リクエストにあったものを一つ書いてみました。
さて、今回は我が特別に御堂、『織斑 一夏』の一日について語ろうと思う。
まず朝、日の出と共に御堂は起床する。それは季節によりけりだが、基本は早朝四時半から五時と言ったところだろうか。冬は完全に暗いが、それでも御堂は起きる。
そして朝の鍛錬を始める。
我としてはもっと鍛錬を入れて良いと思うのだが、御堂もまだ学生の身。そういうわけに行かないのは致し方あるまい。学生足る者、文武両道でなければのう。昔ならば、正義を成すためにはそのようなものは不要と言い切っておったが、今の時代には深い知識もまた、正義を成すためには必要なものである。そんな物言いは我っぽくないと? まぁ、我も少しは学んだのよ。
だが、正義を成すことに一変の曇りも無い。御堂にはそのような漢になってもらいたいものだ。
今でも充分だと? いやいや、まだまだだ! 御堂には、より正義になって貰わねばな。
最近は随分と鍛錬にも熱を入れており、以前に比べ鍛錬をこなす速度も上がっておる。
これも偏に、あの娘『真耶嬢』の御蔭かのう。以前に比べて御堂はさらに活き活きと鍛錬をするようになった。あの娘が御堂と恋仲になってから御堂はさらに精強になった。
そのことに関しては感謝はしておるが・・・・・・
何とも言えない気持ちもあるのう。
鍛錬を終えると御堂は軽く湯浴みをして汗を流し、食堂へと向かう。
時間は七時半くらいになるのう。その時間になると周りの者達はやっと起き始める。最近の若い者は起きるのが遅いと思うのは我だけだろうか?
そして御堂は真耶嬢と合流して朝食を取る。
ここからが我はどうかと思うのだ。
起きてからこの時間まで、御堂はまさに我の仕手としてふさわしい立ち振る舞いをしており、武者として恥ずかしくないほどに出来ておる。
だが・・・・・・何故、真耶嬢と一緒になるとああも『デレ』となるのだろうか。
先程まであった威厳や威風といったものがまったく感じられなくなるのだ。我の仕手として、どうしたものだろうか。
しかも本人達はまったく気付いていないようだが、まわりの者達が気を遣って近づかないようにしたり、御堂達のせいで苦い『珈琲』ばかり飲んでおる。
まぁ、我も昔に比べて色々と学んだ。故に分からなくも無い。
だが、あの二人はもう少し自重すべきではないだろうか。食堂で働いている者が、
「最近は珈琲が売れすぎて大変だわ。ここまで売れるとは思わなかったからそろそろ在庫が無くなりそうよ」
と愚痴っておったぞ。
我としては、もうちょっと自重してもらいたいものだ。
その後御堂は学園に向かう。
当然我も学園へと向かうが、皆に気付かれぬよう穏行で静かに向かう。
御堂が授業を受けている間はと言うと、我は学園の壁に貼り付いたり、木に登って御堂のすぐ近くに控えておる。御堂の呼びかけがあらば、すぐにでも応じれるようにしておるのよ。
その際暇かと言えば、そうでもない。御堂が受けている授業は、我にとっても面白いものよ。実に興味深い。
そして昼餉になると、またあの二人はああなる。
何度も言うが、我としては自重して貰いたい。
その際、以前御堂に取り巻いておった小娘達は暗い顔になっておるが、これも仕方ないことだろう。
我も学んで知ったが、あれは所謂『失恋』というものらしい。恋というのは我には理解しづらいが、悲しいこともあるのだろう。だが、それも仕方の無いこと。御堂が選んだのは真耶嬢なのだから。
こればかりは仕方ない。人を悲しませるのは悪だが、だからといってこの者達を悲しませないよう皆に応じれば、それは不誠実だ。
故にこれは仕方ないこと故。
そして放課後。
御堂は生徒会に出向く。
そこでさっそく仕事をするのだ。この時は我にも仕事があり、我は生徒会長の娘が逃げ出さないよう監視するのだ。時には身体を張って娘の逃亡を止めることも、我の仕事だ。
御堂はものの一時間で仕事を終わらせ、部屋を出て行く。
我はと言うと、娘が逃げ出さないよう監視を続けるのだ。御堂に何かあればすぐにでも其方に向かえるようにしておるので、心配はない。
仕事を終えた御堂は学食で真耶嬢に労ってもらっておるのだが・・・・・・
やはりあんな感じなのだ。
きっと見る者によっては胸焼けを起こすかもしれん。
そのまましばらく二人は逢瀬を楽しんだ後に、御堂は部屋へと戻ってくる。
その後はまた鍛錬である。
朝の三倍ほどの量であり、本格的にここでは修練を積んで貰う。朝の流しとは違い、ここでは限界に常に挑戦してもらうのだ。訓練を終えたころには御堂は息を切らせ、汗だくになっておる。
だがまだまだ甘い! 御堂にはもっと鍛えて貰わねばな。
我はその間に何をしているのかと言うと、御堂の鍛錬を手伝ったり、本を読んだりしておる。
御堂は我が本を読むたびに、
「どうやってそんな手でページをめくっているんだ?」
と聞いてくるが、普通にめくっているとしか言えん。
そして御堂は夕餉を食べに食堂に向かい、以下略。
もう語らなくともよかろう。語る我の方が辛くなってきたのでな。
夕餉を食べた後は学業や料理の修業に時間を使う。
そして就寝するのが深夜一時くらいになる。
御堂が寝ている間に我はと言うと、読書に勤しんでおる。
これが我が語る、御堂の一日だ。
何度も言うが、御堂は我の仕手として恥ずかしくない武士(もののふ)よ。
それは既に何度経験した死合いでも皆分かっておろう。ついには無想の境地にも至り、これからさらに成長する。悪しき妖甲の仕手たる湊斗 光は天才と皆言うが、我は御堂も充分その才はあると思うておる。故に、これからも御堂には頑張ってもらいたい。
だが・・・・・・やはり二人そろうとああなるのは・・・・・・自重してもらいたいのう。