装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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しばらく正月が続きそうです。



一月二日 その1

 一月二日になり、俺は朝一に駅で真耶さんと待ち合わせをして、今は真耶さんのご実家へと向かっている。

 無論、新年の挨拶をするためである。前に挨拶に向かって以来久々に会うため、かなり緊張している。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、旦那様。もうお父さんもお母さんも旦那様のことを認めているんですから」

『もっとシャッキッとせんか、御堂! 嫁のご両親への挨拶、しっかりと気を持ってゆけ。不躾な真似をするでないぞ!』

 

 緊張している俺にそう笑いかけてくれる真耶さん。その優しさが嬉しくて、俺も笑顔で答える。

正宗が金打声で俺にしっかりするように言って来た。もう正宗の方はしっかりと治っているため、俺についてきている。当然隠行で隠れて移動しているのだが。

 

「お気遣い、ありがとうございます。そうなんですけど、やはり…こう重要なことを言いに行くのは緊張してしまって…」

「それはそうですけど……じ、時間の問題ですし……ぁぅ」

 

 自分で言っておきながら真っ赤になって恥じらってしまう真耶さん。その様子が可愛すぎて、抱きしめたくなるのを我慢した。

その代わりに、繋いだ手に力を入れてぎゅっと優しく握った。すると、真耶さんも俺の手に応じて握り返してくれた。

 そのまま二人で手を繋ぎながら、俺達は真耶さんのご実家へと向かった。

 

 

 

「ただいま~」

「お邪魔します」

 

 さっそく真耶さんのご実家に着き、そう挨拶を言いながら家へと入っていく。

 

「あ~! 真耶ちゃん、おかえり~」

「おぉ、お帰り、真耶」

 

 耶彦さんと真奈さんが俺達を出迎えてくれた。耶彦さんは私服だが、真奈さんは振り袖を着ていた。

 

「いらっしゃい、一夏君」

「いらっしゃ~い」

 

二人が俺にそう声をかける。俺はその言葉に丁寧に答えた。

 

「はい、お邪魔します、耶彦さん、真奈さん。お久しぶりです」

 

 俺はさっそく二人に挨拶をすると、部屋へと案内された。

 

「では、改めて。あけましておめでとうございます」

「「あけましておめでとうございます」」

 

 新年の挨拶を二人にして、持ってきた物を二人に渡す。

 

「これはつまらない物ですが、どうぞ」

「何かな~~、あ~!? 伊達巻きと栗きんとんだ~」

 

 受け取った真奈さんがさっそく中を見て声を上げる。その声は間延びしていながらも喜んでいた。

 

「おぉ、これは悪いね。しかもこれは…手作りかい?」

 

 中を一緒に見た耶彦さんが物を見て、俺にそう聞いてきた。

 

「はい、恥ずかしながら」

 

 俺が少し恥ずかしく思いながらもそう答えると、真耶さんが思い出したように声を上げた。

 

「あぁ!! それって昨日作ったのですか」

「ええ、そうですよ」

「はぁ~、楽しみですね~」

 

真耶さんは俺の持ってきたお土産を見て、そう嬉しそうに言っていた。きっと楽しみにしていたのだろう。

 

「まさか福寿荘の副板が作った伊達巻きが食べられるとは、楽しみだね」

「それじゃあ~、さっそくいただきましょうか~」

 

 真奈さんがそう言うと台所におせちを持って行き、耶彦さんは楽しそうにしていた。

何だかプレッシャーを感じてしまう。

 そして少しすると、栗きんとんと伊達巻きを装った皿を持った真奈さんが此方に戻ってきた。

 

「は~い、どうぞ~。それでは、いただきま~す」

「「「頂きます」」」

 

 お箸と取り皿を配り終え、皆に取り分ける。

そしてさっそく食べ始めた。

 

「わぁ~、すっごい美味しい~」

「ほぉ~、これはこれは。売ってるものとは比較にならないな」

「うわぁ~、甘くて美味しいです」

 

 どうやら皆喜んでくれたようだ。

少しだけ肩の荷が下りたような気がした。自分も食べてみるが、中々に出来ているとは思う。まだ、板長から言わせれば甘いのは分かり切っているが。

 そのまましばらく、このおせちを摘まみながら談笑した。

 

 

 

「すみません、お二人とも。実は大切なお話があるのですが…」

 

 おせちを食べ終え、雰囲気が和んだ所で俺はさっそく本題を二人に話すことにした。

 

「どうしたの~、一夏君~?」

「ふむ…その表情を見るからに、真面目な話のようだね」

 

 二人は俺の顔を見て、真面目な話だと判断したようだ。

真耶さんは俺の隣に並ぶように移動し、正座で座り始めた。

それを心強く思いながら、俺は二人を見据え話し始める。

 

「……その、この度、新年の挨拶とは別の用件もあり、訪問させて頂きました」

「別の用件って~?」

「大切なことのようだが?」

 

 俺は一回だけ深呼吸すると、胸の内を打ち明けるかのように言う。

 

「この度、娘さんと、その……『婚約』をさせて頂きました!!」

「私は一夏君と、結婚を前提にお付き合いしています!!」

 

 俺がそう言うと、真耶さんも顔を真っ赤にして恥じらいながらも、そう二人に言った。

そして真耶さんは二人に見えるように左手を翳す。その左手の薬指には、銀色に輝く指輪がはまっている。

 それを見て、聞いた二人は………

 

「それはめでたいことだ! おめでとう!!」

「おめでとう、二人とも~。これで一夏君も私達の家族になるのか~。男の子も欲しかったからうれしいね~」

 

 とても喜んでくれた。

それを見て、とても喜ぶ真耶さん。

そして脱力する俺。

 

「こう言ってはなんですが、反対とかはなさらないのですか。『まだそんなのは早い、とか?』」

 

 そう言う俺を見て、二人はおかしかったのか、笑い出した。

 

「一夏君、一体何を言っているんだ?」

「そうだよ~、一夏君?」

 

そして二人で声をそろえて言った。

 

「「何を今更。最初に挨拶に来た時からそのつもりでしょ」」

 

 それを聞いて、俺は……

床に手を付いてがっくりとした。

一体…俺がしていた緊張とは何だったのか………

 

 こうして、婚約の報告は予想を遙かに上回る速さですんなりと終わった。

 

 

 

 


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