装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は・・・・・・甘い!!


中間テストとその前日に

 妹が出来て気苦労も多かったが、大体慣れてきた。

もともと鈴にラウラと、それなりに慣れていたのでそこまでの苦労はしなかった。しかし、マドカは結構甘えるものだから、そのつどに真耶さんが焼き餅を焼く。そして放課後に俺の所に逆に甘えてきたり、俺を叱りに来てねだられたりと・・・・・・まぁ、それも嬉しいのだが・・・・・・

 そうした生活に慣れるのも束の間、俺にまた難題が振りかかってきた。

 

『中間テスト』である。

 

 一学期にもあったが、二学期のテストはさらに難しくなっている。

IS学園はIS操縦者の育成機関とは言え、学園である以上当然学業もある。俺はISの事でもそうだが、周りに比べて通常の学業も遅れている。そのため、このテストは頑張らなければならない。

流石に赤点は取りたくない、そんな恥ずかしい姿は真耶さんに見られたくない。

 なのでいつも通りの鍛錬に続き、さらに勉強にも力を入れる。

寝る時間はさらに削り二時間。武者でなければ倒れているかもしれないな。

 それが連日続き・・・・・・テスト前日となった。

その日の朝もいつもと同じように鍛錬を積み、授業を受け、生徒会の仕事をこなす。

そして寮に帰りまた鍛錬を行う。ここまではいつも通り。

そしてここからが大変だ。

俺は教科書とノートを机に広げると、齧り付くように勉強を始める。

そうしてどれくらい集中していただろうか・・・・・・

俺は時間も気にせずにひたすら集中して問題集を解いていく。それが五冊目に突入したころに集中が切れ始めてきた。

この集中力は武者の修行で培われたものだ。死合いの度に集中していれば、嫌でも付くものだ。

 眉間を軽くつまみながら時計を見ると、深夜一時を過ぎていた。

 

「もうこんな時間か・・・・・・だが、まだまだ甘い。もう少し詰めねば」

 

 そう独り言を呟いてしまうくらいには疲れているようだ。

だが、それでも、である。只でさえ中学一年以降の勉強をやっていないのが痛い。独学で語学はできるようになったが、やはり数学や化学はなかなかに出来ない。

そのため猛勉強しなければ赤点になりかねないのだ。

そのために気合いを入れ直しまた机に向かおうとしたところで、部屋の扉がノックされた。

こんな時間に誰だろうか? そう思いながらも声をかける。

 

「はい、どうぞ、開いてますよ」

「し、失礼しま~す。夜分遅くにごめんね」

 

 そう言って部屋に入ってきたのは真耶さんだった。

両手で何か持っていた。

その姿を見て驚いてしまう俺。真耶さんはテスト前と言うことで、放課後から俺と会わないようにしていた。テスト前に教員と生徒が親しくしているというのは、それはそれであまりよろしくない。IS学園の人達は良い人達ばかりだからそんなことはないと思うだろうが、俺と真耶さんはそうは思わない。そこら辺はきっちりと分けなければならない。そこの公私は分けなければ、と二人とも思っている。なので放課後に俺の部屋に来るようなことはなかったのだが・・・・・・

 

「どうしたんですか、真耶さん。こんな時間に?」

「その・・・お勉強、頑張っていると思いまして。これ、お夜食です」

 

 顔を赤らめつつもはにかみながら俺の前に持っていたものを差し出す真耶さん。

そこには土鍋が持たれていた。蓋を開けると、熱々の湯気が出て、とても良い匂いが部屋に満ちる。

中に入っていたのは鍋焼きうどんだった。

とても美味しそうで、さっきまで張っていた気も緩む。

 

「ありがとうございます。まさか夜食を作ってもらえるなんて、感激ですよ」

「そんなぁ・・・・・・だって旦那様が頑張ってるんですから、支えるのは妻の役目です。頑張ってる一夏君にこうして応援する以外、今回私は出来ませんから。でも、きっと一夏君が作った方が美味しいですよね・・・・・・」

「そんなことないですよ! 俺は真耶さんが作ってくれる料理、大好きです。とても暖かい味で、俺じゃこんな美味しいのは作れませんから」

「一夏君・・・・・・」

 

 感激して真耶さんが顔を真っ赤にしながら泣きそうになる。

俺は鍋焼きうどんを受け取り机に置くと、真耶さんを抱きしめた。

 

「きゃっ!?」

 

