装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は一夏、戦闘しませんよ~。
それとあまり戦闘があっさりしててすみません。
でも、感想で書いたとおり、あまり何度も白熱したギリギリの戦いを書くと、一夏の熱量が空になってしまうので・・・ご了承下さい。
ですがその分、最後の戦いはガチで書かせて貰います。
悪役相手だと結構難しいんですよねぇ~。


 そのころ各所では

 坤竜とその仕手を降した俺達だったのだが・・・・・・

 

『御堂、大丈夫か』

「何とかな・・・・・・だが・・・・・・ダメージがでかい・・・・・・」

 

 俺はふらつきながら何とか歩いていた。

先の戦いで相手の陰義を強引に破り勝ったが、そのために無茶をしたツケである。

近距離での自爆同然の『飛蛾鉄砲・弧炎錫』。これによって俺の肉体にもかなりの損害を被った。

本来ならばすぐにでも回復させたいところだが、熱量の消費を少しでも抑えるために最低限度の再生しか行わなかった。御蔭で傷こそ塞がっているが、痛みはまったく引いてない。

一歩踏み出すごとに身体中に激痛が走る。

まぁ、身体中に火傷、それに鉄片が身体中に刺されば痛くもなるだろう。それをこらえながら歩いて行く。

 

『御堂よ、少し休んではどうだ』

 

 そんな俺を見かねてか、正宗がそう言う。

 

「いや、休んでいる暇はない。一人でも生きている人がいるのなら、それを助けるのも正義の勤め。そのためには時間をかけるわけにはいかない」

『その心意気は立派だが、そんなふらふらでは勝てるわけもなかろう。少し休め!』

 

正宗にきつく窘められ、流石に虚勢を張る気も無くなってきた。

 

「・・・・・・・・・そうだな・・・・・・実は少しきつかった。すまん、正宗。少し焦りすぎていたようだ」

『うむ、焦りすぎはよくない。だが、それも正義を重んじるが故と思えば、我は誇らしく思うぞ』

 

 正宗に褒められたことを少し嬉しく思い、近くにあった岩に背中を預け座り込んだ。

 

「ぐぅぅぅぅ・・・・・・やはり疲れが溜まっているな。慣れない飛行機と船での移動、久々に人を殺した事への罪悪感、地獄としか思えないような光景ばかり見てきたせいによる精神の摩耗・・・・・・数え上げたら切りがないな」

『あまり後ろめたいことばかり考えておると、余計に消耗するぞ。今のうちに熱量を補充しておけ』

「それも・・・・・・・そうだな」

 

 正宗の助言を受けて、俺は懐から携帯食料を取り出した。

高カロリーの非常食糧である。こういった物は大量の熱量を消費する武者にとっては有り難いものである・・・・・・だが・・・・・・

俺は封を開けると、中に入っていたクッキーのような物を一口囓り咀嚼して飲み込む。

 

「・・・・・・・やはりと言うべきか・・・・・・美味くないな・・・」

 

 カロリーの摂取を目的とした物だけに、味にはそこまで気を使っていないらしい。

一応各種色々な味があるが、どれもこれも似たような感じだろう。

 

『そう文句を言うな』

 

 正宗は俺の顔を見ながらそう言う。

流石に顔に出すぎていたようだ。疲れのせいもあるのだろう。

 

「・・・・・・あぁ・・・真耶さんの料理が恋しい・・・・・・」

 

 つい何気なくそう零す。

 

『御堂の方が料理の腕は上だろう。何故に真耶嬢の料理なのだ?』

 

 正宗は不思議そうに聞くが、俺は断言出来る。

自分で言うのも何だが、確かに料理の腕は俺の方が上だろう。

だが、あの暖かくホッとする味は俺には絶対に出せない。たとえ板長が本気で作った料理でも、俺はあの味の方が美味いと感じるだろう。それぐらい・・・・・・俺は真耶さんの料理が好きだ。

 

「俺は真耶さんの作るあの温かくて安心する味が大好きなんだよ。だから・・・・・・こんなことはすぐに終わらせて、すぐに帰る! そのために・・・・・・今は少し寝る。一時間後に起こしてくれ、正宗」

『諒解』

 

 俺はそう正宗に告げると、さっさと眠りに落ちた。

その際にまぶたの裏では、真耶さんの笑顔が見えた気がした。

 

 

 

 一夏が眠りに付いた同時刻。

とある街にある廃墟。正確には亡国機業の秘密基地が地下に隠されている廃墟に伊達はいた。

伊達は上空で迎え撃ってきたISなどを単騎で切り捨てていく。しかし、その様子は明らかに不機嫌であった。

 

「何だ、何だぁ、この糞弱ぇ奴等はよう! つまんねぇ・・・滅茶苦茶につまんねぇぞ、こらぁっ!!」

「ひぃいぃいいいぃいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 その苛立ちから来た雄叫びに、周りで抵抗していた亡国機業の人間を怯ませる。

伊達はこの作戦が始まる前は、結構上機嫌だった。

久々の命がけの戦いというのを、実に楽しみにしていた。武者同士の戦いほどではないが、ここ最近教官職ばかりしていたので少しばかり退屈だったのだ。

せっかく暴れられる機会、たっぷりと楽しもうと思ったのだが・・・・・・・・・

 

敵があまりにも弱かった。

 

