます~」

 

 箒達に包囲されている中、聞き覚えのある声が聞こえそちらを向くと、そこには見慣れた人がISを纏って来た。

 

「って…わぁ!? 何で織斑君が二人もいるんですか!! それに、私ぃ!?」

 

 そう、来たのは此方の世界の真耶さんだ。

俺達の姿を見て驚きまくっていた。何だか微笑ましいな、此方の真耶さんも。

俺は睨み付ける箒達に苦笑しつつ、向こうの一夏に言う。

 

「流石にそろそろ不味いと思うので、説明を頼む。でないとこの場で皆から攻撃されそうだ」

「それもそうだな。面白そうだから見てたけど、そろそろしないとまずいな。まぁ、その様子だと、余裕で全部防げるんだろ」

 

 向こうの一夏は俺に笑いながらそう答える。

成程、前よりは成長しているようだ。その身に纏う雰囲気からそう察する。

 

「どうやらあれから鍛えたようだな」

「ああ。御蔭でどれくらいあんたが強いのかが、嫌というほど分かったよ」

 

俺と向こうの一夏の会話に首を傾げる箒達。

真耶さんは俺の会話を静かに聞いていた。

 

「一夏、これはどういうことだ?」

「お知り合い……なんですの?」

「一夏、これはどういうことよ」

「一夏、この人知ってるの?」

「誰なんだ、こいつは」

「な、なんで私がいるの! もしかしてドッペルゲンガー!? そんな、まだ死にたくないよ~」

 

向こうの一夏はそんな感じの箒達を見て笑いながら説明し始めた。

 

「なぁ、前に俺が別の世界に行ったことがあるって言ったことがあるだろ」

「あの与太話か」

「おいおい、ちゃんと証拠である写真も見せただろ」

「合成かと思っておりましたの」

 

 どうやら向こうの一夏は俺達と会ったことを話はしたが、信じてはもらえていなかったようだ。

まぁ、普通は信じないだろうな。俺がこのことを素直に受け入れられたのは、師範代という人外がいたからだ。

 皆から否定され少しへこむ一夏。だが気を取り直して説明を続けた。

 

「まぁ、別にいい。それで、その世界に行ったときに会ったのがここにいる向こうの俺だ。俺に剣術のアドバイスをしてくれたのはこいつなんだよ」

 

 向こうの一夏の説明を受けて、俺は前に一歩出て自己紹介をする。

 

「そちらの一夏が言った通り、パラレルワールドの織斑 一夏だ。皆、よろしく頼む」

 

そう言い一礼。

向こうの一夏も言っていたが、知っている人間に改めて自己紹介をするというのは何だか可笑しなものだ。

 

「まさか本当の話だったとは……」

「あの写真も本物だったのですね…」

「本当にパラレルワールドがあるなんて……」

「本当の本当にそうなの!?」

「絵空事だと思っていたのだがな」

「ひゃぁ~、こんなことなんて本当にあるんですね~!」

 

 箒達が驚き信じられないような目をしていた。

 

「だよな~。俺も実際に経験してなかったら箒達と一緒になって驚いてたよ」

 

向こうの一夏はそんな風に固まっている箒達を見て、うんうんと頷いていた。

 

「でもどうやってそんなことが出来るの!? だってそんな技術は……」

 

シャルが(面倒なのでデュノアでいいか)はっとして俺にそう話しかけてきた。

俺は向こうの一夏と一緒に苦笑しながら答える。

 

「それは……あの人の技だ」

 

俺はそう答えながら師範代を指さす。

師範代は未だに装甲したままであり、暇そうにしていた。

 

「む、やっとオレの出番か」

「何度も言いますが、人前で装甲したままでいないで下さい、師範代。ちゃんと挨拶を」

「面倒臭いな……」

「ちゃんとしないと師範代の夕飯を一品減らします」

「なっ!? それは駄目だ!」

 

 師範代は慌てて装甲を解除する。

箒達は師範代の姿を見て更に驚いていた。まさかあんな全身装甲から自分達と同じくらいの女の子が出てくるとは思わなかったのだろう。

 

「うむ、では改めて挨拶をしよう。オレの名は湊斗 光だ! 皆よろしく」

 

 元気よく挨拶をする師範代。

それを見て向こうの一夏は笑っていた。

 

「あんたの師範代、まったく変わってないな」

「ああ、まったく変わっていない。苦労をさせられ続けている」

 

俺は苦笑しながら、そう答えていた。

 

 

 

 そのまま俺は周りの皆に俺の世界の事、劔冑と武者のこと、そしてこの異世界を移動したのが師範代の陰義である事などを説明していく。

いつの間にか此方の千冬姉も来て、話を聞いていた。

皆驚いてばかりであり、話しているこちら側としては面白かった。

 

「まさかパラレルワールドではこうも違うとはな」

「まぁ、可能性で分岐した世界というものですから。こちらの世界では女尊男卑も緩和されつつありますし、束さんもちゃんと更生していますよ」

「なっ!?」

 

 そう答えると、千冬姉の顔が驚愕に固まっていた。

そこまで驚くことなのだろうか? 最近常識外の人間ばかりと関わっていたためか、俺の中の常識も変わってしまったのだろうか? 少し心配になってきた。

 

「はっ! こ、こほん……しかし、同じ顔で全く違った話し方をされると凄い違和感を感じるな。とても同じ歳の人間とは思えん。雰囲気や物腰など、私以上の年齢の人間にしか見えないな」

 

千冬姉は気を取り直してそう言う。

それを聞いて内心へこむ俺。分かってはいるが……やはり言われるときついものがある。

 

「そう言えば、何で山田先生も一緒なんだ?」

 

へこんでいる俺を余所に、向こうの一夏は俺にそう聞いてきた。

それを聞いて箒達も興味深そうに反応する。

 

「そう言えば何で山田先生も一緒にいるんだ?」

「その服装、私服ですよね。ということはプライベート?」

「何、向こうの一夏はプライベートで山田先生と会ったりする関係なの」

 

箒、セシリア、鈴がそう聞いてきた。

俺は真耶さんの方を見ると、不安そうに俺の手を握っていた。

緊張を解すために、俺が先に答えることにした。

 

「真耶さんは…」

 

「「「「「「「真耶さん!?」」」」」」」

 

 俺がそう言った途端に驚く箒達と向こうの真耶さん(この際山田先生でいいか)。

俺はそのまま続けようとしたが、真耶さんに止められた。

 

「わ、私がします」

「大丈夫ですか?」

 

まだ不安そうだったのでそう聞くと、笑顔で返された。

 

「ちゃんとこういうことを胸を張って言えないと、旦那様の妻としてふさわしくないですから」

 

笑顔でそう言われては、俺は静かにするしかない。

そう言ってもらえることが嬉しくて、幸せを感じてしまう。

真耶さんは決意を固めて、皆に振り向いた。

 

「わ、私は……この織斑 一夏君の恋人です!」

 

そう一生懸命に言うと、左手の薬指にはめられている指輪を皆に見せる。

 

「ちゃんと、こ、婚約もしました」

 

耳まで真っ赤にしながら恥ずかしがりつつも懸命に皆に言う真耶さんは、本当に可愛くて内心クラクラした。凄く抱きしめてキスしたい………のを必死に我慢する。

 それを見た6人は…………

 

「「「「「「えぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!? 恋人ぉおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」

 

 驚きのあまり絶叫していた。

 

「あ、そうなんだ。何かめでたいな、おめでとう」

 

向こうの一夏だけは、普通に反応を返していたが。

 

 

 

 

 

 




次回……砂糖吹雪が参ります。

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