戦闘回ばっか書いていたせいで掛けなくなっている作者は驚愕で一杯ですよ。
学園の前で真耶さんが泣き止むのを待った後に、俺は自室へと運ばれた。
その際に正宗が俺達を文句も言わずに運んでくれたことには素直に感謝している。
部屋のベットに寝かされると、正宗は真耶さんに俺の体の状態を伝えていく。
そのたびに真耶さんはまた泣きそうになる。それを少しだけ申し訳無く思ったが、また逆にそれだけ心配してもらえていることが分かって嬉しくもあった。
そのままベットに横たわる俺に、真耶さんが添い寝をしてくれていた。
「すみません・・・真耶さん。お手を煩わせてしまって・・・」
「そんなことないですよ! それより一夏君は大丈夫なんですか!? 正宗さんから聞きましたけど、かなり体が弱ってるって」
学園に着いてからずっと俺に抱きついている真耶さん。
普段なら恥ずかしいが、今は凄い人恋しいだけにとても嬉しかった。
「あははは・・・・・・まったくもって反論できませんね。でも約一ヶ月くらいで何とか治るみたいですよ」
力の無い笑みを浮かべながら答える。すると、俺の顔を見た真耶さんはまた涙目になって俺を負担がかからないように抱きしめた。
「笑い事じゃないですよ・・・・・・どれだけ心配したと思ってるんですか!? 心配したんですからね! 一夏君がいなくなっちゃうんじゃないのかって・・・」
凄く不安そうにそう泣きながら言う真耶さん。また泣かせてしまったなぁ・・・と少し罪悪感に苛まれた。
「その・・・ごめんなさい」
そんなことしか言えない自分のボキャブラリーを悔いる。
もう少し洒落の効いたことでも言えないものかと考えるが、やはり俺にはそんな才能は無いようだ。
何も思いつかない。
「本当ですよ!! どれだけ一夏君は私を心配させるんですか! 私がどれだけ毎日一夏君の無事を祈っていたのか分かりますか! 一夏君が帰ってこなかったら、私は・・・私は!!」
安心させようと笑いかけたのが失敗だったようだ。
真耶さんは今まで見たことないくらい怒っていた。初めて見た激怒っぷりに少し驚いてしまう。
それからしばらく俺に怒りっぱなしの真耶さんの話を俺は大人しく聞いていく。
それが心配をかけた者の責務だと思うから。
俺は無言で真耶さんを抱きしめる。少しでも安心させようと思ったのだが、やはり体が上手く動かないので力の無い抱擁となってしまう。
「心配させてすみませんでした。でも、こうして帰ってこれましたし・・・」
「一夏君!! そういうことじゃないんですよ! 分かってるんですか!」
怒りながら胸をポカポカと叩く真耶さん。
あまり痛くないそれは、何だか心地よく感じた。
「私は、一夏君が作戦前から思い詰めてることは知っていたんですからね! それがどれくらい苦しいことなのか、私にはわかりません。でも、一夏君がそのことに一夏君が苦しんでいることはわかっていたんですから! 今度からはちゃんと私に相談して下さい! どんな危ないことでも、絶対ですよ! でないと・・・・・・嫌いになっちゃいますからね」
「それは・・・・・・怖いですね・・・」
それは一種の殺し文句だ。
そう言われてしまったら、俺は抵抗できない。
それに今の真耶さんが言うことは本当だろう。真耶さんに嫌われたら、絶対に生きていられない。
それぐらい、この人を愛しているのだから。
「・・・・・・すみません・・・反省してます。今度からはちゃんとどんな事も相談します・・・」
「本当ですよ。嘘ついたら許さないですからね。本当にそう思っているのなら、私の目の届かないところに行かないで下さい」
そう言って何とか怒りを治める真耶さん。
そうすると今度はまた泣きそうな顔になっていた。その表情に驚いてしまう。
真耶さんはそのまま俺のことをギュッと抱きしめ、俺の胸に顔を埋めながら言う。
「もうこんな無茶しないで下さい。私にこんな辛い思いをさせないで下さい。私は一生、こんな思いしたくないです! だから・・・一夏君はずっと私といて下さい。この先もずっと・・・」
そう泣きながらも俺を抱きしめて言う真耶さんの言葉は、俺の胸に暖かく染み渡る。
きっと俺がやっていることは酷いことなのだろう。だけど・・・そう言ってもらえたことが何よりも嬉しかった。
「はい、わかりました。俺は・・・一生真耶さんの側にいますよ。一生ね」
本心からそう答えた。
それを聞いた途端、真耶さんの顔が俺の顔に近づいていき・・・・・・
「んぅ・・・」
唇が重なった。
久しぶりの感触。でも、それが幸せで仕方ない。
そのまま少しすると、真耶さんは唇を離した。
「約束ですからね。絶対にですよ」
そう笑顔で言う真耶さんがとても可愛くて、俺は何とか体を動かしてキスを返した。
その柔らかい感触が気持ちよくて、もっともっと、と本能が語りかける。それに従って長く唇を合わせていた。真耶さんは俺を受け入れて恍惚とした顔になっていた。久しぶりの恋人とのキスがここまで幸せだなんて思わなかった。
そして唇を離すと、真耶さんはうっとりとしていた。
「これが誓いです」
「もう・・・一夏君たら」
