指輪を渡した後、俺は体の疲労から眠りについてしまった。
せっかく久々に真耶さんと会えたのにそれはどうなのかと思うが、流石に疲労が濃すぎてそれ以上は起きていられなかった。
しかし、そんな俺に文句も言わずに真耶さんは抱きしめて笑顔を向けてくれた。
その笑顔を見ていると、見守られているみたいで心地よい眠りに誘われる。その柔らかな感触と暖かさがここ最近には感じなかった気持ちに満たされ、安心感に満たされる。それが何だか嬉しくて、俺はその笑顔を見つめたまま眠りに就いた。
目を瞑る前に、真耶さんの顔が俺の顔に近づいて来て、囁くように呟く。
「お休みなさい・・・・・・世界で一番大好きな、私だけの旦那様・・・」
そして唇に柔らかな感触が触れる。
その聞いただけで一瞬にして赤面しそうな言葉を聞き、俺はとても幸せを感じながら意識が完璧に落ちた。
朝の冷えた空気を体が感じる。
その冷たさを感じつつも、体に感じる柔らかな温もりが心地よくて、それをもっと感じたくて抱きしめる。
ギュッ、と柔らかく抱きしめると、より温もりを感じて気持ちいい。
「うふふふ・・・・・・今日の一夏君は甘えん坊ですね~。でも、こういう風に甘えてもらえる方が私としては嬉しいですし・・・・・・可愛い・・・」
その温もりが嬉しそうに言う言葉が耳に入り、俺の意識は完全に覚醒した。
目の前には穏やかな笑みを浮かべた真耶さんの顔。
恰好は眩しすぎる裸ワイシャツ姿であり、俺の腕の中にすっぽりと収まっていた。
「ま、真耶さん!? 何で! どうして!! ・・・・・・うっ・・・」
驚き布団から飛び起きそうになったが、まだ毒が残っていることもあって視界が歪みバランスが崩れて布団に倒れ込んでしまう。
「だ、駄目ですよ、一夏君!? まだ体が全然治って無いんですから。大人しく寝ていて下さい」
心配した真耶さんに優しくベットに押さえつけられる。
俺は体調のこともあってかその言葉をすぐに聞き入れた。
「・・・・・・何で真耶さんが・・・・・・」
「忘れたんですか? 昨日、私は一夏君のお世話をするために泊まったんですよ」
恥ずかしそうに照れつつも嬉しそうに笑いかける真耶さん。
そう言えば昨日は・・・・・・駄目だ、疲れていたから意識がすぐになくなってしまって覚えていない。
でも、そういう風に心配してもらえていることが嬉しい。
「そうでしたか・・・・・・すみません、世話をかけてしまって」
「いいんですよ。だって、一夏君は私の旦那様なんですから、もっと世話を焼かせて下さい。そ、それが・・・妻の勤めですから・・・・・・」
真っ赤になりながらそう答える真耶さん。その恥じらった顔がまた可愛くて、朝から良い物を見れた気がした。
「だ~か~ら~、一夏君の体が元通りになるまで、私が一夏君のお世話をするんです」
笑顔でそう言う真耶さんは、かなり喜んでいた。
だが、そう言われて恥ずかしくも嬉しくなってしまい、俺は赤面(まだ青い)してしまう。
「そ、それは嬉しいんですが・・・・・・まさか、体が治るまで泊まり込みなんて事は・・・・・・」
俺は戦々恐々とそう聞いてしまう。
そんなことが千冬姉に知れたら、とんでもないことになる。
俺はそれが怖くて仕方ない。
「はい、そうですよ」
とても綺麗な笑顔でそう答える真耶さん。
その笑顔に、何故か俺はゾクッ、と来た。恐怖的な何かを本能が察した。
「ちなみにそのことを織斑先生は・・・・・・」
「千冬さんですか? 『一応』は報告しましたよ。もし何か言って来ても大丈夫ですよ。何せ・・・・・・『私を本気で怒らせた』負い目が千冬さんにはありますから」
うふふ、と笑いながらそう話す真耶さん。
何故だか逆らってはいけない気がする。一体千冬姉は何をしたんだ!!
「それに正宗さんにも頼まれましたから」
「え?」
「昨日一夏君が眠った後に正宗さんが来て頼まれたんですよ。『御堂のことをよろしく頼む。この激戦で御堂の心はかなりすり減っている故、心の静養が必要。よって、御堂のことを頼むぞ、『奥方』。我は修復にしばらくかかるのので、その間は御堂を好きにしてよいのでな』って頼まれちゃいました」
正宗に頼まれたことを嬉しそうに語る真耶さん。
正宗の真似があまりにも似ていなくて、笑ってしまう。そんな変な真耶さんも可愛くて仕方ない。
しかし・・・正宗め。まさかそんなことを頼みにくるとは・・・・・・後で礼を言わないとな。
そこまでされては観念するしかない。
ま、まぁ・・・・・・一番大切な人とずっと一緒にいられるのだから、これほど嬉しい事もない。
俺は素直に応じることにした。
「では・・・・・・今日からよろしくお願いします、真耶さん」
「はい!!」
俺にそう言われ、真耶さんが顔を真っ赤にしつつも嬉しそうに返事を返した。
そのまま嬉しさを表すかのように俺の胸に飛び込んでくる。
「ん~~~~~、久しぶりの一夏君」
そう嬉しそうに言いながら俺の胸に頬を寄せる真耶さん。
その様子は可愛くて嬉しいのだが・・・・・・恰好を忘れていないだろうか?
