装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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やっぱり茶々丸さんが大暴れ、です。
感想が最近少ないので、もっと気楽に書いてくれると嬉しいです。


六波羅な正月 その2

 この集まりは六波羅の新年を祝う宴会らしい。

挨拶もそこそこに、立食形式の食事を真耶さんと一緒にいただいていく。

 

「旦那様、これも美味しいですよ」

「ええ、そうですね。こっちも中々の物ですよ」

 

 料理を食べる真耶さんは、とても表情がころころと変わって可愛い。

そんな真耶さんを見ながら食べる料理は、その味以上に美味しく感じられた。

事実、この料理はかなり美味い。六波羅が呼んだ料理人だけにその腕は一流、とても勉強になる。

そんな風に考えながら料理を食べていると、真耶さんの顔が急に目の前に現れた。

 

「旦那様、勉強になるからってそんな顔で食べてたらお料理が勿体ないですよ。こういう席の時くらい、もっと気軽に楽しみましょう! これも美味しいですよ、はい、あ~ん」

 

 目の前に急に現れた真耶さんに驚きつつ、差し出された料理に口を開けてしまう。

口を開けたのはほぼ無意識であり、俺は真耶さんの『はい、あ~ん』を条件反射レベルで受け入れるようになっていたようだ。しっかり躾けられているような気もしたが、嬉しいのでこれで良いのかもしれない。

 

「あ、あ~ん……んむんむ…これも美味しいですね」

「はい、ですよね~。それで…その、旦那様? わ、私にも…」

 

 そう言い、俺を上目使いで見つめる真耶さん。

それが何をしてもらいたい視線なのかなど、もう既に分かっている。

内心でそれをすることに喜びながら、俺は笑ってそれを行う。

 

「はい、これなんかも美味しいですよ。はい、あーん」

「はい、旦那様! あ~ん……ふむんむ…美味しい~」

 

 満面の笑みを浮かべて喜ぶ真耶さん。

あぁ~もう、本当に可愛い! 人前じゃなければ抱きしめたい。後で抱きしめさせてもらおうかな。

 

「がぁあああああああああああああああああああああああ!! あての目の前でイチャつくんじゃねぇえええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 そんな俺達を見て、遠くからそんな声が聞こえてきた。

気にしたら面倒なことになりそうなので気にしないでおこう。

 

「おやおや、茶々丸殿はああいうのに憧れですかな。では、それがしがして差し上げよう。あ~ん」

「誰が禿げ坊主にしてもらいたいか!! 誰得だよ、そんなむさいおっさんにあ~んしてもらうなんてよ! あてがしてもらいたいのはお兄さんにであって、手前なんかお呼びじゃねぇ!」

「えぇ~、茶々丸様、それはあんまりじゃないですか~。僕は入道様にあ~んして貰いたいですよ~」

「はっはっは、義清は可愛いことを申すのう。ではほれ、あ~ん」

「わ~い、いただきま~す。あ~ん…うまうま」

「見苦しいわ、このおホモ達がぁあああああああああああああああ!」

「うるさいぞ、茶々丸! この馬鹿者め!! もうそろそろ護氏様の挨拶が始まるというのに」

「お父様の御前よ。静かにしていなさいよ、この馬鹿」

「うわぁ~ん、あて、なんで悪くないのにこんなに怒られてるんだ!? 滅茶苦茶理不尽だ!!」

 

 何だか騒々しいが……気にしないでおこう。

そして会場の大広間に六波羅盟主である足利 護氏様が来て、壇上で新年の挨拶を行っていた。

その威圧感のある姿に、少し息を呑む。

圧倒的な存在感、すべてを支配するカリスマを感じさせる。そして……その全身から発せられるのは、明らかな覇気。明らかにこの人は武者だろう。

話している最中は、何だか死合いをしているような空気を感じた。

 そして話し終えた護氏様は、此方に歩いてきた!

 

「貴様が織斑 一夏か。組織の者が世話になっているようだな」

 

その威圧感に怯みそうになりながらも、俺は返事を返す。

 

「いえ、そんなことは。此方も六波羅の皆様とは懇意にさせていただいてます」

「うむ。今後も我等を手伝ってくれるとありがたい。貴様には特に茶々丸や邦氏が世話になっているからな」

「はい」

 

 短く言葉を交わすと、護氏様は別の人のところへと歩いて行った。

流石に緊張した。あれが六波羅盟主か……さすがの貫禄としか言いようがない。

 

「凄いですね、旦那様!! まさか六波羅の一番凄い人に話しかけられるなんて」

 

真耶さんが先程の会話する姿を見て、俺に尊敬の念を込めた目で見つめてきた。

 

(流石、私の旦那様です~~~~~~~~!! 格好いい)

 

 顔を真っ赤にしながら見つめられると、少し恥ずかしくなり頬を掻いた。

 

 

 

 それから食事をしつつ、邦氏様や桜子さんと談笑をしていた。

二人の仲は結構良くなっているらしい。真耶さんが探りを入れてみた結果、桜子さんは邦氏様のことを『少し気になる男の子』ぐらいに思っているらしい。

なんというか、微笑ましい感じがした。

 

「ちょいちょい、そこの眼鏡のおねえさん」

 

そんなふざけた声をした方を振り向くと、そこには茶々丸さんが立っていた。

 

「なんですか、茶々丸さん。あまり真耶さんに迷惑をかけるような事はしないで下さいよ。かけたら本当に怒りますからね」

「ちょっと待てよ! あてが迷惑かけるのが前提!!」

 

そう言って喚いているが、茶々丸さんから迷惑をかけられた以外に記憶がない。

そう言われようが、それは事実としか言えない。

 

「私ですか?」

 

真耶さんが不思議そうに首を傾げながら前に出てきた。

 

「そうそう、ちょいとあんたに手伝って貰いたいことがあってね~」

「手伝いですか?」

「うん、そう。だからイッチー、この人借りていくね~」

 

茶々丸さんが真耶さんの手を引っ張っていく。

それに戸惑いながらも真耶さんは付いていった。

何だろう……不安で仕方ない。

 そして茶々丸さんは真耶さんを連れて大広間の前に出た。

 

「みんな~、ちゅうも~~~~く!!」

 

間の抜けた大きな声でそう言うと、みんな茶々丸さんに注目が集まった。

それを確認した茶々丸さんはニヤリと笑った。何だか…嫌な予感がぞくりとした。

そして茶々丸さんは吠えた。

 

「これより……『新年はねつき大会』を開催をしま~~す!! 優勝者には金一封、金額は一千万円、そして……この度、今年の映画の特別女優賞に輝いた、『山田 真耶』さんからのキスが贈られま~す!!」

 

「「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

 その声に応じて震え上がる大広間。

その話を受けて、ショックを受ける俺と真耶さん。

 

「何なんですか、それは~~!?」

「何でそんな話になってるんですか、茶々丸さぁあああああああああああああああああああんんんんんんんんん!!」

 

 どうやら、嫌な予感は的中したようだ。

正月だというのに………まったく落ち着くことは出来そうにない。 


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