コーヒー? その程度でこの甘さに耐えられるわけがありません。
意識を持って行かれないように気を付けて下さい。
「あ、あの~・・・何で部屋まで付いてきたのでしょうか、真耶さん?」
「だって・・・・・・一緒にいたいんです。駄目ですか・・・」
腕を絡めながら上目遣いにそうお願いしてくる真耶さん。あまりの可愛さに顔が真っ赤になるのを感じた。こんなお願いをされたら、俺は絶対に断れない。
でも・・・・・・この可愛さはまず過ぎる。理性を持って行かれかねないその可愛さは、もはや犯罪級だ。
故に、まだ引き下がる訳にはいかなかった。
「で、でも・・・千冬姉が・・・」
「千冬さんなら大丈夫です、もう寝ていますから。さっきまでお酒も飲んでいましたしね。確認済みです。だから、千冬さんに怒られるようなことはないですよ」
「ほ、他の生徒・・・・・・」
「この部屋に来るような勇気がある娘はいませんよ。だってみんな千冬さんが怖いですからね」
俺が言い訳がましく反論するが、真耶さんは笑顔でそれを封殺していく。
何というか、有無も言わせない圧倒的な威圧感があった。
その笑顔と威圧感に折れる俺。
「はぁ・・・わかりました、もう少し一緒にいましょうか」
「はい!」
そう嬉しそうに笑う真耶さんに、俺も微笑む。
内心では凄く嬉しかった。
さっそく布団の上で話すことになったのだが・・・・・・
「ふふふ、一夏君の体・・・あったかいですね」
真耶さんは胡座をかく俺の足の上に座り、背中を俺の体に預け甘えてきた。
その柔らかな感触と甘い真耶さんの香りに、ドキドキしっぱなしである。
そのまま真耶さんを抱きしめると、その暖かさが伝わってくる。何だか抱きしめていると、ドキドキしているのに心が落ち着く。
「い~ちかくん! ふふふふふふ」
俺の腕の中で真耶さんはご満悦だ。
幸せで気持ちよさそうに目を細めていた。
「どうしたんですか、今日は? 随分と甘えん坊ですね」
そう真耶さんに聞く。
いつもより、どことなく強引な感じがしたからだ。まぁ、甘えてもらえるのは実に嬉しいのだが。
真耶さんは俺にそう言われると、真っ赤になり恥ずかしがりながらぽつぽつと言い始めた。
「そ、その・・・笑わないでくださいね。えっと・・・実は・・・今日は一夏君、芹澤さんとばかり楽しそうに話していたんですもの。わ、私は一夏君の恋人なんですから、私のことをもっと見て下さい! せっかくの旅行なんですから、一夏君ともっと、も~っと一緒にいたかったんですよ」
そう言い終えると、さらに頭を俺の体に甘えるように押しつけてきた。
その顔はポストなんかよりよっぽど真っ赤になっていた。
「えっと・・・それはつまり・・・焼き餅ですか?」
「は、はい・・・・・・・・・・」
そう聞き取れるか分からないくらい小さな声で真耶さんは答えてくれた。
その様子が可愛すぎて、俺は抱きしめている腕をさらにギュッとした。
「キャッ!?」
「もう・・・可愛すぎですよ・・・・・・どれだけ俺をドキドキさせるんですか、あなたは。焼き餅を焼いてもらえるなんて、彼氏冥利に尽きます。まさか真耶さんがここまで焼き餅焼きだったとは思いませんでしたよ」
「わ、私だって女の子なんですから焼き餅だって焼きますよ。一夏君のことを独り占めしたいんです。だって・・・・・・私の、私だけの旦那様なんですから」
そう真耶さんは真っ赤に恥じらいながら答えると、俺の顔を上目使いで覗き込みながら唇を突き出してきた。それが何であるかなど、もう言わなくても分かるだろう。
「さっき露天でも一杯しましたよ」
そうイジワルなことを言うと、真耶さんは少しジト目で睨みながら答えた。
「もう、意地悪なことを言わないで下さい。まだまだ、全然足りないんですから。一夏君となら、ずっとしていたいくらいです」
今度は俺が恥ずかしさのあまり赤面してしまう。
でも・・・その分の幸せも感じていた。胸の中が幸せで溢れかえってしまっていた。
「すみませんでした、俺もですよ。真耶さんとずっとこうしていたいです」
そう答え、真耶さんの唇にキスをした。
その柔らかな感触に酔いしれそうになる。しばらくして唇を離すと、真耶さんの顔はとろけていた。
顔が上気しており、目は潤んでいた。とても色っぽくて、それでいて可愛い。
「嬉しい!」
そのまま思いっきり抱きつかれてしまい、押し倒されてしまった。
急なことと体勢から布団の上に倒れ込んでしまう。
真耶さんは俺の顔を上から見下ろしていた。その表情はとても艶めかしい。
「た、たまには年上っぽいこと、させてもらいますね」
そう何だかゾクッ、とくる笑顔で言うと、真耶さんは俺の唇にキスをしてきた。
普通のキスかと思ったら、そのまま俺の口の中に真耶さんの舌が侵入してきた。
「ッ!?」
