無事はねつき大会を優勝した俺は、大広間まで移動した後に表彰されることに。
いつの間に用意されたのか表彰台が設置されており、そこに上がらされた。
「この者を優勝者として賞する。貴様は見事、この大会を制した。遊びとはいえ、その試合に賭ける熱意は死合いそのものよ。見事だった。皆、この者に負けぬよう精進せよ」
表彰台の上には護氏様が立っており、俺にお褒めの言葉をかけてくれた。
それを少しこそばゆく思いながらも有り難く聞く。そして賞状と賞金の金一封、それと何かのメモを渡された。
メモには何かしらのアドレスが書かれている。
それが携帯のアドレスだと気づき護氏様の顔を見ると、分かりづらいが笑みを浮かべていた。
「たまには連絡すると良い。邦氏も世話になっているのでな」
少し面白そうに言うと、表彰台から降りていった。
まさか六波羅盟主の連絡先をもらえるとは思えなかった。だが……これで何を連絡しろと……
そんな風に考えていると、今度は真耶さんが台に上がってきた。
「だ、旦那様」
その顔は恥ずかしさで真っ赤になっている。
周りからこれだけ注目されていれば、恥ずかしくもなるだろう。
「では、優勝者にもう一つの賞品として、今年の映画の特別女優賞に輝いた『山田 真耶』のキスを優勝者に」
何故か司会役になっている獅子吼様がそう話す。
主催者である茶々丸さんはどこに行ったのやら……と思ったら、すぐ近くに部下の人によって取り押さえられていた。
「これ以上あの激甘を見せられてたまるかぁああああああああああああああ! あてもお兄さんとキスしてぇええええええええええええええええええええ!!」
「落ち着いて下さい、堀越公方様!!」
「そもそもこの賞品は堀越公方様が決めたことじゃないですか~!」
どうやら茶々丸さんが暴れているらしく、それを諫めるのに苦労しているようだ。
嫌なら賞品にしなければいいのにと、呆れてしまう。
俺はそんな茶々丸さんを尻目に、俺は真耶さんに振り向く。
「それじゃお願いします、真耶さん」
「は、はい………」
緊張した感じに真耶さんは答える。
俺はそれに苦笑しながら頬を差しだす。
こういう時はよく頬にされるものだと、テレビなんかで見たことがある。
なのでそうだと思いやったのだが……
「違いますよ、旦那様。ふふふ」
何故か笑われてしまった。
何か間違っていたのかと首を傾げていると、真耶さんの手が俺の顔に触れる。
「こ、こっちですよ………んぅ…」
そのまま手で顔の位置を変えられると、柔らかい感触が唇を覆った。
それが真耶さんの唇の感触だと分かり驚いてしまう。
「ぷは……うふふ…私が旦那様の物だって、みんなに見せつけちゃいました」
イタズラッ子のような笑顔でそう答える真耶さん。
その笑顔が可愛くて、抱きしめてしまった。
「もう、可愛すぎですよ」
少し力を込めて抱きしめてしまったが、真耶さんは幸せそうに顔を緩ませていた。
「「「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」
周りから上がる歓声。
それで周りに意識が向き、恥ずかしくなって離れようとしたのだが……
「ってあれ!? 真耶さん、離してくれないのですか?」
真耶さんが抱きつき、俺にぴったりとくっついて離れないのだ。
「私、いきなりこんな風に扱われて不安だったんですから。こうやって旦那様に甘えたっていいじゃないですか」
真耶さんはとろけるような笑顔でそう言うと、俺の胸に顔を埋める。
「あらあら、真耶ったら羨ましいわね。あんなに幸せそうで」
「ですね~。同じ女として、恥ずかしいですけど憧れちゃいます」
村正さんと桜子さんからそんな声が上がる。
それが聞こえたのか、真耶さんは「えへへへへ……」と嬉しそうだった。
「ぬがぁああああああああああああああああああああああああああああああ!! 口からっ、口から砂糖が溢れるぅううううううううううううううううううう!!」
茶々丸さんから悲痛な叫びが上がる。
俺はそれを意識から外し、真耶さんを抱きしめたまま表彰台から降りた。
何故なら、真耶さんが放してくれないからだ。ま、まぁ……嬉しいから良いのだが。
こうしてはねつき大会も無事に終わり、真耶さんに唇も守れた。
そのことに俺はホッとする。
この宴会ももう終わりに差し掛かり、各自帰る準備を始めていた。
「だ、大丈夫ですか、師匠?」
「う……うむ……」
俺がそう声をかけると、師匠はふらふらとしながら答えた。
あの後、この大会に参加したことを村正さんと茶々丸さんに咎められ、思いっきり殴られまくっていた。まぁ、あの二人の心境を考えるとそうなっても仕方ない気がする。
「ふん、弟子の恋人が賭けられているなんて事態であんな顔するからよ!」
「そんなに良いならあてがいくらでもしてあげるのにぃ」
そんな師匠のすぐ近くには、そっぽを向いて拗ねている村正さんと茶々丸さんがいた。
