装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回はマドカさんが引っかき回します。


妹の紹介

 朝から驚愕することが起こり、俺は頭痛に苛まれていた。

何故に亡国機業の『織斑 マドカ』が学園に編入してきたのか? 確かに政府の機関に移送されたことは報告で確認済み。ということは、無理矢理出てきたわけではないということだろうか。だとしたら公式な手段で出たということだろうか? ならば何故、この学園に来たんだ?

 そう悩んでいるところに、悩みのネタであるマドカが俺の元に来た。

 

「久しぶりだな、兄さん。元気そうでなによりだ」

「・・・・・・何故お前がここにいる。捕まったはずでは・・・」

 

 そう怪しんで聞くと、マドカはにこやかに笑いながら答えた。

 

「ちゃんとした手続きでここにきたんだ!!」

 

 嬉しそうにそう言うと・・・・・・

 

「うふふふふ」

「なっ!?」

 

 俺に抱きついてきた!?

 

「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」」」」」」

 

 それによって騒ぐクラスメイト。

 

「なっ、何してるんですかぁ~~~~!?」

 

 あまりの出来事に絶叫する真耶さん。

衝撃に固まる俺。

 

「ん、なんだ? 妹はこうやって兄に甘えるものじゃないのか。そう本には書いてあったのだが・・・・・・違ったか、兄さん?」

 

 不思議そうな顔で俺にそう聞いてくるマドカ。

そんなことを聞かれたって此方だって分からない。俺は取りあえずマドカに離れるよう言うと、マドカは渋々離れた。

 

「・・・・・・・・・織斑先生・・・どういうことか・・・説明をお願い出来ますかな」

「ああ、ちゃんと話す。すまないが山田先生、この後のSHRは織斑『兄妹』は抜きで進めて下さい」

「え、そんな・・・」

 

 千冬姉はそう言うと、俺とマドカを連れて教室を出て廊下に出て行った。

真耶さんが気になって仕方ないという顔をしていたが、今は我慢して貰おう。話を聞いたらすぐにでも教えようと思う。

 廊下に出た俺達は空いている教室に入った。

俺はドアが閉まるのを確認すると、さっそく千冬姉を睨む。

 

「で、どういうことなんだ、これは」

 

 問い詰めるように聞くと、千冬姉は疲れたような溜息を一回吐いてから話し始めた。

 

「ああ、まずこいつはお前が修学旅行のときに倒した亡国機業の『織斑 マドカ』本人で間違いない。それで事情聴取などを行ったのだが、あまり知っていることは多くなかった。もともと実働部隊にそこまで知っていることは多くない。あまりその所は期待していなかったがな。そのまま行けば後の二人同様収容所送りになっていたところなのだが、本人は私怨だけで動いていたわけではなく、ナノマシンによって生命を握られていたこともあって半ば脅迫されていたと言っても間違いではない。未成年ということも大きい。しかもお前に倒された後は寧ろ協力的でな。情状酌量の余地有りと見なされたのだ。結果、保護責任者を立て、通常の生活を送らせる方向になった。まぁ、政府の本音はISの操縦技術が高いからこそ、手なずければ国のためになる。そう判断したのだろう」

 

 つまり、国がそっちの方が有用だと考えたからこうなったと。

こんなことを考えたのはIS派の人間だな。最近劔冑派に押されて勢いを失っているらしいし、ここいらで手を打っておきたいと考えたのだろう。

 

「こいつはキャノンボールファストのときに専用機持ち五人を相手に余裕で立ち回っていたからな。実力は折り紙付きだ。だからこそ、IS学園に通わせることになった。学園生活を通して更生させようというわけだ。まぁ、サイレント・ゼフィルスはイギリスに返してしまったから一般生徒だがな」

「ちなみに聞くが・・・・・・保護責任者というのは?」

 

 そう聞いた途端に、千冬姉は更に溜息を吐いた。

どうやら予想通りらしい。

 

「はぁ・・・・・・私だ。関係上は私の妹、と言うことになっている。つまりお前の妹でもあるわけだ」

「『織斑 マドカ』の本当の正体は?」

「こいつはどこぞの機関が作った私のクローンらしい。どこの組織かはまったくわからないがな。その組織が亡国機業に協力していたのでこいつは亡国機業にいたというわけだ」

 

 まぁ、そんなところだろうとは思っていた。

親戚筋も否定できないが、だからといってここまで似ている親戚なんてのは有り得ない。

なら、行き着く先はそこだろう。

だからと言って否定する気は全くない。

生命とは、生まれた瞬間から個別のものだ。たとえ体組織が百パーセント同じだったとしても、その意思は、魂は、まったくの別物だ。故に同一人物ではない。

だからこそ、俺は織斑 マドカを肯定する。

 

