「というわけで、 織斑くんクラス代表決定おめでとう!!」
「「「おめでとう!!」」」
現在食堂の一部を借り切って俺のクラス代表就任パーティーが執り行われていた。
俺としてはこんなに祝ってもらえるとは・・・少しばかり感動。むしろ嫌われてないことに驚きだ。
「これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」
「このクラスだけだもんね~、劔冑があるのは~」
「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」
クラスメイトたちは思い思いに歓談している。楽しそうで何よりだが、俺は少し引いている。
女子というのは騒げる場ができればテンションの限り騒ぐものらしい。
俺はこのテンションには少しついて行けないな。
「織斑君、対抗戦頑張ってね」
「試合の時、格好良かったよ」
「あ、ありがとう」
ちょっと引け気味ながらに返事をする俺。応援されているのだから応えなければな。
「あの時の劔冑って、今日のあの虫だよね。いつもはどこにあるの?」
「虫? ああ、『正宗』のことか。呼べばすぐに来るけど」
そう言われると呼び出したくなるのが人情と言うものなのか、クラスメイトたちにせがまれた。
昼間であれだけ虫、虫っ!って叫んでいたのにな。
「正宗、来てくれ。皆にお前のことを紹介する」
『御堂、そのようなことをする必要はない。我は正義を成す劔冑、それ以外に出る必要などない』
コイツは結構頑固で正義を成すこと以外に関心がない。
「そう固いこと言うな。自身を主張する前に自身を人に知ってもらう。人に名前を尋ねる前には、まず自分から名を明かすのが礼儀だ」
『確かにそれも然り。我も礼節知らずとは思われたくない』
そう言ってから正宗は食堂の入り口から入ってきた。
「みんなに紹介するよ。コイツが俺の劔冑、相州五郎入道正宗、通称『正宗』だ」
『皆の衆、よろしく頼み申す』
「「「きゃぁあああああああああああああ」」」
正宗が現れて皆さらにヒートアップ。昼間とは偉い違いだ。
「本当に喋ってる! 」
「大きいね~。ISより大きいかも」
『あ、あまりべたべたと触るでない。あ、そんなところはよさんか・・・』
正宗絶賛大好評のようだ。
「一夏く・・・織斑君、正宗さんを呼んだんですか」
「ええ、ちゃんとみんなに紹介しようと思いまして」
山田先生にそう答える。
このパーティーの責任者として来てもらっているのだ。
と言っても本人もノリノリなのだが・・・・・・こういうところを見ると、やはり先生も女の子なんだな~などと失礼ながらに思ってしまう。
二十代前半ならまだ女の子で通ると思う。千冬姉には絶対に無理だと思うが・・・
俺はそうして話しているうちにまた女子達に質問攻めにあってしまい、それをこなすのに苦労していた。
「人気者だな一夏」
箒が不機嫌に話しかけてきた。不機嫌な理由については分からないが、せっかくのパーティーなのに不機嫌なのは、あまり良くないだろう。
「そうでもないって、大方正宗のことばっかりだったしな。それよりもせっかくのパーティーだし、そんな不機嫌そうな顔をするな。美人なのが勿体ないぞ」
「なっ、美人!?」
箒が何故だか真っ赤になってわたわたし始めていた。何かあったのだろうか?
「あ、いたいた織斑く~ん!」
食堂の入り口から見慣れない女性がこちらに向かってきた。リボンの色から見て、二年生のようだ。
「私は新聞部副部長の黛 薫子、話題の新入生のインタビューに来ました」
新聞部の人か。まぁ話題になるのも無理らしからぬ話だ。
「ずばりクラス代表になった感想とか聞かせてくれるかな?」
「はい・・・推薦してくれた人や戦ってくれたセシリアのためにもこの職務、粉骨砕身の思いで頑張らせていただきます」
「うん、いいね~、まさに武士って感じ。誠実で格好いいよ~、惚れちゃいそうだよ~」
「あ、そうですか。あははははは」
何故か三方向から威圧感のある視線を感じた。何故・・・
「それじゃ次にセシリアちゃんもコメント頂戴~!」
「わ・・・私ですか?」
今度はセシリアにインタビューしていた。バイタリティーあふれてる女性だな。
セシリアは普通に答えていたが、何故か後半にこちらを向きながら真っ赤になり、黛さんにからかわれていた。
「最後に二人の写真撮らせてよ」
「二人で?何故ですか」
「このクラスにいる代表候補生と『この世界に反逆する若き武者』のツーショット! 話題性バッチシだしね。どうかな」
「私は構いませんわ!!むしろお願いします」
セシリアが何故か凄いノリ気だ。写真を撮られるのがそんなに嬉しいのか?
「俺も構いません」
「ありがとね。それじゃそこに二人立って・・・ああ~、握手なんかしてるといいかも!」
「え、いやそれはちょっと・・・まだ出会って間もありませんし・・・」
「セシリア、黛さんが困ってるから少しだけ我慢してくれ」
俺は少しごねているような様子のセシリアの手を取り握る。その柔らかさとなめらかな肌に少しだけドキッ、とした。
「あっ・・・・・・・・・・・・」
「準備万端みたいだね~!それじゃあいくよー、ハーイ」
そして鳴るシャッター音と、『ほぼ同時に鳴る金属音』
写った写真を見てセシリアが叫ぶ。
「ちょ・・・ちょっと!なぜ全員入ってますの!!」
写真にはクラスメイト全員が写っていた。特に俺の右隣に箒が、俺の後ろに密着するくらい近くに山田先生が、何故だかセシリアを威嚇するような表情で写っていた。
そして何故だか正宗が俺とセシリアの前に堂々と写っている。
「まぁまぁ。セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」
「クラスの思い出になっていいじゃん」
『御堂と供に我はあり』
「う~~~~~、あんまりですわ~~~~~~~~!」
叫びむくれるセシリアをなだめつつも、パーティーは続いていく。
俺は少し疲れたが、みんなの好意が嬉しくて楽しい一日だった。