 いきなり抱きしめられ驚く真耶さん。

俺はその反応も可愛くて更に抱きしめる。

 

「すみません、嬉しくて仕方なくて・・・・・・それに少し寂しかったんですよ、最近は真耶さんとあまり話せませんでしたし」

「うふふ、仕方ないですね~、一夏君は」

 

 そう言いながら俺に応じてくれる真耶さん。

 

「そこもまた可愛いんですよね~、私の旦那様は・・・」

「何か言いましたか?」

「いいえ、何でもないですよ」

 

 真耶さんは笑顔でそう言いながら俺をさらに抱きしめてくれた。

それが更に嬉しくて、ついついキスをしてしまう。真耶さんも嬉しそうに応じてくれた。

 それでしばらくくっついた後、鍋焼きうどんを食べることに。

せっかく作って貰ったのだから、熱々のうちに頂かねば。

俺は添えてある箸を取ろうと手を伸ばしたが、真耶さんに先に取られてしまう。

 

「あれ?」

「ちょっと待って下さいね」

 

 そう笑顔で言い、真耶さんは箸でうどんを摘まむと、

 

「ふぅー、ふぅー、ふぅー、ふぅー」

 

 息を吹きかけて冷ましていた。

それが何だか可愛くて微笑んでしまう。

 

「はい、丁度良い熱さになりましたよ。あ~ん」

 

 とろけるような笑顔で俺の口元にうどんを差し出す真耶さん。

人がいないのと長時間の勉強で疲れていたこともあって、それを恥ずかしがることはなかった。

素直に嬉しくなり、甘えてしまう。

 

「あーん」

 

 嬉しそうに差し出されたうどんを一口。

とても美味しい味に感動した。うん、疲れた身体に染み渡る良い味だ。

 

「うん、やっぱり美味しい! 真耶さんが作る料理は俺が作ったものよりも美味しいです。こんな美味しいものを食べれる俺は、幸せ者です」

「もうっ、一夏君は~。だからこそ、私も大好きなんですよ、一夏君のこと」

 

 そう言い合い、お互いに胸が温かくなる。

幸せで嬉しい。そのままさらにうどんを食べようと思い箸を受け取ろうとしたのだが・・・・・・

 

「駄目です。私が全部食べさせてあげます。うふふふふ」

 

 幸せそうな笑顔で駄目だと言われてしまった。

そう嬉しそうに言われては、俺は箸を受け取ることが出来ない。

 その後もしばらく鍋焼きうどんをはい、あ~んで食べさせてもらった。

これも何回やっても飽きないのは、やはり相手が好きな人だからだろう。

そしてうどんを半分くらい食べた後、真耶さんは箸を動かしていた手を止めた。

 

「どうかしましたか、真耶さん?」

「ふふ、ちょっと思いつきまして」

 

 そういたずらっ子のように言うと、摘まんでいたうどんを自分の口に入れる。

そして少し麺を唇から出した状態で止めると、俺に向かって唇を突き出してきた。

 

「んっ」

「ま、真耶さん!?」

 

 それがキスの催促であることは、もう付き合って充分に分かることである。

俺がその行動に驚いているうちに痺れを切らしたのか、真耶さんは俺の唇にそのまま唇を合わせてきた。そして口の中に入ってくる鍋焼きうどん。

甘辛い味に真耶さんの味がした。

そのまま口の中に入ってくるうどんをそのまま咀嚼する。

そして飲み込むと真耶さんが唇を離した。その瞳は潤んでいた。

 

「ふふふ、たまにはこういうのもいいんじゃないですか」

「・・・・・・・・・・・・もう、真耶さんたら」

 

 驚いてしまったが、それ以上に幸せが溢れて仕方ない。

 

「真耶さん」

「はい?」

 

 不思議そうな顔を向ける真耶さん。その可愛らしい顔をする真耶さんにキスでお礼を返した。

 

「「んぅ・・・」」

 

 そして唇を離すと、うっとりとした顔になっていた。

 

「一夏君・・・・・・」

 

 そのまままた真耶さんにキスを返された。

こうして鍋焼きうどんを口移しでしばらく食べさせて貰った。

これもまた、幸せで仕方ない。俺はその間、ずっと笑っていた。

 

 

 

 こうしてテスト前夜は過ぎ、テスト当日。

俺は応援してくれた真耶さんに報いるためにも、死合い以上に死力を尽くしてテストに当たった。

 

 数日後・・・・・・返ってきたテストは思った以上に良い出来であり、意外と良かった。

 


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