「ねぇねぇ聞いた? この話」
「二組に転校生が来るんだって! さっき職員室で聞いたって人がいたらしいよ。」
朝教室に入って早々、そんな話が耳に入ってきた。
「箒、そんな話、知ってるか?」
「いや、私は聞いてないな。今知った」
女子の独自情報ネットワークの早さには本当に驚かされるが、どうやら箒には無いらしい。
一人になりがちな箒は、もう少し人付き合いを大切にすべきだ。
「何でも中国の代表候補生らしいですわ」
「セシリア」
セシリアは知っているようだ。少し気取ったところがあったから心配していたが、こちらは問題なさそう。やはり交友関係で心配になるのは箒だな・・・・・・
「私の存在を危ぶんでの転入かしら? それよりも一夏さんの劔冑を調べるために来たと考える方が妥当でしょうか」
「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」
まぁ、劔冑に関しては今更な感じがしてならない。調べたければ調べればいいとは思うが、真打はどう科学的に調べたって分からないものだ。やりたいならいくらでも。
それより・・・
「代表候補生か・・・どんなやつが来るんだろうな」
「「気になる「のか・・・?」「んですの・・・?」」」
何故か箒とセシリアが一緒に聞いてくる。
しかも顔が二人とも近い。俺は少し仰け反ってしまった。
「ああ、気になるな。もしかしたらこれから戦うかもしれない相手だからな。代表候補生ってことは相当な腕前だと思うしな」
「「そう「か!」「ですの!」」」
何を心配していたのか、二人とも顔がぱぁ、と晴れた表情で嬉しそうに返事を返してきたが・・・
何度も言うようだが、顔が近いんだ、もう少し離れて欲しい。
「心配そうにしてるけど、うちのクラスなら楽勝だよ! 何せあの『正宗』がいるんだし! それに専用機持ちもいるし。ね! 織斑君」
クラスメイトたちがそう言ってくるが、戦う側のこちらとしては容易なことは言えない。
戦いとは常に真剣勝負であり、楽勝などという言葉は存在しない。
楽勝という言葉は戦った相手に対して失礼であり、使って良い言葉ではないのだ
どう答えようかと考えていたところで、それは強制的に停止させられた。
「-―――――その情報古いよ」
教室の出入り口から声が聞こえ、みんながそちら向く。
そこには小柄でツインテールの女の子が立っていた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には勝てないから」
そう勝ち誇る少女は、俺が知っている人だった。
「もしかして・・・鈴・・・お前・・・鳳 鈴音か?」
「そうよ! 中国代表候補生凰 鈴音。久しぶりね、一夏」
こうして俺の二人目の幼馴染みがこの学園に来た。