「ン・・・チュッ・・・フゥ・・・ンン・・・クチュ・・・・・・」
そして俺の口の中を舐め回すように蠢き、俺の唇を貪るかのように唇を合わせてきた。
更に俺の体を包むように抱きしめてきた。俺の胸に柔らかな二つの巨大な感触がむにゅりと潰れる。
あまりのことに理解が追いつかず、呆然とする俺。ただ、気持ち良すぎて頭の中が真っ白になりかける。それぐらい・・・・・・凄かった。
しばらく俺の口の中と唇を蹂躙すると、真耶さんは唇を離した。その際に唇と唇の間に登り梯子が出来上がっており、真耶さんは息切れもあって真っ赤になっていた。その顔はあまりにも艶やかだった。
「ず、随分とお上手ですね・・・・・・・・・」
混乱のあまりにそんなことしか言えない。
真耶さんは恥ずかしがりながらも答える。
「い、一夏君のために練習していたんです・・・・・・」
そう恥じらいながら、いやんいやん、と言った感じに言う真耶さん。
それが自分のために鍛えてきたと言われては、凄く嬉しい・・・・・・が、やはり恥ずかしい。
「そ、その・・・嬉しいです、ありがとうございます」
そう答えるのが精一杯だった。
それを聞いて、真耶さんの顔が花が咲いたかのような笑顔になった。ただし、花は花でも妖艶な花だ。
「一夏君っ!!」
さらに唇を奪われてしまった。
その後も何度かこれは続き、俺は頭から蒸気を噴き出しっぱなしだった。
正直、自分を抑えるの死力を尽くして大変だった。武者との死合いよりきつくて、正直負けそになった。
そして・・・・・・・・・
「いちかく~ん・・・えへへ・・・むにゃ・・・」
俺の胸にその可愛らしい顔を埋めて抱きつきながら眠ってしまった。
全身から真耶さんの柔らかな体の感触を感じ、その甘い香りに包まれていた。
真耶さんは俺の胸の中で幸せそうに寝息を立てていた。
俺はと言うと・・・・・・
ドキドキしすぎたあまりに意識が飛んでいた。
そしてそのまま意識は闇に包まれていく。真耶さんの寝顔を見つめながら。
「一夏君、起きて。起きて下さ~い、もう朝ですよ~」
そんな心地よい声が耳元から聞こえ、俺は意識が覚醒していくことを感じ始めた。
「もう、まだ起きないんですね・・・・・・それにしても・・・やっぱり一夏君の寝顔、可愛い。もっと見てたいけど、そろそろ部屋に戻らないと千冬さんにバレちゃうかもしれませんからね。ちょっと勿体ないけど、起きてもらわないと」
そう耳元で囁かれ、体をゆさゆさと優しく揺さぶられる。
それが余計に気持ちよく感じ、もっと眠っていたくなる。
「まだ起きない・・・・・・だったら、こういうのもいいですよね。起きて下さい、一夏君。でないと・・・キスしちゃいますよ」
それを期待するかのように真耶さんは俺に声をかけてきた。
それで目が覚めたが、何だか勿体ない気がしてきたので、寝たふりをした。
「そ、それじゃ、キスしちゃいますよ~・・・・・・・・・・・・チュッ」
唇に柔らかく甘い感触が伝わる。
それが嬉しくて、俺は目を覚ました。
「おはようございます、真耶さん。朝からちょっと大胆ですね」
「お、起きてたんですか!?」
「まぁ、一応。その、嬉しくてつい寝たふりをしてしまいました。だから、その分謝りますね」
真耶さんにそう言うと、俺は真耶さんの唇を唇で塞いだ。
そして離すと、真耶さんは真っ赤になりつつも笑顔になっていた。
「もう、一夏君のイジワル」
「すみません」
そう答え起きることにした。
「それじゃあ私は部屋に戻りますね。そろそろ戻らないとばれちゃいそうですから」
「はい、では朝食の時にまた」
「はい!」
そう会話を交わして真耶さんは俺の部屋から出て行った。
何だか、朝から幸せで仕方なかった。
そして旅館で朝食を食べた後は、帰り支度をして旅館から退去、その後はまた全体で観光しつつ駅に向かい、新幹線に乗って帰ることになった。
席順はバスの時と同じで、俺の隣には真耶さんが座っている。
最初は行きと同じで、この修学旅行の思い出話に花を咲かせていたのだが、次第に真耶さんの口数は減っていき眠ってしまった。
とても気持ちよさそうに眠っており、時偶に寝言で俺の名前を呟いては笑っていた。
その可愛らしい様子に、俺も微笑んでしまう。
そして、本人が寝ているので聞かれないと思い真耶さんに言う。
「俺だって大好きで独占したいんですよ、俺だけのお嫁さん・・・・・・」
そう呟いた瞬間、真耶さんの顔が赤くなった気がしたが、夕日でそう見えただけかもしれない。
俺はそう思いながら、眠っている真耶さんの頬にキスをした。
何だかとても幸せな気分で一杯であった。
こうして、俺の初めての修学旅行が終わった。
今回一番得たことは、もっともっっっと真耶さんを好きになったことだろう。
次回は・・・・・・
そろそろご両親への挨拶かな・・・・・・