そのまましばらくベットで抱き合う俺と真耶さん。
その暖かさが幸せを感じさせてくれる。
「そう言えばさっきのって、プロポーズの言葉なんじゃあ・・・・・・」
「あっ!?」
そう聞いた途端に真っ赤になる真耶さん。
久しぶりに見た恥じらい顔は、可愛すぎて仕方なかった。それが嬉しくて見つめていると、真耶さんは更に真っ赤になった。
「何か先を越されちゃってばかりですね」
「ぅ~~~~~~」
恥ずかしさから真っ赤になって唸る真耶さんの何と可愛いことか。
体が通常なら思いっきり抱きしめてキスしているところだ。それぐらい・・・今の状態が恨めしい。
思えば、いつもこんな感じではないだろうか。死合いの後はいつもこうだ。そのたびに後悔している気がする。
もう、そんな後悔はしたくない。
俺は体に無理矢理力を込めると、真耶さんを抱きしめた。
「キャッ、一夏君!? んぅ!?」
そのまま美味しそうな唇にキスをする。
柔らかくて甘い感触に胸が満たされる。ここ一週間ぶりのその感触は、俺の心を癒してくれる。
唇を離すと、真っ赤になりながらもどこか嬉しそうな真耶さんの笑顔がそこにあった。
「すみません。真耶さんがあまりにも可愛かったものですから、我慢できなくて」
「っ~~~~~、もう、一夏君は。我慢なんかしなくていいんですからね・・・だって一夏君は私の・・・旦那様なんですから」
そう恥じらいながらも俺を抱きしめる真耶さん。
通常だったら興奮して誓いが破られていたかもしれない破壊力がそこにはあった・・・が、さっき無茶したせいで少し気分が悪くなったことで意識が其方に向いてくれたために気にしないですんだ。
誓った以上、守らなければ。
そのまま二人で幸せを感じながら抱き合っていると、ふと外に目が向いた。
空から白い何かが降ってきていた。
「あ・・・・・・雪」
真耶さんが俺の胸元でそう呟く。
「ホワイトクリスマスですね」
「そうですね~。ロマンチックで素敵です」
クリスマスイブに恋人とこうして抱き合って雪を見るのが、ここまで幸せだなんて思わなかった。
俺と真耶さんは抱き合いながら雪を見つめ・・・・・・またキスをした。
幸せが一杯で、その前に任務で感じていた暗い気持ちが払拭されていく。
真耶さんと一緒に過ごすこの時間が、何よりも幸せであった。
そして気がつけば時間は深夜十二時。
もともと冬休みに突入していたので、寮に残っている生徒は少ない。
なので、寮の中はいつも以上に静まりかえっていた。
「あ、そうだ。真耶さん、俺の机の引き出しに入っている箱を取ってもらえませんか」
「箱ですか? わかりました」
真耶さんは俺の頼みを聞いて机の方に向かい引き出しを開けると、そこに入っている箱を此方に持ってきてくれた。
「これ、なんですか?」
不思議そうに聞く真耶さん。
そんな顔も可愛くて、俺は笑顔で箱を受け取り真耶さんの前で開ける。
中に入っているのは、これまた豪華な高級感溢れる小さな小箱であった。
それを取り出し、真耶さんの目の前で開ける。
「え・・・・・・これって!?」
「ええ、ご想像の通りですよ。受け取ってもらえませんか」
箱の中身・・・・・・一対の銀の指輪を見て、真耶さんが驚く。
「その・・・まだ結婚は出来ないけど、指輪を贈ることは出来ますから。婚約指輪・・・です」
俺は顔を赤らめながら(実際は真っ青)そう言うと、真耶さんの目からポロポロと涙がこぼれる。
普段なら慌てていたかもしれないが、俺はこの涙の意味を理解出来る。だからこそ、泣いている真耶さんを見れて、俺は嬉しい。
そのまま一つ取ると、真耶さんに渡した。
真耶さんは指輪を宝物を扱うかのように、丁寧に触り見ていくと、裏に刻まれたメッセージを見つけた。その途端、さらに驚く。
『永遠にあなたの側に』
そう刻まれたメッセージを見て、真耶さんは感激のあまりに言葉を失っていた。
「本当はこれを渡してから言おうと思っていたのですが、まさか先に言われるとは思いませんでしたよ」
「っ~~~~~~~~~」
俺が言いたいことを理解して、真っ赤になる真耶さん。
俺はその反応を嬉しく思いながら指輪を返して貰い、真耶さんに聞く。
「この指輪、つけさせてもらってもいいですか」
その言葉がどういう意味なのか、それはもう誰にも分かることだろう。
それを聞いた途端に真っ赤に恥じらいつつも、笑顔で真耶さんは返してくれた。
「はい、一夏君! お願いします」
その答えに嬉しさを一杯感じながら、俺は指輪を真耶さんの左手を取り、薬指に指輪を通す。
指輪はぴったりと合っていて、まさに真耶さんのために存在しているようだった。
それを見てまた感動のあまりに泣き出す真耶さん。
俺も嬉しさのあまりに抱きしめる。
「これが俺の答えです。真耶さん、俺とずっと一緒にいて下さい。俺の生涯のすべてを捧げますから、あなたの生涯をすべて俺に下さい・・・・・・・・・愛してます、真耶さん」
「わ、私もです! 一夏君・・・愛してます! 大好き!!」
そのままキスをする。
合わさった唇に感じたのは、今までで一番に感じた幸せだった。