元々弱体化し始めたのを狙って行われた作戦である。

そこまで強い訳がなく、また伊達を納得させられるほどの強者もいなかった。

そのため、伊達はあまりのつまらなさに不機嫌になったのだ。

 

(おいおい、こんなんじゃ退屈で仕方ねぇぜ。これが終わったら、また織斑と死合いさせてもらうしかねぇなぁ、こりゃ)

 

 伊達はそう思いながら、このつまらない戦闘を終わらせることにした。

 

「んじゃ、こいつでとっとと終わりやがれぇええええええええええ!『柴船っ!!』」

 

 そう伊達は叫び、陰義を発動させる。

すると、その廃墟一帯をとてつもないほど巨大な竜巻が襲い、すべてを吹き飛ばしていった。

 

 

 

 また別の場所では、真田が亡国機業がアジトに使っている高層タワーの前を航行していた。

真田は真面目に任務に当たっていたが、やはりその顔には不満が表れていた。

 

「これも任務とはいえ、あまりにもつまらん」

 

 そう言いながら襲いかかって来たISや防衛兵器などを槍で貫き、炎で焼き尽くしていく。

破壊されていった者達は皆墜落していく。その光景を味方は皆固唾を呑んで見ていた。

織斑 一夏以外の武者による、圧倒的な戦闘。用意してきた弾薬や兵器、ISは一切使われずにいた。使う必要もないくらい、その戦闘は一方的であった。

他のと違いがあるとするのなら、それを行っている者がその戦闘を一切楽しんでいないことだろうか。ただ真剣に、自身の正義を持って戦ってる。そこが他と確実に違うことだろう。

 もうこれ以上は無駄な抵抗をさせるわけにはいかない。そう判断し、真田は相手の戦意を根本からへし折ることにした。

 

「これで決める! おおおぉおおおおおおおおおおおおおお!『熾盛光閃翼ッ!!』」

 

 その上空に巨大な炎の龍が出現し、敵のビルを丸々飲み込み、すべてを焼き尽くした。

 

 

 

 一夏が公欠で休み早三日。

政府命令と言うこと以外一切分からないことを不安に思い、真耶は千冬に聞くが千冬は一夏との約束もあってはぐらかしていた。だが、その態度は余計に真耶の猜疑心を煽った。

そのため現在・・・・・・屋上で千冬は真耶に問い詰められていた。

真耶はいつもと同じ笑顔なのだが、その笑顔からは信じられないほどの威圧感を発していた。

 

「それで・・・・・・何を隠しているんですか・・・織斑先生・・・いや、千冬さん」

「い、いや、私は何も隠していないぞ」

「だったら・・・なんでそんな焦った顔をしているんですか?」

 

 そう笑顔で聞く真耶。それがとても怖くて、千冬は少し怯んでしまった。

それを更に責め立てるように真耶は話す。

 

「政府は一体一夏君に何をさせてるんですか? いくら政府の命令でも、一週間も学校を休ませる用事なんて随分と大仰ですよね。それに一夏君、その前からやけに思い詰めていた感じがしましたし・・・・・・一体何を隠してるんですか?」

 

 そう話しかける真耶の目には光が一切灯っていなかった。

その顔に本能的な恐怖を感じる千冬。ここまでの恐怖はブリュンヒルデと周りから言われた千冬でさえ、抱いたことはない。

故に、内心は恐怖でガタガタと震えていた。

 

(うぅ~、真耶がこんなに怖いなんて。昔からは考えられん! これも一夏の影響かぁ・・・・・・あいつ尻に敷かれないか、このままじゃ)

 

「いい加減白状した方がいいですよ。でないと・・・・・・『すごいこと』になってしまいますよ」

(『すごいこと』ってなんだ!?)

 

 目がまったく笑っていない笑みを向けられて、千冬はついに身体を震わせてしまう。

それくらい・・・・・・怖かった。

喋らなかったらどんな目に遭うのか・・・・・・今の真耶ならどんなこともやりかねない。

それを本能で理解した千冬は、観念して白状し始めた。

 

「そ、その・・・・・・一夏が政府から受けた命は・・・・・・亡国機業殲滅作戦だ。それであいつは戦いに行った。あいつはその中でも特に危険な任務を受けている。いつ死んだっておかしくない任務内容だった。それに彼奴自身も、人を殺めてしまうことに苦悩していた」

「そんなっ! そんなことって!? 何で止めなかったんですか!!」

 

 作戦の内容を聞いてショックを受ける真耶。

まさか政府がそんな大規模な作戦を立てていたこと、そしてその作戦の中核に一夏がいること。そして一夏が人を殺してしまうことにショックを受けてしまったのだ。

無理もない話である。一夏から昔に人を殺めてしまったことは聞かされていた。

そのことを一番悔いていたことは一夏であったし、その苦悩を知って真耶も受け入れていた。

武者同士の戦いでならまだ良い。それは双方とも了承の上でのことだから。

だが、そうでなければ一夏の心は更に罅が入ってしまう。下手をすれば壊れてしまう。

真耶はそれを聞いた瞬間に思った事は、そのことだった。

いくら体が丈夫でも、心までは鍛えられない。だからこそ、真耶は一夏の心が心配になった。

 

(一夏君・・・・・・・・・大丈夫なんですか!? どうか・・・・・・どうか無事で・・・・・・)

 

真耶はそう空に向かって祈ることしか出来なかった。そんなことしか出来ない我が身を呪う。

それでも、一夏の体と心、そのすべての無事を祈った。

 

 

 

 


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