「大体わかった。まさか急に妹が出来るとは思わなかったよ」

「そういうな。私だって・・・・・・いや、既に似たような状態か、アレも」

「アレ?」

「お前の恋人の話だ」

「うっ・・・・・・」

 

 少しにやついた感じに言われてしまい、つまる俺。

否定出来ないので何とも言えなくなってしまう。

 

「まぁ、そういうわけだ。よろしくな、兄さん」

 

 マドカは明るくそう言いながら、此方に体をすり寄せてきた。

 

「ああ、よろしくな、マドカ。だが・・・何故此方にすり寄ってくる!?」

「む、兄妹のスキンシップではないか。冷たいことを言うな、兄さん」

 

 そうむくれるマドカをジト目で睨む。

するとマドカは千冬姉に飛びついた。

 

「姉さん! 兄さんが甘えさせてくれないんだ、どうしたらいい」

 

 飛びかかられた千冬姉はなすがままにされていた。

どうやら今回が初めてのことではないらしく、疲れた顔をしていた。

 

「あ、あ~・・・好きにしてくれ・・・・・・」

 

 そう気だるそうに答えると、マドカは更に千冬姉に抱きついた。

 

「こいつは今まで家族がいなかったからな。家族が出来たものだから、甘えたい放題、というわけらしい。仕方ないとは言え、これは疲れる・・・」

 

 千冬姉はそう答えながらもマドカの頭を撫でていた。

マドカはそうされて嬉しいらしく、さらに笑う。どうやら千冬姉も満更ではないようだ。

話はこれで終わりらしく教室を出ようとしたのだが・・・・・・

千冬姉は何かを考え付いたらしく、マドカに耳打ちをした。当然俺は聞こえない。

 

『そうそう、あとお前には姉がもう一人出来る予定だからな。今のうちから甘えとくと良い』

『何っ!? もう一人家族がいるのか!?』

『いや、まだ家族ではないが・・・・・・いずれそうなるだろう。その人はな・・・・・・』

『そうか、わかった。では教室に戻ったら挨拶する』

『休み時間にしておけよ。でないとまた大変なことになる』

 

 俺はそう内緒話をしている二人を気にしつつも、教室へと戻っていった。

何故か背筋がぞくりときた気がした。

 

 

 教室に戻ると、皆から興味津々といった視線が此方に向く。

俺は教壇を借りて皆にマドカのことを説明することになった。

と言っても正直にではない。

所謂、カバーストーリーというものだ。政府が用意したものらしい。

 

『織斑 マドカは幼少の頃大病を患っており、そのため入院中であった。しかし、このたびやっと治療が終わり健康体になったので学院に通うこととなった』

 

 そういう話らしい。

俺達『織斑家』のことを知っている人間でなければわからないだろう。

現にみんなそれを聞いて納得していた。専用機持ちと真耶さんを除いて。

 後で説明しなくてはならないと思いながら席に座ると、マドカは真耶さんに向かって真っ直ぐ歩いて行ったと思ったら・・・・・・

 

「ではこれからよろしくな、真耶義姉さん」

 

 そうにこやかな顔で言った。

その途端に真っ赤になり慌て始める真耶さん。

 

「えっ!? それって、何で!?」

「姉さんが言っていたぞ。兄さんと先生はもう婚約済みのようなものだから、義理の姉同然だと。つまり義姉さんだ」

 

 そう純粋にマドカは答えると・・・・・・

またクラスが絶叫で割れた。

 

「「「「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」」」」」」」」

 

「織斑君、山ちゃんと結婚するの!」

「すっご~い、もう婚約してるんだ~!」

「ってことは千冬様がお姉様!? いいな~」

 

 クラスのみんなが騒ぎ立て、俺と真耶さんは恥ずかしさから真っ赤になり、千冬姉が痛そうに頭を抑えていた。

 

「休み時間にしろと言っただろう、馬鹿者」

 

 千冬姉はそう言いながらマドカの頭に出席簿を叩き付けた。

途端になる打撃音。とても出席簿からでるような音ではない。

 

「っ~~~~~~~~!?」

 

 あまりの痛みにマドカは叩かれた頭を抑えてしゃがみ込む。

 

「痛いじゃないか、姉さん。何か間違っていたか?」

「私は休み時間にしろと言ったんだ」

 

 そう疲れ気味に言う千冬姉にマドカは涙目になりながら言った。

 

「だって、もう休み時間ではないか」

「何?」

 

 そう言われ時計を見ると、既に休み時間に入っていた。

マドカが言ったことは本当のことであり、何の落ち度もなかった。そのため、千冬姉は気まずそうに教室から出て行った。

 この後、俺と真耶さんはクラスメイト達から質問攻めに遭うはめに・・・・・・

マドカが度々俺にくっついてくるものだから、そのたびに真耶さんが声をあげることに。

 

ちなみに、SHRが終わってから一時限目までの間、機材の調子が悪かったためにチャイムが鳴らなかった。

 


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