まだ裸ワイシャツのままなのだ。そのワイシャツでは隠しきれないほどに大きな胸の膨らみが、俺の下半身に押し当てられているのだ。むにゅぅ、としたとても柔らかい感触が伝わってくる。これで反応しない男はいないだろう・・・・・・反応しないように必死に堪えた。
「あ、あの~・・・真耶さん? その、目のやり場に困ると言いますか・・・」
真耶さんの顔を見つめながらそう聞くと、真耶さんは顔を真っ赤ししながらも嬉しそうに答えてくれた。
「い、いいんです! い、一夏君は私の旦那様なんですから。お、夫に見られても大丈夫です。寧ろ・・・・・・旦那様が望むのなら、その先も・・・」
顔を真っ赤に恥じらいつつも俺を見つめながらそう言う真耶さん。
その瞳には確かな熱が込められており、潤んでいた。
「そ、そこまでは・・・まだ・・・・・・すみません、これで勘弁してもらえませんか」
そう答えると、俺は美味しそうな真耶さんの唇に唇を合わせる。
それに応じて真耶さんは目を閉じて受け入れてくれた。
「「んぅ・・・」」
そのまま少しして唇を離すと、真耶さんはトロンッ、と恍惚とした顔になっていた。
「むぅ~~、旦那様のいけず~。でも、約束だから仕方ないですよね。そのかわり、これはいいですよね」
少しふくれた後に、今度は真耶さんの顔が此方に近づいてくる。
それが何がしたいのかが分かり、それに応じる。
俺の唇に、その柔らかな唇が合わさった。
甘い唇の感触が心地よいと感じていたら、口内に何かが侵入してきた。
言わずとも知れたことだが、真耶さんの舌である。
それが俺の口内を蹂躙し・・・・・・さらに真耶さんの唾液が送られてきた!!
温かく、それでいて何故か蜜のように甘く感じるそれが、俺の口内を満たしていく。それをそのまま飲み込んでしまった。蜂蜜のように甘く、それでいて全く胸焼けを起こさない。しかも、もっと味わいたくなってしまうそれは、とてつもない麻薬のようだ。
真耶さんは気にせずにもっと俺の口内を舐め回し、唾液を送り続ける。
俺は頭が沸騰しそうになりながらもそれに応じていた。
二人で少しの間そう繋がっていると、唐突に部屋の扉が開いた。
「兄さん、帰ってきたと聞いたぞ! さぁ、一緒に遊びに行・・・・・・・・・あ」
扉を開けたのは、マドカだった。
部屋着らしく暖かな恰好をしていた。
マドカの登場に固まる俺。だが・・・・・・キスに熱中していてまったくマドカに気付いていない真耶さん。真耶さんは気付かないままに、俺の口内を舐め尽くし、唾液を送り続ける。
「んぅ・・・ちゅ・・・んむ・・・ふぅっ・・・・・・」
懸命に、情熱的にキスをし続ける真耶さん。
俺は固まりつつも、体は勝手にキスに応じていた。
部屋を少し湿ったイヤらしい音が駆け巡る。
何を見たのかを理解したマドカの顔がヤカンのように真っ赤になっていき・・・・・・
「す、すまない!? 邪魔をしたぁあああああああああああああああああああ!!」
そう大声で言うと、扉を凄い勢いで閉めて部屋から飛び出して行ってしまった。
その扉が閉まる音を聞いて、やっと何かあったと意識を向ける真耶さん。
「何かありましたか・・・・・・旦那様?」
きょとん、と不思議そうに顔を傾げる。
しかし、その顔は真っ赤になっており、息は少し荒くなっていた。瞳はかなり潤んでおり、吐息と合わせて実に艶っぽい。
「な、何でもありませんよ、真耶さん」
この状態から真実を言うことが俺には出来なかった。
「そうですか。なら問題ないですね。だから・・・・・・旦那様・・・んぅ」
目を瞑って唇を突き出し、真耶さんはおねだりをする。
それがさっきの続きだということは、誰にだって分かることだ。
「・・・・・・もう、仕方ないですね、俺の奥さんは」
そして応じまたキスをする俺達。
この一週間を少しでも埋めようとするかのように、そのキスは激しかった。
マドカはそのまま真っ赤になりながら千冬にこのことを相談しにいった。
マドカ曰く・・・・・・
「兄さんが帰ってきたと聞いたから一緒に遊びに行こうと誘いに行ったのだが・・・・・・真耶義姉さんと、その・・・何か激しいことをしていた。ど、どうすればいいんだ、姉さん」
千冬はそのことを聞いて、凄い疲れた溜息を吐きながらこうマドカに言った。
「その・・・・・・好きなようにさせとけ。私はもう・・・・・・知らん・・・」