「クラス代表は織斑に決定した。織斑、サボらぬように懸命に仕事をするように」
朝のSHRで千冬姉がさっそく俺のクラス代表の件を発表した。
そういう条件で勝負を受けた以上、勝った者にはその責務を遵守しなければならない。
別にそのことに反対は無いが・・・俺はそんなに怠け者に見えるのか、千冬姉。
「一年一組の代表が織斑 一夏君。一繋がりで良い感じですね!」
山田先生がかなり喜んでそう言った。うまいことを言えたからなのか?
「あ、あの・・・『一夏さん』、頑張って下さいね。この私に勝ったのですから、負けたりしたら承知しませんことよ」
オルコットがこちらに話しかけてきた。どうやら熱も引いたらしく、顔色も良いようだ。だが何故か顔が少し紅い。まだ本調子ではないのだろうか、と少し心配だ。
「ああ、分かってる。負けるつもりは毛頭無いよ。・・・ところで俺の呼び方が変わったか?」
そうは言ってみたがよくよく考えると、オルコットに名前を言われたことが無かった。
しかし最初から下の名とは・・・・・・しかし外国の人は皆そんな感じなのだろう。
劔冑と関わってから、妙にこういった日本的な思考になってる気がしてならない。
こういったことも差別に繋がる要因になりかねない。自重しないと。
「す、すみません! 嫌でしたか・・・」
「いや別に。それだけ俺を認めてくれたってことだろ。むしろ嬉しいくらいだ、ありがとうな、オルコットさん」
「い、いえ、そんな・・・感謝だなんて・・・あと出来れば私はセシリアと呼んで下さいな」
「良いのか? 女性を下の名でいきなり呼ぶのはちょっと馴れないな・・・え~と、セシリアさん?」
「さんはいらないです」
「いきなり呼び捨ては「いらないです!!」はい・・・」
何故だか凄い迫力に押されてしまった。正直試合で戦ったときより凄い。
「それじゃこれからもよろしくな、セシリア」
「は、はい!!」
下の名前を呼ばれたセシリアは満円の笑顔で嬉しそうに答える。
やっぱり良い笑顔だ。見れて良かった気がする。
「一夏、何をデレデレと話しているのだ! それに私だって下の名を呼び捨てで一緒のはずだ。何故私の時と反応が違うのだ!」
「織斑く、いえ、一夏君! そういうことなら私だって下の名前で呼んで下さい。不公平ですよ!」
箒と山田先生が何故か凄い勢いで詰め寄り、抗議の声を上げる。
そんなことを言われても。
箒は昔からこの呼び名で定着しているし、山田先生に限っては先生なのだから下の名で呼ぶなんて。失礼があってはいけないだろ。
少なくとも年上の『普通』の女性を下の名で呼ぶなんて恐れ多いこと、俺には出来ない。
それに二人ともあることを忘れてないだろうか。今現在重要なことを・・・
「織斑、オルコット、篠ノ之、それに山田先生。今はSHR中だと言うこと忘れてないか。忘れているのなら、私がその体に思い出させてやろう」
あ~あ、来ちゃったよ。このクラスの『担任』様が。
獰猛な肉食獣のような笑顔を浮かべ、担任様はその手にもつものを高速で振り下ろしていく。
「「「っぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅ!!」」」
頭を打たれた三人は痛みのあまりその場でうずくまっていた。
俺は? もちろんくらうつもりは無いので避けさせてもらった。
「ちっ、また貴様は・・・・・・まぁいい。これでSHRを終わりにする」
そう言って千冬姉は教室を出ていった。
教室には、先ほどの出来事で固まってしまった生徒たちと、痛みでうずくまり何も言えない状態になってしまった三人が残されて、今日のSHRは終了した。