何だか後々面倒になりそうな事になりそうだが、それは師匠の自業自得ということで。
「師匠、よろしければこれを」
俺は師匠に賞金を差し出す。
師匠はそれを見て不思議そうに聞いてくる、
「何故?」
「自分が参加したのは恋人を守るためです。別に賞金が欲しかった訳ではありませんから」
笑顔でそう返すと、師匠はは少し考え答えた。
「ならば尚更受け取れん。それはお前が必死に恋人を守った証でもある。それに……弟子から金を恵んで貰う師など、恥ずかしすぎて仕方ない。それはお前のだ」
師匠はそう言って断った。
きっとそれは本心からなのだろう。そんな感じにしっかりしているからこそ、損をすることが多いのだが。後で内緒に師匠の講座に半分くらい振り込んでおこう。
師匠と話し終えた俺に、真耶さんが笑顔で言う。
「帰りましょうか、旦那様」
「はい……と言いたいところですが、ちょっと待ってくれませんか。少し用があるので」
俺は真耶さんにそう言うと、獅子吼様の所へと歩いて行った。
獅子吼様は来ていた他の方達に仕事の話をしていた。
「獅子吼様、ちょっとよろしいでしょうか」
「む、織斑か。ああ、別にいい。丁度話も終わったしな」
獅子吼様はいつもと同じ神経質そうな顔で俺に返事を返してくれた。
「それで……俺に何の話だ?」
「はい…その事なのですが……実はお願いがありまして」
「願い……だと?」
獅子吼様がそう聞いて来たところで、周りに聞こえないように小さな声で話す。
「此度の件、流石に茶々丸さんは度が過ぎると思いまして。それでお仕置きをしたく思うのですが、ただ暴力を振るうだけではあまり効果が無いと思いました。なので……他の方面から攻めてみようと思い、獅子吼様には協力して貰いたくて」
それを聞いた獅子吼様は、興味深そうな顔になった。
「ほう、それは興味深いな。具体的には」
「はい。実は……………」
俺がお仕置きの方法を伝えると、獅子吼様がニヤリと笑った。それはあまりにも悪どい笑みであった。
「それは面白い。是非協力しよう。あいつには良い薬になるであろう」
「ええ、された者の気持ちを理解するには一番でありましょう」
そしてその場でくっくっく、と悪どく二人で笑っていると、
「何やら面白そうな話をしておるのう。それがしも一枚嚙ませてもらえませぬか」
「あらあら、何か面白そうじゃない。麿も入れなさいよ」
童心様と雷蝶様も乗ってきた。
童心様は日頃からこういった悪ふざけが好きだそうで、雷蝶様は茶々丸さんとは犬猿の仲なだけに、興味を引いたらしい。
このお二人が入れば、更に凄いことになるだろう。
俺達は顔を合わせ、ニヤリと笑う。そして……四人で茶々丸さんの方を見た。その顔はまるで……獲物を狙うハイエナみたいだった。
俺達は話をまとめると、俺は真耶さんと一緒に湊斗家へと帰って行った。
「旦那様、一体何の話をしていたんですか?」
帰りの道中、真耶さんが俺の顔を覗き込みながらそう聞いてきた。
そのあどけない笑顔を可愛く思いながら、俺は笑顔で答える。
「いえ、ただ………ちょっとイタズラが過ぎる人が反省するよう、お仕置きをお願いしただけですよ」
「お仕置き……ですか?」
「ええ」
そう答えながら真耶さんの手を握ると、真耶さんは俺に腕に腕を絡め、体を預ける。
その柔らかな感触に頬が緩んだ。
「帰ったら、約束通り一杯キスして下さいね……私だけの旦那様」
そんな約束をした覚えは無かったが、きっと俺は真耶さんが参るくらいキスをするのだろう。
今回の件で、より真耶さんの事が大切だと思わされた。だからこそ……俺の物だと、証を刻むようにキスをするだろうと、そう思いながら歩いて行った。
「な、何するんだ! お前等……ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
堀越公方屋敷でそんな声が上がったが、俺は気にせずに真耶さんとくっつきながら歩いて行った。
後日……六波羅主導で製作された特撮が放送される事となった。
題名は
『コテツにおまかせ!』
六波羅四公方、堀越公方、足利 茶々丸を主演とした魔法少女物である。
これにより、六波羅はさらに富を得ることとなった。
主演である足利 茶々丸はその若さと美貌? により、有名となった。特に大きいお友達からの人気は絶大であったとか。
本人の悩みは、最近家を出ると近所の子供から、『あ、コテツちゃんだ! 魔法少女、コテツちゃんがいる~!』と言われ、指を指されることだとか。
それと大人で肥満気味でアニメのTシャツを着た人達から握手を求められまくったりすることらしい。
「これが表に出るということか……と凄く自覚させられました。あてが本当に悪かったです」
と本人は誰かに向かって謝罪していたとか。ちなみに、この放送は4クール分撮影する予定なので、まだまだ足利 茶々丸の出番は一杯だそうだ。